『Especially for you』

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『Especially for you』

11月のとある休日。
私、柊かがみはラノベを読んだり、時折お菓子に手を出したりと自室でゆっくり
すごしていた。
(ごろごろして食べていると太るよ~と聞きなれたふにゃっとした声が聞こえた気がしたが、
気のせいだろう・・・多分。)
しばらくして、私の携帯にこなたから着信があったが、
その場で電話に出ることが出来なかった為、改めて掛け直した。

「おーす、こな・・」
「(出来る限り低い声で)はい、こちらキッチン金子クリーニング。」
「もしもし?」
「出前ですか?クリーニングですか?」
「いや・・、どっちでもないんだが。」
「あー困るんですよね。今忙しいから(と言って切ろうとする)。」
「ちょっと待て。今何処繋がった?」
「(普段の緊張感の無い声で)キッチン金子クリーニング。」
「なにそれ!洋食屋なのか?クリーニング屋なのか?
ミートソース、ワイシャツに付きそうな店じゃない!
・・・・って、今うまいこと言ってるんですよって顔したろ。」
「おおう、よくわかったねかがみん。さすが私の嫁。」
「嫁じゃねえ!!」

「で、何の用なの?」
「かがみさ、明々後日暇?」
「んー、特に予定ないけど・・でも平日じゃない、どこに行くのよ。」
「浅草の酉の市。」
「ああ熊手等の縁起物を売る市が開かれる日ね。ってうちの神社でも開いているわよ。」
「知ってるよ。地下鉄の広告で見かけたんだけどさ。交通もそう不便でないし。
結構にぎわっているみたいなんだ。しかも開催時間が0時から24時!!
なところが気になってね。」
「うそ!ホント長いわね・・・。」
「それとかがみんちの神社にも関係する内容だから興味あるかなと思ってね~。
・・・明々後日来てくれるかな!!」
「いいとも!!いうのを期待しているのかオマエは?」
「(ニマニマして)しょうがないなと呆れつつも、
とりあえず全力でネタに乗ってくれるかがみ萌え~。」
「うるさい・・・。昼は大学があるから駄目だけど、夜ならいいわよ。」
「やたー。さすがかがみん付き合い良い。それじゃ明後日、
日々谷線の入矢駅で午後6:30に待ち合わせだよ。
この時間なら比較的すいてるからね~。」
「入矢?浅草でなくて?」
「うん最寄りの駅は浅草じゃなくて、入矢なんだ。そっちの方が乗り換えが少なく、
交通の便も良いしね。」
「そうね。分かったわ。それじゃまたね。」
「うん。またね。」

そう言って、こなたとの電話を切った。
まったく、相変わらず唐突な奴だな。
本当に手に負えないわ、ありゃ。
でも誘われてそう悪い気もしないし、その日は特に予定もない。
まあ、明々後日付き合ってあげますか。

そう思いながら部屋の窓から外を眺めていると、
『ホントかがみんはツンデレなんだから~。』
などと言っている、調子いいあいつのあの笑顔が、
青空の中に映っている気がした。


こなたからの電話から三日後、私は日々谷線の入矢駅に来ていた。

「おーす、こなた。」
「やふー。かがみん。」
「あんたが待ち合わせ時間にちゃんと来るなんて珍しいわね。
明日は雨かしら?」
「私から誘ったんだしね、ちゃんと時間通りに来て当然だよ。」
「うむうむ。良い傾向である。」

こなたと合流し、入矢駅から浅草・千束の鷹(おおとり)神社へと向かっていった。

「ところでこなた、もしかしてうちの鷹宮神社の『鷹宮』の字から『宮』を抜くと
『鷹』となるところから関係があると思って私を誘ったの?」
「うん・・、まあそんなところだね~。」
「うちの神社『お酉様の本社』と言われていてね。つまり関東の酉の市の元締めみたいなものだから、
あんたの推測は間違いじゃないわよ。」
「へーそうなんだ。かがみんちの神社すごいところだったんだね。
今まで何も考えずかがみ達の巫女服姿目当てで来ていたよ。反省反省。」
「何も考えずはまだしも、巫女服目当てであるとはっきり言うのはどうかと思うわよ。
少しは文化の根本を見ないかオマエ・・・。」

こんなぐだぐだな会話をしつつ、ちょっとした商店街を通り、国際通りへと出て
目当ての神社へと向かっていった。


「ゆっくり押しあわず、お進みください。」

スピーカー越しにおまわりさんのこんな声が聞こえる、人ごみの前に私は立っている。
なんていうか、となりにいるチビすけに夏と冬に連れて行かれたコミケを
連想させる程の人の多さに少々驚きおののいている。
たしか、『この時間なら比較的すいているから。』なんて言っていなかったか?こいつ。
・・・相変わらず、天気予報よりも嘘つきであてにならないやつだ。
などと考えていたら、ここに誘った張本人が口を開いた。

「いや~、この時間帯が酉の市の情緒を満喫するのには一番ピッタリだね~。
人もたくさん集まっていて、活気があっていいね~。」
「なあこなた。確かこの時間は比較的すいているからとか言ってなかったか?」
「あ~うん。言ってたっけな。まあここにいるのも何だし、早くお参り済まして、
他回ってゆこうよ。」
「あっ、ちょ、こなた。(人垣に押しつぶされ)きつっ。待ってよ。
あんた程小回り効かないんだから。・・・痛っ、賽銭当たった。」

こなたに無理やり手を引かれ、かなり込み合いかつ賽銭が飛び交う人ごみの中を
をどうにかくぐり抜けていった。そして社前まで辿り着き、無事お祈り
を済ませたのであった。

「もうかがみん。フードの中にお賽銭なんて・・・食欲どころか金銭欲まで強く
なっちゃって。将来どんな弁護士になってしまうんだか、私は心配だよ。」
「フードの中に入ったのは、頭に当たったのが跳ね返ってきたからよ。
それと将来については、私よりもあんたの方がすごく心配だ。」
「食と金にいやしい、日本の汚いツンデレ(液晶TVアクオスのCMの吉永小百合風に)。」
「うるさい。日本の美しい液晶みたいに言うな。」
「とにかくお参りも済んだことだし、熊手の店や他の出店とか巡って行かない。
今、基本晩御飯の時間だし、かがみ様の底なし胃袋もそろそろ辛抱たまらなそうだしね。」

ぐぅ~と私の底なし胃ぶ・・もといお腹が鳴る。

「ほら、晩御飯って言葉にすぐ反応だ。」
「(顔を赤らめて)うっ、あっ、う・・。と、とにかく回ってゆきましょ。」
「あ~い。おっいきなり手を握ってくるなんて結構大胆だね~。(ニマニマ)」
「るさい。迷子にならない為よ。あんたちっこいから、ものほんの迷子に見られそうだし。」
「ひどっ(軽くショックを受け)。やっぱ最近かがみ遠慮なく失礼になったんじゃない?」

図星を突かれた私は、むりやりこなたの手をひったくり、酉の市を回り始めた。

鷹神社やその隣の長国寺にびっしりと掛けられた提灯が、こうこうと境内を照らし、
金銀細工の縁起熊手がきらきらと輝きを増し、それに加え市の明るさと周囲の夜
の暗さによるコントラストから、市そのものの華やかさが一層全面に出ていた。
そして、熊手を「買った買った」と売り込む掛け声や商談成立時の「いよ~っ」
から始まる三本締めが、市自体の活気や賑わいに拍車をかけ、江戸情緒と言える
風囲気を感じることができた。
・・・・まあ、かなりの人ごみで揉みくちゃになり苦しかったという印象が強かったが。

人ごみの中をどうにか進み、こなたが休憩がてらどうしてもと言うので、
テーブルと椅子が併設された屋台の居酒屋に入っていった。

「こういう催しモノでは、やっぱ屋台の居酒屋は外せないよね~。かがみん。」
「(呆れつつ)たしかにそれは認めるが、女2人で入るところではないな。
(悪戯そうな笑顔で)それとあんた、見た目小学生だから一人で酒買えなかったじゃない。」
「ぐ・・・。とにかく買えたのだからいいのだよ。まずは飲も。」
「はいはい。じゃ、かんぱ~い。」

「ぷは~。最初の一杯はやっぱ最高だね~。」
「なんていうか。中身のおっさん化がどんどん進んでいっているわね。」
「こういうところでの酒はまた格別なのだよ、かがみん。
酔いどれてもこの辺、東横インとかビジネスホテルがあるから大丈夫だし。」
「何がどう大丈夫なんだ?つーか、そこまで飲むんじゃないぞ。
明日も講義あるんだからそこまで付き合えないし。」
「えー。付き合い悪いよかがみ~ん。東横インまで付き合おうよ。
ちなみにね、今東横インはカップルの初エッチスポットになっていてだね、
部屋の稼働率が上がっているのだよ。だから行こ?」
「だから行かない。ちなみに最後のくだりは何だ?全然関係ないだろ。」

というと、こなたが突然抱きついてきた。

「え、な、な、何だよ。お前何だよ。ちょっと待て。ちょっと離れろよ。
抱きつくな。小声でぶつぶつと『いい匂いがする』ってつぶやくな。(と言って、引きはがす)」
「想像以上やわ。かがみ。」
「想像以上ってなんだよ。どんな想像していたんだよ。」
「だからかがみ今日、私好みのオタ受けする格好しているのか?」
「別に関係ないだろ服装は。」
「ねっホテル行こ、かがみ。おねが~い。」
「お願いじゃない。ていうかホテル行く目的がすり替わっているじゃない。
ちょ、また抱きついてくるな。なんでベルト外そうとするのよ。」
「(抱きつきつつ)あのさ、昼だけでじゃなく、夜も相方になってくれない?かがみ」
「何の交渉し始めているのよ、アンタ。」
「んじゃ、どっちが突っ込みにしようか。」
「(また引きはがして)突っ込みの意味が違うだろ。」
「違うって何が違うのかな~かがみん。かがみんのお口からききたいな~?」
「(赤面して)るさい。お前もう酔っぱらっているのか?いいから、水飲んで一旦落ち着け。」

ホントに言動と行動はセクハラおやじだな、こいつ。
おとなしくしていれば、結構かわいいのに。もったいない。
まあ、今更おとなしいこいつも想像出来やしないが。
正直こんな風に、こなたのペースに巻き込まれているのも悪くない。
時々マジで鬱陶しく思うことがあるが、やっぱり一緒にいて楽しい。

一杯だけ飲んだ後屋台の居酒屋を出て、他の屋台出店を巡っていった。
射的にくじ引き、リンゴ飴、チョコバナナ、タコ焼き、じゃがバター、
チキンステーキ等の鉄板焼き系etc.etc.
こういう屋台出店はいくつになっても何があるか、どれを食べようかワクワクして
見ているだけで楽しい気分になる。
そんな楽しい気分の中、勢いで上記の食べ物系を買い、ホクホク顔でパクついていたところ。
となりにいる射的とくじ引きで手に入れたハズレの品を持ったこなたに、何か言いたげな
ニマニマした顔をされた。

「何よ、こなた。何か言いたそうだけど。」
「かがみも屋台出店を楽しんでいるみたいで、何よりだと考えていたところなのだよ(ニマニマ)。」
「いいじゃない。こんな風に屋台を巡るなんて中々ないし。最近出来る限り
体動かす様にしているから大丈夫よ・・・多分。」
「いやいや、かがみん。祭りだからってそうやって油断していると、
体重計の前で凍りつく思いをするんだよ。そうなっても後の祭りだよ。」
「あのさ、無理にうまく掛けようとした発言をしようと心がけなくてもいいから。」

そんなやりとりをしながら歩いていると、通りかかったスーパーの前でこなたの歩みが止まった。

「おお!!」
「ん、どうしたの。」
「こんなところで、懐かしの連打計測マシン、シュウォッチのガチャポンに出会うとは。さすが下町。」
「また、あんたは・・」
「んじゃ、さっそく(ガチャ、ガチャ)。」

私が呆れている横で、こなたは意気揚々とガチャポンに興じ始めた。

「では、開けてミルコクロコップ。(カパッ)」
「くだらねえよ。」
「高橋名人の冒険島バージョン、ゲット。」
「よかったわね。それじゃ行きましょ。あんたのめり込むと歯止めきかないから。」
「いやいやここはフルコンプでしょ、かがみん。これ私の主な活動場所でもみないし。」
「あっそう・・・」

こんな時私がどう諭しても、こなたの耳に届くことがないことが分かっている。
だから私はこなたの気が済むまで、ガチャポンに興じるのを黙って見ていた。

「あ~。どうしてもハドソンオリジナルカラーバージョンが手に入らないよ~。」

ダブリがちらほら出始め、こなたがそうぼやいていると、
小学生低学年ぐらいの男の子を連れた母子連れが通りかかった。

「お母さん。あのガチャポンやってきていい?」
「ああ、良いわよ。」
「やったー。」

「ねえ、こなた。あの子ガチャポンやりたいみたいだから、譲ってあげなよ。」
「そうだね。はい、いいよ。」
「ありがとう。(ガチャ、ガチャ)わあ、これ欲しかったんだ。」

と男の子はこなたの狙っていた、ハドソンオリジナルカラーバージョンを手に喜んでいた。
でこなたはというと、なんとも言えぬ悲しい表情をしていた。

「よかったわね。お姉ちゃんたちにお礼言いなさい。」
「うん、お姉ちゃん達ありがとう。」
「どういたしまして。」
「(若干うつろな表情で)ドウイタシマシテ。」

お礼を言い、母子は去っていった。
この後もこなたは、カプセルが空になるまでガチャポンを回し続けたが、
目当てのモノを手に入れることが出来なかった。

「あのさ、かがみ。ゆーちゃんがファミコンのコードに足を引っ掛けて、その衝撃で
私のドラクエⅢのセーブデータが消えちゃった時と同様のやるせなさを感じているよ、今。」

うぁ・・・。やっぱりすごく落ち込んでいる。
こなたの趣味に関して、今だによく分からないところがあるが、いつも前向きで明るい
こいつががっかりして暗い表情をしているのは、一緒にいる私もつらい。
だから、こなたが暗い表情をしているとつい慰めたり、フォローをいれたりと世話を焼く。

「あー。でもさ、さっきの子すごく喜んでいたじゃない、ね。そりゃ目当てのものを
手に入れられなかったのは残念だけど、行動としてはよかったわよ。」
「そうだよね。うん。」
「いつまでも、くよくよしない。酔いどれるまでは無理だけど、
まだまだ付き合ってあげるから他行きましょ。」
「ホント?かがみって本当にいい人だよね。」

ぱあ、と表情が明るくなるこなた。やっぱりこなたは明るい表情が似合う。

「それじゃ、行こっか?こなた。」
「うん。」

高校入学時に会ってから一緒に泣いたり笑ったり、時にはケンカし仲直りをして
過ごしている中で、絆を深めてきた。
今はそれぞれ違う大学へ進み直接会うことは少なくなったが、いつも心のすみにこなたがいて、
ふとしたときに『こんな時あいつだったらどんなこと言うだろう、どんなリアクションするだろうか』
『今どうしているのかな』なんて考える。
そして考えるたびに楽しく、優しい気持ちになる。

だからこそこなたとは、これからも一緒に過ごしてゆきたいし、
思い出もたくさん作ってゆきたい。
そう心の中で思いながら、手をつなぎ、二人並んで雑踏の中に歩いていった。



――――――数時間後
「かがみ、そろそろ終電だよ。しっかりして。」
「うーん、こなた。もう歩けない。」
「もう飲みすぎだよ、かがみん。・・って何抱きついてきているの?酒臭いよ。」
「(ろれつが回って無い感じで)さっき『いい匂いする』っていってたじゃない。」
「今はすごく酒臭いから。あっ寝ちゃった。結局、酔いどれるまで付き合ってくれちゃったよ、かがみん。
・・やっぱり泊まるしかないかなホテル・・・」





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  • 続きもキボンヌ。 -- 名無しさん (2009-12-05 03:20:46)
  • 落ち着いた大人のテイスト、味があるSSだった。GJ。 -- お祭りに行く友達がいない名無しさん (2009-12-04 20:15:21)
  • 母子連れを登場させたのがよかった!
    落ちも素敵ぃ
    Especially for you 題名GOOD~
    -- 名無しさん (2009-12-03 16:46:47)
  • あぁ、大学生って感じでなんかいいなぁw -- 名無しさん (2009-12-02 00:37:44)



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