父親として

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「話があるんだ」

今にも崩れてしまいそうなくらい張り詰めた表情で娘はそう切り出した。
そういえばこなたがこんな表情をしてたことが一度だけあったっけな。
あれは確かこなたが小学校にあがるころだった――



「お父さん、お母さんは死んじゃったの?」

どうしてもうまく説明できなくて、それに生死をまだよく理解できていなかったこなたが、本気でぶつけてきた疑問。
そうか。ちゃんと真実を伝えるべき時が来たんだな、と瞳に涙を浮かべる娘に俺は言った。

「ああ。お母さんにはもう会えないんだ」

泣いたっていい。ずっと希望を持たせて悪かった。
俺を怒ってもいいから、どうかこの事実を受け入れてほしい。
小さな、本当に小さくてか弱い娘を絶対に離さないと抱きしめる。
こなたは体を微かに震わせ、小さく嗚咽を漏らしていた。

「たとえ会えなくても、お母さんは俺たちを見守ってくれている。だから、お母さんに元気な姿を見せてやってくれないか?」

わずかに頭を動かした娘を見て、俺はずっと頭を撫で続けた。



――あの日からこなたは俺に弱さを見せなくなった。
俺のためか、もしくはかなたのためにあいつは強く在り続けた。
もっと甘えてもいいんだけどな。
遠慮なんかしなくていい。俺はお前の親なんだから。

けど、そう思っていても口には出さなかった。
俺は愛することしか知らない不器用な男だったから。
成長するにつれかなたと面影が似てきたこなたに、俺のほうが依存してしまっていたからな。



「そこに座りなさい」

めったにしない父親の口調でこなたを座らせる。
あとはこなたが口を開くのを待つだけだ。
きっとこの子は嘘をつかずに、ちゃんと全て話してくれるんだから。

「……あのさ、お父さんの幸せってなに?」

難しい質問だな。
まぁ趣味のアイドルのコンサートに行くこととか。
今いるこなた、ゆーちゃんと暮らしていくことでもある。
しかし俺にとって一番の幸せは、

「こなたが立派に家庭を築いて、幸せに暮らしていくことだな」

今かなたがここにいたら同じことを言ったと思う。
二人っきりでも幸せな家庭を築いてきた俺が娘に願うこと。
親にとって子どもが幸せに生きてくれることが一番の幸せだから。
常日頃娘は嫁にやらんだの、恋はまだ早いとか言ってきた俺だけど、本当にこなたが望む幸せなら喜んで祝福するさ。

「そっか、そうだよね」

返ってきたのは今にも泣きそうなくらい弱々しい声だった。

「……ごめん。お父さん、ごめんなさい」

そう言ってこなたは俯いてしまった。
待て。まだ何も聞いてないじゃないか。
大事な話があったんだろう?
謝る前にちゃんと話してほしい。

「うっ……お父さん……ぐすっ、私ね、かがみを、好きになっちゃったんだ……っ!」

そうか。こなたはあの巫女さんが好きなのか。
確かにしっかりしてて可愛いところもある子だったな。
だが俺としては妹のつかさちゃんも捨てがたい……って、えぇ!?

「なに!?こなたはリアルでマリみて、ストパニとか、そういうことなのか!?」
「プッ。お父さん、その反応は人として間違ってんじゃないの?」

涙を拭いながらこなたは笑った。
ああ、俺の娘はすごく可愛いぞ……待て、落ち着こうか俺。クールになるんだそうじろう。

「……本気、なのか?」

深呼吸してどうにか頭を整理できた。
こなたはかがみちゃんを好きで、二人とも同性ということ。
大好きな友達がいる、とかならこんな風に真剣に話す必要もないだろう。
いつの間にか娘は恋をしていたようだ。

「うん、本気。かがみもそう言ってくれた」

そうか。二人は覚悟の上でその道を選んだんだな。
例えばどこかの男を連れて、付き合ってますならいろいろと文句も、祝福することだってできただろう。
いずれ俺の元を去ってしまうのはわかってるんだから。
けど、これはすぐに認めるわけにはいかない。

「こなた、日本では同性婚は認められてないんだ」
「うん。だから、お父さんの言う『幸せな家庭』を築けなくてごめん」
「いや、それはいいんだ」

こなたが誰かと結婚して、新たな家族ができてほしいってことじゃない。
二人だけの家族で生きていくことも、一人で生きていくことだって反対はしない。
問題は世間に認められない辛さを乗り越えていけるかどうかだ。
娘には堂々と胸を張って生きてほしい。

「覚悟、してるよ」
「覚悟か……絶対に逃げないと誓えるか?ずっとかがみちゃんを離さないって誓えるか?」

生半可な気持ちじゃないと信じてるけど。
二人はもう子どもじゃない、立派な一人の人間として、強さを身につけていると思っているけど。
まだ成人していない娘には重い質問かもしれないが問わずにはいられなかった。

「……誓うよ。お父さんに、亡くなったお母さんに」

しっかりと俺の言葉を受け止めて、こなたは力強く頷いた。
その瞳はどこまでも真っ直ぐで、俺が生涯愛すると誓った人の目にとてもよく似ていた。
そうだったな。こいつは俺とかなたの子どもだもんな。

「俺はかなたを世界中で一番愛してる。それは今までも、これからも絶対変わらない」

そしてこなた、俺はお前をかなたの次に愛してる。いつまでも、な。

「だから、俺はお前を信じる。誰がなんと言おうと、俺にとってかけがえのない娘なんだ」

立ち上がってこなたに歩み寄り立たせる。
セクハラとか言うな。今くらい俺の胸に抱きしめさせてくれ。

「お前の幸せは俺が守る。お前はかがみちゃんとめいいっぱい幸せになってくれ」

この日だけは珍しくこなたが弱さを見せて、俺が父親として輝いていた。



「正式には無理とはいえ、こなたをお嫁さんにやらにゃいかんのか」

落ち着いたころ、笑いながらそんなことを言ってみる。

「いやいや、かがみを嫁にもらうことだって」
「そうか?見た目的にもなぁ。こなた、お前はかなたに似ていいお嫁さんになれるぞ!」

ビシッと親指を立ててみせる。
まぁあれだ。ちょっと願望やらなんやらが混じってるかもしれんが。
何を想像したか知らんがこなたは赤くなっていた。初やつめ。

今日くらいは最後もしっかり決めさせてもらおうか。
小さな娘の頭に手を乗せて、俺は部屋に佇むそれを見ながら言った。

「こなた、いつか二人でかなたにも誓ってくれよな」
「うん!」



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コメント:
  • 本当にこなたを愛しているね。この人は。
    -- 名無しさん (2013-01-28 21:17:07)
  • いい親父だ -- 名無しさん (2010-07-15 08:00:47)
  • そうじろう格好いいぜ!! こなたはいい父親に恵まれたな -- 名無し (2010-07-15 01:41:23)
  • 愛があれば乗り越えていけるさ… -- 名無しさん (2009-09-17 22:16:04)
  • そうじろう…やるときゃやる男だなっ! -- 名無しさん (2009-06-10 22:20:06)
  • そうじろうさんが輝いて見える -- 紫電 (2009-06-10 19:24:33)
  • そうじろうがかっこ良く見えてきた…? -- 名無しさん (2009-05-03 07:53:32)
  • ちょっと潤っと来た。素晴らしい親子関係に乾杯です! -- こなかがは正義ッ! (2009-05-01 15:06:27)
  • 親子の決意ですね。GJです! -- 名無しさん (2009-05-01 02:41:47)


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