今日は待ちに待った日曜日。
授業という名の地獄を乗り越えてやってきた幸せな日。
……私とかがみの日。
――幸福から絶望へ――
いつも寝坊している私、今日は違う。
何て言ったってかがみが遊びに来る日だ。
しかもお父さんもゆーちゃんも今日は居ない、お父さんはどこかの取材に行っちゃったしゆーちゃんはみなみちゃんの家に泊まりに行っている。
つまり……今日一日かがみと二人きりで過ごせるという事!!
フフフ……という事は「ゆうべはおたのしみでしたね」的な事が……出来る。
……ハッ!!な、何を考えてるんだろ!?
えーと……取り敢えずお腹空いたから何か食べよう……。
――――――――――
今日の朝ごはんはトーストにサラダにポタージュにココア。
……珍しいな……日曜日に朝ごはん食べるのって……。
……かがみ……まだ……かな……。
今日はどんな事して過ごそうかな、今日はどんな所に行こうかな。
ずっと家でマターリしていてもいい、アキバに行くのもいい。
時間はまだたっぷりとある。
今日どうやって過ごそうか考えていた私は無意識にテレビのリモコンを操作してチャンネルを回していた。
……その時、一つのニュースが私の目に留まった。
「……先程……付近にて交通事故が発生し、一人が死亡……」
……え?
交通……事故……?
テレビに写ってるのは……私達が待ち合わせ場所に使っている……。
「……死亡したのは…………かがみさん……」
「!!!!」
嘘……嘘でしょ……かがみが……かがみが……。
慌てて私は部屋へ戻りかがみの携帯に電話をかける。
1コール……2コール……3コール……。
かがみ……お願い……早く……早く……。
「……現在電話に出る事が出来ません、ピーという発信音の……」
その瞬間私は目の前が真っ暗になった。
……何で……何でかがみが……。
……私のせいだ……私がかがみを家に呼んだから……私が……かがみの家に行けば……。
「かがみぃ…………かがみぃ……!!」
涙が流れ出す。
どうしようもなく愛おしい人の名を口に出す。
……勿論……届く事は……無い。
――ピーンポーン……
その時家のチャイムが鳴った。
……誰かな……誰が……。
フラフラしながら玄関に向かう私。
せっかくの日曜日が……私とかがみの日が……もう……。
私は涙を拭かずにそのまま玄関の扉を開ける。
「オッスこなた!!今日はちゃんと起きていて……って!!ど、どうしたのよ!?」
……う……そ……。
……どうして……かがみが……?
「……う……うぅ……かがみぃ……」
頭の中がこんがらがってしまい……思わず泣き出してしまう。
そのままかがみに抱き着いてしまう。
「こ、こなた……」
「かがみぃ……かがみぃ……」
「……もう……泣き虫なんだから……」
かがみの温もりを感じる事が出来る、かがみの心音が聞こえて来る。
……間違いなくかがみがそこに居るって……教えてくれる。
「……よかった……よかった……生きていて……よかった……」
「私も……え?ちょっと待ちなさい、生きていてって?」
「……だってさっき……」
私は一連の事をかがみに話した、交通事故が起きた事、死亡した人の名前がかがみだった事、慌てて電話をかけたけど電話に出てくれなくてどうしようもなくて泣き出してしまった事。
上手く説明出来なかったけどかがみは聞いてくれた。
「成る程ね……確かにここに来る途中騒がしかったわ……」
「……でも死んだ人の名前が……」
「私と同じ名前……同じ名前の人って居るのね……」
……そうか、「かがみ」って言う名前でも同じ名前の人は必ず居る……。
「……大丈夫よ、私はアンタの側に居るから。現に今こうしているじゃない」
「……うん」
「だからさ、もう涙はいらないよね?その分今日は思いっきり楽しみましょ」
「……うん!!」
そうだ、かがみは間違いなく今私の側に居る。
そして私達の時間はまだ始まったばかり。
……トラブルはあったけど……その分今日はかがみと楽しむ!!
「かーがみん!!」
「なーに?」
「……今日は……誰も居ないんだよ……あんな事やこんな事が出来るんだよ……」
「な!?あんな事やこんな事って何よ!?」
「ゆうべはおたのしみでしたね」
「危険な発言禁止!!」
……うん、いつも通り。
さっきまでの変な空気はこれで終わり!!
――――――――――
私は部屋にかがみを招き、用意しておいた座布団の上に座らせ私はかがみに抱き着く。
「おま……座布団の意味がないぞ……」
「……そだね」
……ちょっと失敗。
でもこの手は離さない、かがみと繋がっていたいから。
「アンタってこんなにも甘えん坊だったか?」
「ん~……かがみの前だけだよ」
そう、私は甘えん坊だ。
でもお父さんに心配をかけさせたくない、だから私は周りに本当の気持ちを隠す事にした。
でも……かがみの前なら……かがみになら……見せる事が出来る……。
「……仕方ないわね、思い切り甘えて……いいわよ」
「お?デレた?デレた?」
「そうゆう事言うな!!」
顔を赤くしながら言うかがみ。
……ありがとう……。
何て言うのかな、今のかがみはお母さんって感じ。
お母さんの事はよく分からないけど……この温かさがお母さんの温もりってやつなのかな?
……あれ?今日は……。
「あーーーー!!」
忘れてた!!今日は新作ゲームの発売日で予約券を持って行かなきゃ駄目だったーー!!
「ど、どうしたのよ!?急に大声を出して……」
「かがみ!!」
「はい!?」
「アキバへ行くよ!!」
――――――――――
今私達はアキバに居る。
今私達はアキバに居る。
「アンタって奴は……まさかアキバまで連れて来られるとは思わなかったわよ……」
「まぁまぁ!!いいではないか」
「もう……」
かがみがそっぽ向く。
「あ~ん、かがみぃ~これあげるから機嫌直して~」
そう言ってかがみの手に握らせる。
握らせたのはゲームの予約特典で付いてきたキーホルダー。
「……別に……怒ってなんかないわよ……」
「ツンデレ萌え~」
「ツンデレ言うな!!」
うんうん、この反応。
このツッコミが欲しかった。
「なんかさー、近頃のアキバって工事中のビルが多いんだよねー」
今のアキバは何か工事しているビルが多い。
改装しているのか、取り壊しているのか。
「仕方ないんじゃない?今不景気だし、潰れるお店もあるし」
「工事するのは分かるんだけどねー、音がうるさいんだよねー」
さっきからドリルの音が鳴り響いていてうるさい。
ドリルは男のロマンって言うけどね……。
「ま、これも現実ね……どんな物だって変わらずにはいられない……例え人間でも……」
かがみの言葉に私は不安を覚えた。
「最近読んだラノベに書かれていたのよ。人の思いは流れやすい、例えば水の様に……ってね」
私の不安はどんどん大きくなっていく。
嫌な汗も流れ出す。
「……かがみは……?」
「……私も……かな」
「っ!!」
「あ!!そういう意味で言った訳じゃないわよ!?こなたへの想いは本当だからね!?」
……そう言うと思ったけど……何だろう……何か引っ掛かる……。
「もう!!そんなに落ち込むなって!!ほら、早く戻ってゲームやるんでしょ?」
「……そだね!!よーし、駅まで競争だ!!」
「ちょ……ズ、ズルイわよ!!」
駅まで走る私とかがみ。
勿論先に走り出した私の方が速い。
「はやくはやくー!!」
「待ちなさい……って!!こなた!!上!!上!!」
かがみに言われて上を見ると……え……。
「逃げろー!!鉄骨が落ちてくるぞー!!」
その途端に世界がスローモーションになった。
ゆっくりと落ちてくる黒くて細長い物体。
速く逃げなきゃ……!!
……足が……動かない……!?
そんな……嫌……嫌……かがみ……かがみぃ……!!
私はいずれ来るだろう、衝撃に恐怖し頭を抱えて座り込んだ……が。
「……え……」
私が目にしたのは……鉄骨に押し潰される……。
「……かがみぃ!!」
――――――――――
「救急車!!救急車を呼べー!!」
「救急車!!救急車を呼べー!!」
「大変だ!!女の子が一人押し潰された!!」
「そこの女の子を突き飛ばして押し潰された!!」
……嘘でしょ……かがみが……かがみが……。
「早く鉄骨を退かせ!!助けるんだ!!」
「救急車はまだか!?」
「後3分で着くってよ!」
周りの人達が鉄骨を退かそうとしている。
私は唖然とした様子で座り込んでいる。
「出たぞ!!女の子だ!!」
「うわ……酷い……」
「待て!!何か言ってるぞ!!」
周りの人の声を聞き私は鉄骨の方へ走り出す。
かがみ……!!かがみ……!!
「かがみ!!かがみぃ!!」
人だかりを避け私はかがみの側へと駆け寄る。
……かがみは……血だらけで……血溜まりの中に倒れていた……。
「かがみぃ!!しっかり……しっかりして!!」
「……こ……な……」
「かがみ!?私はここに居るよ!?」
「……無……事……よか……」
「かがみ……?」
……朝と同じ様に目の前が真っ暗になる。
見えるのは血だらけになったかがみだけ。
……嫌だ、こんなの嫌だ……こんなの……望んでいない……!!
「嫌……嫌……かがみいいいいいぃぃぃ!!!!」
- 絶望から奇跡へに続く
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- (/ _ ; )b -- 名無しさん (2023-06-05 06:53:00)
- 鬱は好きだからなあ、死ネタとか
どんなバットエンドになるのかが
楽しみだ -- 名無しさん (2010-03-22 20:21:52) - そうか、そうきたか。 -- 名無しさん (2009-02-02 04:56:26)
- 鬱とでるか、幸とでるか…wktk -- 名無しさん (2009-02-02 02:26:32)