☆かが明(みん)☆第1夜(前半)

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このSSは朱元璋をモデルとしています。よって後半は鬱展開となります。苦手な方は回避してください。



いつもの4人。
いつもの昼食。

しかし、今日のわたしの昼食はチョココロネではない。従妹のゆーちゃんと2人分、かなり気合いの入ったお弁当を作ってきたのだ。

対して、柊家のお弁当当番はかがみだったようで、「質実剛健」を絵にかいたようなお弁当である。

「わぁ、こなちゃんのお弁当とってもかわいいね。キャラ弁だね」

「はっはっはっー。ゆーちゃんの前では『できるお姉さん』でいたいからね。がんばって早起きして作ったよ」

かがみは一瞬、妬ましそうな複雑な表情を浮かべ、口を開いた。
「アンタ、無理しても長続きしないわよ。すぐに化けの皮はがれるんだから。で、それ何のキャラ?また深夜アニメか?」

それは願いを叶える代わりに少女を魔法使いに変える謎の生物。
「そう。この耳からのびてるツインテールみたいな毛が、かがみんそっくりでしょでしょ。」

「全然似てないわっ。てか、全く共通点ないだろ。」

「そうかなー。わたしには他人とは思えないんだけど。」
ぱーく。

かがみは、わたしに食べられるキュ〇べぇをほんの一瞬羨ましげに見ると、自分の弁当を食べはじめた。

「さっき、世界史の時間にふと思ったんだけどさ」
何気なく、わたしは疑問を口にする。
「中国の明(みん)時代って300年も続いたのに、授業ではほとんどスルーだよね。日本だと室町時代だし、ヨーロッパだとルネッサンスとかルイ何世とかいっぱい覚えることあるじゃん?そんなに中身がないスカスカの時代だったのかな?」

「アンタにしちゃまともな質問じゃない。明時代だって覚えることは沢山あるわよ。『魚鱗図冊』とか『土木の変』とか。でも確かに最初の洪武帝や永楽帝だけで、後半は詳しくやらないわよね」
そう言ってかがみはみゆきさんを見る。

「はい、そうですね。明の後半は無能な皇帝が続いたため、あまり授業でとりあげても意味がない、と考えられているのではないでしょうか」
やおらみゆきさんは立ち上がり、さらにイスの上にのぼる。
「しかしそれでいいのでしょうかっ!そもそも日本の東洋史学は世界に冠たる地位にありました。津田左右吉に内藤湖南。狩野直喜、羽田亨や宮崎市定など壮々たる巨人たちによって東洋史学は築きあげられてきたのですっ。しかるに戦後の世界史教育は西洋史を偏重し、東洋史は等閑視され、その結果大学の東洋史学科はゲームやマンガから入った三国志ヲタばかりになってしまいましたっ。現在の東洋史学の学生は、敢えて言おう、カスであると!立てよ国民っ!坊やだからさっ!行けばわかるさ!1・2・3、ダーッ!」

「みゆきさんストーップ、ストーップ!」

わたしは暴走をはじめたみゆきさんにタックルし、イスからひきずり下ろした。

「あ、あら、お恥ずかしながら…」

わたしに抱きつかれ、ようやく我に帰ったみゆきさんを、なぜか殺意のこもった目で一瞥すると、
「じゃ、授業あるから」
とかがみは自分のクラスへと帰った。


その夜わたしは夢を見た。





☆かが明(みん)☆第1夜


ここは夢の中。
舞台は元末の中国。
おっと、最近じゃ「大元ウルス」って言わなきゃいけないんですかね。センター試験までそう書いてあっておじさんビックリだ。おそるべし杉さま。

支配者たるモンゴル帝国にはもはや統治能力はなく、治安は乱れ、各地に群雄が割拠していた。

わたしはうち続く戦乱で家も家族も失い、完全なホームレスであった。ひもじい。

「バルー!」
突然響き渡る少女の悲鳴。
駆けつけると、つかさに巨漢が迫っていた。
先手必勝!
わたしは巨漢の背後から延髄切りをくらわせた。
ずぅん。
豪快な音をたてて巨漢がくずおれる。
「道をきいただけ…だった…のに…」

「バルサ。バミバルコ!」
つかさはお礼だと言って、家に招待してくれると言う。
良かった。食事にありつけるかも。


つかさの家はものすごい豪邸だった。
たちまちのうちに御馳走がならべられ、
柊ただお・みき夫妻が現れた。
ただおさんが口を開く。
「私はこの濠州を支配する郭子興と申す者。
この度はひとり娘をたすけて頂き、ありがとうございます。
お粗末ではございますが、お礼に、心ゆくまで食事を堪能してください」

「いやいや。当然のことをしただけです。お構いなく」
と言いつつ、わたしの目は御馳走に釘付けである。なにせ3日ぶりのまともな食事だ。
ガマンできずにギョーザに手を伸ばす。うまい!

酢豚を食べ、ピータン粥を平らげ、揚げた鱸の甘酢あんかけを食べつつ、出された琥珀色の飲みものを飲んでみようかな、夢だからいいよね、などと考えていると、ただおさんが話だした。


聞けば、ただおさんはもともとこの濠州の金持ちであったが、元朝の支配力が衰えると反乱を起こし、濠州を支配するようになったという。
しかし濠州1州では元軍が攻めてきた時に、とても敵わない。そこで、名目上、韓林児の支配下に入っていると言う。
韓林児(cv:小神あきら)はこの時代のスーパーアイドルである。
そのカリスマ性で各地で蜂起した元朝への反乱軍を束ねる存在となり、大宋国を建て、小明(こあきら)王と名乗っていた。
しかし韓林児には政治・軍事の才能はなく、実権は宰相の劉福通(cv:白石みのる)が握っていた。
ただおさんは形式上韓林児に臣従し、大宋国の元帥に任命されることで、なんとか濠州の支配を保っていた。

「あなたはとてもお強そうだ。これも何かの縁。私の養女のムコ、つまり私の養子となって私をたすけて頂けないだろうか。」

食うや食わずの生活。それが一転、こんな金持ちの家族になれるなんて、まさに夢のよう。
わたしはただおさんの申し出を二つ返事で了承した。

「ありがとうございます。それでは養女を紹介しましょう。これ鏡や、こちらに来なさい」

現れたのはツインテールの少女。

「これは私の親友だった馬氏の娘で名を鏡といいます。親友は元軍との戦いで亡くなったため、私たち夫婦が育ててまいりました。さぁ鏡や、あいさつなさい」

かがみは真っ赤になりながら、立てた人差し指をわたしにつきつけるようにして、
「お世話になった郭子興ご夫妻のおっしゃることだから結婚するんだからねっ。アンタのことなんか好きじゃないんだから。か勘違いしないでよねっ!」と言った。

「おおっ、時空を越えてもかがみんはツンデレだねっ」

「ツンデレ言うな!てか、これは夢の中だろ。時空なんか越えてないっつーの」

みきさんが微笑みながら、
「ふふふ。仲の良い夫婦になりそうね。私も叶わなかった若いころの恋を思い出すわ。あぁ、かなたさん…」
とつぶやく。

「バルバサ。ミコス」
とつかさもうれしそうだ。

こうしてみんなに祝福され、わたしたちは結婚した。


わたしは義父となったただおさんの部将として、各地の戦いで活躍した。わたしが活躍できたのもかがみの内助の功のお陰だった。
しっかり者の彼女はわたしの部下の妻たちを統率し、軍衣や軍靴のほころびを繕ったり、食糧の乏しい時は、自分の食事を減らしてでも、わたしをお腹いっぱい食べさせてくれた。

「わ、私はダイエット中だから別にいいのよ」
ぐぅー。お腹が鳴る。

「口は強がってても、体は正直なかがみん萌え。はい、あーんして」

「私はいいって言ってるでしょ!アンタこそしっかり食べて、勝ってよね。アンタが負けたらおとうさんが困るんだから」

「かがみん、ありがと」
わたしはかがみを抱きしめる。

「ちょっ、おま、離れなさいよ」
口ではそう言いつつ、かがみはわたしをふりほどこうとしない。

かがみを抱きしめていると、夢の中だからかな。変な気持ちがもくもくと湧いてくる。かがみと夫婦っていう設定なんだし、少しくらいこの変な気持ちに素直になってもいいよね。
「かがみん。好きだよ」
もちろんわたしはノンケ。現実にはこんな感情はあり得ない。あくまでこの夢の中だけ。

「な、何言ってるのよ!私たち女の子どうしじゃない!ば、馬鹿なこと…、…ほ、ほんとに?」
かがみの声がうわずる。

「うん。つかさをたすけて、その後初めて会った時から」

「わ、私もアンタのこと…、そのイヤじゃないというか、その、むしろ、」

「むしろ?」

「……っ、好きよ!大好きよっ!でもアンタはいつもはぐらかしてばかりで…」
ガバチョ!かがみがわたしに抱きつき、そしてのしかかる。
「アンタ最後まで責任とりなさいよぉ。私をこんな気持ちにして…」
そしてかがみは着衣を、

「ちょっ、タンマタンマ!かがみん目がこわいよっ」

「問答無用っ!」


……
………


ゆうべはおたのしみでしたね。


一方で、わたしの活躍を苦々しく見ている人たちがいた。
郭子興の子、郭天叙(cv:柊いのり)と妻の弟、張天祐(cv:柊まつり)である。

「姉さん、私たち悪役みたいよ」

「ふふっ、貧乏くじひいたわねー」

「ほんとに。『新参者のくせに生意気だ』って、かがみ夫婦をイジメなきゃいけないらしいわ」

「じゃあどうしようかしら」

「おとうさんに悪口でも吹き込む?」

2人は郭子興のもとに赴き、ナイコトナイコトわたしの悪口を言った。讒言を真に受けたただおさんは、わたしを捕らえ、牢に入れた。


寒い。ひもじい。食事すら差し入れられない牢の中で、わたしは寒さと空腹を忘れるため、脳内で全日本アヤナミ系萌えナンバーワン選手権を開催し、ノーマル長門と消失長門のツートップを抑えて、寒凪ノエルという意外なダークホースが得票数をのばしていた時、
牢の扉が開いた。

「こなた…」

「やふー。かがみん」

「ごめんね。おとうさんがバカだから。あんなウソ信じて…。迷惑かけてごめんね」

「仕方ないよ。出る杭は打たれるのだよ」

「仕方なくないわよ。お姉ちゃんたち絶対に許さないんだからっ!
いまおかあさんとつかさが一生懸命おとうさんの誤解をといているから。もう少しだけ待ってね。
そうだ、こなた。お腹空いてない?」
そう言うとかがみは、ほれ、と言うように胸をさしだした。

ごはんにする?それとも、あ・た・し?
的なことを想像し、
「いやー、かがみん…。いくらお腹空いててもそれは…」

「何を考えてるっ!そうじゃないわよ。ほらっ」
そう言うとかがみはわたしの手をとり、かがみのふところへとさしこむ。

「いや、だから、ちょ…、熱っ!」
かがみのふところのなかには、熱々の餅が入っていた。うにょーんとのびるほど熱々の餅が。

「早く食べなさいよ。冷めるわよ」

おかげでわたしは寒さと飢えをしのぐことができた。

「さすがかがみん。私のヨメ!」

「誰がアンタのヨメかっ!」
と反射的にツッコんでから
「そうか、今はアンタのヨメだったわね」
と言って顔を赤らめるかがみ。

「でもかがみ、こんな熱い餅じゃ、火傷したんじゃないの?」
心配してわたしが訊ねると、

「そりゃまぁ少しは…、でも平気よ。どうせ夢の中なんだし」

「ありがとね、かがみん」

「いや元はと言えば、うちの家族が悪いんだし…」

わたしとかがみは見つめあい、そして互いに顔を近づけた時、
牢屋番の兵が来て、わたしの釈放を告げた。


「いやぁ、悪かったね」
ただおさんが謝る。

「おとうさん!『悪かった』じゃないわよっ」
とかがみが食ってかかる。

「いや、かがみん。いいのだよ」
とかがみを制し、わたしは決意を込めて言った、
「お義父さん、」
この家を出よう。
今回はわたしが牢に入れられるくらいで済んだが、わたしがここにいる限り、また騒動が起こるだろう。
次はかがみも被害を受けるかもしれない。
かがみを連れて家を出よう。
「わたしを東方へ派遣してください。このまま濠州1州にとどまっていたら、いずれじり貧になります。
東方の江南諸州は豊かな穀倉地帯。それらを切り取って、我が国の勢力を磐石なものにしたいと思います」

「おおそうか!私の為に江南諸州に遠征してくれるか。もちろんいいとも」
ただおさんはうれしそうに許可してくれた。


「アンタ、本気なの?」

「もちろん、かがみん」

「江南は確かに豊かだけれど、その分大小の反乱軍が無数にいるし、それを討伐する強力な元軍がいるのよ。周りは敵だらけじゃない」

「もちろん、わたし独りじゃ無理なのはわかってるよ。でもわたしには仲間がいる。ほらっ」

そこにはゆーちゃんとみなみちゃんが。

「えへ。かがみお義姉さん、こんにちは。李文忠です。私もおねえちゃんの遠征、お手伝いするよ」

「私は、…徐達。ゆたかが行くなら、心配だから…、保健委員の私も、ついていく」

「みなみちゃん」

「ゆたか…」

見つめあったまま動かない2人を見ながら、わたしはかがみに説明する。
「ゆーちゃんは私の姉の子で文武両道に秀でた将軍、みなみちゃんはわたしの幼なじみで、冷静沈着な名将という設定だよ」

「みなみちゃんはアンタのためっていうより、ゆたかちゃんのために遠征に参加するんじゃないか?」

「細かいことは気にしなーい。それでは皆の衆、いざ行かん!江南の地へ」


わたしはかがみ、ゆーちゃん、みなみちゃんの他、20数人の仲間と、わずかな兵を連れ、遠征の途についた。


しかし、江南を征服するにはいかんせん兵力が少なすぎた。
わたしは奇襲や夜襲あるいは脅迫など、ありとあらゆる手段を使って周辺の反乱軍を降伏させ、たちまちのうちに数万人の兵を手に入れた。

しかし兵力の問題は解決したが、今度はその兵を養う食糧が欠乏した。はじめのうちは一般民衆から略奪してしのいだが、このままでは人々の恨みを買うばかりだ。
やむを得ないとは言え、略奪を命令すると、かがみもゆーちゃんもみなみちゃんも悲しそうだ。
いったいどうすれば…。


「ハーイこなた!元気ガアリマセンネ」

「パティ!」

突如現れたのはパトリシア=マーティンだった。

「ノー。今ハ李善長デス。デモサスガニ、ワタシガ中国人ヤルノハ、無理ガアリマスネ…。
ワタシハこなたノ参謀ヲヤルタメ二来マシタ」

「参謀!?じゃあわたしはどうすればいいのか、教えて!」

「マズハ、拠点ヲ築クコトデスネ。大キナ町ヲ支配シテ、ソコヲ中心ニ支配範囲ヲ広ゲ、税制ヲ定メテ略奪ヲヤメ、税ヲ徴収シテ兵ヲ養ウノデス」

「大きな町?」

「ソウデスネ、ココカラ南二太平トイウ町ガアリマス。マズハソコヲ占領シマショウ。
サラニハ、ソノ東北二金陵トイウ大都会ガアリマス。現在ノ南京デス。ココヲ都ニスレバ、bestデス!」

「おおっ、完璧だね!早速そうするよ」


わたしは兵を率いて南下し、一路太平を目指した。その途中…、

「おーい」

現れたのはみさきちだ。

「私は常遇春。今そこで昼寝してたんだけどさ、どこからともなく声が聞こえて、
『起きろ。お前の主君のお通りだ』
って言うから、目を覚ましたら、チビッコが通りがかったんだってヴぁ。
だから家来にしてくれー」

「いいよー」

「よろしく頼むよな」

「こちらこそ」

かがみが口を開く。
「日下部はこなたと同じで運動神経いいから、戦いでは頼りになりそうね」

「おぉ?ひーらぎも居たのかぁ。ひーらぎは何の役なわけ?」

「わ、私は…、そ、その、」
かがみは真っ赤になる。

「その?」

「こっ、こなたのヨメよっ!」

それを聞いて、みさきちは泣く。
「みゅー。夢の中までひーらぎをチビッコに取られちまうのかぁ」
しかし峰岸さんがいないため、誰もみさきちを慰めなかった。


「あれ、みさちゃんが泣いてる気がする」
峰岸さんは太平の町に居た。太平の町を守備する元軍の将、康茂才として。

わたしの軍が太平の町に着くと、峰岸さんは出撃してきた。
敵は強力だった。
今までの敵は自分たちと同じ元王朝への反乱軍であり、その実態は食うに困った農民たちの烏合の衆である。だから簡単に撃破できた。
しかし、峰岸さんの率いる元軍はよく訓練されており、全く隙がない。また峰岸さんの指揮は的確を極め、自軍の損害は拡大するばかりだ。

「このまま太平を落とせなければ、もとの略奪集団に逆戻りだ…」
わたしは焦る。

その時、1人の人間が疾風のように最前線へ駆けてゆく。

みさきちだ。

「ヴぁ!」
みさきちが武器を一旋するたび、数十人の敵兵がふっとぶ。

「すごいね。みさきち無双だねっ!」

たちまちのうちに数百人の兵を失い、敵の鉄壁の守りは崩れた。
これ以上支えきれないと見るや、峰岸さんは太平を放棄し、金陵へと退却した。


わたしは軍を率いて太平の町に入った。人々は怯えた目でわたしたちを見る。
事前にわたしは全軍に略奪禁止を通達しておいた。わたしたちは生まれ変わらなければならない。
しかし、1人の兵士が民家に押し入り、略奪を開始しようとした。それが我が軍では当たり前のことだったから。略奪禁止命令も形だけだと思ったのだろう。
わたしは即座にその兵士を捕らえ、処刑した。わたしの本気が伝わり、町の人々も安心したようだ。


「かがみ。わたしはやっと気づいたよ。
わたしは軍隊を持っている。わたしはその力で人々を苦しめていた。
でも、それじゃいけないんだって。人々が楽しく暮らしていけるようにその力を使わなきゃいけないんだって。
今まで悲しい思いをさせてごめんね、かがみ」

「こなた…」

わたしたちは見つめあい、そして顔を近づける。


その時、
「おねえちゃーん、大変だよー。きゃっ。ああああああの、ごめんなさい」
とゆーちゃんが入ってきた。真っ赤になってうつむく。

「あ、いーよー。気にしないで」

「そ、そうよっ。ちょっとこなたの顔にゴミがついてたから、取ろうとしてただけよ」

「で、どったのー?」
わたしがゆーちゃんに訊ねると、

「えと、あの…、
郭子興さんが亡くなったそうです。ご病気で」

「え、おとうさんが!」

「かがみ…」

「べ、別に平気よ。夢の中の出来事なんだし。目が覚めれば、また会えるんだから。
それより、こなた。
これでアンタに命令できる人間は誰もいなくなったわ。
アンタは自分の思う通り、理想を実現しなさい」

「うん…。ありがとう、かがみん」

「じゃあ私先に寝るわ。いろいろあって疲れちゃった。
今日はちょっと、独りにしてくれるかな…」

「うん…。おやすみかがみん」

「おやすみこなた、ゆたかちゃん」
寝室に入るかがみの肩は小刻みに震えていた。


太平を攻略したわたしたちは、次の攻略目標を金陵に定めた。
しかし金陵は江南の最重要都市であり、元軍はここに50万人の兵を集め、守備を固めていた。しかも守将は太平でわたしたちを苦しめた峰岸さんだった。
容易なことでは勝てそうにない。


「朗報デース!」

「どったの?パティ」

「今金陵ニハ元軍ガイマセン。ガラ空キデス」

「えっ、ほんとにっ?なんで?」
パティの説明によれば、わたしの勢力拡大を良く思わない郭天叙(柊いのり)と張天佑(柊まつり)とが、抜け駆けして、先に金陵を攻撃したのだという。

その迎撃のため、峰岸あやのは金陵を出たらしい。

金陵を攻撃するのは今しかない。
わたしは全軍に出撃を命令した。


一方、郭天叙と張天佑は元軍がてぐすねひいて待ち受けている所へ自ら飛び込んでいくこととなり、大敗し、2人とも戦死した。

「こんな最期かよ。姉さん、私たちいいとこなしだったわね」

「次回作に期待しましょ」

「そんなのあるのかなぁ」


わたしたちは金陵を急襲し、わずか1日で落とした。

帰る場所を失った峰岸さんは、わたしたちに降伏した。
縄をかけられ、わたしたちの前に連れて来られる峰岸さん。

「みゅー。なぁチビッコ。あやのを助けてやってくれよー」

「もちろんだよ、みさきち。
峰岸さんがわたしたちを苦しめたのは、立場上仕方ないことだもんね。
今後はその力、わたしたちのために使ってくれないかな、峰岸さん?」
私は峰岸さんに近づき、縄をほどきながら言った。

「ええ、私でできることなら」

「峰岸がいないと日下部をフォローできるやつがいないのよねー」
と言うとかがみはやや真面目な顔になって、峰岸さんに、
「こなたのために力になってやってください」
と頭を下げた。

「柊ちゃん、わかったわ。任せてね」

「これで一件落着だってヴぁ」
みさきちは跳びはねて喜んだ。


こうして、金陵を首都として、わたしたちは江南地方を支配することになった。

そんなある日、パティが、
「江南地方ニハ2人の賢者ガイマス。
天下ヲ取ルタメニハ、コノ2人ノチカラガ是非トモ必要デスネ」
と言った。

「賢者かぁ。確かにパーティーに賢者は欠かせないよね。僧侶と魔法使いどちらの呪文も覚えるというのがなんとも。
2人もいれば、1人がピオリム、もう1人がドラゴラムで、はぐれメタル狩りまくれるし」

「なんだぁ?またゲームの話か。」

「いやいやかがみん。
賢者が2人いれば、はやぶさドラゴラムでしんりゅう戦がかなり楽になるのだよ」

「全っ然わからん」

「じゃパティ、早速その2人連れてきて!」

「アイアイサー!」

パティが出ていったあと、かがみが口を開く。
「まぁ、出てきてないメンバー考えると、その2人が誰か、だいたい想像つくけどね」

「そだねー」


数日後、パティが連れてきたのは、案の定、みゆきさんとひよりんだった。

「あの、劉基と申します。私が賢者というのはおこがましいのですが」
みゆきさんの眼鏡がキラリと光を反射し、表情が読み取れなくなる。
「泉さんのために微力を尽くさせていただきます」

「あー、宋濂ッス。『そうれん』って、漢字変換できて良かったッス。
主に薄い本ですが、文章書いたりするのが得意ッス。よろしくッス」

「みゆきさん、ひよりん、こちらこそよろしくー」
見ると、ひよりんがわたしとかがみを見て震えている。
「どしたの?ひよりん」

「感動してるッス…。感動してるッス!今私の目の前にホンモノの百合カップルが!
お2人の伝記は、私が書かせて頂くッス!」

「あー…、できるだけ事実に即して書いてね…」

2人が退室したあと、わたしはかがみに
「いやー、あれはみゆきさんじゃないね」
と率直な感想を述べた。

「何言ってるのよ。どっからどう見ても、みゆきじゃない」

「いやいや。あれは『腹黒癒し系』とでもいうのかな、ちょっとみゆきさんとは違うような」

「だからアンタの話は全然わからん」

わたしの予感は的中した。みゆきさんはこの後、そのキャラからは想像もつかない様々な権謀術数をはりめぐらし、わたしのライバルを次々と陥れながら、私の天下取りに貢献してくれたのである。



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