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and many more ~それとたくさんの幸せを~」(2023/05/11 (木) 16:51:19) の最新版変更点

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『and many more ~それとたくさんの幸せを~』 「どうしようどうしようどうしようどうしy…(略)…どうしよう!!」 「お、落ち着いてお姉ちゃん!ほ、ほら、まだ時間はあるから。」 「ああ、もうっ!なんで、何度やってもケーキが作れないのよぉっ!!」 私はいまだかつてない焦りを感じていた。それは何故か?理由は単純だ。 今日はこなたの誕生日であり、そして私はいまだにケーキが完成していないということだ。 「バレンタインはうまくいったのに…やっぱりつかさが隣にいてくれないと、無理よ…」 「そんなことないよ!あの時は一人で作れたんだし、それに毎日の夕飯だって少しずつ、 作れる物が増えたり、上達したりしてるんだから、頑張って!!」 「でも、かれこれ3度目よ?3度目の正直って言うのに、何も変わらないんだもの。」 「話を聞いてる限りでは、いい出来になるはずなのに…なんで焦げちゃうんだろ?」 「それが分かったら苦労しないわよ…」 レシピ通りの作り方でやっているのに、なぜかうまくいかない。 どうしても水分が抜けすぎてしまうらしく、パサパサになってしまい、底は焦げてしまう。 少しずつ時間を縮めてはいるものの、最初からあまり変わっていない。 2つ目からはアルミをかぶせてもいるし、敷いてもいる。ある意味、これで焦げるのが奇跡だ。 そして3回目はつかさを頼ってみたのだけど、食べれる程度にはなったものの、まだ焦げが多い。 「ごめんね、お姉ちゃん。手助けに行きたいけど、ゆきちゃんの帰りが遅くて、夕飯作らないといけなくて…」 「うぅん、こっちこそ無理に頼んでごめんね。ただでさえ電話でも時間とらせてるのに。」 「そんなことないよぉ。今までお姉ちゃんにはずっと頼りっぱなしだったし、これぐらいお安い御用だよ。」 「そう…でも、時間も時間だし、あとは一人で頑張ってみるわ。」 「ふぇ?あ、ほんとだ、もうこんな時間なんだぁ。そろそろ夕飯の支度をしないとダメかも。」 「色々とありがとう、つかさ。」 「ううん、またいつでも聞いてね。あ、それと私ね、明日休みだから遊びに行くかも~」 「私たち、二人とも午後から講義があるから、朝から昼前までしかいないけど…起きれるの?」 「毎日ゆきちゃんに起こしてもらってるから、大丈夫だよぉ。」 (それは…どうなんだろう…。そしてごめんね、みゆき…) 「来てもいいけど、次の休みに私たちもそっちに行く予定だから、無理しなくてもいいわよ?」 「そうなんだ、楽しみにしてるね♪ゆきちゃんにも伝えておくよ~」 「うん。それじゃ、またね。」 「バイバイー」 そういって電話を切って、私はすぐさまレシピと向き合う。 大学の午後の講義が休講という素晴らしい強運から一転、今は地獄を見ている。 目の前には炭×1と、失敗作×2、そしてあと一回分ほどの材料が並んでいる。 つまり、次はもう失敗が許されないということである、何があろうとも。 (分量は間違ってないし、材料を入れる順番も問題なし…と。やっぱり時間なの? でも、ちゃんと書いてある通りに最初は作って、ほとんど炭みたいなのができたし… さっきのはまだ食べられるけど…はぁ、つかさだったらすぐに分かるんだろうなぁ。) そう心の中で考えはするものの、何がいけないのかさっぱり分からない。 こなたが帰ってくるまであと2時間、直ぐに作り始めないと間に合わない。 夕飯の方はすでに最後の仕上げを除いて出来ていて、サラダも冷蔵庫に入れてある。 お米も、次のケーキをオーブンに入れるタイミングで炊き始めれば問題はないはず。 そうして材料を再度混ぜ合わせ、あとはオーブンに入れればいいが、そこで悩んでいると ピンポーン! (誰かしら?みゆきは今日これないし、大学の友達にもまだ正確な住所は伝えてない。 おじさんやゆたかちゃんは25日に来てるし、ゆいさんも無理となると…まさか、つかさ? でも合鍵を持たせてるから呼び鈴は鳴らさないだろうし、来るにしてもいくらなんでも早いわよねぇ??) ピンポーン! (あ、そうだ、とりあえず開けないと待たせちゃ悪いわよね。) そう思って、玄関に行って扉を開いたら、 「ふぃ~、やっと開けてくれたよ。今日、鍵を忘れちゃ「なんでこなたがここにいるのよ!!」…へっ?」 「だ、だって、今日は8時まで帰らないって…」 「いやぁ、今日行ってみたら最後の講義、休講になっててさ。メールしたと思うんだけど?」 「え、嘘?ほとんど、け…課題で忙しくて見てなかったわ、ごめん。」 「珍しいね、かがみがそんなに余裕ないなんて。いつもは期限の2日前には終わらせて、 ラノベとか読んでるのに。今日はかがみが休みの日だし、数時間もあれば終わるんじゃ?」 「ちょっと手こずっただけよ、長いレポートだったし。」 「ふ~ん。そういえば、一昨日から昨日にかけて何か必死に調べてたねぇ。」 「そ、そうそれそれ、昨日は調べるだけで精一杯だったのよ。」 その調べ物が、一昨日はケーキのレシピ、昨日は作るためのコツだったことは言えない。 そして今、こなたと応対している中で、このあとをどうしようか頭をフル回転させていた。 今日の出来事をいつもの様に聞きながら、寝室でこなたの着替えを見て、ふと思いついた。 「そうだ、着替える前に、とりあえずお風呂入ってきたら?」 「ん?う~ん、どうしようかなぁ…リアルタイムのアニメもあるし~」 「ほ、ほら、遅いと思って、まだご飯炊いてないし、アニメならビデオ撮ってあるしさ。」 「まっ、それもそだネ。今日のアニメは熱入れてないし。…ん~でも、この匂い…これは、ひょっとして…」 (あ、やばい!今まで焦がしたケーキのこと忘れてたっ!!さっさと捨てておけばっ!) 私はずっとあの空間にいたから慣れてしまったのか、匂いが届いてるのに気付かなかった。 でも、小動物みたいなこなたのことだ、おそらく最初っから臭っていたのだろう。 もはや時すでに遅し。自分の失態を明かさないといけないのか、と覚悟を決めたのだが… 「チキンカレーだね♪」 「ぇえっ?そ、そうなの、今日はチキンカレー作ったのよ!あんたの誕生日だしね。」 「確かに、チキンカレーは作るの上手になったよね~、細かい味付けとかまでさ。」 「そ、それはっ…あんたが好きだって言うから…って、ニヤニヤするな!」 「ぐふふ、かがみはいつも可愛いね~。さすが私の嫁、愛さずには居られないよ♪」 「ば、ばかっ!もう、いいからとっととお風呂入って来なさいよ。」 「んじゃ、行ってきまーす。デレかがみ、萌えーーーっ!!」 「おまっ、恥ずかしいセリフ禁止―っ!!ったく、もう…」 普通の部屋に比べて、防音性の高い壁を使用したこのマンションだからいいものを、 そうでなければ確実に誰かに聞かれているほどの大声を叫びながら、 小走りで風呂場へ向かうこなたを見届け、作業に戻る。 (ふぅ、なんとか風呂に入ってくれたし、匂いもどうにかごまかせたわね。 とにかく急いで失敗作のケーキを廃棄して、ケーキをとっととオーブンに入れないと…) そうと決めたら、即行動に移す。 ☆★☆ 一通り片付けを終えて、ケーキを作っていたような跡はどこにもないことを確認する。 調べておいたレシピは、自分の机の隠し場所にこなたの写真と一緒に入れてある。 さすがにクリームやフルーツは冷蔵庫に入れたが、野菜室に隠したし、平気だろう。 お皿やコップ、サラダにお茶も出したし、ご飯もあと10分強で炊きあがる。 カレーは温め直すだけだから、あとは目の前にある生の状態のケーキだけが問題だ。 (私も含めてそうだけど、女子の長風呂はこういう時は本当に助かるわね…っていうか、 風呂場から凄い声がするんだけど…防音してなきゃ騒音で訴えられそうね。) 音程を外して「…あ・い・し・て・る~♪」と言っているのがはっきりと聞こえる。 こういうタイプの長風呂は珍しいだろうけど、どっちにしろ今の私には救いになっている。 「おそらく『創○のアクエ○○ン』ね。」とつぶやき、思考を目の前の物に集中させる。 しかし、何しろ3度も失敗している上に、時間的に失敗できないプレッシャーがかかる。 (慎重に入れてと…えーと、時間は前よりさらに数分短くすればいいわよね? でも、生焼けとかだったら嫌だし…でも、生焼けならまだ修正は効くのかしら? それじゃあ、うんと時間を短くして…) 「それじゃあ、ぐちゃぐちゃになっちゃうけどいいの?」 「あ、そうなの?じゃあ、あと数分長くしてっと。ありがと、こなた…うぁああっ!!!」 かがんでいる私の肩の上から、ひょこっと顔をのぞかせた人物に、飛び退ってしまった。 もちろんそれは私の恋人であり、今さっきまで風呂に入っていたはずのこなただ。 「むふふ~、かがみんケーキ焼いてるの?なんでなんで~?」 「あ、あんた何でここに?!」 「ふっふっふー、どうも様子がおかしいから、いつもより早目に上がったんだよ。」 「で、でも、思いっきり歌ってたじゃない…」 「いやいや、あれは上がりながら歌ってたんだよ。冷静だったら気づくよね、音量で。」 「うっ…」 「そして、一体なんでケーキなんて焼いてるのかな、かがみ様?」 「様はやめい!それぐらい気付け!今日はあんたの誕生日だから…って、だからニヤニヤするんじゃない!」 「チキンカレーだけじゃなかったんだね~♪いやぁ、出来が楽しみだよ~…あやうく生だったけど。」 「うっさい。仕方ないでしょ、ケーキはまだうまく作れないんだし…」 「まぁ、今まで焦がしたものよりは平気そうだしねぇ。」 「一体なんのことよ?」 少しびくっと反応してしまったけれど、ここはしらを切る。 失敗作はもう処分したんだし、ただ単にからかっただけなんだろうと思っていたから。 でも、こなたの、こういう無駄な時に発揮される鋭さは侮ってはいけなかった。 「嘘ついても無駄だよ~。だって、かがみ絶対レシピどおりにしか作らないジャン。」 「そ、それがどうしたのよ?レシピ通りに作ってれば、問題ないじゃない。」 「あなたは重大なミスを犯した…そう、環境までもが一緒だと思い込んでいることだ!」 「何のネタよ!それに、環境って言ったって一般家庭で作れるもののはずよ?」 「違うのだよ、かがみん。真実はすべてオーブンの中に隠されている!」 びしっとオーブンを指すこなたに、少し呆れ半分、あせり半分で聞いてみる。 「だから、何なのよ?もったいぶらないで言いなさいよ。」 「前にさ、料理の火加減の話はしたよね?コンロによっても火力が違うって。」 「あー、中華料理店のとかはすごく強くて、家庭の中でも新旧で強さが違うんだっけ?」 「そうそう。それはオーブンも一緒なのだよ。」 「はぁ?だって温度設定とかできるんだから、同じじゃないの?」 「違う違う、使ってるオーブンが元々どれぐらいの火力を持ってるかってこと。 全部一緒じゃないからネ。ここのは結構新しいやつだから、多少火力が強いはずだよ。 このケーキのレシピはどこ?」 「それなら書斎にあるけど私が取ってくるわ、あんたは知らないだr…」 私が言い終わる前に、こなたは私の部屋になるはずだった、書斎と称される部屋に行き、 一枚の紙を持って戻ってきた。隠してあったレシピをすんなり持ってこれたことに対して、 いささか疑問を感じたが、これはこの際気にしないでおこう。 「ほら、ここの部分。」 「…ほんとだ。全然気付かなかったわ。」 確かにそこに書いてある通り、オーブンによって誤差やクセがあると書いてある。 特に電気オーブンとガスオーブンによる違いは他のより大きいらしく、 レシピは電気オーブンを使用していたが、ここのはガスオーブンだ。 (つまり、いくら時間をぴったりやっても焦げたのは、これが原因だったってわけね…) 「そ・れ・に、こんなのも見つけちゃったしね~」 「ん?…っ?!?!」 「ふふ~ん、私に隠し物なんぞ100年早いよ、かがみん♪どこに何があろうと、 すぐにこのアホ毛ダウジングで見つけ出せるからね。」 「…冗談抜きで、なんで分かったのよ…」 「やっぱりかがみの考えることだし、すぐに分かるよ。例えば、このケーキ。 かがみも馬鹿じゃないから、家事をよくする私に気づかれにくいところに置くジャン? ごみ箱やクローゼットなんて論外、風呂場も書斎もダメとなれば予想はつくもんだヨ。」 「じゃあ、まさかさっきのレシピは…」 「レシピは紙だから、かがみの写真入れに入ってるかなと思ったら、ビンゴだったヨ。」 「っ!?!」 (寝顔とか、料理中のとか、こっそり撮った写真を入れてたのを前から知られてた?!) 今まで撮っては入れて隠しているつもりだったものが、全部ばれていたと思うと顔がカーッと熱くなり、 あまりのショックに言葉も出ず、呆然とするしかできなかった。 「まぁ、かがみにしては中々考えてあったよ。失敗作は引越しの時に使った旅行鞄。 確かに掃除しても中まではあまり見ないし、ベッドの下にあれば安心かつ自然だからね。 でも、失敗だったのはそこにさっき置いたことかな。前まで押入れの奥にあったのが、 いきなり寝室のベッドの下にあったら、流石に怪しむしね~。」 「………」 「そして写真だけど、私がかがみの机に置いたDVDケースに紛れさせるとは、 私も気付くまで時間がかかたヨー。でも、最後の詰めが甘かったね、かがみん♪ 何かをケースに入れるのは見たんだけど、最初は何だったか分からなかったんだよネ。 でも、私があげたやつじゃないと分かって、何を見てるのか気になっちゃって、ついね。」 勝手に人の物を見るな!と、喉まで上ってきたけど、それよりは進まなかった。 なにせ入っていたのは、悪く言えばこなたを盗撮したものであり、怒るに怒れない。 それにそこまでばれていると、もはや怒る気力も起きず、逆にこなたを褒めてやりたい。 むしろ、勝手に写真を撮っていた自分の方が悪い気がしてきた。 「…ごめん。」 「ん?どして?」 「いや、勝手に写真とか撮ってさ。親しき仲にも礼儀ありよね…」 「そんなこと気にしなくていいのに。婿が嫁の写真を勝手に撮ったって、問題ないじゃん。」 「いや、あるだろ。」 「それに私が撮ってるかがみの写真に比べたら、これぐらいなんてことないよぉ~」 「そうなんだ…って、ちょっと待て!いいいい、一体どんな写真撮ってるのよ!?」 まさかの発言ではなく、こなたならやりかねなかったけど、本当にやってるとは思わなかった。 それより「なんてことない」というのは、量のことを言ってるのか、それとも内容のことなのか、両方なのか。 内容のことを言っているのであれば、想像するだけで恥ずかしい。 「それはかがみが自力で隠し場所を探すんだね~♪まぁ、そう簡単には見つからないヨ。」 「うぅ~、もう!気になるっ!少しでもいいから、どんな写真か教えなさいよ!!」 「ん~、そうだねぇ、寝顔はもちろん、お菓子食べてるときとか、入浴中のとか?」 「にゅ、入浴中って、あんたいつ、どうやって撮ったのよそんなの!」 「それも写真を見つけたら教えてあげるよ~。まぁ、見つけられたらの話だけど。」 「くぅ、絶対見つけてやるんだから!!」 「むふふっ、頑張ってね、かがみん♪さてと、そろそろケーキ入れないと間に合わないよ?」 「(うまく話をそらしたわね…)うっ、そ、そうね、じゃあこれぐらいに設定して…」 「それじゃあ、夕飯にしよーよ。お腹すいちゃった~」 「あー、はいはい。今温めたりするから、座って待ってて。」 ☆★☆ 「おぉ、いい匂い!それじゃあ、いただきまーす!」 「どうぞ、召し上がれ。私もいただきます、っと。」 「んん~、ウマい!さっすがかがみん、チキンカレーはうまいねぇ。」 「〈チキンカレーは〉は、余計よ。でも、頑張ったかいがあったわ、ありがと。」 自分でも食べてみたけど、今までの中でもまた一段とよくできている気がする。 さすがに一日も寝かせていないけど、ケーキを作る前から寝かせているから、 6時間近く寝かせていることになり、それが良かったのかもしれない。 あまり料理に精通していないから、詳しいことは分からないけどね。 「うん、この分なら、しばらくしたら婿と嫁の立場逆転できそーだネ。」 「それは無理ね。そうね…あんたが私より身長が高くなったら、許してあげるわ。」 「えぇ~、そんな無茶言わないでよぉー。今年の身体測定でようやく1cm伸びたのに!」 「まぁ、私は3cm伸びたけどね。あと19cm、がんばりな~」 「前は気にしてないって言ってたくせに…誰が何と言おうと、かがみは私の嫁だぁー!」 「バ、バカ言ってないで、さっさと食べなさいよ。冷めちゃうじゃない。」 「逃げられた…」 ☆★☆ 「ごちそうさま!ふぅ~、もうお腹いっぱいだヨ。」 「はい、お粗末さまでした。それにしても、よく食べたわね。ずいぶん減ってるもの。」 「いやぁ、お腹見てみる?すごい張ってると思うよ、ほら。」 「あ、あんたは少し恥じらいを持ちなさいよ!いくら私しかいないとはいえ、大胆すぎよ。」 「誘ってるんだよ、かがみん♪」 「そんなんで誘いに乗るか!!全く…そのお腹でケーキ食べれるのか?」 「甘いものは別バラだよ~、と言いたいけど少し待ってくれると助かるかも…」 「まぁ、これから飾り付けするから、しばらくかかるし休んでるといいわ。」 少しばかり理性を削られたが、ここまで堅持してきた私はあの程度では落ちない(はず)。 食べてる最中に焼きあがった生地を取り出してみると、いい焼き加減で凹みもしていない。 こなた曰く、しばらくオーブン内に放置すると萎みにくくなると言われたから、 あえて放置してただけで、別に取り出すのをめんどくさがったわけじゃないからね? ちなみにこなたはと言うと、そのままごろんと横になって、アニメを見始めた。 それを見て、私はクリームなどを用意しながら声をかけた。 「あんたねぇ、その体勢どうにかならない?物凄くオヤジっぽいんだけど。」 「むぅ、うるさいなぁ。どう見たっていいじゃん別に、お腹いっぱいなんだし。」 「それと、食べてすぐ寝ると太るわよ?」 「かがみほどじゃないから、平気だ、よ?!う、うそうそ、冗談だってば~(汗」 「分かってるならいいのよ、分かってるならね♪」 「その笑顔が逆に怖いよ、かがみん…」 包丁でケーキを二層にスパッと切りながら笑いかけ、こなたに私の意志は伝わったようだ。 とりあえず、脳天にグーが一発飛んでくることぐらいは察したみたいね。 こなたが普通に座ったのを確認して、ケーキのデコレーション作業に戻る。 クリームを塗り、ケーキを重ね、再びクリームを塗って、フルーツを乗せる。 最後はHappy Birthdayとクリームで書けば、完成…っと、蝋燭も19本立てないとね。 「ふぅ、やっと終わったわ。こなたぁ、出来たわよ…こなた?」 「………」 (返事がない。ただの屍のようだ…って、それじゃ困るわよ!) 一人でのり突っ込みをする自分自身に呆れながら、もう一度声をかけるが返事がない。 とりあえずテレビの前まで行ってみると、どうってことはない、ただ寝ていただけ。 (寝てる時のこいつって、ほんっと憎たらしいほど可愛いわね…ん?。) かがんで顔を少し近付けたところで、ふと頭の中で何かが働き、即座に立ちあがった。 「うぉっ!(ドサッ」 「…こなた、大丈夫?」 「な、なぜだ!私の完璧な作戦が見破られたとでも言うのかぁぁぁ…!」 「やっぱり、タヌキ寝入りだったのね。なーんかいつものこなたの寝顔と比べて、 ちょっと純粋さが欠けてたから、とっさに避けて正解だったわ。」 「かがみ、何かそれだと起きてる時の私が不純物みたいなんだけど?」 「いや、そうだろ。」 「そ、それは、酷いよかがみん~…」 「普段から悪戯のことばかり考えてるんだし、自業自得よ。私だって馬鹿じゃないし。」 「いやぁ、誕生日なんだから、そこは空気を読んで避けないでだね…」 「それとこれとは関係ないでしょ?ほら、ケーキできたからいらっしゃい。」 「むぅ…」 どこか悔しそうにしているこなたは、それはそれで可愛くて、いじり甲斐がありそう。 だから、こんなチャンス見逃したくないけど、今日は仕方がないから諦める。 こなたを椅子に座らせたところで電気を暗くして、ろうそくに火をつけた。 「おぉ、いい感じにできたね~。いつぞやの時みたいに、ぐちゃぐちゃになってないし。」 「あんたはいっつも一言余計なのよ、まったく。」 「ほら、早く歌ってよ♪。ろうそくが溶けきっちゃうよ?」 「急かすな、ニヤニヤするな!ふぅ…、い、行くわよ? 〈ハッピーバースデイ トゥーユー、ハッピーバースデイ トゥーユー♪ ハッピバースデイ ディアー こなたー、 ハッピーバースデイ トゥーユー♪ and many more…〉 お誕生日おめでとう、こなた!」 手に隠し持っていたクラッカーを鳴らし、それにこなたが一瞬ビクッと反応したのが、 ちょっと可愛かった…ほ、本当にちょっとだけよ? 「ありがと、かがみん♪ねぇ、せっかくだしさ、一緒に吹き消そうよ。」 「え?もう子供じゃないんだからいいわよ、私は。」 「えー、やろうよ~。ねぇねぇ~」 「もう、分かったわよ。それじゃあ、せーのでね。」 「そうこなくっちゃ!じゃ、いくよー!」『せーのっ!(ふぅー!!)』 ちょっとした共同作業だと秘かに思いつつ、ろうそくを吹き消した。 こなたはいったいどんな願い事をしたのかは気になったけど、とりあえず明かりをつけた。 「それじゃあケーキ切るけど、こなた食べられる?」 「一切れなら平気だよ。」 「無理しなくてもいいわよ?別に冷蔵庫に入れておけば持つし。」 「いやいや、かがみが愛を込めて作ったケーキは、作りたてをいただかないとネ♪」 「あ、愛なんて…もう!あんたのために作ったんだから、込めたに決まってんでしょ! 恥ずかしいこと言わせるんじゃないわよ、まったく…」 「さっすがG級ツンデレ、やってくれるね~♪」 「私は新手のモンスターか!ほら、いいから早く食べるわよ!」 そういって、私とこなたの分を切り分けて、こなたに渡す。 以前、自分の誕生日でケーキを切るのに失敗したが、同じ過ちはしない。 でも、ケーキを切るのがうまくなったからと言って、味が変わるわけでもないんだけどね。 「それじゃあ、いただきま~す。」 こなたがケーキを一口食べた瞬間、私に緊張がはしる。 ケーキだけでなく、クリームなども実際に味見などしていないから、かなりの不安がある。 「…どう?」 「おぉ、美味しくできてるじゃん!これは私も、うかうかしてらんないね。」 「そ、そんなことないわよ。レシピが良かっただけで、失敗も多いし…」 「いやいや、確実に上達してるし、なんだかんだで凡ミスが多いだけだしね。 でも、つかさと双子なのがよーく分かる感じだね、そういうところはさ。」 「え、どうして?」 「ほら、普段はつかさがドジで天然で凡ミスが多いけど、かがみはしっかりしてる。 でも、家事、特に料理となると逆転して、かがみの方がドジになるってことだヨ。 正反対な部分が多いことが、逆に双子っぽいジャン?色々例があることだしネ。」 「それはアニメやゲームの話でしょうが!事実だけど…」 「まぁまぁ、かがみも早く食べなよ。あ、でも速く食べると太るんだっけ? じゃあ、ゆっくりの方がいいかもね~」 「余計なお世話だ!!」 ☆★☆ お互いに一切れずつ食べ終えたところで、ケーキは明日以降のためにしまった。 私はもう一切れ食べられたけど、誕生日のこなたが一切れしか食べてないのに、 自分だけ二切れ食べるのも気が引けるじゃない。(ダイエットじゃないわよ?) 味の方はというと、自分で言うのも変だけど、想像以上に上品な味に仕上がっていた。 ショートケーキのフルーツ多種バージョンだと思い込んでいたが、バランスがよくて、 酸味と甘みの種類が豊富なため、飽きが来ない味だった。 「いやぁ、美味しかったよ。ごちそうさま!ありがとね、かがみん♪」 「い、いいわよ、別に。それに成功したのもあんたのおかげだし、こっちこそありがと。 さて、片付けるとしますか。あ、こなたは座ってていいわよ。」 「いくら誕生日でも手伝いぐらいはするよ。」 「いいって、普段の家事だって多めにやってもらってるんだし。」 「そう?じゃあ、甘えさせてもらおっかな。」 そのままこなたはソファーに横になって、珍しくニュースを見ていた。 洗い物をしている状態だと、何をしてるのかよく分からないけど、どうやら寝ているわけではないらしい。 しばらくすると、突然こなたが尋ねてきた。 「ねぇ、そういえばさっきの歌さぁ…」 「うん?どうしたの?」 「最後の〈暗・目に・藻ー〉って、何?」 「いや、それこそなんだよ。〈and many more〉のことを言ってるのか?」 「そう、それ!今まで聞いたことないよ。どういう意味なの?」 「あんたねぇ…これぐらい初歩の初歩じゃないの。文学部でも英語あるでしょ?」 「まぁ、それは置いておいてさ。あれって何、オリジナル?」 「ううん、前にね、あるレストランに家族で私とつかさの誕生日に行ったの。 そしたら、お店の人がお祝いをしてくれたんだけど、その時に知ったのよ。」 「へー、そうなんだ。で、どういう意味なの?」 話の途中だったけど、片付けを終えたため、こなたのいるソファーまで移動する。 こなたの上体を起こして、そこに座り、太ももの上にこなたの頭を寝かせる。 つまり、膝枕に似た状態で、こなたが私に垂直になって寝ていることが違うだけだ。 「うぉぅ?!何々?どういうサービス?!」 「なんとなくよ。それで話の続き、直訳だと〈それと様々なものをたくさん〉って意味なんだけど…」 「だけど?」 「〈そしてたくさんの幸せを〉っていうのが歌に込められた意味なのよ。」 「へぇー。でも、私の幸せはもう叶ってるんだけどね~♪」 「そう?でもね、私は個人的に〈そしてたくさんの愛情を〉込めてみたんだけど…」 「ふえっ?」 「それを『美味しかった』って言ってもらえたんだから、言うことなしよねぇ?」 「え、あ、うぅ~!!」 最後のセリフは試しに耳元で囁いてみたら、こなたはガバッと起き上がり、 顔を赤らめたまま私を向いて、すぐに顔を軽くそむけてしまった。 以前読んだラノベの一節に主人公とヒロインの間にこういうシーンがあって、 これなら真似できると思ってやってみたんだけど、意外にも効果抜群。 前から感づいていたけど、なんだかんだ言ってる割に、こなたは私と似て素直じゃない。 (ただ、ツンデレじゃなくて、いじったり笑ったりでごまかしてる感じなのかしら? あ、別に私がツンデレだって言ってるわけじゃなくて、ただの例だからね!) 「顔が真っ赤じゃない。どうかしたの?」 「た、ただお腹がいっぱいなだけだもん。」 「ふふっ、そんなお腹いっぱいのこなたに、もう一つプレゼントよ。」 そう言いながら、ソファーの横にある机の上に手を伸ばし、ポツンと置いてあった箱をとる。 そして中身を取り出しながら、さらにこなたに近づく。 「あ…、んっ…」 気配を感じてこっちを向いたこなたの首に腕を回して、キスをしながらそれをこなたにつけて離れる。 まさか無防備にプレゼントが置かれていたなんて、さすがのこなたも思わなかったようで、 意表をつかれた様子だったが、実はただ単に、こなたが早めに帰ってきた上、 ケーキのことで頭がいっぱいになっていたから、すっかり隠し忘れただけだったりする。 「これは…ペンダント?」 「うん、私とあんたの卒業式の写真を左に、4人で撮った修学旅行のプリクラを右に入れておいたわよ。 まぁ、あんたが好きな写真に変えていいけどね。」 「ありがと、かがみ…大切にするね。それに当分この写真は変えないよ、思い出の写真だしね。」 「ん、どうしたのよ?あんたらしくないわね。」 「私だって、たまにはこういうこと言うよ!」 「ごめんごめん、さっきからあまり弄ってこないから、ついね。」 「そ、それは、今日のかがみん…萌…から…」 「え、何?」 「ななな、なんでもないよ!とにかくありがと、かがみん♪」 これは何にするべきか2週間かけて考えついた答えだった。 グッズとかチケットでも喜んだかもしれないけど、それは他人でもできること。 私ならではのものは何かと考えた結果が、写真入りペンダント。 こなたの反応を見る限りでは、大成功ね。 「ううん、喜んでもらえて良かった。何をプレゼントするか、かなり悩んだんだもの。」 「…かがみってさ、時々すごい可愛いよネ。何か凄い乙女ちっくというか。」 「なっ?!そういう真面目な声で、恥ずかしいこと言うな~!」 「いやぁ、こういうシチュ作るのって中々できないよ~…何か、かがみってずるいよね。」 「また唐突に…」 「だって、いつもはヘタレのくせして、たまに素で積極的になるんだもん。しかも、 そういうのって私と二人っきりの時だけだし、やっぱツンデレだよネ。」 「だからヘタレとかツンデレって言うな!それは、あんたにしかこういう事しないけど… そんなの、誰だって好きな人にしか見せない面ってあるでしょうが!」 「それでもかがみはツンデレなのだヨ。普段はちょっときつめだけど、本当は甘えん坊、 もしくは寂しがり屋のことをツンデレって言うんだから、かがみはぴったしジャン!」 「べ、別に甘えん坊でも寂しがり屋でもないわよ。当てはまらないじゃない。」 「ホント?じゃあ、明日から別々の部屋で寝ても、問題ないよネ?」 「えっ?!あ、いや…それは…」 確かに、最初は同じ部屋でいきなり寝るつもりはなかったけど、1か月たった今は、 むしろ横のベッドにこなたがいることに喜びを感じているし、安心感もある。 そこでいきなり別々にすると言われると、困るというか…やっぱり寂しい…。 「ん~、どうしたのかがみ?一人でも平気なんだよねぇ?」 「うっ…うう~」 「本音とプライドを天秤にかけて悶えてるかがみ萌え~」 「何よ、さっきまであんたが悶えてたくせに…こなたの意地悪…」 「え、ちょ、拗ねないでよかがみん!」 「別に拗ねて何かないわよ。もう、別々の部屋で寝るから。」 「じょ、冗談だから!同じベッドで寝るから!だから怒らないで、かがみ様~」 そう言って私にすがりついてくるこなたを見て、思わずニヤッとしてしまった。 (なんだかんだで、一番の甘えん坊で寂しがり屋はやっぱりこなたじゃない。) 「もうしょうがないわね、分かったわよ。甘えん坊さんめ。」 「むぅ、かがみのくせに、私を数カ月でいいように扱うようになるとは…恐ろしい子! …なんか、夕飯食べてからどうも立場逆転してるよね~…ま、まさか、盛られたか!」 「誰が盛るか!っていうか、ピンポイントすぎるだろう、そんな薬。」 「まぁね…でも、自分が言ったことには責任持ってもらうからね、かがみん♪」 はて、私が何か責任をもつようなことを言ったか思考を巡らしてみるが、分からない。 「言ったことには責任持つけど、私何か言った?」 「〈もうしょうがないわね、分かったわよ〉って言ったじゃん。それのこと。」 「それならもちろんいいわよ。別に再確認するほどのことじゃないじゃない。」 「男に二言はないからね!」 「私は女だ!はぁ、せっかく途中までいい感じだったのに…」 「むふふ、かがみってやっぱロマンチストだよね。まぁ、お楽しみは夜に「あるー晴れた日のことー、魔法以上のゆーかいがー」お、電話だ。」 突然鳴り響いたのは私の好きなラノベを原作とする、ハルヒのOP曲だ。 そういって携帯に出るものかと思ったら、普通に子機を手に取った。 (って、ちょっと待て!こいつ、家の着信までアニソンに変えたのか?!) 「もしもし?おー、みゆきさん、こんばんは。…いやぁ、わざわざありがとネ~」 みゆきの声は聞こえないが、どうやらお誕生日のお祝いの言葉をかけるために、 医学部の講義や課題で忙しい中、わざわざ電話をしてきてくれたらしい。 (さて、どうやら話が長くなりそうだし、お風呂にでも入ってこようかしら。) 話の邪魔をしたら悪いと思って、あえてこなたには何も言わずに寝室に行き、 着替えを持って風呂場へ向かった…自分が了承していた事の真意を知らずに。 ☆★☆ 「ふぅ、さっぱりした。ん?こなた、何やってるの?」 「ん~、ネトゲー」 寝室に入るなり見つけたのは、ノートパソコンでネトゲをしているこなた。 こなたは結局、大学に入ってもネトゲをやめずに今もやっているわけだが、 ノーパソを買ってまで寝室でやっているというわけだ。 「あー、そういえばそっちでも祝ってくれる人がいるんだっけ?」 「ん、まぁねー。かがみが知ってる人だと黒井先生ぐらいかな?」 「黒井先生まだやってるのか…今28だっけ?29?」 「み~そじみさぁ~きぃ~♪」 「…それ、本人には絶対に言わない方がいいわよ?」 「分かってるってー」 そして私はしばらくボーっとしているわけだが、こなたは一向にやめる気配がない。 前から何度か頼んでいることで、もう少しやる時間を減らして欲しいんだけど、 元々やっている時間が長かったから、半分に減らさせたけどやっぱり長い。 今はラノベも登下校の時間や、こうした時間を使って読んでるから、新刊待ちの状態で、 私が今できることと言えば携帯ゲーム機で遊ぶか、勉強するか、このまま待つことぐらい。 しかし疲れがあるからか、もう何もやる気がでない…その上に眠くなってきた。 「んん~っ…ふあぁ…ねぇ、こなた。私疲れたからそろそろ寝るわよ?」 「あれ、今日は早いねかがみ。明日は午後からでしょ?」 「だから疲れたって言ってるでしょ?ケーキだってさんざn…ふわぁ…作ってたし。」 「私ももう少しかかるかなぁ、いつもよりは早く終わるけどさ。」 「ん…そう、なの?珍しいわね、あんたにしては。あんたも午後からじゃないの?」 「いやぁ、一緒に寝てくれる約束したんだし、誕生日ぐらいはねぇ♪」 「??…言ってる意味がよく分かんっはぁあ…いけど、もう無理…おやすみ~…」 そう言って私は目を閉じて寝る態勢に入った。 するとすぐにゲームの音が切れたため、わざわざ消したか、イヤホンをつけてくれたのが分かり、 そういう細かいところにこなたの優しさを感じて嬉しくなった。 ちょっとしたことなんだけど、こういう気配りが私から見たこなたの魅力の一つなんだと思う。 まぁ、他にもたくさんあるけどね。 そんなこなたのことを考えながら、そのまま穏やかに眠りについた…はずだった。 「うひゃぁあ!ななな、何?!」 「何って、夜這いに決まってるじゃん?」 「よ、よよ夜這いって、なな何を突然?!」 静かになったと思ったのは、音を消したんじゃなくて、パソコンの電源ごと消していた。 そして私が寝付きそうになったところを見計らって潜り込んできては、脇腹を擽ってきた。 「だってさっき一緒に寝てくれるって言ったよねー?同じ布団でって♪」 「そ、そんなこと言ってな…」 「『同じベッドで寝るから!怒らないで~』って言った時に、分かったって言ったよね~?」 「あれはそういう意味じゃなひぃっ!こ、こらやめっ、ちょっ…くくくっ、ひひっ! く、くすぐっ…あははふぅっ!はひ、そ、そこはだめ!あは、あはははははっ!!もう…無理っ! おなかいたっ!ひぃはっ、分かっ!分かったから!寝るから!ぎひっ、ギ、ギブだって!!」 その一言でぱっと手が離され、くすぐりという地獄から解放された。 この程度のことで何一つ抵抗することもできず、呆気なく屈してしまうなんて…。 そう思ってるうちに、こなたはもぞもぞしながら布団に入ってきて、ぴたっとくっついてきた。 「むふふぅ~、かがみん擽りに弱いね~」 「はぁ…はぁ…あ、あんたねぇ…」 「でも約束は約束だから、ヨロシクね、かがみん♪」 「もう勝手にしなさいよ…」 そう言って布団にくるまり、こなたの逆を向いて寝た。 ただでさえ疲れていたのに、今のくすぐりを受けたことによって疲れが倍増した気がする。 しかし、こなたはそれが不満なのか、しきりに私を自分の方に向けようとする。 「ねぇ、かがみぃ~、こっちを見てくれないとつまんないよ~」 「一緒に寝るだけなら関係ないでしょ?目を閉じるんだし。」 「だったら向いてくれてもいいじゃん。関係ないんだったらさぁ。」 「いやよ、あんたに何されるか分かったもんじゃないわ。」 「お誕生日のお願いじゃ駄目?」 出た、必殺のおねだり攻撃だ。多分、今こなたを見たら上目遣いを使われて勝ち目はないわね。 でも本音を言えばこなたの方は向きたい。ただ、この言葉であっさり従うのも癪。ならば… 「…変なことはしないのと、当面くすぐらないことを条件にならいいわよ。」 「とかいいつつ、かがみだってこっちを向きたいんじゃないの~?」 「なっ、あ、あんたがそうしたいって言うから…あぁもう、おやすみ!」 「あぁん、分かったからこっち向いてよ~」 「し、仕方ないわね…」 やれやれといった感じでこなたの方を向くが、内心はかなりドキドキしている。 そのこなたはと言うと、目を光らせてこっちを見ている…かと思いきや、意外と普通だった。 逆に何ともなさそうな顔が、何かを企んでいてそうで怖いわけだけど…。 そうしてしばらく向き合っている時間が静かに流れるわけだけど、ずっと見つめあってるわけで、 私の心境はとてもじゃないけど、眠れるような状態じゃなかった。 そんな状態のまま、さらに数分間の時が流れた後に静寂を破ったのはこなただった。 「…ねぇかがみ、寝ないの?」 「へっ?」 「向き合ってとは言ったけど、別に寝るなとは言ってないヨ?」 「あ、そ、そうね。おやすみ、こなた。」 今更だけど、物凄く恥ずかしいことをしていたんだと気づき、慌てて眼を閉じる。 だけど次の瞬間、急に抱きしめられたのがわかり、すぐにまた眼を開けた。 「ちょ、あんた寝てもいいって言ったそばから、な、何するのよ!」 「いやいや、私もこれから寝るところだよ?」 「だ、だったら離れなさいよ、暑苦しいんだから!」 「その割には顔がにやけてるし、自然と手を私の首に回してるあたり、凄くうれしそうだけど?」 「…っ!」 「返答がないからOKだネ。反論は認めない。そんじゃ、おやすみ~♪」 「あっ…」 言うやいなや、私を抱き枕にしたまま、こなたは寝てしまった。 寝る態勢に入ってから寝るまでの速さには定評のあるこなたは、すぐに熟睡状態になっているようで、 ほほを突っついたり、息を吹きかけてみたけど反応がない。 無理に振りほどくのも手だけど、自分の中の何かがそれを認可してくれない。 寝相が悪いからすぐに離れるだろうと思い、待ってみたけれど一向に離れる気配がしない。 むしろ、顔を私の胸に埋めた上に、足を絡めて来て、余計に離れにくくなってしまった。 (何なのよ、も~!それは嬉しくないわけないけど、私が寝れないじゃないの! うぅ、なんでこういうことを平気で出来るのよ…こんな状況、他の人には絶対見せられないわね…。 はぁ…でも、やっぱり可愛い寝顔してるわね、こいつ…しばらく眺めていようかな…) 体をピタッとくっつけたまま時間は過ぎ、時計はもう12時を指していた。 確かにこなたにしては、ネトゲを切り上げるのが早かったなとか、こなたの誕生日が過ぎたなーとかを 思っているとようやく心臓が落ち着いてきて、それと同時に強烈な睡魔が襲ってきた。 疲れが溜まりに溜まっていた私は、あっという間に睡魔に負けて、そのまま眠りについた。 ☆★☆ ピロリロリン! 次の朝、謎の音と共に起きた私の視界にまず入ったのは、幸せそうなこなたの寝顔。そして次に見たのは… 「あ、起こしちゃった?えへ、えへへっ、ご、ごめんね。あまりに幸せそうだったから、つい…」 顔を赤くしながらも、バツが悪そうに携帯を持って、こっちを見てるつかさだった… **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - つかさには僕が鍵を渡しておきました -- チョココロネ (2014-04-03 05:44:30) - つかさ…1枚100円で売ってくれ! -- 名無しさん (2012-12-19 21:48:27) - ・・・つかさ? &br()どーやって入ったんだぁ?! &br()なっ、こ、これは違うのよっ!! &br()こなたのやつが無理やりっ!! -- かがみ (2010-08-29 10:12:01) - あの~つかささん・・・合鍵ですか?それともまさかのピッキング? -- kk (2010-05-17 00:36:06) - ↓写真の焼き増し希望します。パネル加工しなければW &br()GJ!! -- にゃあ (2008-10-05 19:34:20) - つかさ、その写真俺にくれないか? -- 名無しさん (2008-07-13 23:23:51)
『and many more ~それとたくさんの幸せを~』 「どうしようどうしようどうしようどうしy…(略)…どうしよう!!」 「お、落ち着いてお姉ちゃん!ほ、ほら、まだ時間はあるから。」 「ああ、もうっ!なんで、何度やってもケーキが作れないのよぉっ!!」 私はいまだかつてない焦りを感じていた。それは何故か?理由は単純だ。 今日はこなたの誕生日であり、そして私はいまだにケーキが完成していないということだ。 「バレンタインはうまくいったのに…やっぱりつかさが隣にいてくれないと、無理よ…」 「そんなことないよ!あの時は一人で作れたんだし、それに毎日の夕飯だって少しずつ、 作れる物が増えたり、上達したりしてるんだから、頑張って!!」 「でも、かれこれ3度目よ?3度目の正直って言うのに、何も変わらないんだもの。」 「話を聞いてる限りでは、いい出来になるはずなのに…なんで焦げちゃうんだろ?」 「それが分かったら苦労しないわよ…」 レシピ通りの作り方でやっているのに、なぜかうまくいかない。 どうしても水分が抜けすぎてしまうらしく、パサパサになってしまい、底は焦げてしまう。 少しずつ時間を縮めてはいるものの、最初からあまり変わっていない。 2つ目からはアルミをかぶせてもいるし、敷いてもいる。ある意味、これで焦げるのが奇跡だ。 そして3回目はつかさを頼ってみたのだけど、食べれる程度にはなったものの、まだ焦げが多い。 「ごめんね、お姉ちゃん。手助けに行きたいけど、ゆきちゃんの帰りが遅くて、夕飯作らないといけなくて…」 「うぅん、こっちこそ無理に頼んでごめんね。ただでさえ電話でも時間とらせてるのに。」 「そんなことないよぉ。今までお姉ちゃんにはずっと頼りっぱなしだったし、これぐらいお安い御用だよ。」 「そう…でも、時間も時間だし、あとは一人で頑張ってみるわ。」 「ふぇ?あ、ほんとだ、もうこんな時間なんだぁ。そろそろ夕飯の支度をしないとダメかも。」 「色々とありがとう、つかさ。」 「ううん、またいつでも聞いてね。あ、それと私ね、明日休みだから遊びに行くかも~」 「私たち、二人とも午後から講義があるから、朝から昼前までしかいないけど…起きれるの?」 「毎日ゆきちゃんに起こしてもらってるから、大丈夫だよぉ。」 (それは…どうなんだろう…。そしてごめんね、みゆき…) 「来てもいいけど、次の休みに私たちもそっちに行く予定だから、無理しなくてもいいわよ?」 「そうなんだ、楽しみにしてるね♪ゆきちゃんにも伝えておくよ~」 「うん。それじゃ、またね。」 「バイバイー」 そういって電話を切って、私はすぐさまレシピと向き合う。 大学の午後の講義が休講という素晴らしい強運から一転、今は地獄を見ている。 目の前には炭×1と、失敗作×2、そしてあと一回分ほどの材料が並んでいる。 つまり、次はもう失敗が許されないということである、何があろうとも。 (分量は間違ってないし、材料を入れる順番も問題なし…と。やっぱり時間なの? でも、ちゃんと書いてある通りに最初は作って、ほとんど炭みたいなのができたし… さっきのはまだ食べられるけど…はぁ、つかさだったらすぐに分かるんだろうなぁ。) そう心の中で考えはするものの、何がいけないのかさっぱり分からない。 こなたが帰ってくるまであと2時間、直ぐに作り始めないと間に合わない。 夕飯の方はすでに最後の仕上げを除いて出来ていて、サラダも冷蔵庫に入れてある。 お米も、次のケーキをオーブンに入れるタイミングで炊き始めれば問題はないはず。 そうして材料を再度混ぜ合わせ、あとはオーブンに入れればいいが、そこで悩んでいると ピンポーン! (誰かしら?みゆきは今日これないし、大学の友達にもまだ正確な住所は伝えてない。 おじさんやゆたかちゃんは25日に来てるし、ゆいさんも無理となると…まさか、つかさ? でも合鍵を持たせてるから呼び鈴は鳴らさないだろうし、来るにしてもいくらなんでも早いわよねぇ??) ピンポーン! (あ、そうだ、とりあえず開けないと待たせちゃ悪いわよね。) そう思って、玄関に行って扉を開いたら、 「ふぃ~、やっと開けてくれたよ。今日、鍵を忘れちゃ「なんでこなたがここにいるのよ!!」…へっ?」 「だ、だって、今日は8時まで帰らないって…」 「いやぁ、今日行ってみたら最後の講義、休講になっててさ。メールしたと思うんだけど?」 「え、嘘?ほとんど、け…課題で忙しくて見てなかったわ、ごめん。」 「珍しいね、かがみがそんなに余裕ないなんて。いつもは期限の2日前には終わらせて、 ラノベとか読んでるのに。今日はかがみが休みの日だし、数時間もあれば終わるんじゃ?」 「ちょっと手こずっただけよ、長いレポートだったし。」 「ふ~ん。そういえば、一昨日から昨日にかけて何か必死に調べてたねぇ。」 「そ、そうそれそれ、昨日は調べるだけで精一杯だったのよ。」 その調べ物が、一昨日はケーキのレシピ、昨日は作るためのコツだったことは言えない。 そして今、こなたと応対している中で、このあとをどうしようか頭をフル回転させていた。 今日の出来事をいつもの様に聞きながら、寝室でこなたの着替えを見て、ふと思いついた。 「そうだ、着替える前に、とりあえずお風呂入ってきたら?」 「ん?う~ん、どうしようかなぁ…リアルタイムのアニメもあるし~」 「ほ、ほら、遅いと思って、まだご飯炊いてないし、アニメならビデオ撮ってあるしさ。」 「まっ、それもそだネ。今日のアニメは熱入れてないし。…ん~でも、この匂い…これは、ひょっとして…」 (あ、やばい!今まで焦がしたケーキのこと忘れてたっ!!さっさと捨てておけばっ!) 私はずっとあの空間にいたから慣れてしまったのか、匂いが届いてるのに気付かなかった。 でも、小動物みたいなこなたのことだ、おそらく最初っから臭っていたのだろう。 もはや時すでに遅し。自分の失態を明かさないといけないのか、と覚悟を決めたのだが… 「チキンカレーだね♪」 「ぇえっ?そ、そうなの、今日はチキンカレー作ったのよ!あんたの誕生日だしね。」 「確かに、チキンカレーは作るの上手になったよね~、細かい味付けとかまでさ。」 「そ、それはっ…あんたが好きだって言うから…って、ニヤニヤするな!」 「ぐふふ、かがみはいつも可愛いね~。さすが私の嫁、愛さずには居られないよ♪」 「ば、ばかっ!もう、いいからとっととお風呂入って来なさいよ。」 「んじゃ、行ってきまーす。デレかがみ、萌えーーーっ!!」 「おまっ、恥ずかしいセリフ禁止―っ!!ったく、もう…」 普通の部屋に比べて、防音性の高い壁を使用したこのマンションだからいいものを、 そうでなければ確実に誰かに聞かれているほどの大声を叫びながら、 小走りで風呂場へ向かうこなたを見届け、作業に戻る。 (ふぅ、なんとか風呂に入ってくれたし、匂いもどうにかごまかせたわね。 とにかく急いで失敗作のケーキを廃棄して、ケーキをとっととオーブンに入れないと…) そうと決めたら、即行動に移す。 ☆★☆ 一通り片付けを終えて、ケーキを作っていたような跡はどこにもないことを確認する。 調べておいたレシピは、自分の机の隠し場所にこなたの写真と一緒に入れてある。 さすがにクリームやフルーツは冷蔵庫に入れたが、野菜室に隠したし、平気だろう。 お皿やコップ、サラダにお茶も出したし、ご飯もあと10分強で炊きあがる。 カレーは温め直すだけだから、あとは目の前にある生の状態のケーキだけが問題だ。 (私も含めてそうだけど、女子の長風呂はこういう時は本当に助かるわね…っていうか、 風呂場から凄い声がするんだけど…防音してなきゃ騒音で訴えられそうね。) 音程を外して「…あ・い・し・て・る~♪」と言っているのがはっきりと聞こえる。 こういうタイプの長風呂は珍しいだろうけど、どっちにしろ今の私には救いになっている。 「おそらく『創○のアクエ○○ン』ね。」とつぶやき、思考を目の前の物に集中させる。 しかし、何しろ3度も失敗している上に、時間的に失敗できないプレッシャーがかかる。 (慎重に入れてと…えーと、時間は前よりさらに数分短くすればいいわよね? でも、生焼けとかだったら嫌だし…でも、生焼けならまだ修正は効くのかしら? それじゃあ、うんと時間を短くして…) 「それじゃあ、ぐちゃぐちゃになっちゃうけどいいの?」 「あ、そうなの?じゃあ、あと数分長くしてっと。ありがと、こなた…うぁああっ!!!」 かがんでいる私の肩の上から、ひょこっと顔をのぞかせた人物に、飛び退ってしまった。 もちろんそれは私の恋人であり、今さっきまで風呂に入っていたはずのこなただ。 「むふふ~、かがみんケーキ焼いてるの?なんでなんで~?」 「あ、あんた何でここに?!」 「ふっふっふー、どうも様子がおかしいから、いつもより早目に上がったんだよ。」 「で、でも、思いっきり歌ってたじゃない…」 「いやいや、あれは上がりながら歌ってたんだよ。冷静だったら気づくよね、音量で。」 「うっ…」 「そして、一体なんでケーキなんて焼いてるのかな、かがみ様?」 「様はやめい!それぐらい気付け!今日はあんたの誕生日だから…って、だからニヤニヤするんじゃない!」 「チキンカレーだけじゃなかったんだね~♪いやぁ、出来が楽しみだよ~…あやうく生だったけど。」 「うっさい。仕方ないでしょ、ケーキはまだうまく作れないんだし…」 「まぁ、今まで焦がしたものよりは平気そうだしねぇ。」 「一体なんのことよ?」 少しびくっと反応してしまったけれど、ここはしらを切る。 失敗作はもう処分したんだし、ただ単にからかっただけなんだろうと思っていたから。 でも、こなたの、こういう無駄な時に発揮される鋭さは侮ってはいけなかった。 「嘘ついても無駄だよ~。だって、かがみ絶対レシピどおりにしか作らないジャン。」 「そ、それがどうしたのよ?レシピ通りに作ってれば、問題ないじゃない。」 「あなたは重大なミスを犯した…そう、環境までもが一緒だと思い込んでいることだ!」 「何のネタよ!それに、環境って言ったって一般家庭で作れるもののはずよ?」 「違うのだよ、かがみん。真実はすべてオーブンの中に隠されている!」 びしっとオーブンを指すこなたに、少し呆れ半分、あせり半分で聞いてみる。 「だから、何なのよ?もったいぶらないで言いなさいよ。」 「前にさ、料理の火加減の話はしたよね?コンロによっても火力が違うって。」 「あー、中華料理店のとかはすごく強くて、家庭の中でも新旧で強さが違うんだっけ?」 「そうそう。それはオーブンも一緒なのだよ。」 「はぁ?だって温度設定とかできるんだから、同じじゃないの?」 「違う違う、使ってるオーブンが元々どれぐらいの火力を持ってるかってこと。 全部一緒じゃないからネ。ここのは結構新しいやつだから、多少火力が強いはずだよ。 このケーキのレシピはどこ?」 「それなら書斎にあるけど私が取ってくるわ、あんたは知らないだr…」 私が言い終わる前に、こなたは私の部屋になるはずだった、書斎と称される部屋に行き、 一枚の紙を持って戻ってきた。隠してあったレシピをすんなり持ってこれたことに対して、 いささか疑問を感じたが、これはこの際気にしないでおこう。 「ほら、ここの部分。」 「…ほんとだ。全然気付かなかったわ。」 確かにそこに書いてある通り、オーブンによって誤差やクセがあると書いてある。 特に電気オーブンとガスオーブンによる違いは他のより大きいらしく、 レシピは電気オーブンを使用していたが、ここのはガスオーブンだ。 (つまり、いくら時間をぴったりやっても焦げたのは、これが原因だったってわけね…) 「そ・れ・に、こんなのも見つけちゃったしね~」 「ん?…っ?!?!」 「ふふ~ん、私に隠し物なんぞ100年早いよ、かがみん♪どこに何があろうと、 すぐにこのアホ毛ダウジングで見つけ出せるからね。」 「…冗談抜きで、なんで分かったのよ…」 「やっぱりかがみの考えることだし、すぐに分かるよ。例えば、このケーキ。 かがみも馬鹿じゃないから、家事をよくする私に気づかれにくいところに置くジャン? ごみ箱やクローゼットなんて論外、風呂場も書斎もダメとなれば予想はつくもんだヨ。」 「じゃあ、まさかさっきのレシピは…」 「レシピは紙だから、かがみの写真入れに入ってるかなと思ったら、ビンゴだったヨ。」 「っ!?!」 (寝顔とか、料理中のとか、こっそり撮った写真を入れてたのを前から知られてた?!) 今まで撮っては入れて隠しているつもりだったものが、全部ばれていたと思うと顔がカーッと熱くなり、 あまりのショックに言葉も出ず、呆然とするしかできなかった。 「まぁ、かがみにしては中々考えてあったよ。失敗作は引越しの時に使った旅行鞄。 確かに掃除しても中まではあまり見ないし、ベッドの下にあれば安心かつ自然だからね。 でも、失敗だったのはそこにさっき置いたことかな。前まで押入れの奥にあったのが、 いきなり寝室のベッドの下にあったら、流石に怪しむしね~。」 「………」 「そして写真だけど、私がかがみの机に置いたDVDケースに紛れさせるとは、 私も気付くまで時間がかかたヨー。でも、最後の詰めが甘かったね、かがみん♪ 何かをケースに入れるのは見たんだけど、最初は何だったか分からなかったんだよネ。 でも、私があげたやつじゃないと分かって、何を見てるのか気になっちゃって、ついね。」 勝手に人の物を見るな!と、喉まで上ってきたけど、それよりは進まなかった。 なにせ入っていたのは、悪く言えばこなたを盗撮したものであり、怒るに怒れない。 それにそこまでばれていると、もはや怒る気力も起きず、逆にこなたを褒めてやりたい。 むしろ、勝手に写真を撮っていた自分の方が悪い気がしてきた。 「…ごめん。」 「ん?どして?」 「いや、勝手に写真とか撮ってさ。親しき仲にも礼儀ありよね…」 「そんなこと気にしなくていいのに。婿が嫁の写真を勝手に撮ったって、問題ないじゃん。」 「いや、あるだろ。」 「それに私が撮ってるかがみの写真に比べたら、これぐらいなんてことないよぉ~」 「そうなんだ…って、ちょっと待て!いいいい、一体どんな写真撮ってるのよ!?」 まさかの発言ではなく、こなたならやりかねなかったけど、本当にやってるとは思わなかった。 それより「なんてことない」というのは、量のことを言ってるのか、それとも内容のことなのか、両方なのか。 内容のことを言っているのであれば、想像するだけで恥ずかしい。 「それはかがみが自力で隠し場所を探すんだね~♪まぁ、そう簡単には見つからないヨ。」 「うぅ~、もう!気になるっ!少しでもいいから、どんな写真か教えなさいよ!!」 「ん~、そうだねぇ、寝顔はもちろん、お菓子食べてるときとか、入浴中のとか?」 「にゅ、入浴中って、あんたいつ、どうやって撮ったのよそんなの!」 「それも写真を見つけたら教えてあげるよ~。まぁ、見つけられたらの話だけど。」 「くぅ、絶対見つけてやるんだから!!」 「むふふっ、頑張ってね、かがみん♪さてと、そろそろケーキ入れないと間に合わないよ?」 「(うまく話をそらしたわね…)うっ、そ、そうね、じゃあこれぐらいに設定して…」 「それじゃあ、夕飯にしよーよ。お腹すいちゃった~」 「あー、はいはい。今温めたりするから、座って待ってて。」 ☆★☆ 「おぉ、いい匂い!それじゃあ、いただきまーす!」 「どうぞ、召し上がれ。私もいただきます、っと。」 「んん~、ウマい!さっすがかがみん、チキンカレーはうまいねぇ。」 「〈チキンカレーは〉は、余計よ。でも、頑張ったかいがあったわ、ありがと。」 自分でも食べてみたけど、今までの中でもまた一段とよくできている気がする。 さすがに一日も寝かせていないけど、ケーキを作る前から寝かせているから、 6時間近く寝かせていることになり、それが良かったのかもしれない。 あまり料理に精通していないから、詳しいことは分からないけどね。 「うん、この分なら、しばらくしたら婿と嫁の立場逆転できそーだネ。」 「それは無理ね。そうね…あんたが私より身長が高くなったら、許してあげるわ。」 「えぇ~、そんな無茶言わないでよぉー。今年の身体測定でようやく1cm伸びたのに!」 「まぁ、私は3cm伸びたけどね。あと19cm、がんばりな~」 「前は気にしてないって言ってたくせに…誰が何と言おうと、かがみは私の嫁だぁー!」 「バ、バカ言ってないで、さっさと食べなさいよ。冷めちゃうじゃない。」 「逃げられた…」 ☆★☆ 「ごちそうさま!ふぅ~、もうお腹いっぱいだヨ。」 「はい、お粗末さまでした。それにしても、よく食べたわね。ずいぶん減ってるもの。」 「いやぁ、お腹見てみる?すごい張ってると思うよ、ほら。」 「あ、あんたは少し恥じらいを持ちなさいよ!いくら私しかいないとはいえ、大胆すぎよ。」 「誘ってるんだよ、かがみん♪」 「そんなんで誘いに乗るか!!全く…そのお腹でケーキ食べれるのか?」 「甘いものは別バラだよ~、と言いたいけど少し待ってくれると助かるかも…」 「まぁ、これから飾り付けするから、しばらくかかるし休んでるといいわ。」 少しばかり理性を削られたが、ここまで堅持してきた私はあの程度では落ちない(はず)。 食べてる最中に焼きあがった生地を取り出してみると、いい焼き加減で凹みもしていない。 こなた曰く、しばらくオーブン内に放置すると萎みにくくなると言われたから、 あえて放置してただけで、別に取り出すのをめんどくさがったわけじゃないからね? ちなみにこなたはと言うと、そのままごろんと横になって、アニメを見始めた。 それを見て、私はクリームなどを用意しながら声をかけた。 「あんたねぇ、その体勢どうにかならない?物凄くオヤジっぽいんだけど。」 「むぅ、うるさいなぁ。どう見たっていいじゃん別に、お腹いっぱいなんだし。」 「それと、食べてすぐ寝ると太るわよ?」 「かがみほどじゃないから、平気だ、よ?!う、うそうそ、冗談だってば~(汗」 「分かってるならいいのよ、分かってるならね♪」 「その笑顔が逆に怖いよ、かがみん…」 包丁でケーキを二層にスパッと切りながら笑いかけ、こなたに私の意志は伝わったようだ。 とりあえず、脳天にグーが一発飛んでくることぐらいは察したみたいね。 こなたが普通に座ったのを確認して、ケーキのデコレーション作業に戻る。 クリームを塗り、ケーキを重ね、再びクリームを塗って、フルーツを乗せる。 最後はHappy Birthdayとクリームで書けば、完成…っと、蝋燭も19本立てないとね。 「ふぅ、やっと終わったわ。こなたぁ、出来たわよ…こなた?」 「………」 (返事がない。ただの屍のようだ…って、それじゃ困るわよ!) 一人でのり突っ込みをする自分自身に呆れながら、もう一度声をかけるが返事がない。 とりあえずテレビの前まで行ってみると、どうってことはない、ただ寝ていただけ。 (寝てる時のこいつって、ほんっと憎たらしいほど可愛いわね…ん?。) かがんで顔を少し近付けたところで、ふと頭の中で何かが働き、即座に立ちあがった。 「うぉっ!(ドサッ」 「…こなた、大丈夫?」 「な、なぜだ!私の完璧な作戦が見破られたとでも言うのかぁぁぁ…!」 「やっぱり、タヌキ寝入りだったのね。なーんかいつものこなたの寝顔と比べて、 ちょっと純粋さが欠けてたから、とっさに避けて正解だったわ。」 「かがみ、何かそれだと起きてる時の私が不純物みたいなんだけど?」 「いや、そうだろ。」 「そ、それは、酷いよかがみん~…」 「普段から悪戯のことばかり考えてるんだし、自業自得よ。私だって馬鹿じゃないし。」 「いやぁ、誕生日なんだから、そこは空気を読んで避けないでだね…」 「それとこれとは関係ないでしょ?ほら、ケーキできたからいらっしゃい。」 「むぅ…」 どこか悔しそうにしているこなたは、それはそれで可愛くて、いじり甲斐がありそう。 だから、こんなチャンス見逃したくないけど、今日は仕方がないから諦める。 こなたを椅子に座らせたところで電気を暗くして、ろうそくに火をつけた。 「おぉ、いい感じにできたね~。いつぞやの時みたいに、ぐちゃぐちゃになってないし。」 「あんたはいっつも一言余計なのよ、まったく。」 「ほら、早く歌ってよ♪。ろうそくが溶けきっちゃうよ?」 「急かすな、ニヤニヤするな!ふぅ…、い、行くわよ? 〈ハッピーバースデイ トゥーユー、ハッピーバースデイ トゥーユー♪ ハッピバースデイ ディアー こなたー、 ハッピーバースデイ トゥーユー♪ and many more…〉 お誕生日おめでとう、こなた!」 手に隠し持っていたクラッカーを鳴らし、それにこなたが一瞬ビクッと反応したのが、 ちょっと可愛かった…ほ、本当にちょっとだけよ? 「ありがと、かがみん♪ねぇ、せっかくだしさ、一緒に吹き消そうよ。」 「え?もう子供じゃないんだからいいわよ、私は。」 「えー、やろうよ~。ねぇねぇ~」 「もう、分かったわよ。それじゃあ、せーのでね。」 「そうこなくっちゃ!じゃ、いくよー!」『せーのっ!(ふぅー!!)』 ちょっとした共同作業だと秘かに思いつつ、ろうそくを吹き消した。 こなたはいったいどんな願い事をしたのかは気になったけど、とりあえず明かりをつけた。 「それじゃあケーキ切るけど、こなた食べられる?」 「一切れなら平気だよ。」 「無理しなくてもいいわよ?別に冷蔵庫に入れておけば持つし。」 「いやいや、かがみが愛を込めて作ったケーキは、作りたてをいただかないとネ♪」 「あ、愛なんて…もう!あんたのために作ったんだから、込めたに決まってんでしょ! 恥ずかしいこと言わせるんじゃないわよ、まったく…」 「さっすがG級ツンデレ、やってくれるね~♪」 「私は新手のモンスターか!ほら、いいから早く食べるわよ!」 そういって、私とこなたの分を切り分けて、こなたに渡す。 以前、自分の誕生日でケーキを切るのに失敗したが、同じ過ちはしない。 でも、ケーキを切るのがうまくなったからと言って、味が変わるわけでもないんだけどね。 「それじゃあ、いただきま~す。」 こなたがケーキを一口食べた瞬間、私に緊張がはしる。 ケーキだけでなく、クリームなども実際に味見などしていないから、かなりの不安がある。 「…どう?」 「おぉ、美味しくできてるじゃん!これは私も、うかうかしてらんないね。」 「そ、そんなことないわよ。レシピが良かっただけで、失敗も多いし…」 「いやいや、確実に上達してるし、なんだかんだで凡ミスが多いだけだしね。 でも、つかさと双子なのがよーく分かる感じだね、そういうところはさ。」 「え、どうして?」 「ほら、普段はつかさがドジで天然で凡ミスが多いけど、かがみはしっかりしてる。 でも、家事、特に料理となると逆転して、かがみの方がドジになるってことだヨ。 正反対な部分が多いことが、逆に双子っぽいジャン?色々例があることだしネ。」 「それはアニメやゲームの話でしょうが!事実だけど…」 「まぁまぁ、かがみも早く食べなよ。あ、でも速く食べると太るんだっけ? じゃあ、ゆっくりの方がいいかもね~」 「余計なお世話だ!!」 ☆★☆ お互いに一切れずつ食べ終えたところで、ケーキは明日以降のためにしまった。 私はもう一切れ食べられたけど、誕生日のこなたが一切れしか食べてないのに、 自分だけ二切れ食べるのも気が引けるじゃない。(ダイエットじゃないわよ?) 味の方はというと、自分で言うのも変だけど、想像以上に上品な味に仕上がっていた。 ショートケーキのフルーツ多種バージョンだと思い込んでいたが、バランスがよくて、 酸味と甘みの種類が豊富なため、飽きが来ない味だった。 「いやぁ、美味しかったよ。ごちそうさま!ありがとね、かがみん♪」 「い、いいわよ、別に。それに成功したのもあんたのおかげだし、こっちこそありがと。 さて、片付けるとしますか。あ、こなたは座ってていいわよ。」 「いくら誕生日でも手伝いぐらいはするよ。」 「いいって、普段の家事だって多めにやってもらってるんだし。」 「そう?じゃあ、甘えさせてもらおっかな。」 そのままこなたはソファーに横になって、珍しくニュースを見ていた。 洗い物をしている状態だと、何をしてるのかよく分からないけど、どうやら寝ているわけではないらしい。 しばらくすると、突然こなたが尋ねてきた。 「ねぇ、そういえばさっきの歌さぁ…」 「うん?どうしたの?」 「最後の〈暗・目に・藻ー〉って、何?」 「いや、それこそなんだよ。〈and many more〉のことを言ってるのか?」 「そう、それ!今まで聞いたことないよ。どういう意味なの?」 「あんたねぇ…これぐらい初歩の初歩じゃないの。文学部でも英語あるでしょ?」 「まぁ、それは置いておいてさ。あれって何、オリジナル?」 「ううん、前にね、あるレストランに家族で私とつかさの誕生日に行ったの。 そしたら、お店の人がお祝いをしてくれたんだけど、その時に知ったのよ。」 「へー、そうなんだ。で、どういう意味なの?」 話の途中だったけど、片付けを終えたため、こなたのいるソファーまで移動する。 こなたの上体を起こして、そこに座り、太ももの上にこなたの頭を寝かせる。 つまり、膝枕に似た状態で、こなたが私に垂直になって寝ていることが違うだけだ。 「うぉぅ?!何々?どういうサービス?!」 「なんとなくよ。それで話の続き、直訳だと〈それと様々なものをたくさん〉って意味なんだけど…」 「だけど?」 「〈そしてたくさんの幸せを〉っていうのが歌に込められた意味なのよ。」 「へぇー。でも、私の幸せはもう叶ってるんだけどね~♪」 「そう?でもね、私は個人的に〈そしてたくさんの愛情を〉込めてみたんだけど…」 「ふえっ?」 「それを『美味しかった』って言ってもらえたんだから、言うことなしよねぇ?」 「え、あ、うぅ~!!」 最後のセリフは試しに耳元で囁いてみたら、こなたはガバッと起き上がり、 顔を赤らめたまま私を向いて、すぐに顔を軽くそむけてしまった。 以前読んだラノベの一節に主人公とヒロインの間にこういうシーンがあって、 これなら真似できると思ってやってみたんだけど、意外にも効果抜群。 前から感づいていたけど、なんだかんだ言ってる割に、こなたは私と似て素直じゃない。 (ただ、ツンデレじゃなくて、いじったり笑ったりでごまかしてる感じなのかしら? あ、別に私がツンデレだって言ってるわけじゃなくて、ただの例だからね!) 「顔が真っ赤じゃない。どうかしたの?」 「た、ただお腹がいっぱいなだけだもん。」 「ふふっ、そんなお腹いっぱいのこなたに、もう一つプレゼントよ。」 そう言いながら、ソファーの横にある机の上に手を伸ばし、ポツンと置いてあった箱をとる。 そして中身を取り出しながら、さらにこなたに近づく。 「あ…、んっ…」 気配を感じてこっちを向いたこなたの首に腕を回して、キスをしながらそれをこなたにつけて離れる。 まさか無防備にプレゼントが置かれていたなんて、さすがのこなたも思わなかったようで、 意表をつかれた様子だったが、実はただ単に、こなたが早めに帰ってきた上、 ケーキのことで頭がいっぱいになっていたから、すっかり隠し忘れただけだったりする。 「これは…ペンダント?」 「うん、私とあんたの卒業式の写真を左に、4人で撮った修学旅行のプリクラを右に入れておいたわよ。 まぁ、あんたが好きな写真に変えていいけどね。」 「ありがと、かがみ…大切にするね。それに当分この写真は変えないよ、思い出の写真だしね。」 「ん、どうしたのよ?あんたらしくないわね。」 「私だって、たまにはこういうこと言うよ!」 「ごめんごめん、さっきからあまり弄ってこないから、ついね。」 「そ、それは、今日のかがみん…萌…から…」 「え、何?」 「ななな、なんでもないよ!とにかくありがと、かがみん♪」 これは何にするべきか2週間かけて考えついた答えだった。 グッズとかチケットでも喜んだかもしれないけど、それは他人でもできること。 私ならではのものは何かと考えた結果が、写真入りペンダント。 こなたの反応を見る限りでは、大成功ね。 「ううん、喜んでもらえて良かった。何をプレゼントするか、かなり悩んだんだもの。」 「…かがみってさ、時々すごい可愛いよネ。何か凄い乙女ちっくというか。」 「なっ?!そういう真面目な声で、恥ずかしいこと言うな~!」 「いやぁ、こういうシチュ作るのって中々できないよ~…何か、かがみってずるいよね。」 「また唐突に…」 「だって、いつもはヘタレのくせして、たまに素で積極的になるんだもん。しかも、 そういうのって私と二人っきりの時だけだし、やっぱツンデレだよネ。」 「だからヘタレとかツンデレって言うな!それは、あんたにしかこういう事しないけど… そんなの、誰だって好きな人にしか見せない面ってあるでしょうが!」 「それでもかがみはツンデレなのだヨ。普段はちょっときつめだけど、本当は甘えん坊、 もしくは寂しがり屋のことをツンデレって言うんだから、かがみはぴったしジャン!」 「べ、別に甘えん坊でも寂しがり屋でもないわよ。当てはまらないじゃない。」 「ホント?じゃあ、明日から別々の部屋で寝ても、問題ないよネ?」 「えっ?!あ、いや…それは…」 確かに、最初は同じ部屋でいきなり寝るつもりはなかったけど、1か月たった今は、 むしろ横のベッドにこなたがいることに喜びを感じているし、安心感もある。 そこでいきなり別々にすると言われると、困るというか…やっぱり寂しい…。 「ん~、どうしたのかがみ?一人でも平気なんだよねぇ?」 「うっ…うう~」 「本音とプライドを天秤にかけて悶えてるかがみ萌え~」 「何よ、さっきまであんたが悶えてたくせに…こなたの意地悪…」 「え、ちょ、拗ねないでよかがみん!」 「別に拗ねて何かないわよ。もう、別々の部屋で寝るから。」 「じょ、冗談だから!同じベッドで寝るから!だから怒らないで、かがみ様~」 そう言って私にすがりついてくるこなたを見て、思わずニヤッとしてしまった。 (なんだかんだで、一番の甘えん坊で寂しがり屋はやっぱりこなたじゃない。) 「もうしょうがないわね、分かったわよ。甘えん坊さんめ。」 「むぅ、かがみのくせに、私を数カ月でいいように扱うようになるとは…恐ろしい子! …なんか、夕飯食べてからどうも立場逆転してるよね~…ま、まさか、盛られたか!」 「誰が盛るか!っていうか、ピンポイントすぎるだろう、そんな薬。」 「まぁね…でも、自分が言ったことには責任持ってもらうからね、かがみん♪」 はて、私が何か責任をもつようなことを言ったか思考を巡らしてみるが、分からない。 「言ったことには責任持つけど、私何か言った?」 「〈もうしょうがないわね、分かったわよ〉って言ったじゃん。それのこと。」 「それならもちろんいいわよ。別に再確認するほどのことじゃないじゃない。」 「男に二言はないからね!」 「私は女だ!はぁ、せっかく途中までいい感じだったのに…」 「むふふ、かがみってやっぱロマンチストだよね。まぁ、お楽しみは夜に「あるー晴れた日のことー、魔法以上のゆーかいがー」お、電話だ。」 突然鳴り響いたのは私の好きなラノベを原作とする、ハルヒのOP曲だ。 そういって携帯に出るものかと思ったら、普通に子機を手に取った。 (って、ちょっと待て!こいつ、家の着信までアニソンに変えたのか?!) 「もしもし?おー、みゆきさん、こんばんは。…いやぁ、わざわざありがとネ~」 みゆきの声は聞こえないが、どうやらお誕生日のお祝いの言葉をかけるために、 医学部の講義や課題で忙しい中、わざわざ電話をしてきてくれたらしい。 (さて、どうやら話が長くなりそうだし、お風呂にでも入ってこようかしら。) 話の邪魔をしたら悪いと思って、あえてこなたには何も言わずに寝室に行き、 着替えを持って風呂場へ向かった…自分が了承していた事の真意を知らずに。 ☆★☆ 「ふぅ、さっぱりした。ん?こなた、何やってるの?」 「ん~、ネトゲー」 寝室に入るなり見つけたのは、ノートパソコンでネトゲをしているこなた。 こなたは結局、大学に入ってもネトゲをやめずに今もやっているわけだが、 ノーパソを買ってまで寝室でやっているというわけだ。 「あー、そういえばそっちでも祝ってくれる人がいるんだっけ?」 「ん、まぁねー。かがみが知ってる人だと黒井先生ぐらいかな?」 「黒井先生まだやってるのか…今28だっけ?29?」 「み~そじみさぁ~きぃ~♪」 「…それ、本人には絶対に言わない方がいいわよ?」 「分かってるってー」 そして私はしばらくボーっとしているわけだが、こなたは一向にやめる気配がない。 前から何度か頼んでいることで、もう少しやる時間を減らして欲しいんだけど、 元々やっている時間が長かったから、半分に減らさせたけどやっぱり長い。 今はラノベも登下校の時間や、こうした時間を使って読んでるから、新刊待ちの状態で、 私が今できることと言えば携帯ゲーム機で遊ぶか、勉強するか、このまま待つことぐらい。 しかし疲れがあるからか、もう何もやる気がでない…その上に眠くなってきた。 「んん~っ…ふあぁ…ねぇ、こなた。私疲れたからそろそろ寝るわよ?」 「あれ、今日は早いねかがみ。明日は午後からでしょ?」 「だから疲れたって言ってるでしょ?ケーキだってさんざn…ふわぁ…作ってたし。」 「私ももう少しかかるかなぁ、いつもよりは早く終わるけどさ。」 「ん…そう、なの?珍しいわね、あんたにしては。あんたも午後からじゃないの?」 「いやぁ、一緒に寝てくれる約束したんだし、誕生日ぐらいはねぇ♪」 「??…言ってる意味がよく分かんっはぁあ…いけど、もう無理…おやすみ~…」 そう言って私は目を閉じて寝る態勢に入った。 するとすぐにゲームの音が切れたため、わざわざ消したか、イヤホンをつけてくれたのが分かり、 そういう細かいところにこなたの優しさを感じて嬉しくなった。 ちょっとしたことなんだけど、こういう気配りが私から見たこなたの魅力の一つなんだと思う。 まぁ、他にもたくさんあるけどね。 そんなこなたのことを考えながら、そのまま穏やかに眠りについた…はずだった。 「うひゃぁあ!ななな、何?!」 「何って、夜這いに決まってるじゃん?」 「よ、よよ夜這いって、なな何を突然?!」 静かになったと思ったのは、音を消したんじゃなくて、パソコンの電源ごと消していた。 そして私が寝付きそうになったところを見計らって潜り込んできては、脇腹を擽ってきた。 「だってさっき一緒に寝てくれるって言ったよねー?同じ布団でって♪」 「そ、そんなこと言ってな…」 「『同じベッドで寝るから!怒らないで~』って言った時に、分かったって言ったよね~?」 「あれはそういう意味じゃなひぃっ!こ、こらやめっ、ちょっ…くくくっ、ひひっ! く、くすぐっ…あははふぅっ!はひ、そ、そこはだめ!あは、あはははははっ!!もう…無理っ! おなかいたっ!ひぃはっ、分かっ!分かったから!寝るから!ぎひっ、ギ、ギブだって!!」 その一言でぱっと手が離され、くすぐりという地獄から解放された。 この程度のことで何一つ抵抗することもできず、呆気なく屈してしまうなんて…。 そう思ってるうちに、こなたはもぞもぞしながら布団に入ってきて、ぴたっとくっついてきた。 「むふふぅ~、かがみん擽りに弱いね~」 「はぁ…はぁ…あ、あんたねぇ…」 「でも約束は約束だから、ヨロシクね、かがみん♪」 「もう勝手にしなさいよ…」 そう言って布団にくるまり、こなたの逆を向いて寝た。 ただでさえ疲れていたのに、今のくすぐりを受けたことによって疲れが倍増した気がする。 しかし、こなたはそれが不満なのか、しきりに私を自分の方に向けようとする。 「ねぇ、かがみぃ~、こっちを見てくれないとつまんないよ~」 「一緒に寝るだけなら関係ないでしょ?目を閉じるんだし。」 「だったら向いてくれてもいいじゃん。関係ないんだったらさぁ。」 「いやよ、あんたに何されるか分かったもんじゃないわ。」 「お誕生日のお願いじゃ駄目?」 出た、必殺のおねだり攻撃だ。多分、今こなたを見たら上目遣いを使われて勝ち目はないわね。 でも本音を言えばこなたの方は向きたい。ただ、この言葉であっさり従うのも癪。ならば… 「…変なことはしないのと、当面くすぐらないことを条件にならいいわよ。」 「とかいいつつ、かがみだってこっちを向きたいんじゃないの~?」 「なっ、あ、あんたがそうしたいって言うから…あぁもう、おやすみ!」 「あぁん、分かったからこっち向いてよ~」 「し、仕方ないわね…」 やれやれといった感じでこなたの方を向くが、内心はかなりドキドキしている。 そのこなたはと言うと、目を光らせてこっちを見ている…かと思いきや、意外と普通だった。 逆に何ともなさそうな顔が、何かを企んでいてそうで怖いわけだけど…。 そうしてしばらく向き合っている時間が静かに流れるわけだけど、ずっと見つめあってるわけで、 私の心境はとてもじゃないけど、眠れるような状態じゃなかった。 そんな状態のまま、さらに数分間の時が流れた後に静寂を破ったのはこなただった。 「…ねぇかがみ、寝ないの?」 「へっ?」 「向き合ってとは言ったけど、別に寝るなとは言ってないヨ?」 「あ、そ、そうね。おやすみ、こなた。」 今更だけど、物凄く恥ずかしいことをしていたんだと気づき、慌てて眼を閉じる。 だけど次の瞬間、急に抱きしめられたのがわかり、すぐにまた眼を開けた。 「ちょ、あんた寝てもいいって言ったそばから、な、何するのよ!」 「いやいや、私もこれから寝るところだよ?」 「だ、だったら離れなさいよ、暑苦しいんだから!」 「その割には顔がにやけてるし、自然と手を私の首に回してるあたり、凄くうれしそうだけど?」 「…っ!」 「返答がないからOKだネ。反論は認めない。そんじゃ、おやすみ~♪」 「あっ…」 言うやいなや、私を抱き枕にしたまま、こなたは寝てしまった。 寝る態勢に入ってから寝るまでの速さには定評のあるこなたは、すぐに熟睡状態になっているようで、 ほほを突っついたり、息を吹きかけてみたけど反応がない。 無理に振りほどくのも手だけど、自分の中の何かがそれを認可してくれない。 寝相が悪いからすぐに離れるだろうと思い、待ってみたけれど一向に離れる気配がしない。 むしろ、顔を私の胸に埋めた上に、足を絡めて来て、余計に離れにくくなってしまった。 (何なのよ、も~!それは嬉しくないわけないけど、私が寝れないじゃないの! うぅ、なんでこういうことを平気で出来るのよ…こんな状況、他の人には絶対見せられないわね…。 はぁ…でも、やっぱり可愛い寝顔してるわね、こいつ…しばらく眺めていようかな…) 体をピタッとくっつけたまま時間は過ぎ、時計はもう12時を指していた。 確かにこなたにしては、ネトゲを切り上げるのが早かったなとか、こなたの誕生日が過ぎたなーとかを 思っているとようやく心臓が落ち着いてきて、それと同時に強烈な睡魔が襲ってきた。 疲れが溜まりに溜まっていた私は、あっという間に睡魔に負けて、そのまま眠りについた。 ☆★☆ ピロリロリン! 次の朝、謎の音と共に起きた私の視界にまず入ったのは、幸せそうなこなたの寝顔。そして次に見たのは… 「あ、起こしちゃった?えへ、えへへっ、ご、ごめんね。あまりに幸せそうだったから、つい…」 顔を赤くしながらも、バツが悪そうに携帯を持って、こっちを見てるつかさだった… **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!(^_-)b -- 名無しさん (2023-05-11 16:51:19) - つかさには僕が鍵を渡しておきました -- チョココロネ (2014-04-03 05:44:30) - つかさ…1枚100円で売ってくれ! -- 名無しさん (2012-12-19 21:48:27) - ・・・つかさ? &br()どーやって入ったんだぁ?! &br()なっ、こ、これは違うのよっ!! &br()こなたのやつが無理やりっ!! -- かがみ (2010-08-29 10:12:01) - あの~つかささん・・・合鍵ですか?それともまさかのピッキング? -- kk (2010-05-17 00:36:06) - ↓写真の焼き増し希望します。パネル加工しなければW &br()GJ!! -- にゃあ (2008-10-05 19:34:20) - つかさ、その写真俺にくれないか? -- 名無しさん (2008-07-13 23:23:51)

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