ラストサマーホリデー

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カリカリカリ……シンと静まり返った部屋で、ペンをノートに走らせる音だけが響く。
 今日は8月31日――夏休み最終日だ。
 例によって例の如く、こなた、日下部、つかさの3人は宿題を終えていないと言うので、急遽、勉強会を開くことになった。
 私が勉強を見るのは、こなた、日下部の二人。私の部屋で、机を挟んで二人が並び、私の宿題を‘写して’いる。少しは自分で考えたらどうだ。
 普段からこなたのことを「チビッ子は、ちっこくてかわい~な~」と言って憚らない日下部を、こなたの隣に置くのは正直あんまり気乗りしないが、仕方が無い。宿題を終えてもらわないといつまで経っても泣きつかれるハメになるのだから。

「……」
 黙々と宿題を写す二人。その表情はいつになく真剣だ。普段からこれだけ真面目にやってくれればね……。

 一方、私は写させる側なので、やることなど何も無い。いや、ホント退屈だわ。だから、私はこなた観察を始めることにした。
 え?何でこなた観察かって?聞かなくても分かるでしょ。愛よ、愛。
 長くて綺麗な青い髪。突き出たアホ毛。自己主張する泣き黒子。ふっくらした頬。半開きの唇。サイズが合わなくてダボッとした服装。見ているだけで飽きない、その可愛らしさ。

 ――もうちょっとぐらいなら、顔を近づけてもいいわよね?

 そう思った私は、ゆっくりと身を乗り出し、気付かれないよう顔を近づけ始める――と、
「んぁ~、もう疲れたんだってヴァ!」
 ……ハッ!気がつくと日下部がこちらを睨んでいる。
「もう、休憩にしようゼ。私、お土産にアイスを持ってきたんだ」
「おぉ~、いいね。みさきちGJ!」
 日下部に向かって親指をグッと立てるこなた。アイスを持ってきたなら先に言ってくれないと、多分、もう溶けてる。
 でも、日下部はそんなこと考えてないのだろう。こなたの隣にいられるなら、誰だってアイスの事なんか忘れちゃうからね。
「あ、ヤベ。スプーンが二本しかない、一本たりねー」
 そう言って日下部はニヤリとした。む。なんか気に入らない目つきだぞ、それは。
「じゃあ、しゃーねーな。チビッ子は私がアイスを食べさせてやるよ」
 ……確信犯か、コイツ。そうと分かれば、そんな事をさせるわけにはいかない。こちらにはまだ宿題を見せるって言うアドバンテージがあるんだからね。
「ちょっと、まだ休憩には早いでしょ。今休憩したら宿題見せてあげないわよ」

 そう言って私の宿題を取り上げる。案の定、こなたは、
「あぁっ、かがみ様~、待って~」
 私に泣きついて来る。これならアイスどころじゃないでしょ。
「じゃ、もうちょっと頑張って」
 そう言って、こなたの方にだけ、本を開いて渡しておく。
「あ、チビッ子、私にも見せてくれよ~」
 そう言ってわざとらしくこなた側に寄る日下部。いや、寄ったとかいうレベルじゃなくて、体を預けている。
 こめかみがピクッと動いたのを感じた。落ち着け、私。KOOLになれ。こんなことは想定内。大丈夫、仕掛けは二重。
「ぬぁっ!かがみ、これは……」
「な、ナニィッ!!」
 ふ、私がこなたに渡した本は歴史の教科書。ページは216ページ!悪いわね、日下部。勝負は始まる前から終わっていたのよ。
 こなたと私のスキンシップ、その瞬間を目に焼き付けるといいわ。
「ぐぅぅぅ……」
 拳を握り締め、悔しがる日下部。こなたは、真っ赤になって俯いている。まぁ、二人だけの時ならともかく、第3者に見せるのは……ちょっと、ね。

ゴメンね、こなた。日下部が全部悪いのよ。本当はこの写真を誰かに見せたくて堪らなかったけど、でも、恥ずかしくてそんなことできなくて、いい機会だからやってしまおうとか、そんなこと全然考えて無いから。そう、日下部が悪いのよ。
「くっそ~……柊のヤツ……。そうだ!チビッ子!!」
「え、え?何、みさきち」
 まだこなたは動揺している。勝ちを確信した私は、日下部の遠吠えを眺めてやることにした。が、それが油断だった……。
「足が滑った!!」
「うわっ!!」
 んちゅう!――キス、した?
 足が滑った、とか言いながら、日下部はこなたにぶつかるとその頬に思い切り唇を押し当てた。
「うぉぉ、チビッ子、やわらけ~!!」
「み、みさきち……」
 そのままの勢いでこなたに抱きつく日下部。顔面火災のこなた。呆然とする私。
「あぁ、チビッ子、かわい~な~」

 ハムッ――耳を、食んだ!?
 目だけをこちらに向けて、勝ち誇る日下部。それを見た瞬間、私の中で何かが弾けた。

「日下部、そこ……どいて」
「え?」
「いいから、どきなさいよっ!」
「ひっ!?」
 慌ててこなたから離れる日下部。私はゆっくりとこなたへ近づいていく。
「かがみ?……かがみん?かがみ様?……あの、お顔が大変怖いのですが」
 大丈夫よ、こなた……痛くしないから。
「や、あ、あのっ、かがみっ!?……アッ――」


 ズキュウゥン!



最後にオマケ
 ちなみに、つかさはみゆきと峰岸に宿題を教えてもらっている。自力で解こうとする辺りが、こなた、日下部とは違う。
「ねえ、ゆきちゃん。この‘KY’ってどんな意味だっけ?」
「あ、これですね。これは‘コナタはカガミのヨメ’もしくは‘カガミはコナタのヨメ’という意味があります。単語だけでは分かり辛いので、前後の文脈から意味を類推するといいですよ」
「そっかー。さっすが、ゆきちゃん」
 パキ――峰岸のシャーペンの芯が折れた。
「そういえば、妹ちゃんって料理系の専門学校行くの?」
「え?う~ん……ちゃんと料理の勉強したいなって思うけど」
「私のお家、お料理教室やってるの。将来一緒にやれたらいいね」
「そうだね~」
 みゆきの眼鏡が曇る……。
「お料理を作る時はやっぱり食べる人の好みに合わせませんと。‘好みを知らない人が自分の味を押し付け’てはいけませんものね。つかささんはメロンとかお好きでしたよね?」
「あ、ゆきちゃんよく知ってるね~。うん、そうだよ」
 流石にここまではお前も知らないだろ、的なオーラを放つみゆき。だが、峰岸は怯まない。
「あ、そうなんだ。じゃあ、今度メロンを使ったお菓子を作ってあげるね」
「本当?ありがとう」
 お前、地雷踏んだな……と無言で勝ちを誇る峰岸。
「……そういえば、つかささん。前髪を上げ続けると生え際が後退するそうですよ(嘘)」
「え!?じゃあ、気をつけないと」
 純粋に驚くつかさ。峰岸のデコが光って唸る。
「うふふふ……」
 不気味に微笑む二人。その様子を見たつかさは、
「二人とも仲良いね」
 ……まぁ、なんだ、つかさは平和だね。















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コメント:
  • みwikiさんと峰岸さん・・・怖いっす! -- 白夜 (2009-10-12 22:54:38)
  • みゆきさんとあやのの戦いか…最凶最悪な戦いが待ってそう…ガクブル -- 名無しさん (2009-04-27 23:05:44)

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