white chocolate (3)

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こなたからの手紙を読むと。

私はつい、泣いてしまった。

無論、嬉し涙だったんだけれど。

私は、ますますあいつを好きになってゆく。

――――――――――――――――――
white chocolate (3)
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雪が降り出した。
朝からそんな気はしていたよ。
でも、まさかこのタイミングで降り出すなんて。
これは私への罰なのかな。
2人を傷つけてしまった、私への罰。
雪は強くはなかったけれど、寒さは充分すぎた。

今、何時なんだろう。
辺りは真っ暗で。
時間の確認はしたくなくて。
ただ、待っていた。

なんで時計を見ないのかな。
大切なのは、時間じゃないからかな。

寒い。
風は吹いていないけれど。
今の全てが吹雪のようで。

私は公園の、屋根付きのベンチ――昼間は日陰になって、テーブルもある――に座っていた。
辺りは人っ子一人いない。
当たり前か、雪だもんね。

街頭が灯っている。
真っ白な光。
でも、お世辞にも明るいとはいえない。

私は公園の広場を歩いてみた。
うまれたばかりで舞い降りた真っ白な欠片が、音もなく消えていって。
消えたら、またその上に舞い降りる結晶。
ひたすら、その繰り返し。

でも…段々と。
そこには欠片が積もりゆく。
段々と、辺りは白くなってゆく。

空からこぼれた氷の粒は、そうやって積もってゆくんだね。

私の想いも似たようなものだった。

いつからだったか、好きだった。
最初はすぐに消えてしまってわからなかったのだけれど。
だんだん、積もっていったんだ。
気付いたら、信じられないくらい深くなっていて。

少しずつ、ゆっくりと。


走っていたら、雪が降り出した。
風が冷たくて、でもそんなのは関係なくて。

もうすぐ公園に着く。
かがみなら、きっと待っているよね。


公園に着くと、公園の中央の広場に。
かがみが、いた。
あてもなく、なんとなく歩いていた。
雪の中に、寒そうにしながら。

私は何も疑わず、かがみに急いで走り寄って。

後ろから、抱きしめた。


いきなりだった。
後ろから突然抱き締められた。

すぐにわかった。
こんなにも小さな体。

こなた…来てくれたんだね。

「…遅くなって、ごめん……」

私の背中に顔をうずめて、そう言った。

「…来てくれて…ありが、とう…」

嬉しくて、涙が溢れた。

「…もう、浮気しちゃだめだよ…」

…まだ、誤解はとけてなかった。
でも、不安にさせたことには変わらない。

「…不安にさせて、ごめんね…」

こなたの抱きしめる力が強くなった。
ギュッと。強すぎず、弱すぎず。


「でもね、あれは誤解だよ?」

かがみはそう、語りだした。

今は公園の屋根付きベンチで、2人で一緒に座ってる。
こんなにも冷たくさせてしまった。
今度は、暖めてあげるからね。

「実はね…朝、げた箱に手紙が入ってたんだ」

「…聞いてないよ」

そういえば今朝、何か隠していたような…。隠していたのは、その手紙だったんだ。

「本当にごめん。言うべきだったね…」

「これからは隠し事は無し、ね」

「うん。本当、ごめん」

「いいよ…で、それで?」

私はその続きを聞きたかった。

「中にはね、放課後屋上に来て下さい、渡したいものがありますって書いてあったんだ。それでね、行ったら…相手は日下部だったんだ」

…そうか、そういうことだったんだね。

「でも…かがみはみさきちからチョコレートを受け取ってたよね…」

「それなんだけど…誤解なんだよ。あれはつい、取っちゃって」

「説明になってないよ?かがみん」

「あぁ、そうじゃなくって…ええと、なんてゆうか、あいつが落としそうになったから…」

私は思わず、笑ってしまった。

「…なんで笑うのよ?」

「だって、必死に説明するかがみが可愛いから…」

かがみは少し怒った様子で、でも喜びが押さえられない様子になって、言った。

「まったく…人が一生懸命説明してるのに酷いじゃない」

「ごめんごめん…」

「でも…また、こんな風に話せて嬉しいよ…こなた…」

…私だって嬉しいよ。
だってだって…大好きなんだもん。
かがみのことが、ね。


「私も、謝らなくちゃ」

こなたが言った。
…こなたが謝ることなんてないと思うけれど。

「かがみのこと、全然信じてあげられなかった。みさきちと何かあるって直ぐに信じこんじゃって。…ごめんね」

「そんな…こなたは悪くないわよ。私が悪いんだから」

「えー、私の方が悪いよ~。かがみは悪くないよ」

「こなたは悪くないってば」

「かがみは悪くないって」

「こなたは悪くない…って、私たちってもしかして…」

「バカップル?」

こなたは嬉しそうに言った。
バカップルか。それも、悪くないよね。

「…バカップルじゃないカップルなんて、恋人じゃないよ」

と、こなたは言った。

私は聞かなきゃならないことがあった。

「ねぇ、こなた…今、幸せ?」

「え、いきなり何言ってんの…?」

なんか照れくさそうなこなた。可愛らしい仕草。

「…しあわせ、だょ…?」

こなたは言ってくれた。

幸せ、だと。

…日下部、約束守ったよ。
日下部の想いには、私は答えることはできない。

日下部、ありがとう。

私は心で、そう思った。

「かがみは幸せ?」

今度はこなたが聞いてきた。
私は言う。そんなの…

「当たり前よ…♪」


「今更だけどさ…私が投げちゃったアレ…どこにある?」

かがみは自分の鞄から、私の想いの欠片を出した。大切に、大切に扱ってくれた。

「それさ、少しだけ返して…?今からもう一回、渡しなおしたいんだ。駄目かな?」

「いいに決まってるわよ。はい」

やっぱり優しいかがみ。
じゃ、もう一度渡すよ。

「あ、待って。私もあるから…交換しよう」

かがみは鞄から、今度は自分の包みを取り出した。

「じゃあ、はい。交換こ♪」
「交換こ…」

お互いに受け取った。

「開けていい?」

贈り物は直ぐにでも開けたくなる質。

「じゃあ、私も開けていい?」

「勿論♪」

2人で、それぞれ、開けた。

「わぁ…」

お互いに、同じように声をもらした。


そこにあったのは、真っ白なチョコレートだった。
真っ白な、ホワイトチョコレートだった。


実は私があげたのも、ホワイトチョコレートだったんだ。

「同じチョコレートだったね、かがみ…」

「そうね…。なんだか、嬉しいわね」

「私も…」

目と目が合った。

どちらともなく、目を閉じて。
どちらともなく、唇を近付けた。

それは、真っ白な、キス。
純白な、キス。


帰り際は手を繋いで帰った。
こなたを送った後、自分の家に着いた。
上の姉たちにはなんか羨望の眼差しが注がれた。

部屋に入る。
なんだか、久し振りな気がした。
今朝だってここにいたのに、おかしいね。

私はこなたに貰ったチョコレートを食べた。
甘くて、心が幸せに染まってゆく気がした。
全部食べちゃわないで、少しずつ食べよう。

入っていた箱を見ると、紙が入っていたことに気づく。
チョコレートの下にあったのは、手紙だった。

勿論それは…こなたからの、手紙。

中には、こう、書いてあった。


かがみへ

この手紙、見つけてくれた?
かがみのことだから、チョコレートだけ食べて後は捨てちゃうなんてことありそうだネ。

今でも思い出すよ。

告白した、あの日。
忘れもしない、あの日。
時が止まった、あの瞬間。

ずっとずっと、好きだった。

私の気持ちは、あの時から変わっていないよ。
変わるはずがないんだ。

多分、これから先も、ずっと。


かがみの恋人、こなたより


家に着くと、私の家族が待っていた。

お父さんはなんか感動してて、ゆーちゃんはとても嬉しそうで。

部屋に入った。

入って、かがみからのチョコレートを食べようとしたら…

「こなたお姉ちゃん、入っていい?」

ゆーちゃんがやって来た。

「ゆーちゃんもちゃんと貰った?チョコレート」

「…うん。お姉ちゃんは?」

「貰ったよ~。ほら、見て」

私はかがみからのチョコレートを見せた。

「おいしそうだね~。同じ、ホワイトチョコレートだったんだね」

「凄い偶然だよね。あ、ゆーちゃんも貰ったチョコレート見せてよ」

「ええ~。は、恥ずかしくて見せられないよ…」

なんと。そんな恥ずかしいものを頂いたの?

「実は…あのね…は、はぁとの形で…」

顔を紅くしながら、ゆーちゃんは言ってくれた。

「私たちに負けないくらいバカップルだねぇ、ゆーちゃんたち」

「うぅ~……あ、そうだ、手紙は…?お姉ちゃん、手紙書くって言ってなかった?」

見事に話題を変えたゆーちゃん。
多少強引だったけれども。

「書いたよ。ゆーちゃんも書いたんでしょ?」

「…うん」

実は私、手紙を書いたんだ。

普段から思っていること、全部。

かがみに、伝えるために。

最初はゆーちゃんが考えたのだけれど、私も真似して書いたんだ。

想いを伝えるのは、喋った言葉だけじゃない。


こなたからの手紙を読むと。

私はつい、泣いてしまった。

無論、嬉し涙だったんだけれど。

私は、ますますあいつを好きになってゆく。

窓越しに外を眺めた。

雪はまだまだ、降り止まない。
これからも、ずっと降り続けそうだった。

これから段々と暖かくなってゆく日々が来る。

春の日々は暖かいけれど、それはきっと今が寒いから何だね。

冬が寒いから、春は暖かいんだね。

当たり前のことなのに、ひどく新しい発見をしたような気がした。


2月14日。
一年にたった一度の、今日。

恋人の始まりか、恋人の確認か。
いずれにしても、それは、乙女による乙女の為の乙女の日。




fin.


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コメント:
  • 二人ともよかったでずね。 -- 名無しさん (2010-01-07 02:24:36)
  • みさおのはチョコレート、俺がもらってあげたい。 -- 名無しさん (2009-12-26 10:25:11)
  • すごく…良かったです。
    心が暖かくなりました。 -- 名無しさん (2009-02-27 21:35:45)


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