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花火大会」(2023/05/11 (木) 11:50:00) の最新版変更点

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カナカナカナ……ひぐらしの鳴き声が聞こえる夏の夕暮れ。 日の入りが早くなって来たとはいえ、まだまだ、残暑は身に沁みる。 ふと、周りを見れば、道往く人は、皆浴衣を着ている。 そして、往来の真ん中を行く私達も、その例には漏れていない。 今日は、夏の花火大会。 人の川の流れに身を任せて、私と彼女も、歩く。歩く。ただ、前を見て、歩く。 どうしてだろう? いつもだったら、他愛の無い話して、じゃれ付いたり、じゃれ付かれたり。 何でかな? 私も、彼女も、無言で、歩く。 決して、居心地が悪いわけじゃない。寧ろ、安心する。彼女といると。 ただ、いつもと違う。それだけ。 ちょっと、横目で隣を歩く彼女を盗み見た。私と彼女の身長差は17cm。こうやって見ると、結構、離れて見える。 周りの人が私達を見たらどう見えるのかな。姉妹? 親友? それとも……? それとも、なんだろうね。 こう思うのは、彼女の横顔が夕日に照らされていつもと違う雰囲気だからかな。 私の視線に気がついたのか、彼女がこっちを見た。目が逢った。 お互いに、クスっと笑った。 いつもの、私達だ。 彼女が、手を差し出した。私は、それを取る。いつもこうだ。彼女は、私を引っ張ってくれる。肉体的にも、精神的にも。 いつも4人組の、私達。でも、その中でも彼女は、私にとって、特別、だった。 いつからかな、こう思うようになったのは。 初めての出会いは、平凡だったけど。逢う度に過去の誰よりも惹かれていった。 少しずつ、少しずつ……。ゆっくりと、私は、彼女に巻き込まれていった。 いつから、なんて、覚えてない、か。 気がついたら、一緒にいるのが当たり前で、毎週長電話。 私が言って、彼女が呆れて。私が呆れて、彼女が言って。 楽しいね。口に出してはいえないけどさ。 花火は、近所の河川敷。 私達は、芝生に並んで腰掛けた。 辺りはもう、暗い。 彼女の目鼻立ちだけが、かろうじて、見分けられた。 ふと、女の子特有の甘い匂いが鼻腔をついた。 彼女が頭を私の肩に凭せ掛けてた。 ビックリした。 見ると、彼女は寝息を立てていた。 きっと夜更かししたのだろう。 私は、苦笑する。 ――いいよ。花火始まったら、起こしてあげる。 私は、彼女の耳元で囁いた。 彼女は、少し、頷いた、気がした。 蒼と紫は重なっていた。 ……ヒュルルル……ドーン!! 一発、あがった。 花火が色為す幻想的な空間。その光に照らされた彼女の横顔は夕暮れと違って、あどけなかった。 ――起きて、花火、始まったよ。 少し、肩を揺すってやると、彼女は起きた。 でも、まだ眠いのか瞼をこすっている。 ちょっと、ムッとした。今日、一緒に行こうって言ったのはそっちなのに。 思い切り、睨みつけてやる。彼女は、その意味が良く分かっていないのか、私の方をきょとんと見つめるばかりだ。 ――どうしたの? 困ったように、慌てたように、私を覗きこむ彼女。時折、年齢より大人びて見えることのある彼女だが、今は、子どもみたい。 私の悪戯心が芽生えた。 私は、目を逸らして、そっぽを向いてやる。あたかも怒っている様に。本当は、怒ってなんかいないのに。 ――え? え? 彼女が慌てている。それを思うと、内心、くすぐったいような、こそばゆいような。 そろそろ、許してあげようかな。 彼女をからかって、もうちょっと楽しんでいたいけど、2人で見る花火の方が、きっと、楽しい。 ――なんでもない。 そう言って、振り向いた。 ヒュ~……ドォン! 花火の、紅い光に照らされた彼女の顔が、零距離にあった。 ――え? 身長差、17cm。その壁は、並んで腰掛けた瞬間に砕け散っていた。 私が、振り向く。 彼女が、覗き込む。 たったそれだけで、どんな呪いからもお姫様を救い出す奇跡が、私たちに、かかっていた。 パスッ……バアァンッ! ――あ。 慌てて、離れた私達。でも、唇に残る感触は、私と彼女が繋がっていた事を示していた。 あぁ……どうしよう。 彼女は、怒っているだろうか。それとも、悲しんでいるだろうか。 嫌な想像が次々と頭をよぎる。 どうしよう、どうしよう……。 ドォオォン!!! 一際大きな花火が、私を、現実へ引き戻す。 一瞬の光輝。彼女の顔は……私と同じだ。相手が怒っていないか、悲しんでいないか、心配している顔だ。 それを見て取ったら、何だか、力が抜けた。 何だ……同じじゃん。 彼女も、微笑んだ。 ――ゴメン。 2人で、謝った。 笑いあった。 彼女が相手だったから、まぁ、良いか。お互いに、そう思った。 いや、寧ろ、相手が彼女だったから、良かった。 今日、最後の花火が、上がった。 蒼と紫の色が複雑に交わって、夜空に大輪の花が咲いた。 ――今日、泊まってかない? 彼女が、聞いた。 ――いいよ、私は、答えた。 地上でも、蒼と紫は重なっている。 私たちの花火大会。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 花火大会俺も行きてぇ~ヽ(;▽;)ノ &br()でも仕事あるし、彼女いないしどうしようもねぇ~ &br()_φ( ̄ー ̄ ) &br()GJでした! -- 名無しさん (2010-08-01 20:21:41) - 二人で花火は恋人の定番ですね -- 名無しさん (2010-07-18 18:58:35)
カナカナカナ……ひぐらしの鳴き声が聞こえる夏の夕暮れ。 日の入りが早くなって来たとはいえ、まだまだ、残暑は身に沁みる。 ふと、周りを見れば、道往く人は、皆浴衣を着ている。 そして、往来の真ん中を行く私達も、その例には漏れていない。 今日は、夏の花火大会。 人の川の流れに身を任せて、私と彼女も、歩く。歩く。ただ、前を見て、歩く。 どうしてだろう? いつもだったら、他愛の無い話して、じゃれ付いたり、じゃれ付かれたり。 何でかな? 私も、彼女も、無言で、歩く。 決して、居心地が悪いわけじゃない。寧ろ、安心する。彼女といると。 ただ、いつもと違う。それだけ。 ちょっと、横目で隣を歩く彼女を盗み見た。私と彼女の身長差は17cm。こうやって見ると、結構、離れて見える。 周りの人が私達を見たらどう見えるのかな。姉妹? 親友? それとも……? それとも、なんだろうね。 こう思うのは、彼女の横顔が夕日に照らされていつもと違う雰囲気だからかな。 私の視線に気がついたのか、彼女がこっちを見た。目が逢った。 お互いに、クスっと笑った。 いつもの、私達だ。 彼女が、手を差し出した。私は、それを取る。いつもこうだ。彼女は、私を引っ張ってくれる。肉体的にも、精神的にも。 いつも4人組の、私達。でも、その中でも彼女は、私にとって、特別、だった。 いつからかな、こう思うようになったのは。 初めての出会いは、平凡だったけど。逢う度に過去の誰よりも惹かれていった。 少しずつ、少しずつ……。ゆっくりと、私は、彼女に巻き込まれていった。 いつから、なんて、覚えてない、か。 気がついたら、一緒にいるのが当たり前で、毎週長電話。 私が言って、彼女が呆れて。私が呆れて、彼女が言って。 楽しいね。口に出してはいえないけどさ。 花火は、近所の河川敷。 私達は、芝生に並んで腰掛けた。 辺りはもう、暗い。 彼女の目鼻立ちだけが、かろうじて、見分けられた。 ふと、女の子特有の甘い匂いが鼻腔をついた。 彼女が頭を私の肩に凭せ掛けてた。 ビックリした。 見ると、彼女は寝息を立てていた。 きっと夜更かししたのだろう。 私は、苦笑する。 ――いいよ。花火始まったら、起こしてあげる。 私は、彼女の耳元で囁いた。 彼女は、少し、頷いた、気がした。 蒼と紫は重なっていた。 ……ヒュルルル……ドーン!! 一発、あがった。 花火が色為す幻想的な空間。その光に照らされた彼女の横顔は夕暮れと違って、あどけなかった。 ――起きて、花火、始まったよ。 少し、肩を揺すってやると、彼女は起きた。 でも、まだ眠いのか瞼をこすっている。 ちょっと、ムッとした。今日、一緒に行こうって言ったのはそっちなのに。 思い切り、睨みつけてやる。彼女は、その意味が良く分かっていないのか、私の方をきょとんと見つめるばかりだ。 ――どうしたの? 困ったように、慌てたように、私を覗きこむ彼女。時折、年齢より大人びて見えることのある彼女だが、今は、子どもみたい。 私の悪戯心が芽生えた。 私は、目を逸らして、そっぽを向いてやる。あたかも怒っている様に。本当は、怒ってなんかいないのに。 ――え? え? 彼女が慌てている。それを思うと、内心、くすぐったいような、こそばゆいような。 そろそろ、許してあげようかな。 彼女をからかって、もうちょっと楽しんでいたいけど、2人で見る花火の方が、きっと、楽しい。 ――なんでもない。 そう言って、振り向いた。 ヒュ~……ドォン! 花火の、紅い光に照らされた彼女の顔が、零距離にあった。 ――え? 身長差、17cm。その壁は、並んで腰掛けた瞬間に砕け散っていた。 私が、振り向く。 彼女が、覗き込む。 たったそれだけで、どんな呪いからもお姫様を救い出す奇跡が、私たちに、かかっていた。 パスッ……バアァンッ! ――あ。 慌てて、離れた私達。でも、唇に残る感触は、私と彼女が繋がっていた事を示していた。 あぁ……どうしよう。 彼女は、怒っているだろうか。それとも、悲しんでいるだろうか。 嫌な想像が次々と頭をよぎる。 どうしよう、どうしよう……。 ドォオォン!!! 一際大きな花火が、私を、現実へ引き戻す。 一瞬の光輝。彼女の顔は……私と同じだ。相手が怒っていないか、悲しんでいないか、心配している顔だ。 それを見て取ったら、何だか、力が抜けた。 何だ……同じじゃん。 彼女も、微笑んだ。 ――ゴメン。 2人で、謝った。 笑いあった。 彼女が相手だったから、まぁ、良いか。お互いに、そう思った。 いや、寧ろ、相手が彼女だったから、良かった。 今日、最後の花火が、上がった。 蒼と紫の色が複雑に交わって、夜空に大輪の花が咲いた。 ――今日、泊まってかない? 彼女が、聞いた。 ――いいよ、私は、答えた。 地上でも、蒼と紫は重なっている。 私たちの花火大会。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!(^_-)b -- 名無しさん (2023-05-11 11:50:00) - 花火大会俺も行きてぇ~ヽ(;▽;)ノ &br()でも仕事あるし、彼女いないしどうしようもねぇ~ &br()_φ( ̄ー ̄ ) &br()GJでした! -- 名無しさん (2010-08-01 20:21:41) - 二人で花火は恋人の定番ですね -- 名無しさん (2010-07-18 18:58:35)

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