ダイエットよりも大切なこと

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最近、ついついお菓子を学校で食べてしまう。最初はたまたま、鞄にお菓子が紛れ込んでいて、昼ごはんを食べた後でもったいないからおやつとして食べただけだったんだけど、困ったことにこれが癖になり、お菓子がないと午後の授業が口さびしくなってしまったのだった。
「お、今日も食べてるねー」
とこなたが笑う。
「どういう意味よ!」
とかがみが怒った顔を見せると、こなたはにやにやと笑って言うのだった。

「いやぁ、最近かがみにしがみ付いた時の感触がそこはかとなくフニフニでね?」
くふふっと言わんばかりにこなたがニマニマとした表情を作って言いやがった。騙されてたまるものか、昨日体重計にのった時はいつもと同じくらいだったし……。それに、家での間食は減らしてるから大丈夫なはず……。
「そういえば、お姉ちゃんって最近かわったよねぇ」
つかさの言葉に体がビクリと反応する。もしかして、家の体重計壊れてるのかしら。いや、そんなはずは……。
「いやーかがみ様はふっくらなされましたなぁ」
ニマニマしたままでこなたが言う。くぅ、その表情は可愛いけど、けど、子憎たらしいわ。

「や、やわらかい印象になったよね、お姉ちゃん」
というつかさの言葉に内心の不安が増大する。それ、フォローになってないから!
「ふっくらかがみさまー、ははー、ありがたやありがたや」
そう言いながらこなたが、かがみのおなかを何度も掴んでぷにぷにした。
「実にご利益ありそうですなー」
そうこなたが言った次の瞬間、かがみは鬼の形相でこなたにヘッドロックをかけて強く締め上げていた。こなたはたちまち手足をバタバタさせる。
「ぎ、ギブ!ギブギブ!」
だがしかし、なんということか、こなたは締めたはずの腕を、かがみのおなかに顔をめりこませてぬけだして見せたのだ。そ、そんな馬鹿な!?
「ふー、助かっ……あれ?」
さすがに青ざめたかがみは、これはもうダイエットしかない。
ダイエット大作戦だ!と心を決めるのだった。
「私……」
みなの前ではっきり宣言しておく、退路をたつために。
「ダイエットする!!」

かがみのダイエット計画のはじまりであった。

 放課後までにヤケにこなたがムリだからやめときなってかがみんや。を繰り返すのが気にはなったけど、私の決意が揺らぐ事はなかった。
「ねぇ、かがみ~。寄り道付き合ってくれないかい?」
こなたのいつものような誘い。どうせ、ゲマズかアニメイトのどちらかだろう。
 しかし、私にはそんな所に寄り道などしている余裕なんてないのだ。ダイエットするって決めたんだから!
「今日は、日下部達と一緒に帰るから、またね」
どこかシュンとしている様に見えるこなたの表情になんだか後ろ髪を引張られる思いだったが、だめだ構って入られない。
 こなた達が帰る姿を廊下で見送ってから、私は今まさに帰ろうとしていた友人二人に声をかけた。
「日下部、峰岸!ちょっと頼みがあるんだけど」
「んー、柊ぃ~が、私達に頼み事なんて珍しいな?」
「どうしたの?柊ちゃん」
恥ずかしいが、口に出して言わなければ伝わらないのだ!
向坂@抹茶ミルきんフロスティー の発言:
「私がやせる方法を一緒に考えて!」
私は、固めた決意を胸にそれを口にした。

「痩せる方法か、任せな!」
と威勢良く答えたのは日下部みさお高校三年生だ。彼女はニヒルな笑いを浮かべると、サムズアップして八重歯を見せて笑った。
「明日……いや、今日から特訓だ!」
果たして日下部みさお式ダイエットとは・・・!


「もう……無理、駄目……」
「ふふ、ひーらぎ、本当に駄目だとおもってんのかよ?そんなにハアハアして」
「あ……」
「さあ、もっとだ、もっと」
「駄目……」
「ふふ、ずいぶん顔が赤くなってるじゃねーか、ひーらぎ」
確かにかがみの目は潤み、頬は赤く染まり、荒い吐息をはあはあとかがみは吐いていた。そしてかがみは呻く。
「オウフ」
バタン、きゅー、とかがみが倒れた。
超長距離をひたすら走らせる鬼みさおの体育会系ダイエットに、読書好き文科系かがみがついていける筈はなかった。
そんな訳でバッタリとかがみはグラウンドに倒れたのだった。
「なさけねーなー、ひーらぎ、まだ10kmいってねーぞ」
倒れた状態から回復したかがみが叫ぶ。
「いきなり長距離ランニングなんか出来る訳ないでしょ!?これを毎日やるとか無理よ!死んじゃう!」
「おいおい、ひーらぎ!ダイエットしたいんじゃねーのか!」
「う・・・」
「私にはいつもいつも、勉強は日々の努力だって言ってるじゃねーかよ!ここで根性を見せろ!日ごろの恨みを思い知れ!」
「何か途中私情が入ってたきもするけど、確かにそうね。でも今日はもう勘弁して」
「いいぜー、あがるがいいひーらぎ」
「なんか上から目線なのがむかつくけどいいわ」
そしていそいそと帰り支度をするかがみ。
ちょっと暗くなり始めた帰り道。
日下部や峰岸と分かれて一人になる。
駅から降りて繁華街を歩いていると、飲食店のいいにおいがして、腹の虫が鳴った。
「……今日は大分走ったし」
それに、勉強や宿題もある、栄養が頭にいかないと困るのは自分だ。よってこの行動は正しい。
ふらふらとかがみは飲食店の暖簾をくぐった。


翌日。
「あのダイエット方はやはりやめよう」
「な、なにゆえー!?」
「帰るのが遅くなって暗くなるのが危ない。宿題する時間とかが減るしね?」
「割といってる事はまともなのに嘘臭いのは何故なんだぜー?!」
「ふふふ、そう言うと思ってたわ!」
と割り込んだのは峰岸あやのだった。
H4-53 の発言:
「私に任せて!」
そういう峰岸のダイエット方とは・・・・?

「あぁ、だめだめ。あやのからダイエット方法聞いたって、ひーらぎにはムリだってヴぁ~」
日下部が溜息混じりに手をパタパタしながら呟く。
「な、なんでよ!」
「だってあやのにはやせる目標というか目的というかあに……」
「みさちゃん、ちょっと」
み、峰岸からなんか黒いオーラが見えるわ。そのまま、峰岸は”助けてくれ~ひ~らぎぃ~、みゅ~”と叫ぶ日下部の後ろから軽々と襟を引っつかんで引きずって行った。その後、日下部がどうなったかは、ご想像にお任せするわ。

 私のダイエットは何時も失敗ばかり。やっぱ、峰岸の目標って……彼氏の事よね?だったら、確かに私にはムリだわ。
 やせるのには目標が必要かぁ
「うりゃ~」
急に背中から飛びつかれてすっころんで廊下を転がった。
 飛び掛ってきたそれは、青い塊、紛れも無くこなただった。
「いててて、何するのよ!」
「かがみは太ってないって、私が悪かったからさ、一緒に帰ろう?」
いや、でもあんたのいうこと間違ってないのよね。確かに最近、服がきつくって。
「いや、ちょっと太ったのは間違いないのよ、だって最近服がちょっときついっていうか、なんていうか」
恥ずかしさで顔が赤く染まる。こんなことなんでこなたに言ってるんだろう。
 こなたのほうを見るとこなたはこなたで赤くなっていた。どうしてだろう?
「そりゃ~ちょっと、―きさんに近づいたからだよ、だから一緒にかえろ?」
よく聞こえなかったが……なんでこなたは真っ赤なままなんだろう。

まあ、そんなにこなたが一緒に帰りたいなら、一緒に帰ってやるか、と私は思って、こなたに微笑みかけた。
「いいわ、日下部にしろ峰岸にしろ、なんか私に合うダイエットは思いつかないみたいだったし」
「ほんと、やったあ!」
と喜ぶこなたは無邪気で、幼い子供みたいに見えて可愛かった。

放課後、二人で帰る通学路には夏の匂いがして、遠くで蛙が鳴いていた。空がどこまでも青くて、なんだか空気まで綺麗に思える。
前を歩くこなたが元気よく両足を前にだして、小さな丸い膝の裏が揺れている。
「ねー、かがみ、私ね」
「ん?」
「昨日みさきちと、かがみダイエットしてたじゃん?」
「そうね」
「んー」
沈黙が再び訪れて、二人の間に蛙の鳴き声が満ちた。そして空が青いままなのに、不意の雨粒がかがみの少女らしい頬をうち、今にも来そうな雨の気配にかがみは包まれる。
「私さー、かがみがいないと駄目なんだー」
と自然にこなたが言って
「え?」
と聞き返す間に、激しいにわか雨が二人を襲った。
「走ろ!かがみ!」
「うん!」
きゃあきゃあと、深刻にならず笑いながら二人はびしょぬれになって走った。たまには笑いながら二人で雨に濡れるような日があってもいい。
二人は少し暗い、岩をくりぬいて出来た箱みたいなバス亭に逃げ込むと、びしょぬれのまま笑いあい、かがみはスカートの裾を絞って白い少女のふとももを露にした。
「あのね、かがみに私、いいたいことがあるんだ」
とこなたが微笑んだ。

「なによ?」
どーせ、また何かからかうネタでも見つけたのだと思った。でも、こなたの表情は微笑から真剣なものに変わっていて、その雨にぬれて潤んだ、宝石のようなエメラルドグリーンの瞳に吸い込まれそうになる。
「私さ……その、かがみのことがだね。あーっと」
何だろう、このモヤモヤとし気持ちは。恥ずかしいようななんとも言えない雰囲気に私の心も反応していた。
 冗談じゃないからね?でも嫌だったらごめん。そう前置きをしてからこなたは、意を決したように目を閉じてから静かに
「かがみのこ―き」
雨音の所為だろうか、よく聞こえなかった。だから、すぐに聞き返そうと思ったのだ。
 でも、聞き返せなかった。本能的に気づいたとでも言うのだろうか、こなたが言いたかった言葉に。
 私はその言葉に言葉を返さなかった……。
 どう答えを返していいのかわからなかったといえば聞こえはいいが、迷っていた。
 自分の気持ちに正直になるべきか、それとも守りに入るべきか。その沈黙をこなたは否定と取ったらしく、
「ごめんなさい!」
そういって走って逃げようとした。私は反射的にこなたの手を掴むと、体が浮いた。引きとめようと意識的に掴んだわけじゃなかった。だから、力が入ってなかったのだ。
 急に手を掴まれたこなたに私の体重が錘となって、二人して泥水の中に転んだ。
 気がついた時にはこなたを抱きしめて私の背中が泥水に浸かっていた。
「悪いわね、太ったから転んじゃって」
「だから、かがみの場合育ったんだよ!ていうか、さっきのはスルーですか?かがみ様」
育った?あ、え?答えって……ど、どういう意味で返せばいいのよって一つしかないか。
「答えるから、育ったの意味教えてくれる?」
「あー……うん」
「私もこなたのこと好きよ」
すんなりと出た言葉、雨音でも消えない距離。しっかりと伝わってお互いに真っ赤に頬を染める。

「でさ……育ったって何なの?」
というかがみの問いに、こなたは答える。
「あの、最近のかがみは、胸が……」
恥ずかしそうに言うこなたに、言われてみれば最近いろいろとそういう部分が増えたらしき事に思い当たった。
「だから太ったとかじゃなくて、大人の女の人になっていってるだけ!って思うんだ。だから無理なダイエットとかやめようよ!」
必死な顔をしていって来るこなたに、私は笑顔を返した。
「分かったわよ。とりあえずダイエットはおしまい。もっといろいろ、やりたいこと、出来たしね」
見上げればもう空は晴れていて、虹がかかっている。
なんだか忘れることも出来なさそうな空だな、と思った。

 その週の休み、私達は遊びに出かけた。四人のはずだったのに、二人だけで。気を貸せてくれたのは嬉しいけど、少し恥ずかしい。
「かがみ~はやくいこ~」
子供みたいにはしゃいじゃって全く、あんたは人のペースを考えてるのか?
「わかったわよ」
まぁ、こなたが私の服を選んでくれるって言うから、選んで貰ってやろう!そんな気持ちだったりする。
 今日はこの前とは違って青一色だ。少しくらい雲があってもいいと思うのは無粋かもしれない、青は彼女の色なのだから。



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