プロローグ

このページを編集する    
「ねえかがみ、明日って空いてる」
いつものようにこなたと長電話をしていてそろそろ話題も尽きてきたころのこと。
「え、明日? まあ日曜だし特に用事もないわよ」
「よかったあ。じゃあ明日の十時、いつもの駅前に来てね」
「別に構わないけど。って集合場所だけ言われても、他の人とか行き先とかはどうなのよ」
またアニメショップめぐりとか言い出すんじゃないだろうな。つかさやみゆきは全然理解できてないのに自分だけ楽しんじゃって。いやいや私だって理解してるわけじゃないし。というか別に好き好んで付きあってるわけじゃ
「何言ってるんだよかがみ、デートなんだから二人だけに決まってるじゃん」
「……は?」
それに今デートプラン教えたらドキドキできないじゃん? 得意気に言うこなた。あのニマニマ笑顔が浮かんでくる。
え、いや言ってる意味がわかんないんですけど。デートって確か恋人同士がそう色々して甘いひとときを過ごす……ねえ。
べ、別に早く彼氏がほしいとかそんなんじゃなくて。大体私の周りにはそういう話がなさすぎて慣れてないだけっていうか。
というかこの場合私とこなたが!? ど、どこから一体そんな話が。いやいや全然そんな嫌いなわけじゃないんだけどね。なんだかんだ良い奴だし親友だしむしろ好きっていうか
「それじゃかがみ、また明日ね。目一杯おめかししてくるんだよ」
「……え、いやちょっ待て。勝手に決めるな」
「むぅ。いいじゃん別に、明日暇なんでしょ」
「何でよ。予定がないって言っただけじゃない」
駆け足で約束を取り付けようとしていたこなたをギリギリ引き止めることに成功。
一つ大きく呼吸をとる。落ち着け私。確かに突っ込みどころはたくさんある、が一つずつ潰していかないとはぐらかされて挙げ句そのまま決定事項となってしまうんだから。
電話を切る気満々だったこなたは寄り道に誘ってくるときのだだっ子モードに入りかけていた。うぅやりづらい。
「休みの日だからって暇してるわけじゃないわよ。別に用事がなくたってやることはたくさんあるんだから」
「んー、たとえば?」
「まあ学生の本分、勉強したり。課題復習、それに受験生なんだし」
「でもずっと勉強してたら疲れるじゃん、息抜きもしとかないと」
「それはほら読書したりとかさ」
「ん、わかるよ。お菓子片手にラノベ読むんでしょ」
その通りなんだけど、なんかムカつく。
「あとはほら掃除したり。自分の部屋はいつも清潔に保っておきたいからね」
「でも部屋に上げるのって家族かわたしやみゆきさんくらいだよね」
「ぐっ、そんなのあんたも変わんないでしょうが」
というかこなたこそ部屋の掃除をすべきだ。ゲームやら漫画やらフィギュアやら色々物が散乱しすぎ。
やれやれと一息吐こうとしたら電話越しにふぃー、ともしかしたらため息かもしれない間抜けな息遣い。
「わたしは違うもん」
「は? 何がよ」
「ちゃんと好きな人いるもん。きちんとして部屋に招くような人」
「えっ……と、それはどういうこと?」
「どうって、そのまんまでしょ。今付き合ってる人がいるってこと」
ほんの少し照れが混じった声色がちょっと新鮮だったーー
じゃなくて、え、つまりどういうこといつの間にかこなたに彼氏ができていたとなんの相談もなしに一体相手はどんな人というかこなたは私のもの
「というわけで明日デートしようって話。いいよね?」
「だ、ダメよ。こなたは私の……っ」
「わたしの?」
「うっ、とにかくその、何て言うか抜け駆けはずるいじゃない」
「ふぇ?」
こなたの呆けた声が耳に響く。私は自分の顔の熱さを自覚する。
「……ねえ、かがみ」
「な、なによっ」
「なんかさ勘違いしてない? わたしは、かがみを、デートに誘ってるんだよ?」
沈黙一秒二秒、おおよそ一分。意味を呑み込んだ瞬間音を立てて体温がさらに上昇する。
落ち着いて、誤解していた事実よりもまず真意を確かめないと。
「こなた、デートっていうのはその、好きな人同士、ですることじゃない?」
「うん。リア充がいちゃいちゃぶりを見せつけるんだよね」
「いやそれはただのバカップルでしょ。じゃなくて、こなたはえっと、あの」
「もうかがみ、そこは女らしくはっきり言う」
「それを言うなら男らしくだろ」
聞けないに決まってるでしょ。あなたは私のことが好き? なんて。
悶々としている私に何度めかわからないため息が聞こえて。

「かがみ、明日二人きりで出かけよう。目一杯おめかしして、手繋いで歩いて、お昼は手作りのお弁当食べるの」
「あんた、ちゃんとした服とか持ってるの? 先に言っとくけど私に料理は期待しないでよね」
高鳴る鼓動とは裏腹に突っ込みを入れる私。
こなたは全然からかっているような雰囲気はなくて、いつにない真剣さに茶化したくなる自分が情けない。
「失礼な。まあ確かに自分で揃えたわけじゃないけど、お母さんのお古とか結構服はたくさんあるんだよ。あとお弁当はもちろんわたしが作るから。期待してくれていいよ」
「そっか。でもあんたとあのお母さんじゃ見た目そっくりでも全然雰囲気違うんじゃない?」
「なにをぅ」
おしとやかなこなたはそれはそれで可愛いかもしれないけど、儚げに笑うこなたが浮かんで慌てて頭を振った。
「あ、でも気合い入れすぎて厚化粧とかきっつい香水とか勘弁だからね」
「誰がするか。というかあんた相手に今さら着飾ってもなあ」
「えー、デートなんだからオシャレしようよ。かがみの可愛いところが見たい」
「私はこれ以上自分の恥を晒したくない」
「かがみはさ、かっこかわいいよね」
「なんだそれ」
「だからあ、頼りがいがあってかっこよくて、でも照れ屋さんでかわいいんだよ」
「それ以上言ったら切るぞ」
気づけば普段の私達に戻っていた。熱に浮かされかけた空気も緩んでる。
「ねえかがみ」
「うん?」
「明日はデートなんだからね。一緒に遊びに行くのとは違うんだよ」
「はいはい」
相手がこなただし変に気負うことはないと思う。いつも通り下らない話で笑ったりして楽しめばいい。
少し、普段と違う女の子らしいこなたに興味はあるが。
「緊張してきた?」
「できん」
「えーつまんない。もう切るけど、何か言っておくことはない?」
「じゃあ今日は早く寝ること。待ち合わせに遅刻じゃ嫌われるわよ」
と言いつつ遅刻して謝ってくるこなたを許してしまう自分が容易に想像できてしまう。どうして私はこなたにこうも甘いのか。
「ん、そだね。おやすみ、かがみ」
「おやすみ、こなた」
電話が切れると部屋の中はしんと静まりかえってしまう。
時計を見ればもうすぐ日付が変わりそうになっていて、どれだけ長い間話していたんだと苦笑い。
ふと携帯の電池を見れば残り一本で、とりあえずそれを充電器に挿した後今日はもう寝ようと決めた。


続き 待ち合わせ


コメントフォーム

名前:
コメント:
  • いい文章ですな〜うん。 二人の可愛らしさがよく出てますよ。 -- 名無しさん (2013-02-04 16:37:20)

投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)


|新しいページ|検索|ページ一覧|RSS|@ウィキご利用ガイド | 管理者にお問合せ
|ログイン|
  



★Counter

TOTAL: -
TODAY: -
YESTERDAY: -

★更新履歴

取得中です。