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一人きりになった自室のベッドの上でこなたはぼんやりと天井を眺めていた。
そういえば夕食の当番は誰だっただろう、確かそうじろうだった気がする。今のこなたには料理など作れやしない、自信を持って言えた。
薄暗がりの部屋の中で自問自答を繰り返していた。あの時あの行動は何を思っていたのか。これから先どうしたいのか。
ごめんと言う謝罪の言葉を先に告げて自分の心をさらけ出していたかがみ。泣きそうな、でも真っ直ぐに射抜いてきた視線が脳裏に焼き付いている。
意味合いは違えど好きだった。掛け替えのない親友。真剣な眼差しに高鳴った鼓動は上手く説明できないが、好意を向けられていることはとても嬉しかった。
拒絶はしない、できない。が、応えることもできなかった。ただ受けとめたかったから、示すためにした頬へのキス。
今はまだ。なら今後の展開次第で唇を重ねることもあると言うのか。
想像して、身悶えした。その行為にではなく、すんなりとイメージ出来てしまったことが顔から火が出るくらい恥ずかしかった。

翌朝、眠い目を擦りながら待ち合わせの場所へと向かう。
なんとなくではあるが、かがみの好意には気付いていた。こなたはかがみを好きだったから純粋に嬉しかった。
しかしそれが恋愛感情であると告げられると解らなくなった。からかった結果として押し倒されてたら心臓が持たない。怖さはないのだけれど。
自分の触れたいと思う気持ちとかがみのそれのズレ、どう折り合いをつけたらいいのか。抱きつきたいと思いながら、抱き締めれたときのむず痒さに対処できない。
悶々とした気持ちを抱えながらも、やっぱりかがみとは一緒にいたい。受け入れるって決めたのだし。
「かがみおはよー」
いつも通りゆるい声で挨拶。なぜかいないつかさは寝坊でもしたのだろうか。
「あ、おはよこなた、今日も可愛いわね」
夢でも見ているのだろうか。かがみが自分のことを大好きだという妄想の産物を。
「もう好きって言ったからね。ダメじゃないならひたすらにアプローチするわよ」
往来でなんということを、と思ったがさして注目は集めてないらしい。羞恥に言葉を失ったこなたは足早にバスへと乗り込む。
ニコニコ笑顔で後に続くかがみ。ツンデレのツンはどこ行った。


「ところでつかさはどうしたの?」
こなたがその質問をできたのはバスが発車してしばらく経ってから。朝早くから血圧を急上昇させるなんて絶対に健康に悪いと思う。
かがみの返答は予想に違わず寝坊とのこと。しかしあっさりと置いてくるのはどうも腑に落ちない。普段ならこなたに先に行くようメールするのに。
最近はきちんと携帯するようになったそれを開いてみる。気付かずに待ちぼうけを食らったあの日のことやこの1ヶ月近く絶えず交わしているかがみとのやりとりなど。最初はただ持っているだけだったのに、いつの間にか手放せなくなっていた。
「何してんの?」
にやけている横からかがみが画面を覗きこんできた。いつかのかがみのように慌てて携帯を大事そうに抱えるこなた。
「つかさが遅刻しないようにメールしてたんだよ」
「ふーん。ま、一応私が出る頃にはちゃんと起きてきたんだから大丈夫でしょ」
咄嗟の言い訳だったがかがみは特に追及したりはしなかった。妹への厳しい言葉を二言三言。でもすぐに険しい表情は消えて穏やかな笑みに変わる。
付き合いの深さからそういう優しい一面をよく知っていたから、今更驚きはしないのだけれど。 いつも小言ばかりでツッコミも厳しくて、でも本当はすごく優しい。
かがみが好きな理由の一つ。心臓の高鳴りには気付かないふりをした。


学校でもかがみは今までとは違っていた。あからさまな好意に周囲にどう思われるのか、気が気でなかった。
手厳しい反応もなんやかんやで最後には折れてくれる。しょうがないわね、と言って付き合ってくれる。
そんなかがみが好きだった。可愛くてツンデレってからかったりした。表向き絶対否定するけれど、こなたは好かれていることに甘えてきた。
スキンシップが好きなのは父の影響かもしれない。父子二人きりで生きてきた分女の子に触れるのは新鮮で、甘い感じがした。
けれど、触れられるのはなんだか落ち着かなかった。父とは違う柔らかな感触に包み込まれるのはくすぐったい。
それに娘を溺愛する父は別として、ここまで好きって気持ちを前面に出されると、どう対応したらいいか分からなくなる。真っ直ぐに好意を向けられて恥ずかしい。
「お姉ちゃんとこなちゃん、すごく仲良いね」
「そうですね」
からかうつもりは全くなく、微笑み合うつかさとみゆき。
以前のかがみなら「な、何言ってんのよ!」なんて顔を真っ赤にしながら言っていたところ。しかし今のかがみは満足げな笑顔をこなたに向けてきた。
……どうしろと。なぜだか認めたくなくて慌ててかがみを引き剥がしながら「べ、別にそういうのじゃないから!」と。何ツンデレてんの私、と心の中で悶えていた。
「こなた帰りましょ」
「あれ、つかさとみゆきさんは?」
「つかさが買いたい物あるからって、みゆきもそれに付き合ってるわ」
説明するかがみの表情は至って普通。内容に疑問は湧かないが、そういうことは大抵直接本人から聞くはずなんだけど。
「あのさかがみ」
教室を出ようとしていたかがみが振り向く。どうしたの、と優しい眼差しで見つめてくる。
「……なんでもない」
ごめんと謝りながら言った姿を。何より大切にしている四人の日々を。思い浮かべて自分の至らなさを恥じた。
不思議そうに訝しんだがそれもすぐ崩し笑いかけてくる。「帰ろう」とこなたより一回り大きな手が差し出される。
手を繋いで下校、なんて今まで一度もなかった。カップルっぽくて恥ずかしい。いや、まだ付き合ってないけど。大体アピールはいいけどされる側の気持ちも考えてほしい。
それでも、赤い顔を見られないよう俯きながら、小さな手を重ねるのだった。


「ねえかがみ、お願いがあるんだけど」
ぎゅっと握られた手は離そうと思っても離れそうにない。思ってないけどさ。ただ、手を繋いでいる上にお互いの顔を見てる、とかどこのバカップルだよ。と視線は斜め下に向けながら。
「ん?私に可能な限りは聞くわよ」
「かがみの気持ちは十分分かったから、今まで通りに接してくれないかな」
そう言って選択肢を間違えたのだろうかと焦る。急に立ち止まって今まで感じていた温もりがなくなったから。
「嫌だった……?」
聞き逃しそうなほどの小さな声。血の気が引いていく、感じがした。
同時に泣きそうなかがみの表情が、不謹慎だけど、綺麗で愛おしいと思った。
「ち、違うよ、そういう意味じゃなくて。ま、まだ付き合ってるわけじゃないんだし、ベタベタするのはどうかなー、って」
「えー」
「えー、って……」
「だって好きなんだもん。本当はもっとこなたに触れたかった。でも拒絶されるのが怖かったから」
小さく身動ぎするかがみ。絶対あり得ないって思ったけど、同性に恋をしてしまったから色々考えてしまうのかもしれない。
そんなこと言われてしまったらダメなんて言えなくなる。真面目でしっかり者なかがみが自分にだけ甘えてるってことだから。
「分かったよ。ただし二人きりの時だけね。誤解されるし」
受け入れておいて今更何言ってるんだって感じだけど。いやでも、かがみの好きとこなたの好きは違うし。百合とかまだそんなんじゃないから。
脳内で論争を繰り広げているこなたに、かがみはとびきりの笑顔で言うのだ。
「こなた、愛してるわ」




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コメント:
  • ↑全く同感です。
    久しぶりに良い『かがこな』分を充電してます。
    作中の「ツンデレのツンはどこ行った。」には思わずwww
    -- kk (2014-07-22 22:07:34)
  • あぁ…とっても良いです!続きが読みたい!! -- ななし (2014-07-20 20:52:52)



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