今日も、北風の音を合図にして、星が昇っていく。
カレンダーの日付は、二月十三日。
明日はいよいよ、女の子たちのお祭り――バレンタインデー。
カレンダーの日付は、二月十三日。
明日はいよいよ、女の子たちのお祭り――バレンタインデー。
一歩外に出れば、そこは乙女たちの欲望番外地。
机の上にあるノートパソコンの画面の中では、粛々と過ぎていくイベントの一つなのに、
現実世界(リアル)でこの類いの行事を見る度、妙な違和感が残る。
机の上にあるノートパソコンの画面の中では、粛々と過ぎていくイベントの一つなのに、
現実世界(リアル)でこの類いの行事を見る度、妙な違和感が残る。
リボンでラッピングされたチョコが、女の子から男の子へ。
最近では、ホワイトデーを待たずに、男の子から女の子へ贈ることもあるらしい。
それに『ニュースで見たんだけど、今年は友チョコっていうのが流行りそうなんだって』
と、今朝方ゆーちゃんが言っていたのを思い出した。
今の世の中では、女の子同士でチョコを交換することだって、いわば普通だ。
そうだよね、何の問題もないから、明日……。
最近では、ホワイトデーを待たずに、男の子から女の子へ贈ることもあるらしい。
それに『ニュースで見たんだけど、今年は友チョコっていうのが流行りそうなんだって』
と、今朝方ゆーちゃんが言っていたのを思い出した。
今の世の中では、女の子同士でチョコを交換することだって、いわば普通だ。
そうだよね、何の問題もないから、明日……。
ふと、ここまで来て私は、自分以外誰もいない部屋から、リズミカルに着信音を刻む
携帯電話のメロディが響くのを耳にしていた。
もしかしたら、考え事をするずっと前から鳴り続けていたのかもしれない。
携帯電話のメロディが響くのを耳にしていた。
もしかしたら、考え事をするずっと前から鳴り続けていたのかもしれない。
――さてと、電話の相手は誰だろうね。まあ、こんな夜更けにかけてくるのなんて、
寂しがり屋のうさぎ位しかいないんだけどさ。
寂しがり屋のうさぎ位しかいないんだけどさ。
「こなたー。アンタ確か、明日ウチに遊びに来るんでしょ?」
電波の先にいた通話相手――かがみは、早速本題を切り出してきた。
高校を卒業して以来、直接会う機会こそ減ったものの、携帯電話やメールでの
やりとりは今でも続けている。
電波の先にいた通話相手――かがみは、早速本題を切り出してきた。
高校を卒業して以来、直接会う機会こそ減ったものの、携帯電話やメールでの
やりとりは今でも続けている。
「そだよ。久しぶりに一日中しゃべり通そうって話だったと思うけど」
「だったら、なるべく早く来なさいよね。つかさが腕によりをかけて、
バレンタイン用のお菓子を作ってくれるみたいだから」
「だったら、なるべく早く来なさいよね。つかさが腕によりをかけて、
バレンタイン用のお菓子を作ってくれるみたいだから」
“つかさが”か……。
確かに、料理の専門学校に通うようになってから、ますます腕をあげたって
いうのは聞いてたから、楽しみだなぁ、という気持ちはもちろんあった。
確かに、料理の専門学校に通うようになってから、ますます腕をあげたって
いうのは聞いてたから、楽しみだなぁ、という気持ちはもちろんあった。
でもね、かがみ。
つかさを隠れ蓑にしたつもりなんだろうけど、私の目は誤魔化せないよ。
どれどれ、ここは一つ仕掛けてみようかな。
どれどれ、ここは一つ仕掛けてみようかな。
66 :『バレンタイン・イヴ』:2009/02/19(木) 00:37:06 ID:kUSljfg2
「うん、期待しておくよ……ところでかがみんや。頬っぺたに、
味見した時のチョコがつきっぱなしだよ」
「えっ、嘘っ!? ちゃんと拭き取ったハズなのに……あっ」
味見した時のチョコがつきっぱなしだよ」
「えっ、嘘っ!? ちゃんと拭き取ったハズなのに……あっ」
ほうら、やっぱりボロが出た。相変わらず可愛いねぇ、かがみは。
「慌てなくたっていいよ。私のことが好きだから、ちゃんと味見してくれたんでしょ。
高校の頃、そんな感じのこと言ってたし」
「なっ、ち、違うわよ。これは私の意思でしたんじゃなくて、つかさが、その……」
「ふふん、それじゃあ明日は楽しみにしてるよ。んじゃ、バイニー」
「ちょ、おまっ。人の話を聞きな――」
高校の頃、そんな感じのこと言ってたし」
「なっ、ち、違うわよ。これは私の意思でしたんじゃなくて、つかさが、その……」
「ふふん、それじゃあ明日は楽しみにしてるよ。んじゃ、バイニー」
「ちょ、おまっ。人の話を聞きな――」
私は、問答無用で通話を終了した。
その後、かがみから弁解のメールみたいな物が届いていたけど、
私はあえて中身を確認しなかった。だって、中身を知っちゃったらさ。
今度は、私の方が味見しにくくなっちゃうじゃん……なんてね。
その後、かがみから弁解のメールみたいな物が届いていたけど、
私はあえて中身を確認しなかった。だって、中身を知っちゃったらさ。
今度は、私の方が味見しにくくなっちゃうじゃん……なんてね。
☆ ☆ ☆
キッチンには、お菓子作りの為の道具が一列に並んでいた。
業務スーパーで買い込んだ輸入物の板チョコ。湯煎用のボールや
オーブンシートなんかの調理器具。それに、巨大な星形の型。
全て、明日かがみにチョコを渡す為の準備だ。
業務スーパーで買い込んだ輸入物の板チョコ。湯煎用のボールや
オーブンシートなんかの調理器具。それに、巨大な星形の型。
全て、明日かがみにチョコを渡す為の準備だ。
……べっ、別にさ、去年や一昨年の時のお返しだとか、そういうのじゃないんだヨ?
ただ単に、あたふたするかがみが見たいだけ。そこに居合わせて、いじり倒したいから、
作ることにした。ただそれだけのこと。
ただ単に、あたふたするかがみが見たいだけ。そこに居合わせて、いじり倒したいから、
作ることにした。ただそれだけのこと。
だけど、星形のチョコ……と見せかけて、実はヒトデなんだよとか言ったら
『また何かのアニメのネタなのか?』って突っ込まれるんだろうなぁ、きっと。
でも、怪訝そうな顔をして突っ込みを入れるかがみの顔を思い浮かべると、私は凄く癒される。
心拍数が上がって、顔が火照ってきて……あれ? なんだろう、この気持ち。
ああ、きっとエプロンをきつく着過ぎただけだよね、きっとそう。
『また何かのアニメのネタなのか?』って突っ込まれるんだろうなぁ、きっと。
でも、怪訝そうな顔をして突っ込みを入れるかがみの顔を思い浮かべると、私は凄く癒される。
心拍数が上がって、顔が火照ってきて……あれ? なんだろう、この気持ち。
ああ、きっとエプロンをきつく着過ぎただけだよね、きっとそう。
「さ~てと。絶対に上手く作って、かがみを驚かせてあげなきゃね」
特別な夜が、更けていく。鼻をくすぐる良い匂いを奏でながら。 とろけるような、チョコの味。
私とかがみの関係は、ビター? ミルク? それともホワイト? 答えは、もうすぐそこまで。
溶け合えばいいな、私の生まれて初めての――バレンタイン・チョコ。
特別な夜が、更けていく。鼻をくすぐる良い匂いを奏でながら。 とろけるような、チョコの味。
私とかがみの関係は、ビター? ミルク? それともホワイト? 答えは、もうすぐそこまで。
溶け合えばいいな、私の生まれて初めての――バレンタイン・チョコ。
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- (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-07-18 08:12:26)
- むしろ、かがみにチョコを渡した瞬間に、サウナより熱い愛の空間が出来て、チョコが溶けそう -- 槍男 (2010-02-26 22:10:19)