イメージファイト

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最終平和兵器、僕らは、もう、引き返せない。


破滅的な戦いに赴くジョン・フォード、最後の戦闘機ブラックフライが宇宙へ飛ぶ。
古い古いシューティング・ゲーム。

僕らは、もう、引き返せない。

遥か遠い昔のキャッチコピー、ジョン・フォードはたった一人で宇宙へ向かった。私、泉こなたは別に宇宙に行く気はないし、宇宙人にも未来人にも超能力者にも出会わなかった。

でも、何かが変わった。

だから宇宙で孤独に死んで二万機のブラックフライを決起させなくても、引き返せない事はある、なんてね。
いつもの教室。
かがみの姿はない。
かがみのいない教室。
私は自重しないオタク話をみんなに向けて話している。
「いや、僕達は、待っていたんだ、というのはガンフロンティアのオープニングであってバトルガレッガじゃないんだけど、どうしてそういう勘違いをしたかと言うと、バトルガレッガの製作者は、ガンフロンティアみたいなゲームを作りたかった、とか言ってて、雰囲気が似てたからなんだよね」
みゆきさんがにっこりと笑う。
「バトルガレッガは1996年ぐらいのゲームですから、泉さん生まれていますしね。でもそんなミスのフォローより、私の名前が宝良になってたフォローはないんでしょうか、そうです、私が高良みゆきです」
ガンフロンティアは1991年のゲームだ。古い古い昔の話。
マニアックな会話をしながら、私はかがみが来るのを待っている。
隣のクラスから頻繁にやってくるかがみを待つのが、私は楽しくなってしまっているのだ。

現実の友達。

私は今まで他人と深く関わらなかったし、関わりたいとも思わなかった。
それに、かがみほど私に踏み込んでくる友達もいなかったし、かがみほど、関わりたいと思える相手もいなかった。
それって、真面目に考えるとなんだかくすぐったいし、恥ずかしい話だよね、心からの友情とか、そういう奴?
かがみがいるから毎日楽しいとか、恥ずかしいよ。でも。

僕らは、もう、引き返せない。

全く、困ったものだ。出会った時に大きく踏み込まれて、私達は好き勝手言い合い、それで壁が無くなってしまった。
ATフィールドは心の壁、かがみだけがフィールドを中和できるエヴァ、なんて。
「かがみ、遅いね」
口にしてから、しまった、と思う。
朝、つかさからかがみが風邪だと聞いていたのに、かがみの事を口走ってしまった。
これだとまるで、かがみを今か今かと待っていたみたいじゃないか。
まあ、実際に、待っていたんだけど。そんな自分が恥ずかしい。
でもつかさはそんな私の葛藤には気付かず、のんびりと言うのだった。
「あ、お姉ちゃん、今日は風邪で休んでるよ」
僕らはもう、引き返せない。
私は、今まで誰が相手でもしなかった事をしようと思っていた。



『イメージファイト』



お見舞い。

1 病人や災難にあった人などを訪れて慰めたり、書面などで安否をたずねたりすること。また、その手紙や贈り物。「病人の―に行く」「暑中―」「火事―」「陣中―」
2 見回ること。巡視。巡回。
3 訪ねること。訪問。

うむ、かがみは風邪なので、正解は1番。
そう、私は、かがみをお見舞いに行こうと思っているのです。
これは自分的には凄い事で、私は今まで、誰かの家に行ってお見舞いをした事などなかったのだ。
そもそも友達の家に遊びに行くことさえ、人生で数えるくらいしかない。しかもそれは未だに人間の悪を知らない無邪気で純粋だった、遥か遠い小学生の頃の話だ。
それでも、かがみの家にだけはどうしてもお見舞いに行きたい、と思った。
かがみだけ何故そんな特別扱いなのかといえば、やっぱりこう、一緒にいて楽しいとか、お見舞いしても許してくれそうとか、たぶん、そういうこと。たぶん。
人間、変われば変わる。
かがみのいない教室は寂しくて、がらんとして見える。
若干、調子が狂うというか、昔はこれが普通だったのに、とも思うけど……今は、かがみがいないと寂しいんだ。
だからどうしても、かがみの顔を見に行かねばなるまい、かがみ分の補給、これは、最優先事項だよ。
「あ、つかさ、かがみのお見舞いさせてよ」
「え? うん、いいよー、お姉ちゃん、きっと喜ぶね」
こんな時でも委員会とかではぶられてしまうみゆきさんは悲しい存在だよね……。
ともかく、私は帰りに、かがみの家に寄ることにした。



変に見舞い品を買ったりするのはガラじゃないし、何を買っていいかもわからないので手ぶらで行く。
学生なんだから、それでいいよね、たぶん。
つかさと一緒に歩きながら、私は柊家に向かう。
ちなみに柊家は神社の家系で、かがみやつかさはリアル巫女なのだ。恐ろしいほど萌え要素な双子だよ、双子ってだけで若干萌え要素なのに、フタコイ・オルタナティブ!
「あ、こなちゃんが貸してくれた漫画読んだよー」
ほわほわ、とつかさが言う。
「あー、爆笑だったでしょ?」
「私、泣いちゃったー……あれ?」
つかさは、若干ずれている気がする。
それとも、私がずれているのだろうか。真実は不明だ。つかさは言う。
「それでさー、主人公の人が、ヒロインを行方知れずの妹かも知れない、と思って、立ち去りながら、『まさかな』って笑うシーンあったじゃない?」
「おおー、あれは格好よいシーンだったね。父親不明の主人公が宿敵に『お前は、俺が父親だと疑ったことはないのか』って聞かれて『考えたこともねえよ』って答えた後だから余計に格好よかったね」
私達はたわいない話をしながら歩く。車道を通り過ぎていく車達、昼下がりの明るい町、雑踏を歩く人々は急ぎ足だ。
「風邪って、心細くなっちゃうよね」
つかさが不意に言った言葉に、私は自分の事を考える。
父が家にいないと、私は一人になる。母は物心ついた時にはいなかった。そして風邪引きの時に父がいないと、私は心細かったろうか。それとも、学校を休める自由を謳歌していたろうか。どう考えても私は後者の人間だったが、それが逆に寂しくもあった。
「そうかな、私、割りと平気だけど」
「えー、こなちゃん凄いねー」
凄くはない、単に可愛げがないな、と自分のことを思う。
「そっかなあ、学校休めて、ゲームし放題だもん、風邪」
「いや、体休めなきゃ駄目だよ!?」
つかさのもっともな突っ込みを受けながら、私達は通学路を歩いていく。


柊家にお邪魔する。
かがみの母親は石仮面でも被ってしまったのか、もしくは石仮面の漫画を書いた作者と同じ特殊能力なのか、全く年をとっていないように見えた。
柊みき、恐るべし。人妻や熟女萌えの人々はイチコロだろう。
「かがみー、こなたちゃん来てくれたわよー」
「あ、いや、寝てたら悪いんで、いいですよ」
そう言って、私はかがみの部屋へと入っていく。
何だかドキドキした。
扉を開ける。
予想外に可愛い感じの内装だが、整理整頓が行き届いている部屋だ。かがみらしい、きっちりした感じの部屋。
そしてその部屋の端のベッドでは、我等が姫さまが眠っているという訳だ。
聞こえる、かすかな寝息。
私はそっと近づき、様子を窺った。
息を飲む。
かがみの、伏せられた目の長い睫が震える。
覗き込んだかがみの寝顔。
熱で上気した頬の少女らしい丸み、生まれたてみたいに柔らかそうなそれ。
小さな、愛らしい感じのする顎のライン、いつもと違い束ねられていない髪が広がってかかり、それはやけに艶っぽい。
すっと通った鼻筋に、小さな唇、私にはその微かに息を吐く唇が妙に艶かしく、そこから覗く赤い口内と舌から、目を離せない。
ずっと、見ていたい気持ちになる。
いや、見ているだけじゃない、私は……。
かがみの寝顔は、私の心の中の何かを開く。
今までずっと閉じていて、開けられたことのなかった、何か。
不意にかがみが目を開けようとして、徐々に瞼が開いていく。
その光景は私は心奪われ、それは何か一つの芸術作品のようにさえ思えた。
まるで、ヴィーナスの誕生みたい、とか。
しかし残念なことに、それをゆっくり観賞している場合ではない。変に思われるから。
私は言った。
「へー、かがみって、以外に可愛い寝顔してんだ」
からかうようにそう言うと、かがみはガバっと起き上がって顔を真っ赤にして言った。
「なんだよ!なにしにきたんだよ!帰れよ!」
いつもの元気なかがみに私は安心する。
「おー。おきたおきた」
今おもうと、写メとか撮れたら良かったなあ。
それはともかく私は、怒るかがみの部屋に来た事情を説明した。
かがみの顔が赤くなる。
「え、お見舞い、あんたが? 私のためにわざわざ?」
何だか、照れているようにも見えて、とても可愛い。
「そうだよ?」
「で、でもうつしたら悪いしさ、気持ちだけ貰うわよ」
まただ。
かがみの顔を見ていると、何だか、胸が締め付けられる。
顔が赤くなりそうだ。
私はかがみから顔を背けるために、かがみの勉強机からノートを探した。
「ほら、この前でた宿題とか見せてもらいたいし、あと、いい寝顔みせてもらったし、気にしなくていいって」
「帰れ」
かがみに叱られて、ちゃんと落ちがつく。
そうそう、こういう関係でいいんだ。
あれ? 
でも今、私はどういう関係でありうる、と思ったのだろう? こういう関係でいいなら、よくない関係ってなんだろう? 
いや。
まあいい、考えない方がいい。
そう思い、私がふとかがみの本棚を見ると、つかさと話していた漫画があるのに気づいた。
「あ、これ」
かがみが私の視線に気付く。
「あー、つかさから借りたの。又貸しみたいになってごめん」
「いや、いいけど、どうだった?」
「そうねえ、主人公がヒロインに『まるで私達、兄妹みたいですね』って言われて、『まさかな』って答えるところが、結構印象的だったなあ。今まであんまりそんな素振り見せなかったけど、あそこで、まさか、って言うってことは、主人公はヒロインのこと、好きだって初めて意識したのかなあ、とか」
「おー、乙女な解釈だねえ」
「何をう?! やっぱ帰れ!」
私は怒られながら、かがみの部屋を出ることにする。
「そんじゃかがみ、早く元気になってね……待ってるから」
思わず、妙に感情が篭ってしまった。
待ってるから、の響きが妙に重くて、恥ずかしくなる。本当に私は、かがみを待っているのだと分かってしまいそうで。
でもそんな私にかがみは……
「ありがとう」
と言って、微笑んだ。
私は何故か、胸を貫かれた気がした。


「あ、こなちゃん、お見舞い終わったー?」
「うん」
「それじゃあ、お菓子作るから食べてって……」
「いや、今日は帰る」
「え? そう、じゃあ、また今度ね」
つかさが微笑んでいる。
私は上の空で。
何だか、変だ。
にやにやするような、どきどきするような。
レアアイテムを手に入れた時だって、こんな気分になった事はない。
じっとしていられないような、床を転がりまわりたいような、変な、感じ。
「またね」
私は、急いで柊家を出た。
走り出したい気持ちだった。
飛び上がりたい気持ちだった。
私は走り出す、全力疾走して、息が切れるまでまっすぐ走って、途中でスキップして、叫びだしたいような気持ちになる。
なんだよ、なんなんだよ、これ。

僕らは、もう、引き返せない。

私は不意に柊家の方向を振り返る。
こっちの方向にかがみが居て、まだあのベッドの上に居る、そう思うと、ずっとこの方角を見ていたくなる。
不意に思い出す、漫画の一場面。
『まるで私達、兄妹みたいですね』
私はかがみの方角から背を向け、ふっ、と笑った。

「まさか、な……」

私はそのまま、自分の家まで歩いていく。

そんな、春の出来事。


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コメント:
  • GJ!
    続きを期待しています^^ -- 七氏 (2010-01-13 00:50:30)
  • 「バトルガレッガ」から貴方のSSを拝見しております
    STGシリーズが長く続くことを願っております
    次のタイトル、銀銃辺り如何ですk



    -- 名無しさん (2010-01-11 17:37:34)
  • 本編に忠実に尚且つ「かがこな」要素を十分満喫できる良作ですよ~。
    できればこの物語はずっと続いてほしいです。GJ
    -- kk (2010-01-11 00:10:00)


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