無題(H2-209氏)(仮)3

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大分落ち着いたのだろう、今はすぅすぅと気持ち良さげに眠るかがみ
私はするべき事を終えて、手持ちぶさたになった右手でかがみの髪を鋤いていた
かがみのトレードマークでもあるツインテールは解かれている
初めは何気なくした行為だったのに、手を動かす度に触れる感覚が気持ち良くて、私は何度も、何度も繰り返していた

かがみは今、私のベッドに寝ている

あの後、私は倒れたかがみを抱えて保健室に駆け込んだ
冬木先生に診てもらったところただの風邪らしい、安静にしていれば大丈夫とのことだ
直ぐにつかさとみゆきさんに電話して事情を説明、もう少しで来るであろうお父さんの車でかがみを柊家まで連れて帰ると言ったところ

ごめんね、こなちゃん!今日家に誰もいないんだ…だからこなちゃんの家で暫く看ててもらえないかな?

とのお言葉
つかさが帰れば…とか色々と突っ込み所があったのにそれをしなかったのは、単に私がかがみの看病をしたかったためだった

つかさ達との電話を切った後で、今度はゆーちゃんに電話する
体調を崩しやすいゆーちゃんに、病人のかがみを近づけたらどうなるのか?
結果は明らかで、おそらく一番責任を感じるのはかがみだからだ
少ししてゆーちゃんと電話が繋がり、再び事情を説明する

大丈夫だよ、今日はみなみちゃんの家でみんなとお泊まり会するんだ~

との事、電話を切る前にゆーちゃんは
お姉ちゃん、頑張ってね!
と意味深な発言を残していった

その後お父さんが到着、ここでも事情を説明し、家に向かう
家に着いた後は、さすがにそのまま寝かす訳にもいかず、汗を拭き、着替えさせてから(私のスウェットがギリギリ入った)ベッドに寝かせて今に至る

額に乗せてあるタオルを変える事数回、ベッドからギシッと音がした

「う…うん?」
「かがみ!目が覚めたんだね、大丈夫!?」
「あれ…私‥?ここは…こなたの家?」

目を覚ましたかがみは状況を把握しようと体を起こし辺りを見回わたそうとする
それを見て私は慌てて無理に体を起こそうとするかがみをなだめ、再び仰向けの体勢に移した

「そうだよ、何も覚えてない?」
「いや、確か…あんたに引っ張られて……」

ぶつぶつと呟きながら思考の海に沈んでいったかがみは、暫くすると難しい顔をして口を開いた

「靴を履き替えてから……私…どうなったの?」

説明無しで、いきなり友達の家で寝かせられていたらそうなるだろう
私からも訊きたいことがあるので、とりあえず状況を簡単に説明する

「成る程…二,三質問が有るけど良いかしら?」
「何でも訊いてくれたまへ~」

それじゃあ、と 続けるかがみ

「まず最初に、何で私はこなたの家にいる訳?」
「かがみが倒れた後につかさに電話したのだよ、そしたら今日は家に誰もいないから迷惑じゃなかったらこなちゃんが看病してあげて~って言われて」

額に手を当ててため息を吐くかがみ、その口からは小さく「まったく…」とか「あの子は…」と声が漏れていた

「まぁ良いわ、それじゃ次ね。私みたいな病人が来たらゆたかちゃんは危ないんじゃないの?」
「大丈夫ダヨ~ゆーちゃんは今日みなみちゃん家でお泊まり会だって!」
「なら良いんだけど…」
「それで質問は最後カナ?」
「………」

何故か続く沈黙、理解できずに首を傾げる
暫くすると意を決したのか、顔を真っ赤にしたかがみが消え入りそうな声で沈黙を破った

「ぁ…えと…その、服と髪をやってくれたのはこなた…だよね?」
「うん、そうだけ…ど……」

再び流れる沈黙、先程と違うのはかがみだけではなく私の顔も真っ赤になっている点だけ

「いや、そのね!かがみ凄い汗かいてたからそのままだと悪化すると思って…
だから決してやましい気持ちとかは無くて…」

必死に説明しようと口を開くが、出てくる言葉は全部が言い訳じみていて、焦っているのが自分でも良く判る
実際我慢してたのだ
間近で見るかがみの肌はとても綺麗で、時折手に当たる感触はずっと触っていたくなるくらいで
静かに寝息をたてているその唇に自分のを重ねたくなったのも一度ではない
私はそんな数々の誘惑を乗り越え今てここにいるのだ
この弁解をかがみはどのように捉えたのか申し訳なさそうに口を開く

「そうだよね、……私のせいで色々させちゃってごめ「かがみ」

遮り、続ける。私はかがみにそんな顔をしてほしくはない

「私が聞きたいのはその言葉じゃないな~」
「……うん、ありがとう!こなた!」

そう言って浮かべたのは満面の笑み
それを見て私も笑う。改めてこの人が大好きだと実感する
だから……

「私からも質問があるんだけど良いかな?」
「別に良いけど、どうしたのよ?」

私を見るかがみの視線に、少し困惑の色が入る

「かがみは……下駄箱の辺りから記憶があやふやなんだよね?」
「そうよ、それがどうかしたの?」

改めて訊くのは勇気がいる
「ん~じゃあ、あの質問も覚えてないんだよね?」
「あの…質問?」

先程の最悪の状況が頭を掠める
声を出そうとしても震えて上手く音にならない
それでも、この疑問を解決しないと泉こなたは前に進めない
覚悟を決めて、深呼吸をして

「かがみさ、彼氏出来た?」
「………は?」

それこそかがみは目を点にして呆けている

「いやね、さっき校庭を歩いてる時に私が訊いたんだ、彼氏出来たか?って。
そしたらさ、かがみが‘うん’って言ったから……
でも下駄箱から記憶が曖昧になってるみたいだしどうなのかな~と思って」
「いや、ちょっと待て。本当に私がうんって頷いたのか?」
「うん」

かがみが私の顔をじっと見る、暫くの間絡まる視線
かがみがそこから何を得たのか私には解らないが、視線を外し、ため息をついた

「いないわよ」
「へ?」

あまりにあっさりと言われて、自分に都合が良い幻聴ではないかと疑ってしまうほど

「だからいないわよ!あ~もう、何回も言わせないでよね!」

でも顔を真っ赤にして否定するかがみがそれを現実だと知らせてくれる

「はぁ…良かった……」
「アンタ、それは何気に酷いな」

安堵のためか、つい口からでた独り言に突っ込まれて焦る
いつもならからかって終わるところ、でももう二度とあんな思いはしたくない

「酷くはないよ」
「え?」

突然変わった声色にかがみが少し驚く

「人間って身勝手だからネ、自分が一番大切なんだヨ」
「は?アンタは何を言ってるの?」
「かがみが…かがみに彼氏が出来たって聞いたとき、正直世界が終わったかと思ったんだ」
「………」
「最初は大丈夫だと思ってたんだ。かがみが誰かを好きになっても、私は喜んであげられる……そう思ってた」

かがみは黙って私を見てる
恥ずかしくて、怖くて、泣きそうで…視線を外したくなるのを必死で堪える

「でも違ったんだ、出来なかった…
嫌だった!かがみが、誰かに‥とられる…なんてさぁ…」

泣きながらでも続ける、自分の気持ちが何も考えなくても口から溢れてくる

「だからっ…後悔は、したく‥ないから…
女、同士で‥気持ち悪いって、思う…けど、それでも‥これが、私の気持ちだから…」

一旦言葉を切って、気持ちを落ち着かせる
今から言うのは滅びの呪文、または始まりの合言葉
その言葉を私の口が紡ぐ

「私は、貴女の事が好きです。ずっと、ずっと前から好きでした」

本日三度目の沈黙
かがみは、ただ静かに私を見ていた

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

何分経っただろう、その数分間が私にはずいぶん長く感じられた
その沈黙を破ったのはかがみ

「私は…」

次に来る言葉に備える
かがみがあれだけ真剣に考えた結果の答えなんだ
だから……それが例え拒絶の言葉でも私は素直に受け止める、受け止めてみせる
筈だった

「…わからない」
「……へ?」

予想外の返答に思わず気の抜けた声が出る
告白の返事が‘わからない’?
むしろこっちがわからない、今までやってきたギャルゲにもこんな展開は無かった
とにかく私はかがみの言葉を待つしかなかった

「こなたの事は好きよ、でもそれは友達としてで……こなたは違うのよね?」

優しい声に頷く、申し訳なさで思わず涙が出そうになるのを顔を俯けて堪える
私が頷いたのを確認したのだろう、かがみが続ける

「私は………正直こなたの事を恋愛対象として見たことがなかったわ。でも……」
「でも、こなたに告白された時、何故かはわからないけど嫌だとか、女同士で気持ち悪いとかは思わなかった。
むしろ、多分嬉しかったんだと思…う」

後半に差し掛かるにつれて声は小さくなる
この時、初めて‘わからない’の本当の意味に気がついた

腕で強引に涙を拭い、顔を上げる

つまり、かがみは今、初めて私の事を意識した
今まで私に対する気持ちは友達としての好きという一つの答えしかなかったのが
私の告白で、もしかしたらそれは恋愛感情の好きなのかもしれないというもう一つの答えが生まれた
そして多分かがみはその両方の可能性を捨てきれなかった
かがみは真面目だからそんな中途半端な気持ちのまま付き合うなんて出来ないし
かがみは優しいから、私の本気の気持ちには本心で応えたかったんだと思う
だから‘わからない’なんて答えになったのではないか?

あまりに自分に都合の良い解釈に少し苦笑する
しかし、まだチャンスがあるのは事実だ
わからないって事は好きでも、嫌いでもない
後は私次第

「かがみは……私の事が嫌いじゃないんだよね?」
「そうよ、でも…」
「どの好きかわからないと」

黙って頷くかがみ
それを見て一つ閃く、先程の光景が頭に思い浮かぶ

「かがみ、目を閉じて?」
「?」

かがみは疑問符を浮かべたものの、素直に目を閉じた

「じゃあ想像して?」

コクリと頷いたのを確認して口を開く

「私に彼氏ができたとして、かがみは素直に喜べる?」
「………」

目をギュッと閉じている所を見ると、おそらく必死で想像しているのだろう

「答えはいつでもいいからさ、今はとりあえず体を休めてネ」

かがみを困らせたい訳ではないし、答えを急かしたい訳でもない
今は早く元気になって欲しかった
紫の髪を二、三回撫でてベッドの側から立つ
傍に置いてあるタオルと温くなった水で満たされている洗面器を持って部屋を出ようとした時、それは聞こえた

「私、こなたが好きだったんだ……」

あまりに小さく、あまりに都合の良い答え
しかし、それは私の足を止めるのには十分な威力を持っていた

「か、がみ?今、なん…て?」

足元に洗面器を置き、ふらふらとかがみに近寄る
対するかがみは一瞬考えた後、顔を真っ赤にして布団を被ってしまった
先程と同じように座る、暫くするとかがみは顔を出して、体を起こした
そして一回深呼吸

「こなた」
「何?」
「……私ずっと考えてた、こなたに比べれば何十分の一かもしれないけど、必死に考えた」
「うん」

かがみが言葉を紡ぐ、その一言一言が私の心に広がっていく

「今まで私はこなたの事を一番の親友だと思ってた……違うわね、思おうとしてた。
私が高校に入学してからの楽しい思い出にはいつもこなたがいて、辛かった時もいつも傍にいてくれた。
支えてくれていた
だからこの関係を壊したくなかったんだと思う…

でも、今こなたに言われて、想像して、違うってやっと気づけた
知らない相手に笑い掛けるこなたを想像して腹が立ったし、こなたの笑顔が誰かに向くのが嫌だった
子供みたいな独占欲と嫉妬が私の中にあった
それで気がついたの………私の中にあったのは友情じゃないって」

かがみが一旦言葉を区切る
そして私に手を伸ばし、目尻を拭う
かがみの指が触れて、初めて自分が泣いている事に気がつく
そんな私を見てかがみは微笑んだ

「私は……私も好き、こなたの事が大好き」

妄想が現実になる
言いたい事が沢山あるのにそのどれもが言葉にならない
嬉しいのに、本当に嬉しいのにそれを表現出来ないのがもどかしい

気がつくとふと感じる暖かさ、顔を上げると微笑みを浮かべるかがみがまさに目と鼻の先

「こなた……」
「か、かがみぃ……」

ありったけの思いを込めて大好きな人の名前を呼ぶ
涙が自然に溢れてくるが、拭おうとは思わなかった
今はただ、かがみだけを感じていたかった


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


そのままどれ位時間が経っただろう
気持ちも落ち着いて、涙も止まった

「落ち着いた?」
「………うん」

回されている腕から力が抜けた
かがみから離れる
顔を見合わせた瞬間に気恥ずかしさと幸せさで思わず笑みがこぼれた

「ちょっと気恥ずかしいわね」
「ハハハ…」

どうやらそれはかがみも同じらしい

辺りには今までにない雰囲気が立ち込めている
甘い空気とでも言えば良いのか、今なら何でも出来そうな気がした

「ねぇ、かがみ?」
「何?」

心なしか、声から堅が取れた気がする
そんな事が、今はとても嬉しかった

「キス……しない?」

え?と顔を赤らめるかがみに向かって顔を近づける
30㎝…20㎝…10㎝…5㎝…
距離を縮めるに従って大きくなるかがみの顔
あと少しのところで私は目を瞑る
残りの距離は曖昧だけど約3㎝…
距離を詰めようとして、唇に何か当たる感覚に思わず目を開ける

「………」
「………ねぇ、かがみ?」

視線の先には顔を真っ赤にしてそっぽを向くかがみ

「流石にコレはちょっと私も傷付くヨ」

その右の人差し指と中指は、私の唇を押さえつけていた

「だって…」
「だって?」
「………したくないもん」
「え?」

それは呟くような小さな声で微かに聞こえた
でも確かにしたくないとかがみは言った
瞬間、悪い想像が頭の中に渦巻く
悪い想像がさらに悪い想像を呼ぶ負の連鎖

「だからっ!こなたに風邪移したくなかったの!!」

それを断ち切ったのはかがみの一言
思わず安堵のため息がこぼれる……と同時に、かがみの一言一句に一喜一憂している自分が、どうしようもなくかがみのことが好きだと思い知る

「私は気にしないのに……むしろかがみに移されるならそれも本望っ!!」
「私が気にするわ!」
「ん~じゃあ風邪が治ったら良いのかな?」

いつも通りの猫口顔で、かがみをからかう
いつもと違ったのはかがみの返答

「……良いわよ、そのかわり…」
「そのかわり?」
「初めてなんだから……忘れられないようなのをお願いね!」

語尾が強いのは照れ隠しだろう
私は、照れながらも笑うかがみに瞳を奪われ、言葉に詰まった
そのうちに、かがみも自分の言葉に気がついたのか顔を真っ赤にして黙り込んでしまう

今度の沈黙はくすぐったいような、甘酸っぱいような、今までに経験したことがない不思議なもの

「まっ、任せといてヨ!ってもうこんな時間だ、晩御飯作らないといけないから下に行くね」

この雰囲気に耐えきれずに、逃げるように立ち上がる

「あ、こなた!ちょっと…」

ドアの前に来たところでかがみに呼び止められる
チョイチョイと手で招かれるままかがみに近づいていく

「何?かがみ?」
「今はこれで我慢してね?」

両手で顔を押さえられ、手前に引き寄せられ………
額に柔らかい物が押し付けられる
それがかがみの唇だと気がつくのに、そう時間はかからなかった

「~~~っ!!」

孔明もビックリの不意打ちに思わず飛び退いて額を押さえる
かがみにキスされた場所は未だに熱を持っていて、その熱が広がるように顔が赤くなるのがわかる

「じゃ、こなた、おやすみ」

そう言うとかがみは布団に潜ってしまった
1人その場に立ち尽くす訳にもいかず、今度こそ逃げるように部屋から出る

顔は未だに真っ赤で、額にはまだかがみの唇の感触が残っている
その柔らかい感触、かがみの声、その一つ一つを思い出す度に顔がにやけるのを止められない

「かがみのくせに……覚えてなヨ」

誰に言うでもなくそう呟いて、私は高鳴る鼓動をそのままに台所へと向かった




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  • 孔明もビックリ吹いたwww -- 名無しさん (2009-03-26 17:21:22)


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