☆かが明(みん)☆第1夜(後半)

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みゆきさん無双であらかたの敵は片付き、主な敵は大都(現在の北京)の元王朝と、西方で漢国を建国した陳友諒(cv:兄沢命斗)だけとなった。


元王朝は勢いを盛り返していた。
元王朝は大軍を整えると、かつて郭子興の主君であった、大宋国へと攻めこんだ。
大宋国の軍は支えきれず、たちまち宮殿に元軍が迫る。

大宋国宰相の劉福通は、主君の小明王韓林児に言上した。

「あきら様、もはやこれまでです。お逃げください」

「おい、白石。このスーパーアイドル小神あきらの初登場が、いきなり滅亡シーンとは、どーゆーこと?」

「いやぁ、作者もいろいろあきら様の登場するシーンを考えていたそうなんですが、思いのほかこのSSが大長編になったため、すべて割愛されたようです」

「いーやーだー!あきらもっと活躍しーたーいー!」

ズブッ!
その時、劉福通の学生服に敵の矢が刺さる。

「みのる?」

「あきら様…、早くお逃げ…くだ…」
ガクッ。

「みのるーっ!」


大宋国滅亡の報を受け、わたしはただちに小明王を救出することにした。が、みゆきさんが反対した。

「なぜ小明王を救出なさるのですか?」

「いや、だって、わたしの主君の主君だった人じゃん?
てことは、わたしは間接的に家来なわけで、見殺しにしたら世間の評判が悪くならないかな」

「確かに泉さんのおっしゃるとおりかもしれませんね。
でも、小明王にはもはやなんの価値もありません。救出するだけ無駄だと思います」

「うーん」
わたしが悩んでいると、

パンッ、と手を合わせると、みゆきさんは微笑んで、
「では、こうしましょう」
と言い、わたしの耳に口を寄せ、
「……………」
とささやいた。


わたしは小明王救出の軍を派遣し、元軍から逃げてきた小明王を見事、保護することに成功した。

しかし残念な、大変残念なことに、帰路、川を渡る途中、小明王の乗った船は転覆し、そのまま小明王は帰らぬ人となった。


このわたしにとって都合の良すぎる結果に、わたしは、
「やっぱりアレはみゆきさんではないのでは」
という疑いを強めたが、それどころではなくなった。

西方の漢国の陳友諒が60万人という大兵力で、我が国に攻め込んできたのだ。


陳友諒軍とわが軍は国境の翻陽湖という湖をはさんで対峙した。
両軍は湖上で激突したが、この日のために準備万端整えてきた陳友諒軍は、巨大な戦艦を多数建造していて、小型船中心のわが軍は、簡単に蹴散らされた。
戦況は圧倒的に不利で、わたしはみんなに意見を求めた。

珍しく、寡黙なみなみちゃんが口を開く。
「敵の船は木造…。火で焼けば勝てる」

ゆーちゃんの顔がぱぁっと明るくなり、
「さすがみなみちゃん!そんなの考えつかなかったよー」
と賞賛の眼差しで見つめる。

「ゆたか…」

「みなみちゃん」

と見つめあう2人を幸せそうに眺めていたひよりんが突然、
「ハッ!だめッス。その案はだめッス」
と言った。

「どうして?ひよりん」
わたしが訊ねる。

「敵は湖の西南、わが軍は湖の東北に位置してるッス。この季節、風向きは西風ッス。敵に火を放っても、逆に味方の船に燃えうつるッス」

「うーん。そーだねー」
やはりもう勝ち目はないのかね。

さらにパティが言う。
「ソモソモ、ワガ軍ハ弱スギテ、火攻メスルニモ、敵ノ船ニ近ヅクコトスラ、デキナイデスネ」

「うーーん。そーだねーー」
ダメだ。マイナスの材料しかでてこないぞ。
困ったときは…、
「みゆきさーん、なんとかしてー」

またもやみゆきさんの眼鏡が光を反射し、一瞬その表情が読めなくなる。
「そうですね。ご心配には及びません。なんとかなりそうです」

みゆきさんの、なんとかなる、という言葉に、わたしの心は希望の光で満たされた。
「さすがはみゆきさん!」

「まずパトリシアさんが指摘された、安全に敵に近づく方法ですが、
これは峰岸さんに一芝居うってもらいましょう。
次に田村さんが指摘された、風向きの問題ですが…」

「うんうん」

「神に祈りましょう」

「え…、祈…るの?」
さすがのわたしも言葉が出ない。

「ええ。強く願えば、思いはきっと天に通じます。北東の風が吹くよう、祈りましょう。
泉さんならきっと、神様が願いをかなえてくれるでしょう」

「あ、はぁ…、そうッスか」
わたしの心は再び漆黒の闇に包まれた。


会議後、かがみと2人きりになったわたしは、五体を投げだし、
「天は我らを見放したー!」と叫んだ。

かがみは、
「大丈夫よ。みゆきは何か考えがあって言ってるのよ。今はみゆきを信じましょう」
と言った。

しょうがない。なんだかバカらしいけど、明日は真面目に神様に祈ることにしよう。


そのころ敵の陣営に、1通の手紙が届けられた。それを読んだ陳友諒が叫ぶ。

「うぉぉぉぉぉお!勝った!ついにオレは伝説の少女Aに勝ったぞぉ!」

配下K「ゲロゲロリ。店長、一体どうなさったのでありますか」

陳友諒は
「これを読め!」
と手紙を配下Tに渡す。

配下T「えっと、なになに…、『私、康茂才は貴国に投降します。
他のみんなは下の名前やあだ名で呼びあっているのに、私だけ苗字にさんづけ。
私きっとみんなに嫌われてるんです。
仲の良かった柊ちゃんも四六時中泉さんとベタベタして、空気の読めないみさちゃんの世話を独りでするのに疲れました。
明日配下の部隊とともに降伏するので、私の部隊は攻撃しないで下さい』だって」

配下G「ついに…、ついに念願だったペコポン侵略が叶うというのか」

陳友諒「よぉーし!明日は決戦だぁ!伝説の少女Aシフトだ!」

配下K・G・T「「「はいっ!」」」


翌日、わたしはみゆきさんの指示に従って、大袈裟な祭壇をつくり、神様への供物を捧げ、全軍兵士の前で祈り始めた。
祈るといっても、なんと言って祈ればいいのかわからない。
適当に、
「うんだかだーうんだかだーうにゃうにゃはれってほれってひれんらー」
と唱えた時、
風向きが変わった。
ペロッ、これは…、北東からの風!
「うそでしょ…」

背後からみゆきさんが
「今です!行くわよ、私のあなたたち!」
と兵士たちを鼓舞する。

「じゃあ、手筈どおりに」
わたしは峰岸さんに出撃命令を出した。
峰岸さんが率いるのは偽りの投降艦隊。船には兵士ではなく、枯れ草と火薬を満載している。


近づく峰岸さん艦隊を見て陳友諒は、
「あれは我々に降伏する艦隊だぁ!手出しするんじゃないぞ!」
と命令を出した。

艦隊は北東からの風にのって、どんどんスピードアップして近づく。

配下K「ゲロ、このままじゃ我々の艦隊とぶつかるでありますよぉ」

その時、時限発火装置が作動して、峰岸さん艦隊の船が炎に包まれる。
この時点で、峰岸さんとその部下たちは、救命ボートで、すでに脱出している。
燃えさかる船はそのまま陳友諒の艦隊に突っ込み、艦隊は火の海と化した。

配下G「謀られたか。店長、すぐに脱出を」

しかし、陳友諒の艦隊は、巨大な船ばかりで、小回りがきかず、なかなか身動きがとれない。もたもたしているうちに、北東の風に煽られ、炎は次々と燃え広がっていく。


そして、陳友諒軍はすべて灰塵に帰した。陳友諒も戦死し、彼の国は瓦解した。

「ちくしょおぉぉぉぉ!待っていろ、伝説の少女A!オレはあきらめないぞぉぉぉ!」


残る敵は元王朝のみとなった。
わたしはみなみちゃんを大将軍、みさきちを副将軍に任命し、峰岸さんやゆーちゃんを補佐につけ、25万人の兵士を与えて、元王朝の首都大都に向けて、北伐軍を出発させることにした。

わたしは労りの声をかける。
「ゆーちゃん、体に気をつけてね」

「ありがとうおねえちゃん。でもこの夢の中では体調良いし、平気だよ」

「大丈夫…、わたしが、…ついているから」

「みなみちゃん」

「ゆたか…」

お約束の展開の後、みゆきさんがみなみちゃんに声をかける。

「のえ、コホン、みなみちゃん、任務ではなく、遠足だと思って、気楽にね」

「はい…、ありがとうございます」

なんだろう。気のせいか、少しみなみちゃんみゆきさんによそよそしいような…。
みなみちゃんもまた、何かを感じているのだろうか?

「ひーらぎー、私にも何か言葉をかけてくれよな」

「日下部は風邪とかひかないでしょ」

「それってどーゆー意味だってヴぁ!
みゅー、あやのー、ひーらぎは私たちには相変わらずツンドラDAZE」

「まぁまぁ、みさちゃん」

とこれまたお約束の展開があって、北伐軍は出征した。


みなみちゃんの的確な情勢判断と指揮能力、征服地で民衆を慰撫するゆーちゃんの癒し能力、みさきちの驚異的な戦闘能力、それを自由自在に操る峰岸さんのマインドコントロール。このカルテットは全ての国全ての時代を通じて最強の軍隊の1つだった。

北伐軍は、(杉さまには悪いが)向かうところ敵なしで、元軍はなすすべもなく逃げ崩れた。

北伐軍は大都に迫り、モンゴル帝国皇帝トゴン=テムル(cv:黒井ななこ)は戦わずして逃げだした。

「うち出番これだけかいな。なんでうちがモンゴルの皇帝やねん。泉、明日の授業、覚えときやー」

いや、先生!先生の出番がほとんどないのは、このSSの作者が似非関西弁が書きにくいってだけで、わたしのせいではありませんっ!

こうしてモンゴル人の元王朝は漠北へと逃げ去り、わたしは中国を統一した。


天下は統一された。
わたしは皇帝に即位し、国号を「明」とした。

「なんで『明』なのよ?」
かがみが訊ねる。

「かがみんの『みん』なのだよ」

「アンタはアホか。国の名前くらい、真面目につけなさいよ」


争いがなくなり、平和が訪れた。
新たな時代の始まりを人々は歌い、踊り、祝福する。
そしてでんせつがはじまった…。


って、ゲームならこれでクリア。なんだけど、まだまだこの夢は終わる気配がない。

何をすればいいのだろう。

とりあえずみゆきさんに訊いてみる。

「そうですね。歴史書をつくっては如何でしょう?」

「歴史書?桐箪笥の?」

「いえいえ。中国では1つの王朝が滅ぶと、新しい王朝が前の王朝の歴史書をつくるそうですよ。
それによって新しい時代の始まりを人々にアピールするんですね」
北の国境には、まだみなみちゃんの率いる北伐軍がいて、元軍の反撃に備えていた。
まだまだ情勢は不安定で、人々を安心させるためにも、元王朝の滅亡を歴史書をつくることで、「既成事実」とする必要がある、
ということらしかった。

「じゃ、ひよりんお願い」

「わかったッス。本づくりは任せてくださいッス」

「3週間でつくって」
「そ、それはさすがに無理ッス」

「中身なんてテキトーでいいから。どうせ、字ばっかりの本なんて誰も読まないし」

「アンタを基準にするな」
とかがみにツッコまれたが、

「早いのにこしたことはないですね、うふふふふ」
とみゆきさんが言うので、

結局ひよりんは3週間でつくることとなった。


3週間後。
「締切、か、かなりきつかったッス…」
とボロボロになったひよりんが、完成した『元史』を提出した。
もちろん、わずか3週間では事実の考証などをしているヒマは全くなかったので、9割はひよりんの妄想で埋めつくされており、史料価値はゼロである。後世、心ある学者がいれば、まともな歴史書をつくりなおすかもしれない。

「ひよりん、お疲れさま」
と労っていると、

「こなた!大変デース」
とパティがやってきた。パティがもたらしたのはみさきちと峰岸さんの訃報だった。


「みゅー。わたしらここで退場かよ」

「まぁまぁみさちゃん。この後の鬱展開を考えれば、いいタイミングじゃない」


2人は病死だった。

やがて2人の遺体を伴って、北伐軍が帰還した。

わたしとかがみは2人きりで、並べられた2つの柩と対面した。

かがみがもの言わぬ柩に話しかける。
「峰岸、日下部…。
こんなことになるなんて、
たとえ夢でも、もっと優しい言葉をかけてあげれば良かった。
『日下部は風邪ひかない』なんて、ひどいこと言ったね。ごめんね」
かがみの頬を涙が伝い落ちる。

あれ?なんだろう。この気持ち。
もちろん、峰岸さんやみさきちがこの夢からいなくなったのは、寂しいし、悲しい。
でも峰岸さんやみさきちの為に泣くかがみを見ていると、
胸をしめつけられるような、腹立たしいような、もやもやした、明らかに負の感情が湧いてくる。
あれ?これはヤキモチ?嫉妬?まさかね。
わたしはノンケ。
かがみとは、この夢の中では夫婦だけど、目が覚めて現実に戻ればただの友達。
わたしはノンケ。わたしはノンケ。わたしはノンケ。平静を保とうと、呪文のように唱えてみる。
ここで正気を保たないと、明日現実でまともにかがみの顔を見る自信がない。
でも、抑えきれない気持ちがあふれてくる。
かがみにはわたしだけを見ていてほしい。
かがみを独占したい。
「かがみっ!」
わたしは、思わず叫んでいた。

びくっ、としてかがみがわたしの方を向く。
「な、なによ」

峰岸さんもみさきちももうどうでもよかった。友達がなくなったのがどうでもいいなんて、自分でもひどい人間だなぁと思うが、今はかがみを独占したい一心だった。
「いやだよ!」

「そうね。たとえ夢の中とはいえ、友達がなくなるのがこんなに…」

「ちがう!」
わたしはかがみの言葉をさえぎり、叫び、かがみに抱きつく。

「何がちがうのよ?どうしたの?こなた」

夢なのにリアルな触感のあるかがみ。その体温を感じると少し気持ちが落ち着く。
「かがみはずっとわたしのそばにいて。わたしだけを見ててね。わたしも寂しがり屋のウサちゃんなのだよ。かがみがいなくなったら、壊れちゃうよ」

「こなた…。もちろんよ。こなたこそ、ずっと私のそばにいなさいよ。浮気とか許さないんだから」


「ねぇ、キスして」

「ここでか?」

「ほら、ジャマが入らないうちに」

少しかがみは躊躇ったが、やがて、んっ…と2人は唇を重ねる。
わたしはさらにその先も求めた…。


目が覚めたら、現実に戻ったら、ただの友達なんだから、今だけ、今だけね。


「えぇっ?ほんとに?」

「ええ。平和になった今、もう私でお役にたてることはないかと思いまして」

それはみゆきさんからの突然の引退宣言だった。

「建国したばかりじゃない。まだまだみゆきの力は必要よ」
とかがみは引き留めたが、

みゆきさんが軽々しくそんなことを言いだすはずもなく、熟慮した結果なのだろう、とわたしは考えて、みゆきさんの引退を許可した。

「それでは皆さん、ご機嫌よう」
と、にこやかにみゆきさん退場。


これで、みさきち、峰岸さん、みゆきさん。
だいぶ登場人物が減ったなぁ、なんて思っていたら、


かがみが病気で倒れた。


日に日に体調が悪くなっていくかがみ…。


わたしは国中の良医を求めた。もちろん、かがみの治療ができたらできたら、望みは思うがままだ。


わたしは最高峰の名医による医療チームをつくり、かがみの治療にあてようとした。
ところがかがみは名医チームの治療を拒否した。

「な…、なんで?かがみ、このままだと…」とわたしは訊く。

「こなた、私が死んだらお医者さんたちはどうなるの?」

「そ、それは当然…」

「当然、何?」

「当然、…」

「責任を取らされるんでしょう?
でもね。私はここで死ぬみたい。それは避けようがないの。
例え夢の中でも、私のせいで誰かが犠牲になるのはイヤなのよ」


こうしてかがみは一切の治療を拒絶し、


亡くなった。


この夢の中から、かがみがいなくなった。
それでもまだ目は覚めない。
いつまで続くのだろう。かがみがいない日々。辛くて、悲しくて、寂しくて、拷問のような日々だった。
辛くて、悲しくて、寂しくて、脱け殻のようになっているわたしを心配してくれたのはゆーちゃんだった。

「おねえちゃん、最近元気ないけど、大丈夫?」

ありがとうゆーちゃん。落ち込んでいたわたしにゆーちゃんの気遣いは嬉しかった。なんとかして恩返しできないものか。
そうだ。
ゆーちゃんとみなみちゃんをくっつける手伝いをしてあげよう。
あの2人晩稲だから、まだ「友達以上」どまりみたいだ。
ここはひとつおねーさんが背中を押してあげよう。
ゆーちゃんにはわたしの分も幸せになってもらいたい。
余計なお世話なのだろうか。
しかしわたしはぽっかりと空いた心の穴を埋めるかのように、ゆーちゃんとみなみちゃんをくっつける計画に没頭していった。


とはいえ、
名案が思いつかない。
みゆきさんはいないし…、パティに相談してみるか。

「ハーイ!こなた。何ノ用デスカ?」

「ゆーちゃんとみなみちゃんをくっつけるためのいい考え、ないかな」

「腐ッテヤガル…、かがみ先輩ガ死ヌノガ早スギタンダ」

「え?何か言った?」

「イエ。何モ。ソウデスネ…、恋愛ふらぐガ立ツ定番ノeventト言エバ、オ見舞イデスネ!」

「あ!それがあったね」
そういえば、かがみが風邪ひいてわたしがお見舞いに行った時は、かがみ照れちゃって、かわいかったなぁ。
わたしの場合、あれで見事にフラグが立ったもんなぁ。
「でもゆーちゃん最近元気で、風邪もひかないんだよね。良いことなんだけど。
うーん。ねぇパティ、ゆーちゃんが体調崩すような薬ないかな?」

「ワカリマシタ。何トカシマショウ」


数日して、パティはある薬を持ってきた。
ネット上で詳しく書くのははばかられるので簡単に言うと、数種類の鉱石から作った薬で、「寒食散」という。
飲むと高熱を発する。
わたしはゆーちゃんを呼び、雑談をしながら、飲み物の中にほんのちょっぴりこの薬を混ぜて飲ませた。

案の定、ゆーちゃんは発熱して寝込んでしまった。
あわててみなみちゃんがお見舞いに駆けつける。これも計算通りだった。


さらに計算通りなら、ふたりの会話はこうなるはずだ。

寝ているゆーちゃん。それを見つめるみなみちゃん。
ゆーちゃんが目を覚ます。
パチっ「!?み、みなみちゃん。来てくれたんだ。あ…、私の寝顔見たの?恥ずかしいなぁ」

「ゆたかの寝顔…、とても可愛かった…。
思わず見惚れていた。ゆたか蕩れー、だった…」

「??よくわからないけれど…、ごめんね。心配かけちゃって」

「何か…、してほしいこととか、ある?」

「いいよー。みなみちゃんが来てくれただけで嬉しいよ」

「そう言わずに。ゆたかのためなら…、その…、何でもするから」

「えへっ。じゃあお言葉に甘えて、みなみちゃんの手料理が食べたいなぁ」

「何を作ろうか?」

「うーん。まだ体調が良くないから、うどんとかお粥とか暖かいものが食べたいかなぁ」

「わかった…」

「みなみちゃん…、何で服を脱いでるの?」


「裸エプロン…。病人に食事を作るときは、これが正装だと聞いた…」

「だ、誰に?」

「泉先輩」

「もう!それはおねえちゃんの冗談だから、本気にしちゃダメだよ(>_<)」

「そんなこと…、わかっている」

「え?じゃあ、なんで」

「わからない?」

「みなみちゃん…」

「ゆたか…」

若い2人のこと。あとは勢いにまかせてうひひひひ。


しかし計算外のことが起きた。

ゆーちゃんとみなみちゃんとが亡くなったのだ。


「パティ!どーゆーことっ!?ゆーちゃんとみなみちゃん死んじゃったじゃん!」

「こ、こなた…、私ハ頼マレタダケデデスネ…」

知っていた。
わたしが2人を殺したということも。
その責任を罪の無いパティに押しつけようとしていることも。
わたしは、自分で自分の気持ちに気づかないようにしていたが、仲の良い2人に嫉妬していたのだ。憎かったのだ。
「寒食散」はその名の通り、服用中は冷たい食事しか摂ってはいけないのだ。
暖かい食事を摂れば、死ぬ。
わたしはみなみちゃんにも、裸エプロンのアドバイスを授けつつ、こっそりと「寒食散」を飲ませていた。
2人とも発熱すれば、熱に浮かされて、理性の箍がはずれて、告白しやすいだろう…、そんな考えからだった。
一方で、熱をおして見舞いに行ったみなみちゃんが、ゆーちゃんの為に暖かい食事を作ることも分かっていた。
ラブラブな2人。
見ているとかがみとの幸せな日々がよみがえる。正直、つらい。
死んでしまえばいい。
心のどこかでそう思っていたのだ。
かがみが死んで、寂しくて寂しくてしかたなかったわたしの心は、次のステージに入ったようだった。
憎い。妬ましい。幸せそうな他人が許せなかった。
わたしはいつか、みさきち達がこの夢から退場した時にかがみに言ったように、壊れはじめていた。
負の感情を抑えきれない。
ブレーキをかけるかがみはもういない。
そしてわたしは、中華の皇帝として、絶大な権力を持っていた。


「パティ…」

「こなた…?」

「ゆーちゃん並びにみなみちゃん殺害の罪は重い。うぬは、流罪じゃ」

「こなた…、きゃらガ」

「やかましい。儂は大河ドラマで毎年毎年1度は出てくるテンプレの台詞で言うと、『鬼になった』のじゃ」

その時、ひよりんが部屋の中に駆け込んで来た。どうやらパティのことが心配で外で立ち聞きしていたようだ。

「パティを赦してやって下さいッス。
今戦乱はようやく終息し、破壊と創造は過去のものになったッス。安定と保全こそが現在の人々が求めているものッス。
詳しくは知らないッスが、パティが先輩、いや鬼に協力しただけなら、罪は重くないッス。
軽い罪に過度に重い罰を適用すれば、人々は不安になり、再び戦乱の世に戻るかも知れないッス」

正論だった。
しかし今のわたしに正論を受け容れる度量はなかった。
言い負かされて悔しいだけだった。

「正論じゃな。ひよりん…、じゃが、うぬは今『安定と保全こそが現在』と言うたか?」

「はいッス。それが民衆のもとめているものッス」

「『あ』んていと
『ほ』ぜんこそが
『げ』んざい」

「…!」

「縦読みすれば、『あほげ』じゃな。うぬは儂を、儂のこのプリティな髪型を、馬鹿にしておるのであろう」

「そんな…、無茶ッス!無茶苦茶ッス!」

「不敬罪は重罪じゃ。うぬも流罪に処す。辺境の地で寂しく死ぬがよい」


そして、誰もいなくなった。かがみも、みゆきさんも、みさきちも、峰岸さんも、ゆーちゃんも、みなみちゃんも、そしてパティも、ひよりんも。誰も。
そう、誰も。


ようやくこの夢も終わりに近づいてきたようだ。
わたしは体調を崩しがちになり、寝込むことが多くなった。
わたしの後継者たる皇太子は頼りなく、
わたしは、わたしとかがみとでつくりあげたこの王朝がちゃんと存続できるか、ということだけが心配だった。

ある日、わたしは
「プレゼントがある」
と、皇太子を枕元に呼んだ。

「おはらっきー!」

テンション高く現れたのは、スーパーアイドル小神あきら。かつて小明王と言われた人物だ。
死んだはずの小明王は、実は生きていた。
当たり前だが、かがみとわたしとの間に子どもはできなかった。

大宋国が滅亡した時、みゆきさんは、
「表向き、小明王を死んだことにして、こっそり養子として育て、後継ぎにするのが良いでしょう」
とアドバイスをくれたのだ。

わたしは皇太子に言った。
「儂の亡き後、うぬでは国を保てぬかもしれぬ。万が一に備え、用意したものがある。そこのクローゼットを開けてみよ」

「ほえ?」
クローゼットを開けるとそこにはボロボロの服と小さなカバンがあった。

「その服は儂がホームレスだった頃の服じゃ。そしてカバンの中には別人の身分証明書と路銀が入っておる。
もしうぬの身に危険が迫れば、ホームレスに変装して逃げるのじゃ」

わたしからのプレゼントがボロ服1着だとわかり、かなり不満そうな皇太子を下がらせる。


これでもまだ不安なわたしは、最後の仕事にかかった。
大臣や官吏、金持ちなど、有力者とその家族100,000人を殺したのだ。
それを実行するのに全く躊躇はなかった。
これで国家に逆らえる者はいなくなったはずである。
やれやれ。これで安心して死ねる。
わたしの感覚はとうに麻痺していて、10万人を殺した罪悪感はなく、あるのは達成感と満足感であった。


わたしの容態は日に日に悪化し、明日をも知れぬ命となった。
そこへつかさが見舞いにやって来た。
あれ?つかさ?今までどこにいたんだろう?
まぁいい。誰もいなくなってしまったことだし。ついでにつかさも殺してしまおうか、などと考えていると、

つかさが突然、
「バルス」
と唱えた。

その瞬間世界が崩壊した。


ではなく、わたしがベッドから転げ落ちていた。
ようやく目が覚めたのだ。


朝だった。
「なんつー夢見たんだ。ユング先生も大爆笑DAZZE」
などとつぶやきつつ、制服に着替える。


朝食を食べ、いつもの待ち合わせ場所に向かう。
夢の中ではかがみと夫婦だったんだよなぁ。
もちろん、親友であるかがみに対して恋愛感情なんて無いけれど、
意識せずに、普通に、かがみと接することができるだろうか。
などと考えていると、待ち合わせ場所に着いた。

わたしを視界の端にとらえるなり
「こぉぉなぁぁたぁぁぁぁぁ!」
とかがみが全速力で迫ってきた。両手を拡げて。今にも抱きついてきそうな勢いだ。

かがみがわたしに抱きつこうとする寸前、わたしが驚いて、
「ど、どうしたの?かがみ。」
と訊ねると、

かがみは我に返ったように急に立ちどまり、
「べ、別に。何にも無いわよ」
と答えた。

様子が変だ。目を合わせないし、自分の頬を自分でひっぱたいたりしている。
こんなときはとりあえずはぐらかすに限る。
わたしの本能がそう言っている。
「元気がいいねぇ、かがみんは。何か良いことでもあったのかい?」

「何も無いって言ってるじゃない!ただ…」

「ただ?」

「アンタが昨日珍しくまともな質問をしたせいで…、その、へ、変な夢を見ただけよ」

「質問?」

「ほ、ほら、昼休みに明の時代がどうとか…」

「おはよう、こなちゃん」
遅れてつかさがやってくる。
「もう、お姉ちゃんたらいきなりこなちゃんに向かって走りだすからびっくりしたよー」

「おはよう、つかさ。
つかさは昨日何か夢見た?」

「え…」
いきなりきょどるつかさ。
「え、えーと…。あんまり、覚えて、ないかな」

「まぁ、夢なんていちいち覚えてないよね。
で、かがみはどんな夢を見たの?」

「うるさいわね。早く行かないと遅刻よ」
スタスタと早足で駅へと向かうかがみ。

何を怒っているのだろう。全然目を合わせてくれないし。何かまずいこと言ったかな。
わたしも遅れないようかがみについていく。

「あ、お姉ちゃーん、こなちゃーん、待ってよー」
遅れてつかさもついてくる。


「言えないよ…。自分が夢の最初と最後にしか登場しなくて、しかも『バルサミコス』の6つしか発音できなくなってる夢だなんて、言えないよ…」



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コメント:
  • GJでした! -- 名無しさん (2011-05-20 19:40:49)


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