こなた×かがみSS保管庫

1月5日

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匿名ユーザー

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泉こなたは、悩んでいた。
今、自分の中に存在するもやもやした気持ち、その正体がつかめないことに。
1月5日、昼。こなたは親友の柊かがみと一緒に軽く昼食をとろうと、喫茶店に寄った。
こなたが頼んだのはチョココロネ。かがみが頼んだのはこの店において有名なチョコパフェ。
かがみは甘いものが好物であるが故に、すぐに平らげてしまった。
だが、こなたは未だチョココロネの半分も食べ終わっていない。好物であるはずのチョココロネ、その食が進まないのは、ひとえにかがみに見惚れていたからだ。
何故、自分はこんなにかがみのことが、その一挙手一投足が気になるのか。こなたは内心、自問自答を繰り返す。
思えば、昨日まではこんなことはなかった、だから、その謎を解く鍵は今日の二人のお出かけに何かあったのだろう。
こなたは,回想する。今日の今までに至る経緯を。今、自分が感じているこの気持ちの理由を、その意味を知るために。

今朝、パソコンに保管していた、かがみの写真のデータ。それを従姉の小早川ゆたかに見られたことで、二人の仲の良さを知っているゆたかが気を回し、こなたとかがみのコンタクトを取る架け橋となった。
こなたは、親友であるかがみと一緒にいると楽しい。故に、従姉の用意してくれたこのチャンスに甘え、年始とは言え、強引にかがみを誘って外出した。
いつも一緒に外出する時は、アニメ○トやゲ○ズといった、こなたの趣味に合わせた店に行くことが多い。
そして、掘り出し物のグッズを探す。かがみはそれに渋々ながら付き合うというのが、いつもの二人のパターンだった。
 だが、その‘いつも’の状況に今日は今まで予測していなかった出来事が発生した。

「うぅ~、後、少し……」
こなたは高校生とは思えないほど身長が低い。それは本人にとって密かなコンプレックスだったりするのだが、その身長の低さが災いし、高い所にある目的の品には、中々手が届かない。
それでもオタクエリートを自称する彼女にとって、その程度の理由で目的の品を諦めるわけには行かない。
 多少の無茶は承知の上で、無い身長を最大限に伸ばす。だが、現実とは虚しいもので、その努力も甲斐なく、結局手が届かない。それでも、こなたの中に眠る父親から受け継いだオタク魂。その意地に賭けて、再び、身長の上では決して届くことの無いグッズに手を伸ばす。
と、無茶が祟ったのか、爪先立ちとなっていたこなたのバランスが崩れる。あ、と思ったときにはもう遅い、一瞬の後には倒れてしまうだろう。
こなたはその衝撃に耐えようと、ギュッと目を瞑った。が、いつまで経っても予想をしたような痛みは走らない。
そして、その代わりというべきか、温かい、本当に温かくてそして柔らかいものにこなたは支えられていた。
「ほい、大丈夫か?」
その声におそるおそる目を開けると、こなたは、かがみの腕の中に包まれていたことに気が付いた。
「かがみ、いつの間に?」
こなたの問いに、僅かに頬を赤らめながらかがみは、
「ずっと見てたの。あんたってば絶対に届かないところにある商品を取ろうとしてるんだもん。
危なくって、なんて言うか……そう、ほっとけなかったのよ」
そう言って、かがみは一瞬、ほんの一瞬だけこなたをギュッと抱きしめた。かがみはこなたより身長が10センチ以上高い、自然、こなたはかがみに完全に包まれる形になる。
その瞬間の温もりが、間近で感じるかがみの匂いが、こなたに今までツンデレキャラとして見て来た、柊かがみという親友に対しての認識を書き換えた。
だが書き換えられた認識は一体どういうものか。確かに何かが変わった、だが変わったその認識に対して、こなたはそれがどういうものなのか、霧の先に隠された道の様に翳んでしまい、その答えを、出すことが出来なかった。

「こなた、どうしたの?」
 かがみの言葉にハッと現実に戻されるこなた。
 手元に残された食べかけのチョココロネ、だけど、すっきりとしないこの気持ちの中では、もう食べる気がしなかった。
「あ~、じゃあ、残すんだったら頂戴。パフェだけじゃ流石に足りなくてさ」
 照れたように顔を赤らめ、食べかけのチョココロネに手を出すかがみ。
 数々のギャルゲーをクリアしてきたこなただから分かる。これは、間接キスだと。
 それを思った時、こなたの中のもやもやとした気持ちが一気に頂点に達し、体中がかぁっと熱くなった。
「え、えっと、かがみんや……」
「ン、何?」
 こなた食べかけのチョココロネを頬張りながら、かがみはこなたの顔を直視する。こなたを見つめるかがみの視線には親友としての気遣いが浮かんでいた。
「ん……何でもない」
「? 変なこなた。今日はどうしたの? 朝早くから電話してくるし」
 かがみの突っ込みに、こなたはどう答えるか一瞬迷う、ゆーちゃんのちょっとした悪戯だよ。それが正確なところ。だけど、こなた自身、かがみに会いたかったことは事実。
「……私は、折角だからお年玉を使いたいと思ってね。ついでにかがみの分のポイントも欲しくて」
「はいはい。どうせそんなことだろうと思ったわよ」
 呆れたようにため息をつくかがみ。その仕草に、胸が痛む。
 何で、いつものやり取りのはずなのに、何で。こんなに苦しいのだろう。
 先程、かがみに抱きすくめられた時の温もりが蘇ったような気がして、こなたは、かがみの顔を見ることができなかった。

「じゃあ、お昼も食べ終わったことだし、今度は私の用事に付き合ってくれる?」
 伝票を手に、立ち上がるかがみ。‘付き合ってくれる?’その一言が、こなたの気持ちを、今度は盛り上げてくれた。
 かがみが私を必要としてくれている。その気持ちが、嬉しかった。

「そろそろ春物の服も欲しかったのよね。お年玉も貰った事だし,ちょっと奮発しようかな」
 かがみに連れて来られたのは、服飾関係のお店。
普段のこなたには全くといっていいほど縁のない場所だ。故に、かがみと共に入った時、並べられた服飾に対してチンプンカンプン。
「こなたは、どんな服がいい?」
「え~、そう言われても……」
「全く、あんたも、少しはこういうことに興味を持ちなさいよね……こなただって、磨けば光ると、思うんだからさ」
 かがみの最後の言葉は、小声になっていたため、こなたには聞こえなかった。だけど、かがみがこなたの事を気にかけていることは雰囲気で察することができた。
「むぅ、まぁかがみの心遣いはありがたいけど、今は私はいいや。これからDVDの限定ボックスもあるし、コンプ祭りもあるからね。お金は大事に取っておかないと」
「それが、さっき山ほどグッズを買った者の言う台詞か……」
「これもオタク道の一環なんだよ」
「全然分からん……まあ、いいわ。すぐに決めてくるから、ちょっとここで待ってて」

 そう言うとかがみは店の奥へと入って行った。残されたこなたは手持ちぶたさとなり、やることも無いので、少し店内を見て周る。
 と、アクセサリーの類が店頭に並んでいるのが目に入る。大小様々なアクセサリーは、シンプルなものから中々凝ったデザインまで、結構な数が並んでいた。
 こなたは並べられたストラップの一つに目を留める。イルカが波の上を飛び跳ねている、という形をした、まぁお土産としては割合ありがちなものだろう。
 だが、こなたの目を引いたのは、それだけではなく、このストラップどうやらイルカと波の部分で、二つに分けることが出来るらしいということだった。
「お客さん、何かお探しですか?」
 と、店員と思わしき「白石」とネームプレートを下げた人物がこなたに声をかける。
「えっと、このストラップなんですけど」
 こなたが訊ねると、「白石店員」は得心したように、
「ああ、これはこうやって二つに分けて、よっこいしょういちっと。
 渡したい相手と、自分の間で持つことで、永遠の友情が結ばれるって言うジンクスがあるんですよ」
 二人で一つ、という意味なのだろう。こなたはしばし考え込んだ末に、
「これ、ください」
 そのストラップを購入した。そして、ほぼ同時期にかがみも買い物を終えたらしく、
「お待たせ、こなた。行こっか」
 買い物袋を抱えていない方の手でこなたの元に差し出す。自然、こなたはその手を取ると二人で、お店を後にした。

「あ~、白石君」
「なんすか、店長?」
「今のストラップって、恋人がその想いを重ねるって意味じゃなかったっけ?」
「え!マジッすか……」
「まぁ、いいんだけどね」

 買い物を終えて店を出ると、既に日は傾きかけていた。
「ありがとね、かがみ。今日は急に誘ったのに、一緒に出かけてくれて」
「いいって。どうせ受験勉強ばかりじゃ息が詰まるところだったし。こっちこそいい気分転換になったわよ」
 そう言って微笑むかがみ。黄昏の茜色に染まったその表情は、見るものをハッとさせる美しさがあった。
「あ、あのさ、かがみ……」
「ん~?」
 もうすぐ今日という日が終わる、そうすると、かがみとしばらく会えない、少なくとも今日のようにコンタクトを取らなければ会う機会が、無い。
 こなたは意を決すると、先程買ったストラップをかがみに差し出した。
「こなた、これ……」
「これね、二つで一つのストラップ。私とかがみで片割れずつを持って、いつでも一緒に繋がっていたいな……ダメ?」
 最初は予期せぬプレゼントに戸惑っていたかがみ。だが、その表情が段々と緩んでいく。
「ありがと、こなた。大事にするからね」
 その言葉は、今日聞いた中で、最高の言葉だった。

 家に帰ったこなた。普段ならそのままアニメかゲームへと突入するのだが、それをせず、パソコンを立ち上げると「kagami」フォルダを開いて、かがみの写真を眺める。
 今朝、眺めていた時とは明らかに違うこの気持ち、胸の辺りがもやもやして、それでいてくすぐったい様な、不思議な感覚。
 なんなんだろうね、この気持ちは。
 ……分からないことは、みゆきさんに聞けばいいか。
 そう思ったこなたは、友人の一人で、ある意味知識の宝庫といえる高良みゆきに連絡を取った。
「もしもし、みゆきさん?ちょっと聞きたいことがあるんだけど――」

 相談を持ちかけられたみゆきは、すぐに察した。その気持ちは、概念としては理解していて、知識としては知っていても、当事者になってみると意外と気が付かない。
 第3者が、こなたの話を聞いたら、10人中8人はこう答えるだろう。
 その気持ちは‘恋’であると。




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