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想愛」(2023/01/03 (火) 10:02:32) の最新版変更点

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夢を見た。こなたの夢。 空を見ると満天の星空で、ちょっと寒く感じられるぐらいの夜だった。 私の隣にこなたがいて、二人で笑い合ってた。些細なことや、身近な事。そう、高校時代のように。 凄く、温かくて、楽しくて、幸せで。ずっと続いたらいいなって思った瞬間、こなたが、いなくなっていた。 いくらこなたを呼んでも、戻ってこなかった。そこで夢は、終わった。 枕が濡れていたのを覚えている。 こなたとはあれ以来、ずっと『友達』でいる、って約束してから、頻繁にメールや電話をするようになった。 「聞いてよーかがみ!」 「・・・で、かがみはどう思う?」 「かがみならそう言ってくれると思ったよ。」 「照れるかがみに萌え。」 いつもこなたから連絡をくれた。自分の話をしたり、私の事を聞いてくれたり。 もちろん、昔のように、とはいかない。それは私のせい。 「うん。」 「へぇー。」 「そうなんだ。」 そんな返事しかできなかった。そんな返事しか、したくなかった。 こなたを、感じたい。もっと傍に感じたいのに、その想いに比例して、こなたとの距離をおいてしまう。 本当は嬉しいのに、本当は、もっともっとこなたとたくさん話したいのに。 そう思えば思うほど、胸が締め付けられる。言葉がでなくなる。泣きたくなる。 「かがみそっけないなー。せっかく面白い話をしてあげてるのにさ。」 ごめん。 こなたには謝罪の言葉しか出てこない。こなたは、本当はきっと気が付いているんだろうな。 私が抱いている醜い感情。ダメだ、押さえなきゃって思っても、溢れる、嫉妬。 それでもこなたは私に声を聞かせてくれる。温かい声。眠くなりそうな声。この声を聞くたびに、私の想いは強くなる。 嫉妬とは真逆の想い。純粋な、淡い想い。 止められないんだ。この想い。ごめんね、こなた。 もう『友達』で、いたくないんだ。こなたの『特別』になりたいんだ。 ーーーー 「おーっす柊ぃ!元気にしてたかー?」 「あんたは相変わらず元気そうで安心したよ。」 「久しぶりに柊ちゃんと会えたから、みさちゃんはしゃいでるの。」 「喜んでいいのか分からないな。峰岸も元気そうで何よりね。」 「まっ、かたっ苦しいのは抜きにしてさー。何か食いにいこーぜ。」 「さんせー。」 今日は日下部と峰岸と3人で夕飯を食べに行く約束をしていた。 こなた達といるのもいいけど、日下部達と何かをするのも、とても楽しい。 でも、こんな時でも、私の中にはこなたがいて、どんどん想いが膨れていく。ちょっと日下部と峰岸には悪いな。 「そーいえば、柊ぃ。ちびっ子は元気かー?」 こいつ、超能力でも持っているのか? 「・・・元気なんじゃない?」 「え?ちびっ子とは最近遊んでねーのか?」 「・・・まーそんなとこ。お互い忙しいしね。」 ふっ、とため息を月ながら空を見上げる。夢のように、空は綺麗じゃなかった。 「ふぅーん。私はてっきりまた一緒にいるのかと思ってたよ。」 「そーよね。柊ちゃん、泉ちゃんと一緒にいるが一番幸せそーだしね。」 「あやのがウチの兄貴といるときみたいになー。」 「み、みさちゃん!?」 「照れなさんなって。」 凄いな、日下部と峰岸は。中学からずっと私を見てきたからかな? 「そう、思う?」 「んーまぁ、友達っていうより、恋人の方が実は合ってるかもなー。」 「柊ちゃん、泉ちゃんと何かあったの?」 前に進むって決めたんだ。決して普通じゃない、むしろ異端かもしれない。 同姓で、しかも彼氏がいる人を好きになるなんて。 でも立ち止まりたくない。後悔するのも、もうたくさん。傷つくのも、もう慣れた。 ここから、始まるんだ。 私は、澄んだ夜の空気を吸う。そして、一歩を踏み出した。 ‐‐‐‐ 「やっぱりかー・・・モグモグ・・・」 「やっぱりねー・・・」 口にミートボールをいっぱい詰め込む日下部。ゆっくりスープわ味わう峰岸。対照的な二人だけれど、反応は同じだった。 「な、何よ、その反応。喧嘩うってんの?」 「いえいえ、決してバカにはしてないよ。むしろ納得したんだってヴぁ。」 納得、か。 私は二人に打ち明けた。4ヶ月前のこと、この間の事、そして私の想い。 この二人なら分かってくれるかもしれない。つかさ、みゆきには逆に話しにくかった。 これ以上、私のせいで、みんなとの関係を壊したくなかったから。 「柊ちゃんも恋するのね。中学から一緒だけど、そんな素振りなかったから。」 「わ、私だって・・・恋の一つぐらいするわよ。それよりも・・・」 そう、私にはよく分からない事があった。 「・・・変とか、気持ち悪い、とか思わないの?」 「べっつにー。そんな事思わねーけどな、あやの?」 「うん、私も性別なんて関係ないと思うわ。」 「・・・ホント?」 正直、私が日下部や峰岸の立場だったら、こんなこと言えたか分からない。 臆病者だから、傷つきたくないから、きっと変だとか思ってしまう。だから、4ヶ月前も、こなたの事を傷つけてしまった。 「ホントよ?それにね、柊ちゃんは、一人の人として『泉こなた』ちゃんが好きなんでしょ?」 「え・・・?」 「好きになったのがたまたま女の子だった。ただそれだけだと、私は思うわ。」 私はこなたが好き。大好き。ずっと傍にいたい。 峰岸の言うとおりだ。私はこなたのどこが好きだとかは、分からない。ただ、こなたが好き。 『泉こなた』の存在を、愛しているんだ。 「あやのも中々良い事言うなー。まぁこれもひとえにウチの兄貴の・・・」 「みみみみみみ、みさちゃん!」 「真っ赤になってやんのー。」 「あはは。・・・峰岸、ありがと。」 勇気を出して、良かった。また、一歩、進んだ。あの日に帰れない代わりに、私は進んでる。 「なぁなぁ、柊ぃ?」 ‐‐‐‐ 「はぁっはぁ・・・っはぁ・・・」 胸が苦しい。足が痛くなってきた。ふくろはぎがパンパンだ。 「っはぁ・・・はぁ・・・」 『柊はさ、頭良いから、考えすぎるんだよ。もっとバカになったら楽だぜ?』 『日下部さん・・・よく意味が分からないんだが?』 「はぁ・・・っこ・・・」 もう疲れた。自分でもビックリするぐらい走った。でも、まだ走り続けたい。 『要するにだな、後先考えないでばしーっと決めてこいってこと。』 『みさちゃんの言うとおりだと思うわ。ここで、諦めたら、それこそ一生後悔する。』 「はぁっはぁっ・・・っ・・・なた」 バスを使っても良かった。でも走りたかった。月に照らされた街を、思いっきり走りぬけたかった。 『ほら、行ってこいよ。ちびっ子のところにさ。』 『・・・でも・・・私、こなたを拒絶したのに・・・許される?それに、もう彼氏いるし・・・』 『あーうじうじしやがって!柊らしくねーぞ!いいか?結果なんてやってみないと分かんねーんだよ。陸上も恋も同じだろ?』 『柊ちゃん、今から、泉ちゃんのトコに。家、知ってるんでしょ?善は急げ、よ?』 「っ・・・こなたぁぁ!」 そうだ。行かなきゃ。伝えなきゃ。じゃないと私は、4ヶ月前より、後悔する事になる。 急ぎすぎなような気もする。でも、なりふり構ってられない。 『・・・うん。私、行ってくる。』 『そうこなくっちゃ。』 『ごめんね、二人共。また遊ぼうね。』 『今度はちびっ子も一緒がいいなー。』 『妹ちゃんや、高良ちゃんも一緒にね。』 『・・・ありがと。』 『負けんな、頑張れ、柊ぃ。』 『負けないで、頑張って、柊ちゃん。』 『うん、行ってくる。』 ありがと、日下部、峰岸。 「はっ・・・はっ・・・」 あいつのアパートまであと1キロ。私は走る。想いを乗せて。雲がなくなって星がはっきりと見える満点の空の下を。 気持ちが良かった。 ‐‐‐‐ 「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」 ここが、こなたの住むアパート。古くない、でも決して新しくはない。 乱れた呼吸を整える。汗で少し風が冷たい。私の汗ばんだ手のなかにある携帯。 少し震えた手で電話をかける。プルル・・・。無機質な音がやけに大きく聞こえる。 『もしもし、お姉ちゃん?どうしたの?こんな夜遅くに?』 聞き慣れた声。こなたとは違った安心感。鼓動が落ち着いていく。 「つかさ?今何してた?」 『んー、ゆきちゃんがウチに泊りに来てたから、雑談してたの。お姉ちゃんは?』 「・・・私、今から試験受ける。すごく難しいの。・・・私、怯えてる。」 『お姉ちゃん?』 「・・・応援、してくれないかな?一言でいいから。お願い。」 『・・・頑張れ』 「・・・うん。」 『負けるな、頑張れ、お姉ちゃん。』 「・・・うん。」 早くも、泣きそうになった。いつからこんなに泣き虫になったのかな? 『・・・かがみさん?』 「みゆき・・・」 『話は、つかささんから聞きました。私も、応援してもいいですか?』 「・・・ありがと・・・」 『頑張って下さい。かがみさんならきっと、うまくいきます。』 「・・・うん。」 『負けないで下さい、頑張って下さい。』 「・・・うん。」 つかさ、みゆき、ありがと。本当に助けられてる。 私、逃げないで、頑張る。例え、失敗しても。 「じゃ、行ってくる。」 『いってらっしゃい、かがみさん・・・いってらっしゃい、お姉ちゃん。』 行ってくるよ。大事な、大事な試験に。 ‐‐‐‐ 今度は電話帳の1番、上の電話番号に電話をかけた。 プルル・・・プルル・・・ 待ち遠しい。指先がチリチリする。胸がはじけそうだ。体から汗が吹き出る。 『はーい、もしもしかがみ?珍しいね、かがみから電話するの。』 うん、久しぶり。高校以来、ずっとこなたからだったね。私はアパートの階段を一段一段ゆっくりと上っていく。 『で、何かしたの、夜遅いけど?』 「うん、ちょっと、こなたに大事な用事があってね、それで電話したの。」 どんどん鼓動が早くなる。喉がやけに渇いた。手も、声も震えだしたのがわかった。 『えー、何々?まさか・・・ゲームを買ってくれるとか?それとも漫画?あ、夏コミに付き合ってくれるのかなー?』 ぷっと吹いてしまった。変わらない。私もこなたも変わったと思ったら、根元は、確かに、こなただった。 「違うわよ。あのね・・・」 目の前のドアには汚い字で、泉こなた、と書いてあった。 深呼吸をする。そして、研ぎ澄ませる。私の大事な想いを。 「今から、こなたんち、行ってもいい?」 『ええー!?今!?んーまぁいいっちゃーいいけど・・・もうバスも電車もないんじゃ・・・』 「・・・アパートのドア開けてみてよ?」 『ふぇ?』 部屋の中からドタバタという騒がしい音がした。するとすぐに、ドアが開いた。 「か、かがみ・・・」 負けるな、頑張れ、お姉ちゃん。 負けないで下さい、頑張って下さい、かがみさん。 負けんな、頑張れ、柊ぃ。 負けないで、頑張って、柊ちゃん。 うん、私、頑張るよ。 「こんばんわ、こなた。」 -[[想貴>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/61.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)
夢を見た。こなたの夢。 空を見ると満天の星空で、ちょっと寒く感じられるぐらいの夜だった。 私の隣にこなたがいて、二人で笑い合ってた。些細なことや、身近な事。そう、高校時代のように。 凄く、温かくて、楽しくて、幸せで。ずっと続いたらいいなって思った瞬間、こなたが、いなくなっていた。 いくらこなたを呼んでも、戻ってこなかった。そこで夢は、終わった。 枕が濡れていたのを覚えている。 こなたとはあれ以来、ずっと『友達』でいる、って約束してから、頻繁にメールや電話をするようになった。 「聞いてよーかがみ!」 「・・・で、かがみはどう思う?」 「かがみならそう言ってくれると思ったよ。」 「照れるかがみに萌え。」 いつもこなたから連絡をくれた。自分の話をしたり、私の事を聞いてくれたり。 もちろん、昔のように、とはいかない。それは私のせい。 「うん。」 「へぇー。」 「そうなんだ。」 そんな返事しかできなかった。そんな返事しか、したくなかった。 こなたを、感じたい。もっと傍に感じたいのに、その想いに比例して、こなたとの距離をおいてしまう。 本当は嬉しいのに、本当は、もっともっとこなたとたくさん話したいのに。 そう思えば思うほど、胸が締め付けられる。言葉がでなくなる。泣きたくなる。 「かがみそっけないなー。せっかく面白い話をしてあげてるのにさ。」 ごめん。 こなたには謝罪の言葉しか出てこない。こなたは、本当はきっと気が付いているんだろうな。 私が抱いている醜い感情。ダメだ、押さえなきゃって思っても、溢れる、嫉妬。 それでもこなたは私に声を聞かせてくれる。温かい声。眠くなりそうな声。この声を聞くたびに、私の想いは強くなる。 嫉妬とは真逆の想い。純粋な、淡い想い。 止められないんだ。この想い。ごめんね、こなた。 もう『友達』で、いたくないんだ。こなたの『特別』になりたいんだ。 ーーーー 「おーっす柊ぃ!元気にしてたかー?」 「あんたは相変わらず元気そうで安心したよ。」 「久しぶりに柊ちゃんと会えたから、みさちゃんはしゃいでるの。」 「喜んでいいのか分からないな。峰岸も元気そうで何よりね。」 「まっ、かたっ苦しいのは抜きにしてさー。何か食いにいこーぜ。」 「さんせー。」 今日は日下部と峰岸と3人で夕飯を食べに行く約束をしていた。 こなた達といるのもいいけど、日下部達と何かをするのも、とても楽しい。 でも、こんな時でも、私の中にはこなたがいて、どんどん想いが膨れていく。ちょっと日下部と峰岸には悪いな。 「そーいえば、柊ぃ。ちびっ子は元気かー?」 こいつ、超能力でも持っているのか? 「・・・元気なんじゃない?」 「え?ちびっ子とは最近遊んでねーのか?」 「・・・まーそんなとこ。お互い忙しいしね。」 ふっ、とため息を月ながら空を見上げる。夢のように、空は綺麗じゃなかった。 「ふぅーん。私はてっきりまた一緒にいるのかと思ってたよ。」 「そーよね。柊ちゃん、泉ちゃんと一緒にいるが一番幸せそーだしね。」 「あやのがウチの兄貴といるときみたいになー。」 「み、みさちゃん!?」 「照れなさんなって。」 凄いな、日下部と峰岸は。中学からずっと私を見てきたからかな? 「そう、思う?」 「んーまぁ、友達っていうより、恋人の方が実は合ってるかもなー。」 「柊ちゃん、泉ちゃんと何かあったの?」 前に進むって決めたんだ。決して普通じゃない、むしろ異端かもしれない。 同姓で、しかも彼氏がいる人を好きになるなんて。 でも立ち止まりたくない。後悔するのも、もうたくさん。傷つくのも、もう慣れた。 ここから、始まるんだ。 私は、澄んだ夜の空気を吸う。そして、一歩を踏み出した。 ‐‐‐‐ 「やっぱりかー・・・モグモグ・・・」 「やっぱりねー・・・」 口にミートボールをいっぱい詰め込む日下部。ゆっくりスープわ味わう峰岸。対照的な二人だけれど、反応は同じだった。 「な、何よ、その反応。喧嘩うってんの?」 「いえいえ、決してバカにはしてないよ。むしろ納得したんだってヴぁ。」 納得、か。 私は二人に打ち明けた。4ヶ月前のこと、この間の事、そして私の想い。 この二人なら分かってくれるかもしれない。つかさ、みゆきには逆に話しにくかった。 これ以上、私のせいで、みんなとの関係を壊したくなかったから。 「柊ちゃんも恋するのね。中学から一緒だけど、そんな素振りなかったから。」 「わ、私だって・・・恋の一つぐらいするわよ。それよりも・・・」 そう、私にはよく分からない事があった。 「・・・変とか、気持ち悪い、とか思わないの?」 「べっつにー。そんな事思わねーけどな、あやの?」 「うん、私も性別なんて関係ないと思うわ。」 「・・・ホント?」 正直、私が日下部や峰岸の立場だったら、こんなこと言えたか分からない。 臆病者だから、傷つきたくないから、きっと変だとか思ってしまう。だから、4ヶ月前も、こなたの事を傷つけてしまった。 「ホントよ?それにね、柊ちゃんは、一人の人として『泉こなた』ちゃんが好きなんでしょ?」 「え・・・?」 「好きになったのがたまたま女の子だった。ただそれだけだと、私は思うわ。」 私はこなたが好き。大好き。ずっと傍にいたい。 峰岸の言うとおりだ。私はこなたのどこが好きだとかは、分からない。ただ、こなたが好き。 『泉こなた』の存在を、愛しているんだ。 「あやのも中々良い事言うなー。まぁこれもひとえにウチの兄貴の・・・」 「みみみみみみ、みさちゃん!」 「真っ赤になってやんのー。」 「あはは。・・・峰岸、ありがと。」 勇気を出して、良かった。また、一歩、進んだ。あの日に帰れない代わりに、私は進んでる。 「なぁなぁ、柊ぃ?」 ‐‐‐‐ 「はぁっはぁ・・・っはぁ・・・」 胸が苦しい。足が痛くなってきた。ふくろはぎがパンパンだ。 「っはぁ・・・はぁ・・・」 『柊はさ、頭良いから、考えすぎるんだよ。もっとバカになったら楽だぜ?』 『日下部さん・・・よく意味が分からないんだが?』 「はぁ・・・っこ・・・」 もう疲れた。自分でもビックリするぐらい走った。でも、まだ走り続けたい。 『要するにだな、後先考えないでばしーっと決めてこいってこと。』 『みさちゃんの言うとおりだと思うわ。ここで、諦めたら、それこそ一生後悔する。』 「はぁっはぁっ・・・っ・・・なた」 バスを使っても良かった。でも走りたかった。月に照らされた街を、思いっきり走りぬけたかった。 『ほら、行ってこいよ。ちびっ子のところにさ。』 『・・・でも・・・私、こなたを拒絶したのに・・・許される?それに、もう彼氏いるし・・・』 『あーうじうじしやがって!柊らしくねーぞ!いいか?結果なんてやってみないと分かんねーんだよ。陸上も恋も同じだろ?』 『柊ちゃん、今から、泉ちゃんのトコに。家、知ってるんでしょ?善は急げ、よ?』 「っ・・・こなたぁぁ!」 そうだ。行かなきゃ。伝えなきゃ。じゃないと私は、4ヶ月前より、後悔する事になる。 急ぎすぎなような気もする。でも、なりふり構ってられない。 『・・・うん。私、行ってくる。』 『そうこなくっちゃ。』 『ごめんね、二人共。また遊ぼうね。』 『今度はちびっ子も一緒がいいなー。』 『妹ちゃんや、高良ちゃんも一緒にね。』 『・・・ありがと。』 『負けんな、頑張れ、柊ぃ。』 『負けないで、頑張って、柊ちゃん。』 『うん、行ってくる。』 ありがと、日下部、峰岸。 「はっ・・・はっ・・・」 あいつのアパートまであと1キロ。私は走る。想いを乗せて。雲がなくなって星がはっきりと見える満点の空の下を。 気持ちが良かった。 ‐‐‐‐ 「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」 ここが、こなたの住むアパート。古くない、でも決して新しくはない。 乱れた呼吸を整える。汗で少し風が冷たい。私の汗ばんだ手のなかにある携帯。 少し震えた手で電話をかける。プルル・・・。無機質な音がやけに大きく聞こえる。 『もしもし、お姉ちゃん?どうしたの?こんな夜遅くに?』 聞き慣れた声。こなたとは違った安心感。鼓動が落ち着いていく。 「つかさ?今何してた?」 『んー、ゆきちゃんがウチに泊りに来てたから、雑談してたの。お姉ちゃんは?』 「・・・私、今から試験受ける。すごく難しいの。・・・私、怯えてる。」 『お姉ちゃん?』 「・・・応援、してくれないかな?一言でいいから。お願い。」 『・・・頑張れ』 「・・・うん。」 『負けるな、頑張れ、お姉ちゃん。』 「・・・うん。」 早くも、泣きそうになった。いつからこんなに泣き虫になったのかな? 『・・・かがみさん?』 「みゆき・・・」 『話は、つかささんから聞きました。私も、応援してもいいですか?』 「・・・ありがと・・・」 『頑張って下さい。かがみさんならきっと、うまくいきます。』 「・・・うん。」 『負けないで下さい、頑張って下さい。』 「・・・うん。」 つかさ、みゆき、ありがと。本当に助けられてる。 私、逃げないで、頑張る。例え、失敗しても。 「じゃ、行ってくる。」 『いってらっしゃい、かがみさん・・・いってらっしゃい、お姉ちゃん。』 行ってくるよ。大事な、大事な試験に。 ‐‐‐‐ 今度は電話帳の1番、上の電話番号に電話をかけた。 プルル・・・プルル・・・ 待ち遠しい。指先がチリチリする。胸がはじけそうだ。体から汗が吹き出る。 『はーい、もしもしかがみ?珍しいね、かがみから電話するの。』 うん、久しぶり。高校以来、ずっとこなたからだったね。私はアパートの階段を一段一段ゆっくりと上っていく。 『で、何かしたの、夜遅いけど?』 「うん、ちょっと、こなたに大事な用事があってね、それで電話したの。」 どんどん鼓動が早くなる。喉がやけに渇いた。手も、声も震えだしたのがわかった。 『えー、何々?まさか・・・ゲームを買ってくれるとか?それとも漫画?あ、夏コミに付き合ってくれるのかなー?』 ぷっと吹いてしまった。変わらない。私もこなたも変わったと思ったら、根元は、確かに、こなただった。 「違うわよ。あのね・・・」 目の前のドアには汚い字で、泉こなた、と書いてあった。 深呼吸をする。そして、研ぎ澄ませる。私の大事な想いを。 「今から、こなたんち、行ってもいい?」 『ええー!?今!?んーまぁいいっちゃーいいけど・・・もうバスも電車もないんじゃ・・・』 「・・・アパートのドア開けてみてよ?」 『ふぇ?』 部屋の中からドタバタという騒がしい音がした。するとすぐに、ドアが開いた。 「か、かがみ・・・」 負けるな、頑張れ、お姉ちゃん。 負けないで下さい、頑張って下さい、かがみさん。 負けんな、頑張れ、柊ぃ。 負けないで、頑張って、柊ちゃん。 うん、私、頑張るよ。 「こんばんわ、こなた。」 -[[想貴>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/61.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-03 10:02:32)

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