貴女との再会にはホットチョコで

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貴女との再会にはホットチョコで

 うぅ、寒いなぁ。流石、二月というところか・・・。
 でも、街は人通りも多く、二人並んで歩くカップルを見ていると体も心も寒くなってくるものね。いやはや、勉強にかまけ過ぎて、彼氏の一人もいない独り身には寒い日だわ。
「よりによって何で、今日が建国記念日なのかしら・・・」
私-柊 かがみのぼやきは、ため息と冷たい風に乗って誰に聞こえるわけでもなく消えていった。
 今日は二月十四日なのだ。お菓子会社の戦略だろうとなんだろうと、愛溢れるカップル達にとっては甘い日であり、独り身の私には、あまり関係が無い日でもあったりする。学校があれば、サークル仲間に義理チョコでも配ったりする所だし、今日だってそういう予定が無くは無かったのだけれど、他の用事が夕方からあったし、それまでに抜けられるかわからなかったので、暇が出来てしまったという訳だ。
「まぁ、こういう祝日でもないと、四人の同窓会なんてそれぞれ学校が違えば難しいわよねー」
ふぅっと小さく吐いた、ため息が白い湯気になって消えてゆく。
 四人での同窓会・・・か。どうして、すっぽかさなかったんだろう。というより、四人で集まってパーティーをしようよ、なんてつかさが電話で言い出してきた時は愕いたものだけどね。
 私は卒業以来、つかさやみゆきとしか会っていないのだ。全ては、この定期入れに小さく折りたたんで高校時代の夏にとった、つかさやみゆき、私やこなた、それから黒井先生にゆいさんの写った写真の裏にしまってある手紙の答えを未だに出せていないからなんだけど。
 寒空といっても青く澄んだ空だ。雪が降れば、ホワイトバレンタインなんて洒落た言葉で恋人達は喜び合うのだろうけれど・・・私にはこの青い空があいつに会う勇気をくれる様で心強かった。
 さて、これからどうしよう、時間はたっぷりある。これなら図書館で事例問題の予習でもしていれば良かったかも知れない。

 私は近くの公園のベンチに腰を下ろすと、定期入れに大事にしまってある一枚のラブレターを取り出した。
 まだ、あいつは私の事を想っていてくれるだろうか。それとも、あの卒業式の後、このラブレターを渡された私が三十分近くの間、答えを出せずに悩み続けていた時にして来た涙味の口付けを最後に吹っ切ったのだろうか。
 何度読み返しただろう。読み返す度、何度涙を流しただろう。答え等、考える必要は無かったのだ。足りなかったのは、世間という茨に足を踏み入れる決意と勇気。
 後輩が作った歌を思わず口ずさむ。
君が私の事を想い続けているなら、私は君の背中を見つめよう~
君の背中が寂しげなら、私の背中にもその寂しさを分け合おう~

うちのサークルは別に、軽音サークルではない。というか、ただのお遊びサークルだ。そして、世間の茨に足を踏み込んだ勇気を持ったカップルもいる。
 女の子同士のカップルだった。不思議と気持ち悪いとか、おかしいとかそんなことは思わなかった。ただ、思い出しただけ。あの日、あの教室の、夕日の差し込む窓辺で涙を零しながら唇を奪い、去ってしまったあいつの事を。

サークルの飲み会の時だったっけ。私は、女の先輩に聞いたんだ。あの子達には失礼かもしれない言葉を・・・あえて、あの子達がいる場で。
「先輩は、女の子同士のカップルとか変だって思わないんですか?」
それは、二人を沈ませるような言葉。
「柊ぃ、それは偏見だよ。人間って奴は誰かを好きになるように出来てるし、それが、うちらの後輩の場合には、同性だっただけの事でしょうに」
くっくっくと、何を馬鹿らしい事をという風に先輩は笑いながら言った。
「でも、同性じゃ子供とか・・・」
「子どもって作れないと駄目ってわけじゃないでしょ?先天的にだったり後天的にだったり、別に男と女のカップルだってさ、子どもはできないわけだし」
「け、結婚だって!」
「もうちょっと頭を緩めにしたほうがいいと思うよ、柊ぃは。結婚なんて紙切れ一枚の問題だし、確かに法律上、配偶者とかそういう部分では問題があるかもしれないけどさ。大事なのは・・・」
先輩は勿体つけるように、ビールを一口飲んでから、
「好きになった相手の傍で幸せを感じていられるかどうかってことでしょう?確かに、あの子達には味方は少ない。でも、味方って奴は、多ければいいってもんでもないさ。あたしは少なくとも、あの子達の味方だしね」
その言葉を聞いて、頼りにしてますから、先輩方。これからも仲良くお願いしますよ~って、ちょっとちゃらけて、後輩の二人が言った。
 その時に気がついたのだ。あぁ、私はこなたが好きだったんだなって。だから、こんな事を聞いてしまったんだろうなと。
 私はビールの中ジョッキを一気に煽ると、

「先輩、私にもそういう相手が出来たときは味方になってくだ・・・さ・・・い」
ドサッ。それが自分自身の倒れた音だと気がつくのには少し時間がかかった。どうやら酔いつぶれてしまったらしく、その後は、相談した先輩に家まで送ってもらうことになった。そして、別れ際に
「柊ぃ、あたしはあんたの味方だよ」
その一言を残して帰っていった。

「ふぅ、寒いわね」
頭を振って、ラブレターに目を戻した。もうほとんど読めないのだが、こなたが書いた時に流した涙のシミと私の流した涙のシミが合わさってしまって。
 辛うじて読めるのは、
貴女の事がずっと好きでした。
             泉こなた
その部分だけ。
「私も好きよ、今更だけどさ。こなた」
流石に、このベンチにぼけっと座って待っているのは無理そうだ。寒すぎる・・・雪が降っていないのが不思議なくらい。

「こういう所に入るのって、一体どれ位ぶりなのかしら」
近くには普通の書店はなく、アニメイトだけだった。もういっそ、つかさの家に行こうかしら。集合場所はつかさが住んでいる、アパート。あの子も、私と同様に高校卒業してからは、一人暮らしを始めている。私が一人暮らしに慣れていない頃に、つかさはどうだろうと遊びに言ったときには、私よりも一人暮らしが板に付いていたものだったっけ。
 今では彼氏もいるというのにわざわざ、今日という日を同窓会・・・というより、やっぱりお泊り会というべきだろうか、そんな日に指定しなくてもいいものを。
 そういえば、みゆきにも彼氏ができたのよね。一年位前だったかしら。
「こなたはどうなんだろう」
思わず呟いた言葉に・・・
「ほぇ、誰か呼んだ?」
返事が返ってくるとは思いもしませんでした。
「こ、こなたぁ!?」
ここが店内というのも忘れて、私は思わず叫んでしまった。青いハンチング帽に白のダッフルコートを着ている、こなたが確かに目の前にいた。いやもしかしたら、他人の空似かもしれないと思った矢先、
「か、かがみぃ!?」
手に持っていった漫画やらラノベをドサドサと落として、同じくここが店内だということを忘れてしまったような素っ頓狂な叫び声をあげた。てか、ラノベ読むようになったのね。
 二人も素っ頓狂に叫べば、店内の視線も集中するというものだ。非常に恥ずかしくなってしまって、こなたの会計が終わるのを待ってさっさと外に出た。
「まさか・・・こなたに会うとはね」
「いやー、それは私のセリフダヨ。ここでかがみに会うとは、流石に思っていなかったヨ。いやはや」
吹きすさぶ風はとても冷たい。手袋をしてくればよかったわね。
「あぁ、えっと、かがみんはど、どーしてこんなところにいらっしゃったのでしょうか?」
物凄くこなたらしくない言葉。
 それはこの卒業から今日という日まで接触を断ってきた溝だ。こなたの肩が震えているのは多分、寒さだけではないはずだ。
「・・・こなた」
「な、なにカナ?かがみんや」
何を言おうかと迷っていると、後ろの人が早くどいてくれと言わんばかりに鼻息を荒くしていた。よく考えたらアニメイトの出入り口を私達は塞いでしまっている。
 とりあえずどかないと・・・でも、どこに行こう?そんな考えが頭に上ったとき、思い出したことがあった。
「すみません、すぐ退きますから。こなた、行くわよ」
「うわ、へ?あ、ど、どこに?それ以前にちょっとかがみんや、手とか」
警戒しすぎだ。あんたらしくないじゃないの。私は、その後も、どもってしまって上手く喋れないこなたを引きずって、少し離れた場所にある喫茶店に入った。
 大体、私もそう遠くない場所に住んでいるのに、今までアニメイトがあることすら知らなかったわよ。
「か、かがみん?」
とりあえず、怯えた様な何とも言えない様な表情をしているこなたの意見は全部却下にしておこう。
「先輩、個室って開いてます?」
先輩というのはサークルの、味方になってくれるというあの先輩だ。ここでバイトをしているのを思い出したのだ。
 しかも丁度いいことに彼女がレジをやっていたのでそのまま率直に聞くことにした。
「おー柊ぃ?個室ね、ちょっとまってよ・・・あぁ、開いてるわ」
「じゃ、そこお願いします」
「柊ぃ?確かにあの時、味方になるとは言ったけど幼女誘拐の味方は、流石にちょっと・・・」
「いや、同い年なんで」
「そうなの?ふーん・・・いいわ、開いてるから勝手に入って頂戴。オーダーが決まったら・・・」
「わかってますんで、先輩、入りますね」
ほいほい、もう勝手にして頂戴な。という先輩の苦笑いの混じった言葉を聞きながら、個室に入った。
「おぉぅ、私は、見事にかがみんに拉致されてしまった。もう嫁にもいけぬぅぅぅ」
「拉致とか言うな」
「かがみん・・・」

こなたはまだ呆然としていた。
「ん?どしたの、喫茶店で個室は珍しいから驚いた?」
「いや、突っ込みの鋭さが変わってないな、と」
「そっちか!」
「おぉぅ、本当にかがみんだ。でもツインじゃないんだねぇ、ツンデレキャラはやっぱりツインでないと」
「ツンデレとかいうなって・・・全く」
そういえば、高校卒業してからはロングのままでツインに結った覚えはないわね。
「まぁ、ロングも似合ってるとは思うけどね」
ようやく落ち着きを取り戻したのか、こなたも席に着いた。
「ちょっとまってなさいよ」
私はポケットからリボンを二本だすと、髪をツインに結った。久しぶりだからちょっと時間かかったけど。
「これでどう?」
「なんというか・・・準備がいいねぇ、かがみんや」
「四人で同窓会っていうことだから、こなた辺りには絶対に言われると思って用意してたのよ・・・ん?なに、なんか変かしら」
こなたが下を向いたまま、たまにこっちをチラチラとみるだけになってしまった。
「あ、あのさ。かがみんはさ・・・今日って・・・」
そのまま、黙り込んでしまう、こなた。
「なーに?」
ちょっとした意地悪。何を言いたいのかなんてわかってる。今日は私に会いたかったのかとか、多分そういう事だろう。
「い、いや、その、あぁそうだ!つかさやみゆきさんに彼氏がいるのは知ってるよね?かがみんはどうなの?」
最後まで言えなかったから誤魔化してる。
「な、なにさ。彼氏がいるのかどうかを聞くのがそんなにおかしい?」
言葉は強気なのに、表情はどうしてそんなに弱気なのだろう。というか私は、笑っているのか、自分でも気が付かなかった。
「いろいろ考え事してたり、勉強やサークルにかまけてたから、未だに独り身よ。こなたはどうなのよ」
「へっわ、私?私はもう、モテモテだよ。大学に入ってから引く手数多で困ったもんだよ」
「そっか、それはうらやましい限りだわ」
つかさから聞いている。こなたが彼氏を作っては別れてを繰り返している事。
「でも、なかなか私に相応しい人に出会えなくてね、今は悲しき独り身ダヨ」
ということは、此間につかさとの電話で聞いた彼氏とはもう別れたと。
「いいわね、私なんてお節介で厳しいから、頼もしい人で終わりよ」
「それは辛いね~かがみんは寂しんぼなのにサ~」
こなたがちゃらけて、無理に昔のような猫口を作って笑う。でも、その表情はどこか寂しげで、悲しげで、それを必死に押し隠している用で見ているのが辛かった。
だから、私達は、高校の頃の話をした。最も楽しくて、溝が出来てしまうなんて考えもしなかった頃の事を。
それは、海でこなたがスクール水着だった事や海の家で食べた料理の事。
先生やゆいさんの運転がどちらもはずれだった事。
二人で行ったコミケのこと。三人で行った時は、つかさがコミケ恐怖症になってしまった事。
みゆきに渡したDSの得点をこなたが全く超えられなかった事。
思い出を話し出してしまえばキリがない。それくらい私達の時間は濃密だった。
「そういえば、黒井先生は結婚するみたいだよ。酔った勢いとか言ってたけど、凄く幸せそうだったカナ。此間あった時に聞いたんだ」
「へぇー、黒井先生が結婚かぁ。先生って美人だし、今まで独身だったのが信じられないわ」
「そういう、かがみんだって、綺麗になったのに独り身とは・・・かがみんの周りの男の人は、本当に見る目がないんだねぇ」
「そうね~、誰かさんがそうだったみたいに、宿題や課題を忘れたときくらいしか相手をしてくれないわね」
ちょっと失言だったかもしれない。そんな事を言えば、話の方向が・・・私はしっかりと覚悟を決められているだろうか。
「そんな事は無いよ!私には、かがみんが凶暴で、寂しんぼうさちゃんという凄い秘密に気が付いているんだからサ。あはははっ」
こなたが乾いた笑いを響かせる。
「そうよ、そこに気が付いたのはあんたくらいよ・・・」
その一言がきっかけになったのか、こなたの作り笑顔が凍った。空気もどこかピンと張り詰めてしまっている。
そろそろオーダーをしないとウェイトレスかウェイターが様子を見に来るはずなのだが、多分先輩が気を利かせてくれているのだろう。
「そうそう、黒井先生が・・・」
「ねぇ、こなた。私さ、言わなくちゃいけない事があるんだけど・・・ちゃんと聞いてくれる?」

「へっ?えぇと、あの・・・」
こなたが慌てふためいていた。予想は多分付いているんだろうけど、その予想と私の言葉が必ずしも同じとは限らない。
「でも、その前に一つこなたに私は聞かないといけないことがあるの。いい?一度しか聞かないわよ、だから真剣に聞いてほしいの」
「・・・うん」
こなたはどうしていいのかわからない迷子の子どものような表情をしていた。
「こなたは・・・まだ私のことを、好きでいてくれている?あの卒業式のあの教室の時の様に」
酷な事を聞いている。こなたにしてみれば、古傷を掻き毟られているようなものなのだろうから。だからこそ、真剣な目でこなたを見つめる。
「・・・正直に言うよ?誰と付き合ってみてもかがみと比べてしまうから、私、誰とも長く続かなかったんだ。いやぁおかげで・・・って茶化すのは無しだよね。・・・大好きだよ。ここでこうやって向かい合っているんじゃ無くて昔みたいに抱きついて、それから、本当は・・・抱きしめてもらいたいくらい・・・大好きだよ。かがみの事を考えるだけで胸が張り裂けそうで、昔より、あの時より大好きだヨ」
本当に茶化すのはやめたらしい。かがみんではなく、こなたはかがみと言った。そのこなたの両目から大粒の涙が零れ落ちる。
「そう。ということは・・・私がこれを持ち続けていた意味はちゃんとあったのね」
私は定期入れから、あの日、こなたからもらったラブレターを取り出した。
「なっ・・・かがみ、まだ持ってたの!?」
「そうよ。それでずっと考えてたの。私はこなたの事をどう思っているんだろうって」
私はそこで一度言葉を区切った。いざここに来て言葉が続かない。なんて意気地なしなんだろう。
「うん」
こなたの相槌でどうにか言葉の続きを言えそうになった。
「最初は、世間の事を考えたわ。でも、大学で私のサークルには同性のカップルがいるのよ。だからそれを見て、皆が本当はどう思っているのか知りたくて、沢山質問したわ」
「かがみらしいね」
「聞いているうちに、男だとか女だとか、子どもが出来るとか出来ないとか、そういう問題じゃないんだって、言われて・・・私はやっとこなたが好きで、愛おしくて、それで胸が張り裂けそうで堪らないんだって気が付いたの。ただ、好きになったのが女の子とかそういう風に考えたりしなければ良かったの、こなただから好きになった。こなたという人間を私は好きになっただけなんだって」
こなたの顔がりんごみたいに真っ赤に染まっていた。すぐに真っ赤になってしまう私のことだ、とっくにこっちは真っ赤だろう。
「えと、その・・・」
「こなたのことが大好きよ、随分と返事をまたせてごめん」
その後は、お互い言葉は入らなかった。涙が伝う顔を見せ合うようにおでこをくっ付けて、笑いあった。
 しばらく笑いあってから顔を離して、こなたは目を擦って、
「今日って四月一日じゃないよね!?これって夢じゃないよね?」
そんな事を言う。だから私は、
「今日はバレンタインデーで、これは現実よ。そして私の言葉に嘘はないからね」
と、答えた。自分でも、どこか刺々しさがあるような雰囲気や声をしていると思っていた自分自身の雰囲気も声も、柔らかくなっている事に気が付いて少し驚いた。
「ねぇ、もう一回言って欲しいな。随分まったし、それくらいサービス特典が欲しいよ」
嬉しくて堪らないという感情を体中から出しているこなたの唇に人差し指を当てる。
「さぁ、どうしようかな?」
もう、かがみの意地悪。そう言ってむくれたこなたを見ながら、電話でオーダーを取った。

 どういうわけか、先輩が飛びっきりの笑顔で物凄い速さで、頼んだものを持ってきて、置いて行った。

 湯気が立っている、二杯のホットチョコ。チョコの香りで、部屋は甘い香りに包まれていく。

「女の子同士だとね。お互いにチョコをあげあうんだって、後輩が言ってたのよ」
なんとなくそう呟いて、カップの中身を口に含む。それは、温かくてとても甘かった。
「でもさ、かがみは、本当に私なんかでいいの?」
「本当は悩む事なんて無かったのよ。ただ、私に勇気が無かっただけで、ずっと私もこなたのこと想っていたんだと思うしね」
「あ~、わかってないな~、かがみんは。そこは好きって言ってくれないと」
そういうと思ったから言わなかったのよ。
 ホットチョコを飲み終わる頃には、私はそろそろ、自分にもっと素直になろうと思えるようになっていた。
「ふぃ~、あったまるね~」
「ねぇ、こなた・・・」
「ん?何カナ、かがみん」
話も終わりだし、飲み物も飲み終わったし、時間もいい感じだったから、こなたは立ち上がってコートを着ていた。そんなこなたの真正面に立った。
 あの日の初めての口付けは唐突でしょっぱかった。その思い出を今、塗り替えよう。
「・・・こなた、大好き」
声はそんなに大きくなかったけれど、こなたの顔はまた赤く染まった。そんなこなたの頬をそのまま、両手ですっぽりと挟む。
「え、か、かが」
目を開けたままって言うのは凄く恥ずかしかった。でも、あの日もそうだったのだから、塗り替えるなら、見つめ合いながら。
 こなたの言葉を唇で塞いで止めた。ただ唇を重ねるだけの口付けだけど、あのときの様に一瞬で終わってしまわせるには勿体無くて、ずっと重ねていたかった。
でも、こなたが服を引っ張るので離した。
「あ、あのサ、もっとちゃんと・・・したいんだ、かがみとその、キス・・・」
おずおずと、こなたの手が背中に回った。私もこなたを抱きしめる。
 そしてもう一回お互いの唇を重ねた。
  そのキスは、今飲んだホットチョコなんかよりもずっと、とろける様に甘くて、温かかった。
 口付けをしたまま心の中で誓う。何があっても、もう二度とこの小さな背中を離したりはしないと。




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