――やだよ!!何で言ってくれなかったの!?
――ごめんね、言い出せなくて……。
――やだやだぁ!!かがみと離れるの嫌だぁ!!
――こなた……ごめんね!!
――かがみ!?かがみぃ!!
――サクライロノキセツ――
『……かがみが居ない世界なんて……いらない……さよなら……』
「……あっちゃー……BAD ENDになっちゃった……」
どこで選択肢を間違えたのだろうか……。
「桜並木の道」……新しく発売されたエロゲだけど……難しい……。
このエロゲは珍しく付き合う相手の名前を決められる。
……真っ先に思い付いたのがかがみ……。
「……んもう!!選択肢が多過ぎて分かんないよー!!お手上げー!!」
恐るべし桜並木の道……。
「……かがみ……元気してるかなぁ……」
そういえばかがみと別れたのもちょうど今頃だっけ……。
……酷いよかがみ……私を置いていくなんて……。
それは突然の話だった。
かがみが急に引っ越しをするって……。
かがみは元々卒業したら一人暮らしをする事を決めていたみたい、でも……私達には何も言ってくれなかった……。
この話を聞いたのは卒業してから少し経った日の事。
つかさから連絡があってすぐにかがみに会いに行ったよ。
まだかがみは居たんだけどね、もう荷物がまとめられてたよ……。
かがみは私が来た事に驚いていたみたい、でもね……私の方が驚いたよ……そして……悲しかったよ……。
私とかがみは恋人同士だ。
世間では許されない関係だけど私達は恋人同士だ。
忘れもしない桜が舞い散ってたあの場所……。
確か私がかがみを呼び出したんだよね……。
いつからだったかな……かがみを好きになったの……。
恋は盲目というけど私もそうだった、だって気がついたら好きになってたんだもん!
でも……悩んだ、かがみは女の子だし……なによりお父さん達が許してくれない……。
悩んだ、悩んで悩んで、ゲームも出来なかった。
でもね、お父さんが言ってくれたんだ。
――お前の幸せは俺の願いだ、恋に境界線は無い――
お父さんにはバレバレだったみたい、私はその場で泣いたよ……。
それで……かがみに告白しようとして……呼び出したんだよね……。
その時は綺麗だったよね……桜の吹雪が辺り一面に広がってて……。
アニメの主題歌にもあるサクライロノキセツだったね……。
……でも……私……中々告白出来なかった……かがみの顔を見る事が出来なかった。
ずっと下を向いて……何を話せばいいのか分からなくて……頭の中が真っ白になってもうこんがらじゃって……。
かがみを困らせちゃったよね……本当に……ごめんね……。
……でも……かがみは私の頭を撫でてくれたよね、ずっと俯いてる私の頬を撫でてくれたよね。
かがみの手は暖かくて……なんか上手く言えないけど……うん……嬉しかった。
それで私……泣いちゃったんだよね、かがみの優しさに触れたからかな?
泣いて、泣いて、もう頭の中がむちゃくちゃになって、かがみを見る事が出来なくて、惨めな所を見せちゃって、申し訳ない気持ちで一杯で……。
この時私はもう嫌われたと思ったよ……。
……その時かがみは何て言ったと思う?
……分からないよね?私も予想してなかったもん、だって……だって……。
『大好きだよ、こなた』って言ってくれたんだよ!?
泣いている私に言ってくれたんだよ!?
告白出来なかった私に……言って……くれて……。
もうその一言が嬉しくて嬉しくて……!!
泣きながら好きって言ったよ……何十回も何百回も……。
……ずっと抱き締めてくれたよね、夜になって寒さに震えてた私を……温めてくれたよね……。
私の涙をハンカチで拭いてくれたよね……その時のかがみの笑顔……忘れられないよ。
今思えば卒業までずっとかがみと一緒に居たなぁ……。
朝はつかさも一緒に登校して、昼はみゆきさんも一緒に四人で弁当を食べて……あ、私はチョココロネだったかな。
それでかがみは手作り弁当を持ってきてくれたんだよね……あの時のツンデレは最高だったよ……。
……放課後、二人きりでアキバにデートしたり家に行ったりして過ごしたよね……。
気がついたらあの桜はもう無くなってたよね、あの時私は不安だったんだ。
いつかかがみもこの桜の様にいつの間にか居なくなっちゃうって……。
……それからすぐにかがみの引っ越しが私の耳に届いた。
ずっと一緒に居られると思った、側に居てくれると思った、離れ離れになるなんて……思っていなかった……。
嘘であってほしかった、悪い夢なら覚めてって思った……でも……本当の事だった……。
……泣きながらかがみを引き留めたんだっけ……行かないでって言って、かがみの腕を引っ張って、小さな子供が親にやる様に……。
……でもかがみは行っちゃったよ……!
泣きながら追いかけた私を置いて……!
その時はもうショックでずっと泣いて過ごしてた、自分の部屋に籠もって泣いてた。
ゆーちゃんにも迷惑をかけちゃったね、ごめんね……こんな駄目な姉で……。
それで気を紛らわそうとしてエロゲをやり続けたんだよね……画面上の相手をかがみと思って……。
目の前の現実から目を逸らして、絶対に裏切らない二次元の世界に逃げて、逃げて、逃げて……!!
…………寂しかった。
ねぇかがみ、私の事嫌いになっちゃったの?
何で手紙もくれないの?何でメールしてくれないの?
何で……電話してくれないの?
駄目なんだよ……かがみじゃなきゃ……。
二次元のキャラじゃなくて……かがみじゃなきゃ……駄目なの……!!
この寂しい気持ちを無くしてくれるのは……この世界でただ一人、かがみじゃなきゃ無くならないの……!!
お願いだよぉ……会いたいよぉ……あれからもう……2年も経つんだよぉ……。
私はどこまで待てばいいの?いつまで頑張ればいいの?
二人じゃなきゃ頑張れないよぉ……!!
「こなたー!!お前に手紙が届いてるぞー!!」
下からお父さんの声が聞こえてくる、私はそのまま操られたかの様にフラフラしながら居間に向かう。
「……こなた……泣いていたのか?」
お父さんの表情が曇る。
あれから私は成長していない、寂しいから泣く、かがみが居ないから泣く……そんな生活の繰り返し。
「……差出人が不明な手紙なんだが……こなた宛てなんだよ……」
差出人が不明……?
……私……手紙を送った記憶無い……。
「取り敢えず読んでみたらどうだ?」
言われるままに封筒を開ける。
……開けたその刹那、私の脳内に懐かしい記憶が蘇ってきた。
――ちょっとこなた……。
――エヘヘ……見てみて!!赤いリボン!!
――何よ、運命の赤い糸とでも言いたい訳?
――こうしていればいつでも繋がってるでしょ?
――う……そ、それもそうね……。
――お?デレた?デレた?
――うっさい!!一言余計だ!!……元々繋がってるでしょ、私とこなたの心が!!
――ツンデレ萌えー!!
――ツンデレ言うな!!どこがツンデレなのよ!!
――そこは脳内変換!!どんな時でも私のフィルターは働くのだよ!!
――威張れる事じゃないでしょ!!全くもう……。
――……ずっと一緒だよね……。
――……当たり前でしょ、こなたが嫌だと言ったって側に居るわよ。
――じゃ、その証拠に……ん……。
――っ!?……ん……。
――……ごちそうさまでした。
――……もう……。
あはは……あの頃は輝いてたなぁ……かがみが側に居てくれて……。
……そう、あの赤いリボンがこの封筒の中に入ってたんだ……!
「……手紙が……」
そしてルーズリーフに書かれた……物凄く適当だけど……私の心に響いた一文……そして見慣れた文字で……。
『桜吹雪の中で、貴女を待ってます』
その時、私は家を飛び出していた。
見慣れたあの文字、桜吹雪、あの赤いリボン……!!
外は寒くて冷たい夜だったけど私は知らなかった。
こんなにも暖かな光に満ち溢れていたなんて。
夜空で月と星が流れ星のダンスを舞っている。
走っている内に流星が私を包み込む。
ゲームでいったらどこかにワープする時のような景色、星が私の行く場所を導いてくれる。
……そして着いた。
桜吹雪……2年前私が……かがみに告白したこの場所……。
その時一陣の突風が走った、周りを見るとあの時の様に桜が舞い散っている。
……あの桜吹雪の様に……そして星の光を浴びて光っている……。
幻想的で……なんとも綺麗で……見入っていた。
その刹那、また風が吹いた。
桜が舞い上がる。
……その時私は自分の目を疑った、何回も目を擦った、泣きすぎて幻惑でも見ているのかと思った。
……桜の中に一人の女性が立っていた。
私より背が高くて……忘れもしないあのツインテール。
……その女性は振り返って……。
「桜、綺麗だね」
私の身体はその場から飛んだ。
「かがみぃ……かがみぃ!!」
2年前……あの時と同じ様にかがみは私を抱き締めてくれた、頭を撫でてくれた、頬を撫でてくれた……。
……あぁ……この暖かさ……私が求めていた……暖かさ……。
「……ごめんね、2年もほったらかしにして……」
「馬鹿!!馬鹿!!かがみの馬鹿!!」
「うん、うん……」
「寂しかった!!寂しかったんだからぁ!!」
今までの怒りと悲しみをかがみにぶつける様に叫ぶ。
「ごめんね……謝っても済まないかもしれないけど……ごめんね……」
「ひっく……えぐ……うわあああああぁぁん!!!」
かがみの胸に頭を押し付けて……泣いたよ……。
もう涙なんて出ないと思ったのに……いや、家で泣いてたね……。
かがみが目の前に居るなんて……夢みたい……夢じゃないよね……。
……そう思いたくない、夢だったらこれはなんて意地悪な夢なんだろう。
「あの頃に戻ったみたいね……」
「うん……」
抱き合いながら私とこなたは2年振りの会話をしている。
「どうして……電話とか……してくれなかったの?」
今のこなたは何というか……小動物みたい、なんか守ってあげたくなっちゃう……。
「……かがみ……?」
涙を溜めながら見つめてくるこなた……やばい、可愛い……。
「……夢?」
「夢じゃないわよ」
……つい反射的に答えてしまった。
そういえば何かこなたに質問されたわね……えーと……。
「……じゃあ……何で……電話してくれなかったの……?メール……してくれなかったの……?」
……あー……気にしてたんだ……。
「ごめんね、勉強で忙しくて……連絡出来なかったの……」
「……嫌われたのかと……思った……」
「ないわよ……そんなの……」
……あ、いや2年も連絡しなかったらそう思うわよね……勉強ばかりに熱中してこなたの事忘れてた私……最低……。
「……かがみぃ……」
涙まじりの声でこなたが私を呼ぶ。
「……もう……行かないで……」
「……こなた……その事なんだけど……」
「……えぐ……」
「ちょ、泣かないで!……最後まで聞いてね……あのね……その……こなた」
私がここに戻ってきた理由はこなたに会う為、それともう一つ……。
――……一緒に暮らさない?
「……え?」
こなたが信じられないという様な表情をする。
……そりゃそうよね……。
「それとも……後一年……待てる?」
「ヤダ」
おま……即答かよ……それもそうよね。
「だからさ……こなたも一緒に来ない?ちゃんとこなたの部屋も用意してあるし……」
「……行きたいけど……いいの?」
「……寂しかったのは私もよ、それに……2年間もほったらかしにした……償いよ」
「……ありがとう……ありがとう……かがみぃ……」
「いいのよ、お礼の言葉なんて……あぁんもう、また泣く」
問題はこなたの家なのよね……果たして許してくれるか……。
「もう許しもらったよ」
「え!?早っ!!」
まだその過程も書いてないんだぞ!?
「これも愛の力なのだよ~」
コイツは……本当変わらない……。
「はいはい、で?いつ出発する?」
「今からでもいいよ!?」
「落ち着け!!一応私も家に帰るんだから!!……その後アンタん家に行くわよ」
「ツンデレ萌えー」
「ツンデレ言うな!!」
……久しぶりね、このやり取り。
その夜、私は家に帰りつかさにタックルを受けたのは言うまでもない。
そしてこなたに一晩中抱きつかれたのも言うまでもない。
出発の日がやってきた。
「エヘヘ……」
「何よ?さっきからニヤニヤして……」
「だってさ!!これからずっとかがみと一緒に居られるんだよ!?嬉しくて嬉しくて!」
……本当アンタは変わらないわね……いい意味で。
「……今失礼な事考えなかった?」
「気のせいよ」
カンが鋭いのも変わらないか……。
……なんてやり取りをしてたら私達を乗せた電車が動き始めた。
「いざ行かん!!私達の愛の巣へー!!」
「ちょ!!恥ずかしい発言禁止!!」
全く……恥ずかしい……。
「え……?……わぁ!!かがみ!!外!!外!!」
「え……?……わぁ……」
こなたに言われるままに外を見ると……あの桜が舞い散っていた……!!
「もしかして……私達を祝福してくれてるのかな?」
「……そうかもしれないわね……」
桜は出会いと別れを彷彿させるけど、私にとって桜は再開も彷彿させると思う。
だってまたこなたと会えたんだから!!
「かがみ……大好き……」
「……私もよ……こなた」
サクライロノキセツの中で私達は出会い、別れ、再開した。
そしてその桜はこれからの私達の道を見守っててくれる。
……サクライロノキセツの中で。
- END-
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- GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-16 22:53:46)
- 凄い好きなストーリーでした! 頑張ってください -- 名無しさん (2009-03-24 02:09:33)
- もうそんな季節か…変わらないものってあるよな -- 名無しさん (2009-03-23 20:53:14)
- お前最高だ -- 名無しさん (2009-03-23 20:29:28)