ホントの気持ち

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それは、戯れにも似た。

私とこなたが友達とは少しだけ違う関係になるのには、そう時間が掛からなかった気がする。
本当に、偶然だったのだ。

たまたま、家族で買い物に行く日にちょっと疲れているからという理由で私だけ家で休んでいて。
たまたま、こなたが突然遊びに来て。
たまたま、じゃれあっていたらこなたが私の上にのしかかるような恰好になって。
後はもうなし崩しだった。そうしなければいけないような力が、その場に働いているみたいに
お互いの唇が重なりあって舌を、体を求めあった。
そのことに関しては後悔はしていないのだけれど。

そうして、私たちの関係は少しだけ変わった。
もう友人とは呼べないんだろう。けれど、恋人とも少し違う。
愛を囁きあうわけでもない。独占したいと思う気持ちも生まれない。

多分。私たちは二人とも一人きりでは寂しくて。
少しだけ、ぬくもりが欲しくて。
依存している。その言葉が一番近いんだろう。
…そう、今日も自分自身に言い聞かせる。


しとしとと、雨が降っている。昨日の夜から降り始めた雨は
朝になっても止まずに世界を濡らし続けている。

「…ヤだな…」
窓の外を見てそう、一人ごちる。べつに雨が嫌いってわけじゃない。
ただ、休日に天気が悪いというのはそれだけでテンションが下がると思う。

ピーンポーン

家のチャイムが鳴った。誰か出るだろうと思って10秒程待ってみたけれど
一向に玄関に行く気配がいない。
はあ、とため息をついて重い腰を上げる。
「まったく、居るんだったら誰か早く出なさいよ」
自分のことを棚に上げつつ階段を下りていると、またチャイムが一つ。
「はいはーい今出まーす」

お母さんとお父さんは神社の方に行っているのかも知れないし、つかさは…
もしかしてまだ寝ているのかしら。さっき時計を見た時10時だったからそうなのかもしれない。
姉さん二人はテレビでも見ているんだろう。


玄関を開けると、見知った顔が傘をさして立っていた。


「やふー、かがみん」
「……あんた、何で来たの?」
あの日のように突然の訪問。私が居なかったらどうするつもりだったのだろう。

「なんでって…つれないね。…んー…かがみに会いに来た、とか?」
「うそ」
笑って言うと、こなたもくすりと笑みを零す。
私たちの関係はそんなに甘いものじゃないはずだ。
「そうかも。……じゃあ、雨が降ってたから、とかは?」
「理由になってないじゃない」
ああ、でも、本当にそうなのかも。
休日の雨に、体を震わす冷たさに、また少しぬくもりが欲しくなったのかもしれない。
今朝起きた時、私がそう思ったように。

「で、今ヒマ?」
「暇じゃないって言ったってあがるくせに」
笑みを崩さずにそういうと、こなたは失礼なと言って傘を畳んだ。


「ちょっと待ってて。飲み物とか持って来るから」
私の部屋にこなたを一人おいて台所へ向かう。
冷蔵庫にはグレープジュースがあったけれど、今日は雨だからか気温が低く感じる。
お茶にしようと思い直してヤカンを火にかけた。お湯を沸かしたら
まず湯飲みにお湯だけを入れて温める。その間にお茶っ葉が急須にもお湯を入れて十分に蒸らす。
湯飲みのお湯を捨てたら、濃さにムラが出ないように少しずつお茶を入れていく。
たったこれだけで香りが違って、つかさに教えて貰って以来このやり方を通している。

『少しの努力でこんなに違うんだよ。面白いでしょ?』
『たしかにそうねー。それは勉強にも言えるんじゃない?』
『ふぁ!?…あうぅ…』

あの時の会話で、私はつかさに勉強にも言えるんじゃないかと言ったけど
今の状況にもそれは当て嵌まるんじゃないかとも思う。

不安定な関係。

曖昧な境界線。

言い方は色々あるけれど、こなたと私は、つまるところそうなのだろう。
後一押しで他人にも、友達にも、……恋人にだってなれる。
そうしないのは何故なんだろうか。


お盆にお茶と醤油煎餅、それからポッキーを乗せ階段を上がりながら、そんなことを考える。
我ながら器用だ。

「こなたー、開けるわよ?……わ……!?」
片手にお盆を持って、自分の部屋のくせにそう言って扉を開けると
お腹の辺りにぽふっと何かが抱き着いて来た。
何か、だなんてこなたしかありえないんだけど。

「…どしたの?」
「…んー…?別にこれといって理由はないんだけどネ」
離れる様子のないこなたに苦笑を漏らす。
「もう、一回どかないとお茶、冷めちゃうわよ?」
しぶしぶ、といった感じで腰に回した手を離したこなたに、もう一度くすりと笑って
部屋の真ん中にあるテーブルにお盆を置いた。
さっきのでお茶が零れていないか心配だったけれど、どうやら大丈夫だったみたいだ。

「こなた」
まだ扉の前にいるこなたを呼んで手を広げると、こなたは倒れ込むようにして私の胸に顔を押し付ける。

暫くそうしていたこなたが顔を上げる。その表情はお母さんとはぐれた幼子のようで。
今まで見せたことのない表情に、妙に胸が高鳴った。

「かがみはさ」
「?」
「いつになったら全部私に見せてくれるのかな」
「………は?」

規則正しい音が部屋の外と中からから聞こえる。外のは昨日から半日以上降り続く雨音。
後者のは、きっと私の心臓の音。

「…どういう、意味?」
「私は、もう全部見せてるよ」
いまいち要領を得ない会話に苛立ちを覚え、今までより大きな声で言う。

「だからっ!どういう―――」
「好きだよ」
「………っ!?」

ぐわん、とまるで誰かに頭を殴られたみたいに脳が揺れた。
ひらがなたった四文字に籠められた想いが、重く私にのしかかる。

「…最初は、さ。体だけでも良いと思ってたんだ。
かがみも拒まなかったし。かがみがどう思ってるかは解らなかったけど、
大好きな人を抱けるなら想いが届かなくったって」

…今、気付いた。この音は私じゃなくてこなたの心音。
普段よりも幾分か速いそれが不思議と落ち着くのはなんでなんだろう。

「かがみが同情とか、そんな気持ちで受け入れてたとしても、それでもよかった。
……だけど、駄目だね。私は欲張りだから、もっと欲しいって思っちゃう。
かがみが拒絶しないのに甘えて、心まで欲しいって思っちゃう。だから……」


「だから、かがみがそういう気持ちで受け入れてるんだとしたら……もう、やめて?
……でも、もし、もしかがみが同じ気持ちだったら……。
…ねえ、かがみ。見せてよ、聞かせてよ。かがみのホントの気持ち」

こなたの声、そして言葉が私の心を溶かしていく。
…そうなんだ。私はこの言葉が聞きたかったんだ。私もこなたと同じで
こなたがどういう感情で私に触れてくるのかが解らなくて。
私が気持ちを伝えたらこの関係が終わってしまうかもしれない。
こなたと触れ合えなくなるかもしれない。
…それが、怖かったんだ…。

「…好きじゃなかったらあんなこと許さないわよ」
私の目をじっと見ていたこなたの目がこれ以上ないってぐらい見開かれる。
…なんでそんなに驚くかな。
「…かがみ、それって…」
「私もあんたが…こなたが好き。大好き」

「―――っ!かがみぃっ!!」
今まで私の腕の中にいたこなたが瞳を潤ませ一度体を離したと思ったら
再度勢いをつけて飛び付いてきた。

「わ…!」
その勢いを支えきれずに私の体は傾き、仰向けに倒れてしまう。

「かがみ…」
「こな、た…」

最後に目に映ったのは、こなたの上気した顔。
あ、あの時の顔だ、とどこか霞みがかった頭で考えるのと
ほぼ同時にゆっくり私とこなたの距離が縮まっていく。
私もそれに合わせてゆっくり瞼を閉じると、柔らかくて暖かいものが唇に触れる。
何度か啄むように触れたと思ったら、熱い舌でぬるりと唇の間を舐められ
私はほんの少しだけ口を開けた。
こなたが奥で縮こまる私のをあっさりと絡めとって、きつく吸い上げて。
かと思ったら撫でるように優しく上顎まで舐めあげていく。

「……ん、ふ……んんっ……」
鼻から抜ける声が酷く甘さを帯びているのが自分でも解る。
いつもよりも気持ち良いと感じてしまうのは想いが通じあったからなのかな。
飲み込めきれなかった唾液が唇の端から顎へと伝って、気化熱で冷えていく。

(そういえば、お茶、どうしたっけ…?)
薄目を開けてテーブルの上を見ると、もう湯気は出ていなかった。
(まあ、いっか)
お茶よりも熱いのがあるんだし。


心地よい雨垂れの音を聞きながら、ぬくもりを求めて私もこなたの背に腕を回した。


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  • なに?このリアルさ


    独特なSSだと思う。一番好きかも。 -- 名無しさん (2010-04-20 18:58:31)
  • どこか冷静でいるかがみの描写が、凄いリアリティを出してると思う。


    かなり好きです。
    -- 名無しさん (2010-04-16 23:25:44)
  • 両思いになれてよかったね -- 名無しさん (2010-04-16 22:39:03)

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