11話 Correct answer

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拝啓、父上様。
紅葉も終わり、一層と秋が深まっております、12月の今日この頃ですね。
いかがお過ごしでしょうか。お変わりなく、二次元の女性をはべらかしている事でしょう。
私、泉こなたも相も変わらず、二次元、三次元を行ったり来たりの青春です。余計な詮索はいりません。
さて、本題に入りますが、数々の女性を攻略してきた私、今、大変な事になっております。

「こーなーたぁー」
「・・・なんでございましょう、かがみ様?」
「様なんて付けないでよぉー」
「・・・すみません・・・何ぞこれ。」

アルコールの力とは素晴らしいモノでございますね。あの鋼のツインテールも型なしです。
女を落とすならアルコールとは、先人達もよく言ったものです。二次元にない裏テクですな。

「こーなたっ!」
「・・・なんだい、かがみん?」
「ふふっ、呼んでみたかっただけー。」

      • 犯罪だよ、かがみん。可愛すぎるよ、撫で撫でしたいよ・・・ってそんな事は思っておりません。
あぁ、全ては私のミスが招いた事態。夕飯の鍋に入れた日本酒が惨劇の火種とは。アルコール飛ばし忘れ、ダメ、絶対。

「ねぇーこなた?」
「あいあい、今度はどんな爆撃ですか?」
「・・・き。」
「え?」
「・・・すーすー・・・」
「・・・お休みになられましたか、ツンデレ将軍。」

可愛い寝顔。よっぽど疲れてたんだろうな。最近、模試やら特別講義やらで大変そうだったから。
最近、痩せたね。ダイエットじゃない、きっと。

「よいしょっと。失礼しますよ、かがみ姫。」

抱き上げたかがみの身体はいつも見ていたかがみよりも、小さくて、軽かった。
何となく、壊れそうで、なくなってしまいそうで、そして綺麗で、瞬きすら忘れてた。
なんでだろうね、先人様、父上様。なんで、胸が痛いんだろうね。
二人暮らしの部屋から見えた景色は深い深い、海の底のように見えた。そんな12月の夜。


☆☆☆☆


「・・・頭痛い。」
「だ、大丈夫?かがみん?冬休みだから無理して起きなくても・・・」
「生活リズム壊すのもアレだし、朝ご飯私の担当でしょ?」
「無理はしないでね?」
「てゆーか昨日、私いつ寝たっけ?アンタ覚えてる?」
「イイエ、ナンニモ覚エテナイデスヨ。ナンニモ。」

12月。私達受験生にとって大事な大事な時期。それでもこの空間は変わらない。そしてこの距離も。
いつからだっけ?何がきっかけだっけ?どうしてかがみだったんだっけ?
よく覚えてない。思い出すのは、光。いつも見てる光、でも特別な光。キラキラ、キラキラ。

「はい、フレンチトーストとポテサラ。どーんと食べなさいな!」
「・・・頭痛いのに、大丈夫?」
「そんな事言ってらんないわよ。さ、いただきましょー。」

私に向けられた笑顔。キラキラ、キラキラ。光が満ちる、この空間。温かくて、優しい時間。
だから胸が痛いんだね。終わりがないものなんてない。私がかがみと同じ大学に行けても、いつかは無くなってしまう。
無くしたくなくて、藻掻いてる。それなのに藻掻けば藻掻くほど、変わってゆく事が分かる。なんという矛盾なんだろう。

「そういえばそろそろクリスマスだね。」
「・・・そ、そうね、クリスマスね。」
「まぁ、受験生兼ロマンスのない私達には一切関係ないけどね。」
「あ、あのさ、こなた・・・ちょっといい?」
「ふぇ?」
「・・・ミサンガの作り方って知ってる?」

嫌な予感。こういう時って決まって当たるんだよね。

「まぁ、ネットで調べて作れるけど・・・」
「んと、その・・・一緒に作ってくれない、かな?・・・クリスマス、プレゼントで使いたいから。」

紅色に染まっていく頬と耳。やっぱり、かがみは綺麗だな。
そんな事を思いながら、大切な空間が壊れていくのを肌で感じてた。


☆☆☆☆


「ここをこっちに通すんだよ、かがみ?あー、逆だよ逆!」
「うぇ?あれ?こうじゃないの?」
「かがみ・・・わざと間違ってない?私をからかってる?」
「違うわよっ!素よ、素っ!どうせ不器用よ。」

ついつい笑みが零れちゃう。不器用ながらにも一生懸命にミサンガを作るかがみ。
むくれるかがみ。そんな中でも笑顔なかがみ。キラキラ輝くかがみ。
私に向けられたモノ。独り占めなんてズルいかな?でもきっともう出来なくなる。だから今だけは。

「ふっふっふ・・・かがみんは誰にプレゼントするのかなー?」
「んなっ、いや、そのっ・・・これはその・・・」
「その反応、やはり男かーっ!?そうなんだね!?そうだよね!?」
「べ、別に、お、男ってワケじゃないわよっ!」
「照れるな照れるな!好きな人に、でしょー?」
「ううう・・・」

我ながら天晴れな演技。内心、汗ダラダラ、心臓バックバック。
どうして?そんなの、決まってる。他人に相談しなくても、分かってる。

「好きな人の為を思って、献身的にプレゼントを作ってるかがみ萌え。」
「は、恥ずかしいからやめろー!!」

きっとこんな時間もなくなるんだろうな。悲しい?切ない?痛い?
いつからだっけ?何がきっかけだっけ?どうしてかがみだったんだっけ?
分からないよ。分からないよ。だって。

「かがみが好きだから。」
「ふぇ?」

かがみが大好きだから。言葉で伝えられないくらい好きだから。好きに理由なんてないから。

「かがみが、その人を好きだから、そんなに頑張れるんだよね?」
「あ・・・ああ、うん、って恥ずかしいからやめーい!」
「はっはっは。」

言えない、よ。好きだ、なんて。好きだから、好きって言えない。やっぱりこの世界は矛盾だらけ。
あれ?あれあれ?私の努力は?かがみと一緒に大学に行くためにしてきたものは、何?
      • 何だっていいかも。もう、いいよ。もう。


☆☆☆☆


雨が降る。春雨。しとしと、しとしと。冷たい。寒い。指先が痺れてきた。すごく痛い。
泣いてる。誰?貴方は誰?泣かないで。雨と涙で、貴方はぐちゃぐちゃ。
そうだ。貴方が笑う事、幸せな事、それが私の幸せ。でも、貴方は泣いてる。私のせいで。
ごめんなさい。貴方が笑うには私が泣けばいい?貴方が幸せになるなら、私が不幸になればいい?
さようなら。大好きでした。心から、好きでした。ありがとう。
私は、駆ける。雨の中。冷たい、雨の中。想いを、捨てて。

「っ・・・かがみっ!!」
「ひゃっ!な、何!?」
「はぁ、っはぁ・・・あれ?」

走ってたと思ったら、ベットの上。ここは、自分の、私達の部屋。あれは、夢、だった?

「もー、大丈夫?すっごくうなされてたわよ?」
「・・・かがみ?」
「うん?なぁに?」

日付は12月25日。朝9時。春じゃない。そっか、夢か。やけにリアルな夢だった。
走っていたのは私?泣いてたのは、かがみ?・・・よく覚えてない。

「ホッペにケーキのホイップついとるよ?」
「慣れない事やってるんだから仕方ないでしょ?」
「クリスマス会か・・・楽しんできなよ、かがみ。」
「アンタも準備しなさいよ。B組も12時からでしょ?」

受験生にも息抜きは必要、か。B組もC組も例外ではなく、ちょっとしたクリスマス会をやるらしい。
皆には悪いけど、そんな気分じゃない。きっと今日が、かがみにとっても、私にとっても変革の日。

「な、何よ、ニヤニヤしてー?」
「べっつにー。ま、骨は拾ってあげるよ、かがみん?」
「だから違うわよー!」

ふと、思った。もし、かがみが、ふられたら?最低。最低だよ。
かがみに幸せになってほしいと願う自分の影に、私が幸せになりたいと思う自分がいた。
私は自分から目を逸らしたくて、キラキラしたかがみを見たくなくて。
目を反らした先には、かがみの作ったミサンガがあった。紫と青の螺旋。
綺麗にできていて、かがみの想いがこめられてて、余計に切なかった。


☆☆☆☆


「メリークリスマス!ゆきちゃん!」
「メリークリスマス!つかかさん。」

ワイワイ、ガヤガヤ。30人くらいのクラスメイトが賑やかにキリスト様の誕生日を祝ってる。
逆にいいかもしれない。うるさい方が余計な事を考えずにすむし。

「こーなちゃん!」
「泉さん。」
「あ、二人とも。メリクリー。今日はなんともお洒落さんだネ。グッジョブ!」
「えへへー。ちょっとおめかししてみたの。」
「可愛らしいですよ、つかかさん。」
「ゆきちゃんこそ、大人の女性だよー。あ、おいしそうな料理!ちょっと取ってくるね。」

お洒落な女の子。それにつられるように話し掛ける男の子。どこにでもあるような、普通な風景。
私もこの気持ちに気が付いた時、あぁ、普通じゃないんだなって思った。
でも、人を好きになるって理屈じゃない。月並みだけど、大切なのは心。だから私は迷わない。
実らなくてもいい。ずっとずっと、許される限り、好きでいよう。そう思ってた。
でも、ダメだった。どんなに勉強しても、どんなに努力しても、結局はかがみの心には届かなかった。
足掻いた事、泥にまみれても弱さと闘ったこと。全部ムダだったのかな?

「いいえ、違いますよ。」
「え?」

みゆきさんを見た時、瞳に私が映ってた。弱々しくて、すぐ折れてしまう葦のような私が。

「信じてあげて下さい。」
「みゆきさん?」
「弱々しくて、すぐ折れてしまう葦だとしても、自分を信じて下さい。」
「・・・な、何で?」
「かがみさんが見つけたように、泉さん、あなたも見つけている筈ですよ。」

みゆきさんが、何を話しているのか、よく分からない。よく分からないけど、私は話を切れなかった。

「・・・何を?世界が矛盾してる事に?努力は結局ムダだったって事に?」
「いいえ。」
「んじゃ何?」

にこっと笑うみゆきさんは驚くほど、大人びていた。そして、驚くほど、力強かった。


☆☆☆☆


コツコツ。私の足音。アパートの廊下で綺麗に響く。コツコツ。綺麗な夜空に響き渡る。
クリスマス会を抜け、アパートへ戻ってきた私。なんだろ、別人みたいな気分。

『失敗したり、誰かを踏み台にして得たモノも、貴方の大切なモノです。』

そうだよね。こんな所で折れてなんかいられない。私が不幸なら、かがみが幸せ?何それ?

『諦めてしまったら、得るものなんて、ありません。泥まみれでも、どん底でも足掻き続けて下さい。』

違う。絶対に違う。かがみが他の人を好きでも、私が普通じゃなくても、必ず正解の選択肢はある。

『かがみさんは、それを知りました。次は貴方の番ですよ?泉さん。』

待っているのがまた泥でもどん底でも、私はあがく。自分の選択を正解にするために足掻きつづけるよ。

『立ち止まらず、前へ進む者であれ。泉さん、かがみさん、貴方達にそれを望みます。頑張って下さい。』

私も幸せで、かがみも幸せに。欲張りかな?でも欲張りになりたい。夢をかなえたい。強くありたい。
その為にやっぱり努力。地道にいかねばね。うん、元気出た。頑張れるぜ。
気が付くと部屋の前。うん、やっぱりここが私の居場所、戦場だね。

「しかし、みゆきさん、あなたは何者だよー。ただいま・・・」
「お帰り、こなた。メリークリスマス。」
「か、かがみ!?あれ?クリスマス会じゃ・・・」
「抜けてきちゃった。以外に不良よ?私。」

舌をぺろっと小悪魔風かがみ。ふとかがみの手を見ると、例のプレゼントがあった。

「それ・・・渡さなかったの?」
「渡してない。正確にはまだ、よ?」
「ふぇ?いつ、渡すの?」
「今。」

時間が、止まった気がした。いや、止まっているのかも。綺麗な瞳が私を話さない。永遠に感じらるこの時間。

「・・・受け取って、くれる?」

上手く頭が回らない。これは夢?現実?妄想?いや、どれでもいいよ。私の選択は決まってる。

「・・・喜んで。」
「・・・ありがと。」
「えっとかがみん?よろしく、でいいかな?」
「末長く、を忘れないでね。」
「・・・うん。」

ドアは開けっ放し。寒い。でも、嫌な寒さじゃない。外は雪がちらついている。始まりはホワイトクリスマス。


☆☆☆☆



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  • 青春過ぎる!でもそれがいい -- かがみんラブ (2012-09-17 06:08:47)
  • ああ、癒されるわあ・・・GJ -- 名無しさん (2009-06-23 22:12:36)
  • やっぱいいですねこうゆうのは……

    それとこなたの夢ってあれですか…? -- 名無しさん (2009-06-17 18:09:00)
  • 素晴らしい!!
    続編まってましたっ!!
    GJです! -- 名無しさん (2009-06-17 00:48:11)
  • このシリーズ大好きです!GJ!
    「綺麗な瞳が私を話さない。」になっていますけど
    いいのでしょうか? -- 名無しさん (2009-06-16 23:22:49)
  • うおぉ~!
    いいですね!!
    しかしつかかさんって・・・ -- 名無しさん (2009-06-16 17:34:32)
  • 続きだぁ!
    待ってましたよ〜 -- 名無しさん (2009-06-16 14:46:15)
  • みゆきさん…こなたじゃないですけど貴女いったい何者ですか?いやまぢで。
    まるで御仏のように「すべてを知っていて、それでいて手を差し伸べずされど放置もせず」なんて…

    それはそうと紫と青(実際は菫色と蒼色かな?)のミサンガいいなぁちょっと作りたくなってきた。
    -- こなかがは正義ッ! (2009-06-16 14:22:02)


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