「泉こなたの計略」(2023/05/05 (金) 22:44:40) の最新版変更点
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それは昨日の夕食時の事だった。
「あの~。私、明日は朝から出掛けて、夜はみなみちゃんのお家にお泊りするから、朝ご飯以外はいらないからね」
「ああ、そういえば、お父さんも明日は朝から新刊のサイン会があって、その後は編集の人と打ち合わせがあって帰りが遅くなると思うから、昼と夜はかがみちゃんと二人で食べておいてくれ」
明日は朝から、お父さんとゆーちゃんが出掛けて居ない。
つまり、一日中かがみと二人っきりになると――。
これはオタクとして、女として、このレアイベントを最大限に活用しなきゃバチが当たる。
そう思い立った私は、試験前夜の一夜漬けの時以上に脳をフル回転させ、明日の一日を有意義に過ごす最良のプランを導き出した。
名付けて「今日のかがみの夕食は私だよ(性的な意味で)計画」だ。
“攻め”も良いけど、たまには“受け”もやってみたいからね。
そうと決まれば、念入りな準備が必要という事で、私はお風呂に入ると、いつもよりも早くに就寝する事にした。
勿論、かがみとのおやすみのチューや、私とかがみのめくるめく愛の欲望番外地も今日はお預けだ。
今日は“疲れてる”(この部分を特に強調)から早めに寝るね、とかがみに告げると、かがみは物凄く寂しげな表情をしながら頷いた。
ごめんね、かがみん。
でも、こうしないと、かがみが寂しがりやのうさちゃんからお腹を空かした狼に変態(トランスフォーム的な意味で)しないからね。
かくいう私の方も、遠足前日の小学生のようになかなか寝付けなかったけれど、羊の数、もとい、かがみの数を数えている内になんとか寝付く事が出来たのだった。
翌朝。早寝の効果もあって、私は予想通り隣で寝ていたかがみよりも早くに起きる事が出来た。
多分無いとは思うけど、遅くまで寝ていたら、先に起きたかがみに朝這いされて計画が台無しになる可能性もあったからね。
その後は、お父さん、ゆーちゃん、私よりも20分後に起きたかがみを交えて朝食を取った。
リビングで見せた今朝一番のかがみの表情は、一見すると澄ました表情に見えるものの、かがみ専門家の私にしてみれば、「これは溜まって来てるな」というような顔だと一目で分かる。
よしよし。この後も、慎重且つ大胆に計画を遂行していきますか。
☆☆☆☆☆
---------
二人を送り出した後、私は夏休みの宿題を片付ける事にした。
「とゆーわけで、かがみ宿題見せて」
「結局それかよ! っていうか、いい加減、高校3年なんだから、それくらい自力でやんなさいよ」
「やだよ。面倒くさいし」
「面倒くさいって、アンタのノルマだろうが! ああもう、絶対に見せないから全てアンタ一人で解きなさい!」
ううっ…。このままじゃ課題に追われる作業だけで、今日一日が終わってしまうじゃないか…。
仕方ない。ちょっと予定が早まるかもしれないけど、ちょっとカマをかけてみるか。
「ああ…、せっかく結婚してから、始めて二人っきりで過ごせると思ったのになぁ…。かがみはそれで良いの?」
「うっ…。わ、わかったわよ。今日だけだからねっ!」
目をうるませ、上目遣いでそう言うと、かがみはいとも簡単に陥落した。
「あ~ん、かがみ大好き~♪」
「あっ、コラ、そんな事で抱き付くな!」
「こなたは嬉しくなると、ついかがみに抱き付いちゃうんDA☆」
「何言ってんのよ、このバカ…」
おおっ、デレたデレた。
だけど、このままズルズルと行っちゃうと、肝心の計画も宿題を写す作業も進まなくなっちゃうから、一旦ここで退いておかないとね。
「じゃあ、そーゆーわけで借りてくねー」
私はあっという間に抱擁を振り解くと、かがみの宿題を借る為、かがみの部屋に華麗に入室した。
部屋のドアを閉める直前、あのまま廊下に突っ立っているかがみの様子をチラ見すると、呆然としたかがみの姿がそこにはあった。
☆☆☆☆☆
さてと、なんとか宿題も片付いた事だし、お昼ごはんの支度でもしますか。
ちなみに、今日の献立はご飯に納豆、オクラに山芋のとろろ汁。そして昨日の残り物のジャガイモの煮っ転がしだ。
…やけにネバネバとした物が多いのは、勿論精力を高める為である。
まぁ、女性にも効果があるのかどうかは知らないけどさ。
そして、私はその二人分の食事をテーブルに向かい合わせではなく、隣り合わせで配置する。
なんと言っても、これがこの作戦の最重要ポイントになるからね。
「かがみー。昼ごはん出来たよー」
「あー、はいはい」
私は部屋でラノベを読んでいたかがみを呼び出す。
返事をするかがみは、心なしか、やや不機嫌そうに見える。
まぁ、あれから一度もかがみに構わず宿題を写し続けてたんだから、そうなるのも当然かな。
私は敢えてその事を気にするような素振りを見せずに、かがみを席に着かせる。
「あれ? 私の分の箸が無いんだけど…」
すると、自分の箸があからさまに置かれていない事に気付いたかがみは、困惑の表情を浮かべた。
私はその指摘にも対応せず、そそくさと一口では食べきれない大きさのジャガイモを箸で半分に割ると、それをかがみの口の前に持っていった。
「はい、かがみ。あーんして」
「なっ!?」
かがみの顔がみるみる内に赤く染まっていく。
ここはどんどん押していかないと…ね。
「ああ、そっか~。普段は人前でこういう事をやるのは恥ずかしいからって何度も拒否してたもんね。でも、今は二人っきりなんだし――」
「わ、わかったわよ。食べれば良いんでしょ、食べれば」
観念したかのように開かれたかがみの口に、私はジャガイモを運び込む。
「どう?」
「…うん。昨日よりも味が染みてて美味しいわよ」
相変わらず顔を真っ赤にしたまま、しおらしくそう答えるかがみ。
そんな夢にまで見た光景に、実の所、私の方も興奮を隠せなかったりする。
続いてご飯を差し出すと、それもかがみは黙って食べた。
そうなんだよ。私がずっとこれがやりたかったんだよ!
完全に調子に乗った私は、とろろ汁の入ったお椀を傾け、口の中に流し込むと、両手でかがみの顔を引き寄せていく――。
「ちょっ、こなっ……」
――どう見ても口移しですが、何か?
しかも、そのまま軽くフレンチキスに移行するコンボも炸裂させている。
…うーん。何度キスしても、かがみの唇は柔らかくて全然飽きないなぁ…。
でも、あんまりやり過ぎるとご飯が冷めちゃうから、そろそろこの辺で――。
「んっ…ぷはっ……はぁ…はぁ…」
「かがみ、おいしい?」
「うん…おいしい…」
「んじゃ、次は――」
「も、もういいわ! あとは自分で食べるから!」
「えーっ? 別に良いじゃん、二人っきりの時にしか出来ないんだよ?」
「そんな事言っても、あまり時間を掛けすぎるとご飯が冷めるし、それに…これ以上されると私の理性が持たないわよ!」
生殺し状態のかがみは半泣きになりながら私にそう懇願してくる。
「あー…。それはさすがにマズイよね……」
――今襲われると私の計画が台無しになっちゃうし。
「ん、何か言った?」
「いやいや、何も言ってませんよ、かがみ様」
「急に敬語になる所が却って怪しいんだが…」
「まーまー、そんな事はどうでも良いから早く食べないと冷めちゃうよ」
私はそう誤魔化しつつ、かがみの分のお箸を差し出すと、かがみは若干納得のいかない顔をしながらも、それ以上詮索する事無く料理に手を付け始めた。
ふぅ、危ない危ない…。
「それにしても、今日のおかずの偏り具合はどうにかならなかったのか?」
「夏だからね。ネバネバな物を食べて精力を付けないとさ」
「…それは“誘ってる”と受け取って良いのか?」
「さぁて、どうだろうね?」
ニヤニヤしながらそう答えると、一瞬だけどかがみの瞳が妖しく輝いたのを私は見逃さなかった。
これでこの場面はみっしょんこんぷりーとだね♪。
☆☆☆☆☆
食後、寂しがり屋のウサちゃんは、事ある毎に私に引っ付いて来るようになったのだけど、私はそれをテキトーにあしらい続けた。
「ねぇ、こなたぁ」
「ごめん、かがみ。これから洗濯を始める所なんだよ」
「ほら、こなたってば~」
「あ、ごめん。これからお隣に回覧板を届けて来ないといけないんだよ。あそこのおばさん、話を始めると長くてねー」
「こ~な~た~」
「残念だけど、洗い終わった洗濯物はすぐに干さないと皺になっちゃうから…」
「こなたん♪」
「かがみん、これから宅急便が来るんだよ」
「こなちゃん♪」
「かがちゃん、悪いけど、今配達物の中に入ってたプチプチを潰すので大変だから…」
「……」
かがみは恨めしそうな顔で私を見つめていたかと思うと、…もういい、と一言だけ吐き捨てて、ソファーの上で不貞寝を決め込んでしまった。
あー、とうとう拗ねちゃったか…。
さすがにプチプチ潰しを理由にするのは自分でもどうかと思うけど、今は何がなんでもかがみのフラストレーションを溜めさせなければならない。
相手にその気にさせておいていざとなれば焦らす。いわゆる押して引くの作戦だ。
っていうか、普段の受け身な生活(性活?)に飼い慣らされてしまったかがみは、ここまでやらないと積極的になってくれないんだよね…。
…さてと、ちょっと早い時間だけど、これ以上引っ張ると逆に雰囲気が悪くなるだろうし、そろそろ仕掛けに入らないといけないね。
意を決した私は、本番に臨む準備に取り掛かる為、音を立てないように自分の部屋に引っ込んだ。
☆☆☆☆☆
「…ほら、かがみ。晩ご飯の時間だよ。起きて」
しばらくして、私は不貞寝状態のままのかがみを起こそうと、体を揺する。
「なんだよー。まだ5時にもなってないじゃな――」
きっと狸寝入りしていただけなんだろう。寝起きとは思えない素早いレスポンスで、非常に不機嫌な顔をしたかがみがこっちを向き――私の姿を目にして、ものの見事に硬直した。
「あ、あんた、その格好…」
「えへへ…。みんな大好き裸エプロ~ン♪」
驚くかがみの目の前で、私はまるでモデルさんのようにクルリと一回転してみせる。
いや~、こういう時の為に、フリルの付いた白エプロンを買っておいて正解だったね。
「どう、似合う?」
「い、いや、似合うけど…。っていうか、似合いすぎ…」
くふふ、動揺しすぎて本音まで口に出してるよ…。こういう所が可愛いんだよね。
散々焦らされたせいなのか、これだけで既にKO寸前なかがみに対して、私はトドメとしてオーバーキル確実な一撃を叩き込む。
「だからさ…かがみ、今夜はおなかいっぱいにわたしをた・べ・て。…ねっ?」
殺し文句と共に、人差し指を唇に当てて、一番自信のある悩殺ポーズを決めてみせた。
すると、その刹那、
「っ、こなたっ!」
かがみの声が早いか遅いかぐらいのスピードで、私の視界が大きく動く。
その原因が、私がかがみに押し倒されたからだと認識した時には既にかがみは私の体中にキスの嵐をお見舞いしていた。
そして、キスをしながら、かがみは衣服を脱いで行く。
私はそれを器用だなーと思いながら、黙ってその様子を見守った。
「ふふふ…。こなたぁ、今日という今日は容赦しないからね、覚悟しなさい」
下着姿になったかがみは両手で私の顔を固定させ、目と目を合わせた状態でそう宣告する。
その目は、飼い慣らされた狼が野生に目覚め、迷える子羊を狩ろうとしている物そのものだった。
勝った…計画通り。
意図したままに事が進んだという事実に私は大きな満足感を感じながら、その身をかがみに委ね――。
「ただいま~。いや~、打ち合わせが思いの外早く終わってな――」
これまた絶妙なタイミングで家に帰ってきたお父さんによって、何時間も掛けて作り出した空気や計画は全てが台無しになった。
そして、裸エプロン姿の娘と、その娘の嫁が下着姿で娘を押し倒しているというカオスな光景を目の当たりにしたお父さんは――目を点にしたまま完全にフリーズしてしまった。
…えっと、これなんてデジャヴ?
しかも良く見たら、かがみも私を押し倒したまま恥死してるし…orz
☆☆☆☆☆
後日、恥ずかしながらも、私はお父さんが何故あの時フリーズしたのかを聞いてみた。
するとお父さんは、「死に別れた嫁と瓜二つな娘が、同性の嫁を連れてきて裸エプロンと下着姿であんな体勢になってる所を目撃したら、昇天するに決まってるじゃないか。色んな意味で」と真面目に答えてくれた。
あと、散々たる結果だった私達とは対照的に、ゆーちゃんの方は上手く行ったようだ。
…どういう意味でかは知らないけど。
ちなみに、今回使用した『裸エプロンこなた』は、後日、性欲を持て余したかがみが“徹底的に”美味しく頂きましたとさ。
-[[アルバイト始めました]]へ続く
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- こなちゃんかがちゃん -- 名無しさん (2023-02-13 02:55:49)
- もう……ずっとニヤてしまう… -- 名無しさん (2020-11-11 05:35:30)
- 正に至高のバカップルですね -- 名無しさん (2013-03-19 20:57:51)
- ドナルドwww &br() -- 名無しさん (2012-12-08 11:06:24)
- 想像したら鼻から出血多量! -- かがみんラブ (2012-09-23 20:52:17)
- ニヤニヤがとまんねぇwwww -- 名無しさん (2009-04-27 20:25:35)
- おぉ…、…すげ… -- 名無しさん (2009-04-27 01:56:09)
- ニヤニヤがヤバい &br() &br()後日に 美味しく頂けて良かったね!!かがみん!!(性的な意味で) -- ラグ (2009-02-01 16:23:38)
- ニヤニヤが止まらねぇw -- 名無しさん (2009-02-01 04:38:54)
- そwwうww君wwのwwバカww -- ハルヒ@ (2008-09-22 01:45:45)
それは昨日の夕食時の事だった。
「あの~。私、明日は朝から出掛けて、夜はみなみちゃんのお家にお泊りするから、朝ご飯以外はいらないからね」
「ああ、そういえば、お父さんも明日は朝から新刊のサイン会があって、その後は編集の人と打ち合わせがあって帰りが遅くなると思うから、昼と夜はかがみちゃんと二人で食べておいてくれ」
明日は朝から、お父さんとゆーちゃんが出掛けて居ない。
つまり、一日中かがみと二人っきりになると――。
これはオタクとして、女として、このレアイベントを最大限に活用しなきゃバチが当たる。
そう思い立った私は、試験前夜の一夜漬けの時以上に脳をフル回転させ、明日の一日を有意義に過ごす最良のプランを導き出した。
名付けて「今日のかがみの夕食は私だよ(性的な意味で)計画」だ。
“攻め”も良いけど、たまには“受け”もやってみたいからね。
そうと決まれば、念入りな準備が必要という事で、私はお風呂に入ると、いつもよりも早くに就寝する事にした。
勿論、かがみとのおやすみのチューや、私とかがみのめくるめく愛の欲望番外地も今日はお預けだ。
今日は“疲れてる”(この部分を特に強調)から早めに寝るね、とかがみに告げると、かがみは物凄く寂しげな表情をしながら頷いた。
ごめんね、かがみん。
でも、こうしないと、かがみが寂しがりやのうさちゃんからお腹を空かした狼に変態(トランスフォーム的な意味で)しないからね。
かくいう私の方も、遠足前日の小学生のようになかなか寝付けなかったけれど、羊の数、もとい、かがみの数を数えている内になんとか寝付く事が出来たのだった。
翌朝。早寝の効果もあって、私は予想通り隣で寝ていたかがみよりも早くに起きる事が出来た。
多分無いとは思うけど、遅くまで寝ていたら、先に起きたかがみに朝這いされて計画が台無しになる可能性もあったからね。
その後は、お父さん、ゆーちゃん、私よりも20分後に起きたかがみを交えて朝食を取った。
リビングで見せた今朝一番のかがみの表情は、一見すると澄ました表情に見えるものの、かがみ専門家の私にしてみれば、「これは溜まって来てるな」というような顔だと一目で分かる。
よしよし。この後も、慎重且つ大胆に計画を遂行していきますか。
☆☆☆☆☆
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二人を送り出した後、私は夏休みの宿題を片付ける事にした。
「とゆーわけで、かがみ宿題見せて」
「結局それかよ! っていうか、いい加減、高校3年なんだから、それくらい自力でやんなさいよ」
「やだよ。面倒くさいし」
「面倒くさいって、アンタのノルマだろうが! ああもう、絶対に見せないから全てアンタ一人で解きなさい!」
ううっ…。このままじゃ課題に追われる作業だけで、今日一日が終わってしまうじゃないか…。
仕方ない。ちょっと予定が早まるかもしれないけど、ちょっとカマをかけてみるか。
「ああ…、せっかく結婚してから、始めて二人っきりで過ごせると思ったのになぁ…。かがみはそれで良いの?」
「うっ…。わ、わかったわよ。今日だけだからねっ!」
目をうるませ、上目遣いでそう言うと、かがみはいとも簡単に陥落した。
「あ~ん、かがみ大好き~♪」
「あっ、コラ、そんな事で抱き付くな!」
「こなたは嬉しくなると、ついかがみに抱き付いちゃうんDA☆」
「何言ってんのよ、このバカ…」
おおっ、デレたデレた。
だけど、このままズルズルと行っちゃうと、肝心の計画も宿題を写す作業も進まなくなっちゃうから、一旦ここで退いておかないとね。
「じゃあ、そーゆーわけで借りてくねー」
私はあっという間に抱擁を振り解くと、かがみの宿題を借る為、かがみの部屋に華麗に入室した。
部屋のドアを閉める直前、あのまま廊下に突っ立っているかがみの様子をチラ見すると、呆然としたかがみの姿がそこにはあった。
☆☆☆☆☆
さてと、なんとか宿題も片付いた事だし、お昼ごはんの支度でもしますか。
ちなみに、今日の献立はご飯に納豆、オクラに山芋のとろろ汁。そして昨日の残り物のジャガイモの煮っ転がしだ。
…やけにネバネバとした物が多いのは、勿論精力を高める為である。
まぁ、女性にも効果があるのかどうかは知らないけどさ。
そして、私はその二人分の食事をテーブルに向かい合わせではなく、隣り合わせで配置する。
なんと言っても、これがこの作戦の最重要ポイントになるからね。
「かがみー。昼ごはん出来たよー」
「あー、はいはい」
私は部屋でラノベを読んでいたかがみを呼び出す。
返事をするかがみは、心なしか、やや不機嫌そうに見える。
まぁ、あれから一度もかがみに構わず宿題を写し続けてたんだから、そうなるのも当然かな。
私は敢えてその事を気にするような素振りを見せずに、かがみを席に着かせる。
「あれ? 私の分の箸が無いんだけど…」
すると、自分の箸があからさまに置かれていない事に気付いたかがみは、困惑の表情を浮かべた。
私はその指摘にも対応せず、そそくさと一口では食べきれない大きさのジャガイモを箸で半分に割ると、それをかがみの口の前に持っていった。
「はい、かがみ。あーんして」
「なっ!?」
かがみの顔がみるみる内に赤く染まっていく。
ここはどんどん押していかないと…ね。
「ああ、そっか~。普段は人前でこういう事をやるのは恥ずかしいからって何度も拒否してたもんね。でも、今は二人っきりなんだし――」
「わ、わかったわよ。食べれば良いんでしょ、食べれば」
観念したかのように開かれたかがみの口に、私はジャガイモを運び込む。
「どう?」
「…うん。昨日よりも味が染みてて美味しいわよ」
相変わらず顔を真っ赤にしたまま、しおらしくそう答えるかがみ。
そんな夢にまで見た光景に、実の所、私の方も興奮を隠せなかったりする。
続いてご飯を差し出すと、それもかがみは黙って食べた。
そうなんだよ。私がずっとこれがやりたかったんだよ!
完全に調子に乗った私は、とろろ汁の入ったお椀を傾け、口の中に流し込むと、両手でかがみの顔を引き寄せていく――。
「ちょっ、こなっ……」
――どう見ても口移しですが、何か?
しかも、そのまま軽くフレンチキスに移行するコンボも炸裂させている。
…うーん。何度キスしても、かがみの唇は柔らかくて全然飽きないなぁ…。
でも、あんまりやり過ぎるとご飯が冷めちゃうから、そろそろこの辺で――。
「んっ…ぷはっ……はぁ…はぁ…」
「かがみ、おいしい?」
「うん…おいしい…」
「んじゃ、次は――」
「も、もういいわ! あとは自分で食べるから!」
「えーっ? 別に良いじゃん、二人っきりの時にしか出来ないんだよ?」
「そんな事言っても、あまり時間を掛けすぎるとご飯が冷めるし、それに…これ以上されると私の理性が持たないわよ!」
生殺し状態のかがみは半泣きになりながら私にそう懇願してくる。
「あー…。それはさすがにマズイよね……」
――今襲われると私の計画が台無しになっちゃうし。
「ん、何か言った?」
「いやいや、何も言ってませんよ、かがみ様」
「急に敬語になる所が却って怪しいんだが…」
「まーまー、そんな事はどうでも良いから早く食べないと冷めちゃうよ」
私はそう誤魔化しつつ、かがみの分のお箸を差し出すと、かがみは若干納得のいかない顔をしながらも、それ以上詮索する事無く料理に手を付け始めた。
ふぅ、危ない危ない…。
「それにしても、今日のおかずの偏り具合はどうにかならなかったのか?」
「夏だからね。ネバネバな物を食べて精力を付けないとさ」
「…それは“誘ってる”と受け取って良いのか?」
「さぁて、どうだろうね?」
ニヤニヤしながらそう答えると、一瞬だけどかがみの瞳が妖しく輝いたのを私は見逃さなかった。
これでこの場面はみっしょんこんぷりーとだね♪。
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食後、寂しがり屋のウサちゃんは、事ある毎に私に引っ付いて来るようになったのだけど、私はそれをテキトーにあしらい続けた。
「ねぇ、こなたぁ」
「ごめん、かがみ。これから洗濯を始める所なんだよ」
「ほら、こなたってば~」
「あ、ごめん。これからお隣に回覧板を届けて来ないといけないんだよ。あそこのおばさん、話を始めると長くてねー」
「こ~な~た~」
「残念だけど、洗い終わった洗濯物はすぐに干さないと皺になっちゃうから…」
「こなたん♪」
「かがみん、これから宅急便が来るんだよ」
「こなちゃん♪」
「かがちゃん、悪いけど、今配達物の中に入ってたプチプチを潰すので大変だから…」
「……」
かがみは恨めしそうな顔で私を見つめていたかと思うと、…もういい、と一言だけ吐き捨てて、ソファーの上で不貞寝を決め込んでしまった。
あー、とうとう拗ねちゃったか…。
さすがにプチプチ潰しを理由にするのは自分でもどうかと思うけど、今は何がなんでもかがみのフラストレーションを溜めさせなければならない。
相手にその気にさせておいていざとなれば焦らす。いわゆる押して引くの作戦だ。
っていうか、普段の受け身な生活(性活?)に飼い慣らされてしまったかがみは、ここまでやらないと積極的になってくれないんだよね…。
…さてと、ちょっと早い時間だけど、これ以上引っ張ると逆に雰囲気が悪くなるだろうし、そろそろ仕掛けに入らないといけないね。
意を決した私は、本番に臨む準備に取り掛かる為、音を立てないように自分の部屋に引っ込んだ。
☆☆☆☆☆
「…ほら、かがみ。晩ご飯の時間だよ。起きて」
しばらくして、私は不貞寝状態のままのかがみを起こそうと、体を揺する。
「なんだよー。まだ5時にもなってないじゃな――」
きっと狸寝入りしていただけなんだろう。寝起きとは思えない素早いレスポンスで、非常に不機嫌な顔をしたかがみがこっちを向き――私の姿を目にして、ものの見事に硬直した。
「あ、あんた、その格好…」
「えへへ…。みんな大好き裸エプロ~ン♪」
驚くかがみの目の前で、私はまるでモデルさんのようにクルリと一回転してみせる。
いや~、こういう時の為に、フリルの付いた白エプロンを買っておいて正解だったね。
「どう、似合う?」
「い、いや、似合うけど…。っていうか、似合いすぎ…」
くふふ、動揺しすぎて本音まで口に出してるよ…。こういう所が可愛いんだよね。
散々焦らされたせいなのか、これだけで既にKO寸前なかがみに対して、私はトドメとしてオーバーキル確実な一撃を叩き込む。
「だからさ…かがみ、今夜はおなかいっぱいにわたしをた・べ・て。…ねっ?」
殺し文句と共に、人差し指を唇に当てて、一番自信のある悩殺ポーズを決めてみせた。
すると、その刹那、
「っ、こなたっ!」
かがみの声が早いか遅いかぐらいのスピードで、私の視界が大きく動く。
その原因が、私がかがみに押し倒されたからだと認識した時には既にかがみは私の体中にキスの嵐をお見舞いしていた。
そして、キスをしながら、かがみは衣服を脱いで行く。
私はそれを器用だなーと思いながら、黙ってその様子を見守った。
「ふふふ…。こなたぁ、今日という今日は容赦しないからね、覚悟しなさい」
下着姿になったかがみは両手で私の顔を固定させ、目と目を合わせた状態でそう宣告する。
その目は、飼い慣らされた狼が野生に目覚め、迷える子羊を狩ろうとしている物そのものだった。
勝った…計画通り。
意図したままに事が進んだという事実に私は大きな満足感を感じながら、その身をかがみに委ね――。
「ただいま~。いや~、打ち合わせが思いの外早く終わってな――」
これまた絶妙なタイミングで家に帰ってきたお父さんによって、何時間も掛けて作り出した空気や計画は全てが台無しになった。
そして、裸エプロン姿の娘と、その娘の嫁が下着姿で娘を押し倒しているというカオスな光景を目の当たりにしたお父さんは――目を点にしたまま完全にフリーズしてしまった。
…えっと、これなんてデジャヴ?
しかも良く見たら、かがみも私を押し倒したまま恥死してるし…orz
☆☆☆☆☆
後日、恥ずかしながらも、私はお父さんが何故あの時フリーズしたのかを聞いてみた。
するとお父さんは、「死に別れた嫁と瓜二つな娘が、同性の嫁を連れてきて裸エプロンと下着姿であんな体勢になってる所を目撃したら、昇天するに決まってるじゃないか。色んな意味で」と真面目に答えてくれた。
あと、散々たる結果だった私達とは対照的に、ゆーちゃんの方は上手く行ったようだ。
…どういう意味でかは知らないけど。
ちなみに、今回使用した『裸エプロンこなた』は、後日、性欲を持て余したかがみが“徹底的に”美味しく頂きましたとさ。
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