ランチ

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我ながらなんというか自意識過剰な気がしないでもない、と思う。
デート、とは言っても隣を歩くのは仲の良い友達、同性である。
そりゃ好きではあるけれどあくまで友人として。恋愛的な意味で、例えばそのキスしたいだとか、そういうのは考えたことは全くない。
で、今手を繋いでいるわけだけども、これは普通のスキンシップ。親友だし女同士だし、つかさとだって何度もしたじゃない。
それでもくすぐったさを感じてしまうのは、街中人前でだからとかこなたの手の意外な小ささと柔らかさとかそこから伝わる温もりとか、それらのせいなのだと思いたい。
こなたも変に静かでほとんどこっちを見ず、ただ手だけは離さないとばかりにぎゅっと握ってくるのでなおさら調子が狂う。

「……」
「……」
赤信号で立ち止まる私たちに訪れた沈黙。
こなたは俯いていて並び立った状況だとよりその小ささが際立ってわかる。
周りの人たちの会話がBGMとなってそこまで気まずくはないけれど、逆に賑やかさの中で目立ってしまっている気もする。
何か声を掛けなければと思っても言葉ならず焦るばかり。こなたからいつも通りにアニメの話とかしてくれれば楽なのに。
空気にあてられたのかな、なんてあり得ない想像をしてると浮かんでくるのは少し前の光景。かぁーっと顔が一気に熱くなった。

くぃっと不意に右手が引かれて顔をあげるといつの間にか信号は青に変わっていた。
どったのって首をかしげてこちらを見ている普段通りなこなた。ほんの少し頬を赤くしてたけど。
まだ赤いままのだろうけど何でもないよと笑ってみせて歩き出す。こなたも柔らかな笑みを浮かべて返してくれた。
意識しているのはどっちも一緒みたいで照れくささを抱えつつもあえて何も言わずに歩いてく。
デートという言葉と私の心境がどう関わっているのかはわからないけど、確かに私はこのくすぐったい空気も悪くないと思っている。
繋いだ手から伝わる温もりとか柔らかさも含めてこの時間がもっと続いてほしいと望んでいた。

「せっかくだからお昼はいつものファミレスとかじゃなくて、公園でのんびり手作り弁当が良いよね」
理屈はわからないがそう言うこなたの言葉に連れられ近くの公園に寄った私たち。
「本当に作ってきたのか…」
普段学校のお昼をチョココロネで済ますほど面倒くさがりなのに。とーぜん! と得意気に無い胸を張るこなただけど「でもね…」とちょっと残念そうに続ける。
「ウチにレジャーシートがなかったんだよね、こう寝転べるような大きいのが」
「そんなに重要な物か?」
「重要だよ。お弁当を広げて『はい、あーん』とか、彼女の膝枕でお昼寝とかさ」
「そ、そんなこと絶対やらないからなっ」
全くもって恥ずかしすぎる。
それもデートのうちだよなんて言っているけどそれは絶対にしない。だいたい手を繋ぐだけでも十分恥ずかしかったのに。…嫌じゃなかったけど。
不満そうに頬を膨らませながらこなたはぐいぐい手を引っ張っていく。
この公園の唯一の見所らしい噴水を囲むようにしていくつかのベンチが並んでいた。なぜか二組ほど先客のカップルがいるが。
「やっぱりこういうのがあるとちょっとしたデートスポットになるんだねえ」
「いや偶然だろ。水出てないし、ちっちゃいし」
「そこは深く考えちゃだめだよ。一つくらいアクセントがあればあとはふいんきふいんき」
雰囲気な。というかその程度流されるなんてバカップルくらいじゃないのか。

ベンチに座るとまず小さな毛布を渡された。いや、膝掛けなのか。
それから次々に弁当箱、おかずの入ったタッパー、箸箱、水筒と手渡される。ちょっと膝の上じゃ狭いかな。
「一応昨日の晩から準備してたんだよね。ボリュームは少し物足りないかもだけど、味は保証するよ」
「こんなにあれば十分じゃ、ってかあんたの分は?」
「んにゃこれで二人分だよ。わたしとかがみで半分こ」
まあ言われてみれば一人で食べるには多すぎるかな。というかそれなら私に全部渡す必要ないだろ、テーブル変わりか。
「おい、箸が一つしか見当たらない気がするんだが」
「一つあればいいじゃん。ちょっと失礼して」
こなたが私の膝に手を伸ばす。訂正、膝上の箸箱を手に取る。
当然中身は一膳しかなく、次にこなたがお弁当の中を開いていくけれど、膝の上という不安定な場所に並べられているので下手に動けなかった。
「もしかしなくても食べさせる気満々だよな」
「だからこれも含めてデートなんだって。まあかがみがダイエットのためにお昼抜きでいいって言うなら別だけど」
「なんだとっ!」
立ち上がって全力で突っ込みたいところだったけど、せっかくの美味しそうなお弁当が。くそう、これも計算済みか。

「はい、あーん」
「うっ…ぁ、ぁーん」
ニコニコと満面の笑顔で差し出されたそれを、羞恥に堪えながらなんとか口にする。
じーっと見つめてられているのを視界の隅に感じながらゆっくりと咀嚼する。悔しいが料理の腕には間違いはなかった。
感想を伝えようとしてこなたの視線とぶつかった。てっきりニマニマと笑みを浮かべているものだと思ったら何かを期待しているような眼差し。
「ん、美味しいわよ、こなた」
たぶん間違いないはずと気持ちを込めて伝えた。
「そっか、よかったぁ」
頑張った甲斐があったよ、と素直に喜ぶこなたがなんだかいとおしく思えた。
照れくさそうに頬をかきながら喜んでいる姿がちょっと可愛くてじっと見つめていると、小さな声で何か呟いているのが聞こえた。
「なに?」
「い、いやなんでもないよ、なんでも」
気のせいか、確かに私の名前を呼んだと思ったんだけど。
まあいいか、まだ嬉しそうにしてるこなたから隙を見て箸を取る。一つこなたの自信作を摘まんで。
「こなた、あーん」
「ふぇ? か、かがみ?」
「なによ、あんたが言い出したことでしょ。せっかく合わせてあげてるんだから受けなさいよ。あーん」
「あ、あーん」
小さな口を開けて食べる姿が雛鳥みたいでかわいらしかった。
「美味しい?」
「まあね。わたしが作ったんだから当然だけど」
「どういう意味だ」
「べっつにー。あ、そうだ、同棲するならかがみは仕事担当ね。わたしが家事担当で、そうすればお互い苦手な部分カバーできてバッチリ」
「ど、どどどーせいっ!?」
「あはは冗談だって。まあ大学生になったらルームシェアとかありかも」
「な、ないっ! あり得ないからな!」


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  • 続編すっっごく楽しみですっ!ありあたシターッ!! -- 名無しさん (2014-12-27 22:54:37)
  • 続編ありあたシターッ!
    今後の期待もこめてGJを送らせていただきます。 -- kk (2012-07-29 21:56:39)
  • GJ! -- 名無しさん (2012-07-26 09:52:24)


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