二人なら……

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「ねぇ?かがみ?」

こなたの声が、闇の中から響く。
その声自体はいつもと同じ調子だが、その中に少し緊張が混じっているのが私にもわかる。

「なによ?」

当然ながら、私の声にも隠しきれない不安があって……

「私達、いつ出られるカナ?」

返事の代わりに、私は本日何度目かわからないため息を吐いた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

事の発端は、学校の帰りの寄り道。
いつものように4人でお店を冷やかした後のこと………



ブーッっと響くブザーと、それに伴い向けられる視線。
いたたまれなくなり、私は一歩下がる。
何のことはない、エレベーターの最大積載重量を越えたためにブザーがなっただけだ。
断じて私が重い訳ではなく、ただタイミングが悪かっただけだ。
………断じて私が重い訳ではない。

「あんた達は先に降りてて良いわよ」
「お姉ちゃん…」
「かがみさん…」
「………………」

予想通り降りようとするこなた達を制して、下で待っててね、と扉が閉まるのを見送る。
その時、蒼い風が扉の隙間を駆け抜けた。

唖然とする私をよそに、こなたは閉まってゆくエレベーターに向かって手を振っている。

「ばっ……何やってんのよあんた!危ないでしょうが!!」
「いや~かがみが寂しがってると思ってネ!」

体が動いちゃった♪とおどけるこなたにため息を一つ。
つかさ達の乗ったエレベーターが下へと動き出したのを確認してから、私は下のボタンを押した。

「あまり心配をかけないでよね?」
「私がタイミングを誤ると思ったのかね?かがみ」

いつものように茶化しに入るこなた。
でも今回は一歩間違えたら怪我をしていた可能性もあるわけで………

「こなた、これは真面目な話」
「………うん、でも!」
「わかってる、私のために来てくれたんでしょ?」

ありがとね、こなた
そう言ってこなたの頭の上に手を置く。
こなたは私を見上げながら一瞬呆けた後…

「デレた!かがみがデレた!」

雰囲気読みなさいよ、もう………

「うるさい!あぁ…もう、エレベーター上がって来るわよ!」

丁度良いタイミングにエレベーターが到着して、私達はそれに乗り込んだ。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

私とこなたがそういう関係に……いわゆる恋人同士になったのは約半年前。
その時の話は……うん、まぁ私とこなただけの秘密だ。
一つだけ言わせてもらうと、その時のこなたは反則なまでに可愛かったとだけ言っておこう。


こなたもエレベーターに乗り込んだのを確認し、外を覗き見る。
どうやらこの階から乗り込むのは私達だけみたいだ。
その事を確認してから、つかさ達が待っているであろう1Fのボタンを押す。
ゆっくりと扉が閉まり、目的地へと向かい動き出す………はずだった。

「え?」
「お?」

3Fを過ぎた辺りで異常は起きた。
ガタンと、音と共に真っ暗になるエレベーターの中。
私もこなたもただ唖然とするしかなかった。

「止まった……わね」
「止まってるね」

こなたの声が横から聞こえるだけで、顔は見えない。
何で、何が、どうなって………頭の中で疑問だけが飛び回る。

「とりあえず、緊急事態には押してくださいってボタンがあったはずだから、探してみよ?」

混乱してる頭に届いた声はこなたのもので、こうした不測の事態にも関わらず、こなたはまるで別人のように冷静だった。

「こなた…やけに冷静ね」
「ふっふっふ、このパターンはすでにアニメで学習済みなのだよ」
「アニメかよ!」

前言撤回、やっぱりこなたはこなただ。

とりあえずボタンを探すために携帯電話のライト点け、それだけを頼りに階層ボタン周辺を見回す。
案の定、階層ボタンの上の方に目標を発見した。

「これを押せば外と連絡をとれるはずだよ」

言われるがままにボタンを押すが、待てど待てど状況が変わる気配はない。

「何も起きないわよ?」
「かがみ、ちょっとどいて?」

こなたに促されて携帯を渡し、一歩さがる。
入れ替わるようにこなたが一歩前に出てボタンを押す。

………………何も起きない。

ふぅ…とこなたがため息を吐いた。
そして………

「だだだだだだだだ!」
「止めんか!」

ボタンを連打し始めたこなたの頭を叩く。

「壊れてるのカナ?」
「緊急時に使えなかったら意味無いだろ……」

そだね~と相槌を打ちながらこなたが携帯を閉じる。
辺りが再び闇に包まれる。
こうして感じてみると、ライトの小さな灯りだけでも雰囲気が大分違うのが良くわかる。
しかしここでライトを点けてと言うのは、私が怖がっているのを認めるようでなんだか悔しくて、私は口を閉ざした。

「む~そうだ!かがみのその凶暴さで、このドアを……」
「開けられるか!それに私は凶暴じゃないわよ!」

反射的にツッコミを入れる。
本気で言ってないのはわかっているが、一応釘を刺しておく。
案の定、こなたは知ってるよ―と答えた。
顔は見えないが、きっといつもの猫口顔でニマニマしているのだろう。

「で、かがみは落ち着いた?」
「え?」

こなたの言葉の意味が一瞬わからなかったが………
そう言えば先程までの動揺が嘘のように落ち着いている自分に気がつく。

「みゆきさん亡き今、頼れるのはかがみだけなのだよ!」
「ちょっと待て、まずみゆきは死んでないし、それにつかさはどうした!?」
「うぉ!?恐ろしく的確なツッコミ!さすがかがみ!」

うん、いつもの私だ。
私1人じゃ確実にこんなに冷静になれなかっただろう。
だから………
「………ありがと」

暗闇の中で小さく掠れそうに呟かれたお礼。
それがこなたに届いたのかは私にはわからないが、こなたが小さく笑った、そんな気がした。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「さて、これからどうしよっか?」
「とりあえずみゆき達に連絡しましょ?」

だから、携帯貸して?
とこなたに催促するが、こなたが動く気配はしない。

「こなた?」
「………何で私がボタン探す時しかライト点けなかったか判る?」

そう言えば、さっきからずっと暗闇の中で会話をしている。
てっきりこなたが私を怖がらせようとしているのだと思ったのだが……
もし、その行為に意味があったのならそれは……

「こなた、その‥まさかとは思うけど………」
「うん、そのまさか」

こなたが私の携帯を開く。
この空間唯一の光と共に目に飛び込んで来たのは、残量1の電池表示と圏外の二文字。
どうやら昨日こなたと電話した後で充電を忘れたらしい。

「電波の方は増えたり減ったりしてるから、とりあえず電池切れだけには気をつけてね」
「………あんたの携帯は!?」
「…………」
「忘れたのか?」

無言の肯定。

そういやコイツは携帯をあまり持ち歩かない人間だった。

私はこなたに直接手渡された携帯ですぐさまみゆきにメールを打つ。
暫く携帯電話を動かして、電波が入った瞬間に、すかさず送信ボタンを押す。
無事に送れたことを確認してから携帯電話をポケットにしまい、………あまり誉められたことではないが床に座り込む。
気配からすると、どうやら隣でこなたも座ったようだ。

「そういえばかがみさ……」
「何よ……」

それから暫くは雑談が続いた。
お互いにいつも以上にお喋りなのは、きっと不安を誤魔化したいだけなのだろう。
しかし、ふとした拍子に会話が途切れ数分。
冒頭の会話に戻る。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「私達、いつ出られるカナ?」

ため息を吐きつつ考える。
みゆきには先程メールを送ったので、みゆきはこの事態を把握している。
みゆきのことだからきっと助けも呼んでくれていることだろう。
それに……考えたくはないがもしメールが届いてなくても、自力で外に出れない以上はどちらにしろ………

「自力で出られない以上助けを待つしかないのよね」

そう、待つしかない。
でも今の私なら大丈夫。
もし、これが1人だったら私の心は淋しさや不安で押し潰されていたと思う。
けれど、私は今1人じゃない。

「ねぇかがみ、そっちに行っても良い?」
「良いわよ」

手探りでこちらに来てるのだろう。
足に当たったこなたの手を私の手で導く。

暫くの試行錯誤の後、こなたは私に寄りかかるように座り込んだ。
私はそれを後ろから抱き締めるようにこなたの前で手を組む。

「本当………あんたがいてくれて良かったわ」
「かがみ?」

組んだ手に力を込める。

「こんな状況で1人ぼっちだったら、正直きつかったわ」
「今は私と2人ぼっちだからね~」
「………うん」

ニヒヒと笑うこなたをさらに強く抱き締めると、こなたから笑い声が消えた。
かわりにこなたの体温が少しだけ上がった気がした。

「こなた………暖かい」
「………」

返事の代わりに私の腕をギュッと握るこなた。
私は体制はそのままに、抱き締めている腕をほどいて手を絡めるように繋ぎ直す。
こなたは幸せそうに笑った。
そんなこなたがとても愛しく思える。

そんな感慨に耽っていると、前からあくびのする音が聞こえてきた。

「ねえ……かがみ?」
「何よ?」
「こうして……かがみの温もりを感じてると、何か……とても……安心…す…る」

こなたの声が一気に眠気を帯びていく。

そういやこいつ、今日も朝までネトゲやってたって言ってたっけ……

「寝ても良いわよ。私が傍にいるから」
「………うん」

抱えているこなたの体から力が抜けた。
最後にこなたは小さく一言呟いたのち暫くすると、すーすーと寝息をたて始めた。

「私もよ、こなた………ありがとう。」

こなたにつられるように襲ってきた睡魔に特に抗おうともせずに、私はゆっくりと目を閉じた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

私達が下に着いてから既に2時間が経ちました。
いまだにかがみさん達が降りてくる気配はありません。
トラブルの件は既にお店に連絡しましたので、私達に出来る事は待つことだけになってしまいました。

先程かがみさんからメールで「エレベーターが止まって取り残されたから、先に帰ってて良いわよ」とメールを貰いましたが、私もつかささんも、迷わず待つことにしました。

「あっ!ゆきちゃん!動きだしたよ!」

つかささんが指で示す先を見ると、3Fで止まっていた表示が徐々に数を減らしていきます。
後ろに控えているこのデパートの代表さん達の間から安堵のため息が聞こえました。
警察と消防の方々にも同様の雰囲気が流れています。

実は無理を聞いてもらい、私達2人も消防の方々と一緒に、最初にお二人を迎えに行けることになっています。

「あ!着いたよ!」
「ようやくですね」

チーンと音を立てて2時間ぶりに1Fに到着するエレベーター。
ゆっくりと開く扉。

その先には…………

「わぁ」
「まぁ」

かがみさんにもたれ掛かっている泉さん。
それを守るように支えているかがみさん。
2人の手はしっかりと絡めあって、簡単にはほどけない事が一目で判ります。


その状態を見た消防の方々が苦笑いを浮かべながらこちらに向き直りました。

「どうやら寝ているだけみたいだから起こしてあげてくれないかな?」

知らない人に起こされたらビックリしちゃうと思うしね。

そう言って消防の方は少し離れた所に移動しました。

「気を遣われちゃったかな?」
「そうみたいですね」

私とつかささんは顔を見合せて笑いあい、かがみさんと泉さんを起こすべく、2人のもとへ向かうのでした。


ちなみにこの時、つかささんがいつの間にか撮っていた写真で、かがみさんと泉さんが大騒ぎをするのは、また別のお話です。





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コメント:
  • つかさGJ!写真ください! -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17:12:16)
  • 大変だね? -- かがみんラブ (2012-09-18 06:18:18)
  • GJすぎる
    作者に言おう

    ……生まれて来てくれてありがとう
    これが読めたから俺もう
    死んでもいいや笑 -- オレンジの (2009-06-25 02:13:15)
  • パニック大好き -- 名無しさん (2009-05-28 18:54:08)
  • ラブラブですね〜♪
    抱きしめた所の
    挿し絵が欲しいですね〜。 -- 無垢無垢 (2009-05-27 21:20:59)
  • 最愛の恋人を気遣うこなたは可愛いですね。
    ところでつかささん?その写真、メールにて送ってくれませんか? -- こなかがは正義ッ! (2009-05-27 14:10:05)


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