最終話 Daily life

このページを編集する    
「おはよーこなちゃん、お姉ちゃん!」
「おはようございます!お姉ちゃん、かがみ先輩!」
「やぁつかさ、ゆうちゃん、おはよ。ふぇ・・・はっくしゅんっ!」

はぁっと吐く息は白く空に消えていく。耳や頬は冬ならではの冷たさだ。
センターまで、あと1週間。なんだかソワソワする。けど、私はそれとは関係なくフワフワした感覚でいる。

「ホラ、こなたっ!マフラー忘れてるわよ。大事な時期なんだから、気を付けないと!」

全く、と悪態をつきながら私はこなたの首にマフラーをまく。あぅあぅ言いながら巻かれているこなた。
こいつは以外にしっかりしてると思えば、こういうところでだらしない。そこは3年目でも変わらないなぁ。

「ふふっ。かがみ先輩、奥さんみたいですね。」
「あぁ、確かにそうかも。お姉ちゃんとこなちゃん、段々恋人らしくなってきたね。」

・・・妹よ。その純粋で天然な所は長所でもあり、短所でもあるのよ?自覚してくれ。
とかなんとか考えていても、鼓動は早くなる一方。頬も耳も冬なのにぽかぽかだよ。

「な、何朝っぱらから恥ずかしい事言ってんのよ!?ほらさっさと行くわよっ!」
「ぐぇ。か、かがみ・・・マフラーひっぱんないで・・・」
「つかさ先輩?」
「なぁに、ゆたかちゃん?」
「かがみ先輩って可愛いですね。」
「うんそうでしょう?かぁいいよね?」
「外野うるさいわよっ!」

何故朝からこんな恥ずかしい目にあっているのか。それはクリスマスが始まり。
あの日、私とこなたは、所謂恋人同士になった。その証はこなたの右の手首にある。
我ながらちょっと恥ずかしい。でも、幸せ。右手首の紫と青の螺旋を見るだけで胸が温かくなる。
きっとこれがフワフワした気持ちの正体。好きっていうトクベツな感情。

「ふふっ。」
「何?どうしたのかがみ?」

無意識のうちに笑みがこぼれてしまう。全くたるんでるなぁ、私。ちょっとらしくないかな?

「なんでもないわよ。」

冬の青空は眩しくて綺麗だ。肌に触れる空気も澄んでいる。私は一つ深呼吸。

「さ、行きましょ、こなた。」
「うん、かがみ。」
「あ、置いていかないでよお姉ちゃん!」
「待ってくださーい!」

今日も始まる、同居人兼恋人との大切な優しい日。


☆☆☆☆


「・・・ちゅうワケで、ってもう時間やな。ほな今日の授業はここでしまいや。お疲れさん。」

黒井先生の言葉と同時に響き渡るベル。ちなみに私の腹時計も、ぐーっとベルが鳴る。

「おっ、なんだー柊ぃ。腹鳴らしてさ。ま、私もめちゃくちゃ減ってるけど。」
「もし良かったら柊ちゃんも一緒に寄り道でもどう?」
「んー・・・んじゃお言葉に甘えます。ほら日下部も早くしなさいよ。」

八重歯が可愛らしく光る日下部と今日も菩薩のような笑顔の峰岸。
高校3年間、ずっと同じクラスだ。付き合いだけならこなた達よりも長い。
それだけに、この2人には気が許せるし、とても安らげる場所でもある。

「そういえば最近泉ちゃんとどう?」
「そーだそーだ!!付き合い始めてだいたい2週間ぐらいだろ?」

むぐっ、とむせてしまう私。最近こんなんばっかな気がする。なんなんだ。これが付き合い初めの洗礼なのか?
私達が付き合っている事を知っているのはごくわずかの人だけである。
やっぱりどこかで背徳感や知られたくないっていう気持ちがあるのかもしれない。
覚悟はしていた。幸せになる為なら大丈夫、なんでもやる。でもいざとなると、なんとなく切ない。
だからなんの気兼ねもいらずに話せる人達にはとても感謝している。無論、この2人も例外じゃない。

「まぁ、普通なんじゃない?来週センター試験だから遊びにはいけないけどさ。」
「ふーん。って普通じゃ面白くねーだろ。なんかないのかよ?こうさ・・・」
「べ、別に面白くなくてもいいでしょーが!」
「そうね。確かに普通って簡単に見えて難しい事よ、みさちゃん?私はいいと思うよ、普通って事。」

峰岸はふわりと笑っている。特別になっても、普通でいる。今の私にずしりと響く言葉。
特別になったのに。せっかく勝ち取った特別なのに。あまりに普通すぎる『特別な日々』。

「そんなもんかねー。ノロケの一つでも聞かせてくれてもいいのにさ。」
「・・・そのノロケがないから困ってるんじゃない・・・」
「え?」
「なに?」


☆☆☆☆


今までのような普通な毎日が嫌なワケじゃない。むしろ峰岸の言うように普通って大切な事。
それでも、やっぱり夢はみちゃう。手をつないだり、どこか遊びに行ったり、2人だけで過ごしたりしたい。
ワガママなのは分かってる。それでも私はさらなる幸せを求めてしまう。

「なるほどなー。でも別に悩みって程じゃないんじゃね?」
「柊ちゃん、その事泉ちゃんに話したの?」
「うーん・・・ここからが本題というか・・・」
「どいうことだよ?」
「・・・ホントにこなたは、私の事、好きでいてくれてるのかなって。」
「は!?」
「・・・」
「聞けないのよ、怖くて。拒絶されるんじゃないか、ホントは・・・同情で付き合ってるんじゃないかなって。」

こんなに私は弱かった。強くなったつもりだったのに、こなたと肩を並べてるつもりだったのに。
自分が嫌い。こなたを信じてあげられない自分、普通に満足できない自分、強くなれない自分。

「なら、もう一度泣き虫に戻る?柊ちゃん。」
「あ、あやの・・・」
「・・・泣き虫?」
「『前』の柊ちゃんは泣き虫でも、諦めなかった。追いかけて追いかけて、未来を掴んだ。」

泣き虫。追い掛ける。未来。諦めない。そういわれてズキッと痛む胸。
峰岸の目に、雫石が見えた。その姿が強くて、自分にないものを持っているようで。

「本当の強さ、そんなの言葉遊び。大切なのは意志じゃないかな?
犯した過ちを取り戻そうと堅い意志であがく。それが柊ちゃんの力。」

意志。足掻く。そうだ、そうだ。忘れてた。アホだ、私。やっぱりたるんでた。

「それを忘れないで、柊ちゃん。柊ちゃんの力は柊ちゃんにしかないものだから。」
「・・・私、行かなきゃ。こなたの所に、行かなきゃ・・・」
「・・・仕方ねーな。私達の事はいいから早く行けって!」

にかっと笑い、背中を叩かれる。ちょっと痛いけど、逆にそれが嬉しかった。

「ありがと、日下部。ありがとう、峰岸。危なく見失うトコだった。今度、何かおごるね。」
「いってらっしゃい、柊ちゃん。」

校舎から見える夕焼け。朝の眩しさとは違うもの。それを背に私は走る。大好きな、あいつの元へ。

「・・・行っちまったな。」
「大丈夫よ、きっと。『今』は大丈夫。柊ちゃんと、泉ちゃんなら。」


☆☆☆☆


夕暮れ。冬なので暗くなるのが早くなっている。それでも空は紅色に染まり、世界をも染めている。
校門を出たところである後ろ姿を見つけた。その後ろ姿は小さい。青い髪が紅と混じり、ゆらゆらゆれている。

「こなたっ!」
「あ、かがみ。さっきC組覗いたらみさきち達といたからてっきり・・・」
「あれ?つかさとみゆきは?」
「黒井先生に用事があるみたいで、先帰ってて、だってさ。」
「そっか・・・」
「なんか、久しぶりだね、かがみと2人で帰るの。」

ニヤニヤっと笑っているこなた。なんか心を読まれているようで悔しい。
色んな意味で、ドキドキしている私の胸。下手したらミサンガを渡した時よりも。

「そ、そうね。最近は皆で勉強して、その後帰ってたしね。」
「あと1週間でセンター試験か・・・早いね。てかもう卒業だよ!?」
「確かに。あんたと住み始めて3年、か。」

そうだ、あれが始まりだった。ドアを開けたら、こなたがいて。あの日からもう私は惹かれていたんだ。

「色々あったねー。風邪引いて看病して貰ったし。料理の腕も上達したね、かがみん?」

2人で過ごした毎日。笑いあって、ふざけあって。たまに喧嘩したり、怒ったり、泣いたりした。
何も変わらない。今の特別だと思ってる日も、前の日常も、同じ。

「それを言ったら、あんただって。最初は全然つれなかったのに、今じゃこんなんだしねー。」
「こんなんって!失礼なかがみん!」

私は分かってなかった。特別な事なんて何もない。私達はずっと私達。
こなたが、私をどう思ってるかなんて、分からない。でも、私はこなたが、好き。

「あはは、うそうそ。冗談よ。こなたは成長したわ。私が保証する。一番近くにいた私がよ?」
「むぅ。ちょっと照れるじゃないか。・・・ありがと、かがみん!」

こなたの思ってる事、どんな事も受け入れよう。受け入れて、悩んで、足掻いて私は進む。こなたと幸せになる為に。
後悔しないように、させないように、私は進み続けよう。歩き続けよう。これが、私の力。

「ねぇ、こなた?」
「なんだいかがみん?」


☆☆☆☆


「やー、買った買った。久しぶりのゲマズだったから奮発しちゃったよ。おかげでもう7時過ぎちゃったね。」
「ま、でもいいんじゃない?息抜きも必要だし。私もなんだんだで楽しかったし。」

町は夜の闇で覆われている。それでも月と星達が煌めいている。美しく、強く、この世界を照らす。

「ありがと、かがみ。誘ってくれて。」
「あ、いや・・・その・・・」
「実はさ、前々からどこかに行こう、一緒に2人で帰ろうって誘おうと思ってたんだ。」
「え?」
「んー、でもさ・・・なかなか言いだせなくて・・・」

頬っぺたを照れるようにかくこなた。こなたの頬が夜でも分かるぐらい紅潮してる。

「なんと言うか・・・んー、怖かったんだよね。本当に付き合ってるのか、かがみは私の事、本当に好きなのかなって。」

あれ?どこかで聞いたことがあるようなセリフだ。こなたは申し訳なさそうに苦笑いしている。

「でもさ、やっぱ違うよね。私達の関係が変わっても、かがみはかがみ。ずっと一緒にいたかがみ。」

それでも力強い瞳。そして凛とした表情。やっぱりこなたはこなただ。私の大好きなこなた。

「私の大好きなかがみ、だよね。だから私は受け入れられるよ。今までみたいに、ね。だから・・・」

あぁ、そういえば、まだ言ってなかったな。焦りすぎて、テンパっててあの時言えなかった言葉。

「好きだよ、こなた。」
「・・・え?何て?」

特別な日々が、日常へ。これが私達なんだ。2人で見失ってた普通。でも、もう大丈夫だよね。

「は、恥ずかしいんだから、あと1回しか言わないからねっ!」
「・・・うん、聞き逃さないよ、かがみん?」

うーん、余裕な表情がちょっと悔しい。やっぱりこんな感じが、私達にはお似合いなんだ。

「・・・大好き、だよ。」
「私もだよ、かがみ。」

大切で、かけがえのない、この普通。2人でなら守れる。ううん、守ってみせるよ。
満月の夜に、美しく映えるこなたの笑顔。ずっとずっと傍にいよう。毎日毎日、笑いあおう。

「さ、ほら。さっさと帰って勉強するわよ!」
「あー、待ってよかがみ。」

私達は歩き出す。どちらともなく握る手。温もりと、幸せを胸に私達は歩く。
長く、辛い道のりかもしれない。それでも、私達は止まらない。手をつないで歩いてゆく。
ゆっくり、ゆっくりと。


☆☆☆☆



コメントフォーム

名前:
コメント:
  • なんで私の顔、こんなニヤけてるのッ! -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17:29:02)
  • 最後の最後まで魅せてくれました!
    ありがとうございます! -- 名無しさん (2012-11-19 16:11:09)
  • こなたかがみセンターガンバ! -- かがみんラブ (2012-09-17 06:19:57)
  • あふぅ! かがみん萌えヽ(;*´ω`)ゞ -- かみのまにまに (2010-04-23 10:01:30)
  • 888888 -- 名無しさん (2009-11-21 14:03:54)
  • 感動しました!こんなステキな作品に出合えてよかったです
    これからも頑張ってください -- saori (2009-07-12 12:43:58)



投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)


|新しいページ|検索|ページ一覧|RSS|@ウィキご利用ガイド | 管理者にお問合せ
|ログイン|
  



★Counter

TOTAL: -
TODAY: -
YESTERDAY: -

★更新履歴

取得中です。