こんなに好きなのに (2)

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 あの日、抱き合ってキスしたのに、その事は幻みたいに私たちの話題には上らなかった。
 触れてはならない禁忌のように。
 やがて文化祭のチアダンスも終わり、やっぱり私たちはただの友達だった。


 チアダンスが終わった興奮の中で「かがみは最高の親友だよ!」といって見せたこなたの笑顔に、かすかな寂しさを感じて、私は動揺した。
 最高の親友じゃ、私は、物足りない……?
 自分は何故、寂しいのか。
 まるで私の中でこなたが、『友達』の範囲を超えている、みたいな……。

 文化祭の興奮と達成感の中で、私達は強く強く一体感で結ばれている気がする。
 だからこそ、もうすぐそこまで来ている卒業を意識しないではいられなくて。
 喝采を浴びた舞台の袖で、薄暗い照明の影でこなたと小声で話していると、その秘密めいたくすぐったい雰囲気と、祭りの高揚と達成感、
 そんな様々な感情がない交ぜになって、私は泣きそうになる。
 「かがみ、どしたの? 感激しちゃった?」
 「う、うるさいわね! そんなわけないでしょ!」
 「あれほどチアダンス嫌がってたのに、やってみたらノリノリになるんだから、かがみんはカワユスなあ」
 「別に、そんな事ないっての!」
 万雷の拍手も、もう遠い。
 私達はチア服を脱いで、日常に帰らなきゃならない。
 でも。
 まだもう少し、もう少しだけ……。
 自然と、私はこなたの手を握っていた。あふれ出す感情を抑えきれないみたいに。
 「かがみ?」
 本当の気持ちが、上手く言葉に出来ない。  
 「こなた……!」
 不意に、こなたが私の家に泊まった夜の事を思い出す。
 あのとき、重ねた唇は幻だったの?
 違うのなら、今も、私は。
 私の気持ちは。
 こなたの眼を覗き込む。大きくて、どこまでも深い、こなたの瞳。
 見つめ続けると、こなたはふっと目をそらした。
 そして、握った手を、振り解かれる。
 「あ……」
 温もりが消えていく。
 「戻ろ、かがみ、いつまでもこんな服のままじゃね。それともかがみ、この服気に入っちゃった?」
 「そんな訳あるか!」
 いつもみたいなやりとり。
 だけど心の中はざわめいていた。
 こなたに、拒絶されたみたいに思えて。


 時は過ぎる。避けようもなく。
 いつもの教室。
 文化祭も終わって、厳しい冬がやってくる。気温も、受験という現象も含めて、私にとって厳しい冬だ。
 もう大きなイベントはないし、卒業まで一直線、未来とか、将来って言葉には、いつも不安が付き纏って。
 十年後、私は何をしてるだろう?
 その時、こなたは傍にいるだろうか?
 冬になっても、こなたはいつものこなただった。のほほんとゲームしたりアニメみたりな毎日だ。
 さすがに心配になる。
 「こなた、あんたちゃんと、受験勉強とかしてんの?」
 「ふっふっふっ、かがみん、私は悟ったのだよ。無理して背伸びした大学に行くより、自分の身の丈にあった大学に行くべきだ、と!」
 「はいはい、要は勉強したくないわけね」
 法学部を目指す私と、こなたが同じ大学になることは、どうやら無さそうだ。
 「そんな適当に選んで、後悔しても知らないわよ? 将来どうする気よ?」
 「んー」
 私の言葉に、こなたは感情の読み取りづらい表情で首を傾げた。なんだかそういう仕草や様子が、幼児めいて見えて愛らしい。
 「実は、あんまり考えてないんだよねー。大学行きながら考える、という事で」
 「ちょっとー、ほんと、心配な奴だよな、お前は」
 私がそういうと、こなたが、にへり、という感じで笑った。何よ一体?
 「かがみ、しっかりしてるよね。法学部に行きたいとか、将来のヴィジョンがちゃんとあって、そのための努力もしてる。
  そういうとこ、ほんと凄いと思うよ」
 「な、何よいきなり」
 「私は適当だからさー、結構、不安に思う事もあるのだよー。かがみがしっかりしてるのを見ると、私も頑張ろう、って思うよ。
  それに、かがみが心配してくれるの、嬉しいよ!」
 「そ、そんな褒めても、何も出ないわよ」
 変な感じだった。
 こんなストレートにこなたが私を褒めるのとか、珍しい気がする。
 「卒業も近いし、親友への餞の言葉だよー」
 親友……。
 放課後の教室に人気は少なく、私とこなたは二人でみゆきとつかさの帰りを待っている。
 もうすぐ離れ離れになる私達は不器用で、上手く本心を伝え合う事が出来ない。
 「ねえ、こなた……」
 本当は、こなたは、私のことどう思ってるの?
 友達?
 それとも……。 
 「かがみには何でも話せるね」
 とこなたが笑う。
 親友だよ、って笑顔。
 その笑顔は、あの夜重ねた唇を忘れようとしているみたいに見えて。
 こなたは、本当に私のこと、『友達』なの?
 それで高校生活が終わったら、こなたと私は、離れ離れになっちゃうの?
 私は答えを聞くのが怖くて、こなたに伝える事が出来ない。
 自分の想い。
 私たちは、親しくなりすぎた。
 今ある関係を壊すのをどうしようもなく恐れるくらいに。
 つかさとみゆきがお手洗いから帰ってきて、私達は口を噤む。
 こなたの表情からは、何を考えているのか、私は読み取れなかった。
 私は一人、こなたと私の関係について考えていた。
 まるで、迷路に迷い込んだみたいに。





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コメント:
  • らき☆すたがもっと好きになりました。いつもありがとう。 -- 名無しさん (2010-07-11 19:51:07)
  • 続キボンヌ!! -- 名無しさん (2009-12-30 01:26:08)
  • うわーっ!すんごく続きが気になる・・・って、続きますよね作者様ーっ!! -- kk (2009-12-28 23:44:39)


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