今宵の七夕に笹の葉は無くとも

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今宵の七夕に笹の葉は無くとも

「いやーかがみん、お誕生日おめでとう~」
上機嫌に酔ったこなたが何度目か思い出すのも難しい“何度目か”のお祝いを口にした。一人でワインを駆けつけに三本も空けて、これまた一人愉快にそうにしているが、実際は非常に機嫌が悪いのだけれど、理由は……わからない。
「ありがと、こなた」
私も“何度目か”の同じような素っ気無い返事をする。最初は照れていただけなのだが、どうも今日はそれが癪に障ったらしく、何度も何度も何度も何度も祝いの言葉を口にするものだから、反射的に返事をするようになってしまった。それがさらに癪に障っているようなのだけど。
「かがみんや、私のお祝いじゃ~不服?」
「最初のうちはうれしかったんだけど、その……物凄く機嫌の悪そうな据わった目で上機嫌を装いながら言われてもうれしくないわよ」
つかさやみゆきと一緒に集まった方が良かったかもしれないわね、なんて無粋な事を考えてしまう自分がなんとも情けないが、どうして自分の誕生日の夜をこなたの不機嫌相手で過ごさないといけないのかしら。折角、二人っきりになれたのよ?ホワイトデー以来なのだから、二人きりで会うというのは……楽しみで楽しみで堪らなかったというのになぁ、どうしてこいつは不機嫌なんだろう。
 付き合い始めて早五ヶ月にもなろうと言うのに二人きりで会えた回数が両手の指の数より少ないのは私にしてみれば、堪らなく寂しい事だから、本当に今日は楽しみだったのよ。
「私は何も機嫌が悪いわけじゃないよ」
こなたは口でそう言っても目が据わってるから説得力のかけらも無い。
「何が不満なのよ。二人でレストランにいって食事をした辺りまでは機嫌良かったのに、家に来てからむくれっ放しじゃないのよ」
そんな事もわからないのかと言わんばかりにべーっと舌を出された。何でだろう?なんかムカツク所か抱きしめたくなるんですが……いや、断固断言させてもらうが、私にマゾっ気はない!……ないけど、今のは可愛かったなぁ。
 私は席を立つとこなたの座っている椅子の背後に立って強引に椅子の向きを変える。
「うわぁっ」
抱きしめたくなるという気持ちで終わらせる必要は無い。二人きりなのだから、遠慮なく抱きしめてしまえばいいのだ。
「今のは、反則的に可愛かったわよ。あんたの方が萌え要素って奴をたっぷり含んでるんじゃないの?」
「うお、かがみんが壊れた」
「じゃかぁしぃ!」
突っ込みの拳代わりにぎゅぅっと抱きしめる。ずいぶんと久しぶりの温かさとアルコールの匂いの中から鼻腔をくすぐる良く知っている大好きな甘い香り。
 さっきまで機嫌の悪かったこなたの機嫌が良くなった代わりに私の服にワインの染みがついた。でも、こなたの機嫌と服の染みは天秤にかけるまでもない。
 そのままソファーにふざけて押し倒してやろうかと思ったが、私も少なからず酔っているし、こなたにいたっては出来上がっているので、まぁその色々と心の準備が入りそうな事をすっ飛ばして勢いでしてしまいそうだったので、抱きしめたまま床に座ってソファーにもたれかかる。
「むぅ、かがみん……これは非常にズルい。これじゃぁ私も不機嫌になんてなってられないよ~」
「そもそも、なんで不機嫌なのよ。外で食事してここに帰ってくるまでに、私何かしたっけ?」
耳元で囁く様に呟く。何故だか目に涙が浮かんできてしまった、少なからずこいつが不機嫌になったのは、私が何かしたからだ。酔っ払うと、喜怒哀楽が激しくなってしまうので感情がいつもよりすぐにあふれて来るのは困ったことだと思う。
「だってさ、喜んでくれてたよね?誕生日プレゼント」
こなたの指にもはまっているエンゲージリングを思い浮かばせるシルバーの指輪。確かにもらったわね、気恥ずかしくて真っ赤になったのをこいつにからかわれてたっぷりいじり倒されたから良く覚えてるわ。
 あぁ、そういうことか。不機嫌な理由がようやくわかってきた気がするのだけど、それはこなたの方に原因があると思う。恐らく指輪なんて買ったことが無いだろうし、私の指のサイズなんて知ってるわけも無い。
「なんでつけてくれないのさ?」
予想は的中というわけで、こなたの左手の小指にはまっている指輪。私とこなたの手の大きさは体格差と関係なく違う。むしろ体格の差は徐々に縮まってきているくらいなのだけど。
「あんたの小指にぴったりの指輪が私の指に入ると思う?」
散々からかわれたけど、すごくうれしかった。指輪を左手の小指にはめる意味は、願いをかなえたいという意味があったっけ。
 七夕である今日にうってつけのプレゼントだし、指輪なんてもらうのは初めてだったからとてもうれしかった……のだが、入らなかったのだ。
 最近は、お菓子もそんなに食べないし体重は、増えてはいないはずだし。指の大きさというのは、そんなに変わる物じゃない。高校時代の文化祭のときに手相占いをしてもらった時に思ったものだ、小さい手だなぁと。
「あー……そこまで考えてなかった。丁度いい指輪がペアで売ってたし、私の指に入ったからかがみでも大丈夫かとてっきり」
「あんたねぇ……まぁ、その、はめたくてもはめられないのが現実なのよ。でも、気持ちはうれしかった。それは本当だから」
こなたは申し訳なさそうに頭をかいて顔を私の胸にうずめて隠す。でも、耳まで真っ赤になってるから意味ないわね。それが恥ずかしさからくるものなのか、アルコールからくるものなのかそれはわからない。
 だから、抱きしめていた手でこなたの頬を包み込んでクイとこちらに向けさせる。ちょっと申し訳なさそうな表情が可愛らしくて、愛おしかったので気持ちに任せてそのまま唇を重ねる。
 久々のキスにお互いの心臓が跳ねる音が聞こえてくる。ただただ見つめあっているのも照れくさいので頬から背中に手を戻して抱きしめて目を閉じる。
 指輪はチェーンでもつけてネックレスにしてしまおうかな?そんな事を考えるのもなんだか無粋な気がした。
 今度は二人で指輪を買いに行こう。二人で悩んで、二人でお気に入りを選ぼう。なんて考えながら、口付けを続ける。こなたが離れようと少し動いたものの、私が背中に回した手に少し力を入れてそれを嫌がると、離れようと動くのをやめてこなたもしがみついている手にほんの少しだけ力をこめてくれた。
 カーテンが開いたままなので、もしかしたら織姫や彦星から丸見えかもしれない。そんな風に思うと何だか照れくさかったけれど、この甘い時間をまだ終わらせたくはなくて、求めるがままに唇は重ねあったままでいた。心臓のはねる音は相変わらず互いの体に響いている。より力を入れた分、温もりも甘い香りも、心臓のはねる音も強くなるばかり。
 よく考えてみれば、七夕なのに笹に短冊もないけれど、こなたの指に短冊代わりの指輪がついている。きっと私たちの願いは叶えてくれるに違いない。叶えてくれなければ、自力で得るだけよ。
 この口付けが終わったら、また二人で笑えるかな。ずっとこなたの傍に居たいという私の願いをこの指輪は叶えてくれるかな?こなたの願いも気になるけれど、それはまたの機会にでも聞こうかな……上手くはぐらかされそうだけどね。

 織姫と彦星も笹に短冊じゃなきゃ願いは聞き届けてやるものか!なんて心の狭いこといわないわよね?




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  • 拗ねたりむくれるこなたの可愛いさは核爆弾並みの威力 -- 紫電 (2009-07-09 11:21:08)
  • むくれるこなたが抱きかかえられて大人しくなるシーンが巧い具合に妄想できてのたうち回りました。
    乙女なこなたもイイもんですね。 -- こなかがは正義ッ! (2009-07-07 23:35:55)


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