「ねえ、お姉ちゃん?」
「んー?」

私の言葉にもお姉ちゃんは上の空。こちらにも振り向こうともしない。
お姉ちゃんの視線はただ一点。テーブルの上にある物に集中し続けている。
もしかしたら、空返事をしただけで私の声なんて聞こえてないのかもしれない。

「お姉ちゃんてばっ!!」
「もー?!なによつかさ!!」

私がさっきより大きな声を出すと、ようやくお姉ちゃんは怒りながらもこちらを向いてくれた。

「ねえ、お姉ちゃん……」
「だから何よ」
「これって……なに?」

私はさっきまでお姉ちゃんが見つめていた物を指差した。


そう……


「開封厳禁」と書かれたガムテープに密封されているダンボールを……



『厳禁』



それはちょっと前のこと。お姉ちゃんがすごく怒った顔をして帰ってきたことがあった。
その日はこなちゃんとデートだったから何かあったのだろうと、話を聞く為、夜にお茶会をしたことがある。
結局、お姉ちゃんの怒った理由含めて、惚気とも取れる愚痴を2時間以上も聞かされただけだったけど。
けどお姉ちゃんはそのお茶会をとっても気に入ってくれたみたいで、最近じゃ事あるようにそれをするようになった。
まあほとんど、お姉ちゃんがこなちゃんのことを色々話してくれるだけで終わっちゃうんだけどね。
でも、私でもお姉ちゃんの聞き役くらいにはなれるんだなーって思うと、ちょっと嬉しかったり。
でもそんな夜中のお茶会の主役、お茶やお菓子を乗せるテーブルは、今やちょっと大きめなダンボールに占領されている。
ちなみに主役達はというと、テーブルの隣にあるお盆に寂しそうに乗っかってる状態。
今日のクッキーはお姉ちゃんの為の意欲作(砂糖の代わりに合成甘味料を使ってみたんだ。カロリーゼロの)だし、お茶だって今年の春摘みのダージリンなんだよ。
だからすぐにでも味の感想が聞きたいんだけどなあ……
でもお姉ちゃんはどうやらそれどころじゃないみたいで、気が付くと目の前のダンボールを見つめ続けてる。
本当になんなんだろう?

「こなたがね…」
「こなちゃん?」

いきなり出てきたこなちゃんという言葉に、私は疑問の声を上げてしまった。
でも、すぐに理解した。ああ、やっぱり今回もこなちゃんなんだなって。

「こなたがね、昨日私の部屋に来て、顔を赤くしながら預けていったの。『うちに置いとくと危険だから』って」
「へえ~、そうだったんだ」

それで納得。あのダンボールに書いてある独特の文字は、こなちゃんが書いたんだ。
なんだかすごく見覚えのある字だと思ったよ。

「顔を赤らめて恥ずかしがってるこなたはすごく可愛かったわ」

お姉ちゃんはやっぱり私の方を見てくれない。見つめるのはやっぱりダンボール。
でもその見つめ方は、ペットショップで家では飼えない子犬を見つめてる子供のようだった。

もしかして……

「ねえ、お姉ちゃん……」
「んー……」

お姉ちゃんは相変わらずの上の空の空返事。だから私は気に鳴った事をお姉ちゃんに聞いてみた。

「開けたいの?」
「―――っ!!」

私の言葉にお姉ちゃんがガバっと振り向いた。

「………」
「………」

えーっと、なになに?!この沈黙?!すごく不安なんだけど。
そうやって不安がりつつも黙っていることおよそ数秒……

「ばっ!馬鹿言わないでよ、つかさ!!このダンボールはこなたが恋人の私を信頼して預けていったんだから、開けるはずないじゃない!
 本当に何言ってるのかしら?!あは…あはははは!!!」

我に返ったかのように、お姉ちゃんは急に笑い出した。
本当に、ダンボールを開けようなんて思ってないんだよね。
信用してもいいんだよね……お姉ちゃん。

「そ、そうだよね。ごめんね~、お姉ちゃん。変なこと聞いちゃった」
「まったく、本当にしょうがないなー、あんたは」

お姉ちゃんは呆れてるような…でもすごく優しい眼差しをしながらニッコリと笑った。
よかった。いつも通りのお姉ちゃんだ。

「それじゃあダンボールどかしてお茶にしようよ。今日のお菓子は意欲作なんだ―――??」

私はそう言ってテーブルの上にあるダンボールをどかそうとした。でも、それは出来なかったんだ。
だって……お姉ちゃんの手がガッチリとダンボールを押さえつけて話さなかったから。

「お、お姉ちゃん?」

お姉ちゃんは私の目を見るとポンと両手で私の両肩をたたいた。

「ねえ、つかさ……」
「な、なに…?」
「私とこなたは恋人なの、運命の人なの、将来の伴侶なのよ」
「し、知ってるよ」

それはものすごく知ってる。こなちゃんとお姉ちゃんを除いたら、私が一番よく知ってるよ。
伊達に毎回毎回、二時間以上お姉ちゃん達の惚気話を聞いてないんだよ?

「そう、その恋人のこなたが私に恥ずかしがりながら、このダンボールを手渡した。
 きっとこの中には私にも見せたくないものが入ってるのかもしれないわ!
 でもね、だからこそ、恋人の私はちゃんとそれを知っておかないといけないと思うのよ。
 こなたがどんなに恥ずかしいものでも、ちゃんと受け入れてあげないといけないの!!」

目を閉じながらギュっと手を握り締めるお姉ちゃん。なんとなくだけど、話し方から興奮してるような気もする。

「だから……この『開封厳禁』を破っても、私はこの中身を見る必要がある!!」
「えっ…ええっ~~~!!!」

なっ、なんで?!
どうして、そういう風な結論に達しちゃうのお姉ちゃん!!

「ちょっ……ちょっと、お姉ちゃんっ!」

駄目だって言わないといけないよね。いくら恋人さん同士だからって、やっていいことと悪い事があるよ。

「ありがとう、つかさ。つかさの言いたいことは分かるわ。こんなにも応援してくれるなんて、私はいい妹を持ったわ!!」
「ちっ、違うよ~~!!」

おかしい、おかしいよお姉ちゃん?!
何時ものお姉ちゃんだったら、絶対そんなこと言わないのに!!
やっぱりこなちゃんが関わってるから?!

「というわけで……おりゃっ!!」
「あ~~!」

ビリビリビリと音を立てて封が破られていくダンボール。
ねえ、こなちゃん?私ちゃんと止めたよ。頑張ったよ。だから許してね……

「さて、何が入ってるのかしら?」

封を破り終わると。お姉ちゃんはお菓子を選んでる子供みたいに、目を輝かせながらダンボールを覗き込んだ。
どことなくその目はこなちゃんに似てる気がする。

「これは……すごいわね!!」

お姉ちゃんがダンボールから何かを手に取ると、すごく嬉しそうな声を出した。
そんな声を出されると、私だって見たくなっちゃう。
ごめんね、こなちゃん。本当は私は見たくなかったんだけど、お姉ちゃんが見ちゃったから……
そう、たまたま見えちゃったんだよ、たまたま!!
そんな風に自分に言い訳しつつ、私はお姉ちゃんの見ているものを後ろから覗き込んだ。

「それって、写真?」

お姉ちゃんが真剣になって見ていたもの。それはこなちゃんの写真だった。
何十枚もあるこなちゃんの写真。それを一枚一枚焼き付けるかのように、お姉ちゃんは見続けていた

「ただの写真じゃないわ……だって、全部私が見たことないやつだし……これも!!ああっ、これもだ!!」

お姉ちゃんの言うとおり、確かに普通の写真じゃないみたい。
高校のじゃないセーラー服(中学校のかな?)、ブレザー、メイド服に着物姿、それにフリフリの可愛い服と
こなちゃんが普段着ないような服装や髪型の写真ばっかりだったから。
よく分からないけど、コスプレ……なのかな?

「もしかしたら、お仕事しているときに撮られたのかも。こなちゃんのバイト先ならそういうことしてそうだし」
「そうね……」

お姉ちゃんはやっぱり私の事なんて気にしてないみたいで、写真を見るのに一生懸命。
いくら恋人さんの写真だからって、ちょっと酷いよ……

「うん!」

お姉ちゃんはそうやって一人で頷くと、スッと立ち上がった。
そして近くの上着を手にとって羽織ると、テクテクと部屋から出て行こうした。手には件の写真を持って……

「お、お姉ちゃんどこ行くの?!」
「えっ……コピーでもしてこようかなーって」
「い、いくらなんでそれは駄目だよ!こなちゃん、きっと怒るよ!」
「そ、そうね。流石にね、まずいわよね。ありがと、つかさ。ちょっとどうかしてたみたい」

どうやら思いとどまってくれたみたい。私は上着を脱いで隣に座りなおすお姉ちゃんを見ながら、気付かれないようにため息を吐いた。

「ネガとかないかしら?いやいや、今の時代メモリカードか……」
「お、お姉ちゃん?」

あれー?お姉ちゃん、もしかしてまだ直ってない?
お願いだから、早くカッコよくて優しくて何でも出来るお姉ちゃんに戻ってよ…

「さてと、他にはっと……あっビデオテープ発見。家にまだビデオデッキってあったかなー?」
「お姉ちゃん……」

そんな私の悲痛な願いを神様は叶えてくれず、お姉ちゃんの宝物探しは続く。
だけどそんなお姉ちゃんの宝物探しも終わりを告げるかのように、不意にお姉ちゃんの動きが止まった。

「お姉ちゃん?」
「つ、つかさ……こ、これ?!」

お姉ちゃんは少しだけ震えながら、ダンボールの中から一冊のノートを取り出した。
ノートの表紙には『日記-○○年××月△△日~○○年××月△△日-』って書かれていた。
これってつまり……こなちゃんの日記?

「し、しかもこの日付、こなたが私を好きになった頃の日付よ……」
「えっ?そうなの?」
「前にこなたから聞いたことがあるから間違いないわ」

お姉ちゃんはそう言うと、吸い込まれるようにゆっくりゆっくりとノートの表紙を開こうとした。

「お姉ちゃん!それだけは駄目だよ!!」
「つかさ……」
「お姉ちゃん、よーく考えて。その日記には、こなちゃんの気持ちが詰まってるんだよ。
 そんな大事な日記をいくら恋人さんだからって勝手に見ちゃ絶対に駄目!!」
「……そうね、つかさ。流石に目が覚めたわ。まったく、今日はあんたに助けられてばっかりね」
「えへへ、これくらいどうってことないよー。でもね、お姉ちゃん?」
「どうしたの、つかさ?」
「なんでそういう風に私が言ってる間にノート開いちゃってるのかな?」
「えっ?!」

なんだか本当に気が付いてなかったみたい。私と話してる間にもノート開こうとし続けてたんだよ、お姉ちゃん?

「ち、ちがっ!!か、体が勝手に?!そう、どうしてもノートが見たいっていうもう一人の私の深層心理が……」

一生懸命言い訳してるけどね、お姉ちゃん。ノートは全然しまおうとしてないよ?

「あー、もうこうなっちゃったら、見てるのと同じよねー。あははは……」

お姉ちゃんはそうやって軽く笑うと、食い入るようにノートの中身を見始めた。

「………」
「……お姉ちゃん?」

お姉ちゃんの様子が変わったのはそれからすぐの事。ワナワナと震え始めたかと思うと、バサッとテーブルに持っていたノートを投げ捨てた。
そして先ほどの上着を手に取るとわき目も振らず、部屋から出て行った。
どうやらものすごく、怒ってたみたいだけどどうしたんだろう?

その私の疑問はすぐに解決することができた。お姉ちゃんが投げ捨てたノート。
そのノートの最初のページには、こなちゃんの字でこう書いてあったんだから。



『かがみのエッチ』って



「お見通しだったんだね、空けるの……」

私はため息を吐くと写真やビデオテープ、それにお姉ちゃんが投げ捨てた日記?を綺麗にダンボールにしまいこんだ。
そして元通り「開封厳禁」のガムテープを貼り付ける。
それが終わるとテーブルの隣に置き、代わりにお茶とお菓子が乗っかっているお盆を置きなおした。

きっとこれからこなちゃん大変な目にあっちゃうんだろうな。それはもう、色々と……
こなちゃんみたいなことする人のことをなんていうんだっけ?
確か……『誘い受け』だっけ?うーん、なんか違うような気がするけど、よく分からないや。

とにかく……

「こなちゃん、ご愁傷様」

私はそんな風にこなちゃんを心配しつつ、今日始めてカップに紅茶を注いだ。



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  • 何か幸せな雰囲気のSSだね。キャラ崩壊かがみおもしろいw -- 名無しさん (2013-01-30 19:46:13)
  • まさかかがみ、え、ええええっちなコトしに行ったんじゃ・・・ -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17:05:26)
  • かがみ怒り -- かがみんラブ (2012-09-23 16:58:44)
  • >こなかがは正義ッ!様
    この手のSSは比較的作成時間もかからず、かつ軽めに作れるので、
    「こなたが出てこないこなかが」としてこれからも投稿する予定です。
    拙い文章ではありますが、お楽しみいだければ幸いです -- H3-525 (2009-05-09 16:41:24)
  • ダメと言われるとやりたくなるよね、うん。 -- 名無しさん (2009-05-06 22:38:38)
  • 流石はこなた。かがみんの性格を知り尽くしてますなぁ…
    つかかがみん遊ばれすぎ♪

    是非ともこう言うバカップルの日常的な作品のシリーズかを御願い致します。 -- こなかがは正義ッ! (2009-05-05 20:05:20)
  • かがみのエッチ♪ -- 無垢無垢 (2009-05-05 16:22:22)


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