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「あ~ぁ…」 私はため息をついた。 (何で、あんな事しちゃったんだろう…) 昨日、私はかなり落ち込んでいた。 食事中も家族から、具合でも悪いのかと言われてしまった。 お父さんは、悩み事があれば遠慮なく言いなさいと言ってくれたが、親に話せるような内容じゃない。 つかさは何かを察したのか、食事の後で、ケンカしたなら仲直りしなよと言ってくれたが、なかなか自分からは言い出せない。 結局、朝から電車に乗り込むと、目的地も決めず、適当な駅で降りた。 人の多い街だ。ここなら、知り合いに会うこともないだろう。買い物でもすれば、少しは気が晴れるかもしれない。 (しかし…どこに行こうかしら) 今日がたまたま週末ということもあり、百貨店の紙袋を持った人がたくさん歩いている。 (そうか…卒業や入学シーズンだもんね…) あてもなく街を歩いていると、 「あら、かがみさん」 「え?」 聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、そこにはピンク髪の眼鏡娘。 「お買い物ですか?」 「え、うん、なんとなく…暇だったから来てみたのよ。みゆきはどうしたのよ」 「私は、大学の入学式で着るスーツをオーダーしに来ました」 「あ、なるほどね…」 (オーダーメイドのスーツか、やっぱり金持ちは違うな) 「私はちょうど用件が済みましたので、良かったらお茶でも飲みに行きませんか?」 「え…う、うん、行きましょう!」 (世の中って狭い…) 「それがちょっとね~」 「大変ですね」 私達は、近くにあった喫茶店でコーヒーを飲んでいる。 落ち着いた上品な雰囲気の店だ。たまにはこういう所に来るのも悪くない。 「かがみさん、何か困ったことでもあるのですか」 「え?」 「先ほどから、何かを気にしているように見えますが…」 「そ…そうかな」 「何か気になることがありましたら、遠慮せずにおっしゃってください。他言はしませんから」 まっすぐに私を見つめる。 「実はね…好きになった人がいるの」 「まぁ…素晴らしいことですね」 「で、その人と…ちょっと気まずい感じになってるの」 「…何があったんですか?」 「…」 少し沈黙した後、 「…ねぇ…私達、友達よね」 「えぇ、もちろんです」 「じゃあ、みゆきを信じて言うわ。好きな相手は、こなたなの」 「え…?」 流石に少し動揺したようだ。 「昨日、こなたに無理やりキスしたのよ、肩をつかんでね」 「……」 しばらく、お互いに沈黙した後、みゆきが口を開いた。 「…お二人はすごく仲がいいとは思っていましたが、そこまで…」 「………」 何も言えない。ただ黙って目の前のコーヒーを眺めていた。 「…確か泉さんは、以前、空手か何か習っていましたよね」 「え…うん、それがどうかした?」 「かがみさんを拒絶しようと思ったら、突き飛ばすことも出来たはずです」 言われてみれば、確かにその通りだ。 私は決してひ弱ではないが、あいつの腕っ節がどの程度かは知らない。 本気を出せば、私を簡単に倒してしまうかもしれない。 「私は、泉さんが、かがみさんのことを嫌いになったとは思えないのです。むしろ、逆に、関係が発展することを望んでいる気がします」 「え…そう…かな」 「学校でのお二人を見て、正直、羨ましいと思ったくらいです。女同士でここまで仲良くなれるなんて、いいなぁって思ってたんですよ」 「うーん…」 みゆきがこういう話に理解のある人間で良かった。 もし、ここで露骨に嫌な顔でもされたら、私は本気で落ち込んでいただろう。 まぁ、みゆきはそんなことしないだろうけど。 「あ、そろそろ行かないと…。とにかく、きちんと話をすれば、きっと泉さんも分かってくれるはずですよ」 「うん…」 「では、またいずれ機会があればお会いしましょう」 そう言うとみゆきは伝票を持って、椅子から立ち上がった。 「あ、お金…」 「構いません、今回は私が出しておきます。応援してますよ」 そう言うとみゆきはにっこり笑って、レジのほうへ向かった。 (…ありがとう、本当に…) 今日ほど友達の存在をありがたいと思ったことはなかった。 しばらく店内で残りのコーヒーを飲みながらぼんやりしていたが、表が暗くなり始めたので、店を出ることにした。 (あ、そうだ…!) 喫茶店を出た私は、近くの用品店に入った。 (私らしくないけど…いいわよね、別に…) 家に着いたのは、日が沈む少し前だった。 「ただいまー」 「あ、お姉ちゃん、こなちゃんから電話あったよ~」 「え…何て言ってた?」 「ん~、用事があるから電話してって言ってたよ」 「そ…そうなんだ!わかったわ」 「ん?その紙袋どうしたの?」 「あ…これは、じ、自分へのご褒美よ」 「ふぅ~ん…」 つかさが私をじっと見つめる。 「な、何よ?」 「仲直り」 「えっ!!!」 「大丈夫だよ。こなちゃんはお姉ちゃんのこと大好きだし、すぐ元通りになれるよ~」 「う…」 「あー、仲が良くて羨ましいな~」 つかさは楽しそうに笑いながら台所のほうへ歩いていった。 (わ…私って、そんなに誤魔化すのが下手なのかしら) 夕飯の後、思い切ってこなたに電話した。 別に怒っているわけでもなく、いつも通りのあいつだった。 明日、アキバへ行くから付き合ってほしいらしい。なるほど、どうやらあいつのオタク根性は筋金入りのようだ。 色々と世間話をした後、いつもより早く床に就いた。 不安はあったが、こなたに会えることが嬉しくてたまらなかった。 午前10時30分、アキバ駅前。 「……遅い!」 私はいらいらしながら、駅の周りをうろうろしていた。 「やあ、お待たせ~」 来た。あいつだ。 「何やってたのよ、寝坊したの?」 「いやぁ~、昨日ネットの動画で面白いの見つけて、寝たのが5時でさ…」 「全く…少しは成長しなさいよね」 口では不満を言うが、本当は嬉しかった。 二人で街を歩いて、色々な所へ行った。 やたらとテンションが高い店長のいるアニメショップや、こなたが働いていた仮装喫茶、 ゲームセンター、色々なモノがある店…。 どこへ行っても楽しくてたまらなかった。 だが、気になることだってある。 こなたはあの日のこと、どう思っているのだろう。 「いやー、今日は楽しかったなー。レアアイテムも手に入ったし」 「あんたってホント、こういう事になると元気になるのねー」 「当然だよ、この街の全てが、私の活力の源なんだから!」 駅の近くで話す私たち。 こなたとは結局、いつも通りの時間を過ごした。 (このまま帰ったら、もうチャンスは無いかもしれない…) 「ねぇ、こなた」 「ん?」 「…はい」 小さな紙袋をこなたの前に差し出した。 「何コレ?」 「こ…この前のお詫びと、合格祝いよ」 こなたはフフンと笑った。 「もー、かがみは律儀なんだから」 「いいから…早く…開けなさいよ」 ガサガサと袋を開けるこなた。 「どれどれ…おぉう!」 白色の革製の定期入れだ。こなたが使っていたものが随分傷んでいたので、そろそろ買い替えたらいいのにと思っていたのだ。 「これと同じやつ、今日持ってたよね?」 「う…」 「お揃いの定期入れを使いたいと?」 「…そうよ!」 思わず声が大きくなってしまい、近くを歩いていたサラリーマンが数人振り返った。 「ありがと……かがみ」 「え?」 こなたが急に抱きついてきた。 「おわ!ちょっと、人前で…」 「大丈夫だよ。都会の人はみんな無関心だから」 私の耳の横で、こなたが言う。 私たちの横を、家路を急ぐ人たちが、物凄い速さで歩いていく。誰も私たちを見ようとしない。 「私さ、恋愛感覚って、よくわからないんだ」 「え?」 「今まで、リアルで人と付き合うなんて考えたことなかったし。友達から恋人になるなんて、自分には関係ない話だと思ってた。それが女同士だったら、尚更だよ」 「…」 「でもね、私はかがみが傍にいてほしいと思ってるんだ…」 「こなた…」 「かがみ…好きになるって、こういうことなのかな…」 上目遣いで私を見るこなた。もう少しだ。 「好きの後の言葉を削って、もう一度言ってみて」 こなたは微笑して、はっきりとした口調で言った。 「かがみ…好き」 「こなた!」 私はこなたの背に手を回し、強く抱きしめた。 「その言葉が聞きたかった、ずっと…」 「本当に強引だなぁ…もう…」 「あんたが私を変えたのよ」 「うーむ…暴走すると手がつけられないタイプだな。これからしっかり面倒見ないと」 「あ…あんたに言われたくないわ!」 こなたと一緒に過ごせる時間が、これからも続く。私には十分すぎる幸せだ。 腕の力を緩めると、こなたが急に飛び上がって私にしがみついてきた。 目の前には、こなたのどアップ。 「な…何?」 「この前のお返し」 唇に柔らかい感触を感じた。 「あ…」 こなたは地面に着地すると、私の顔を見上げていった。 「これでおあいこだね」 「…ば、ばかっ。恥ずかしいじゃない」 こなたとの軽いキス。 唇に跡が残っているような、不思議な気分になった。 「かがみ~ん、元気~?」 「当然よ。あんた、ちゃんと学校行ってるの?」 「ん~、今日は自主休講」 「あのなぁ…留年しても知らないぞ…」 四月に入り、新しい生活が始まった。 私はアパートで一人暮らしを始め、こなたは都心の大学まで毎日長時間かけて通っている。 今、部屋のパソコンを使って、テレビ電話で話している。 「かがみこそちゃんと部屋掃除しなよ。ホコリ溜まると鼻毛伸びるんだよ」 「う…わかってるわよ。今は時間割組み立てたり、サークルの歓迎会に付き合ったりしてるから、そこまで手が回らないのよ」 「ふ~ん…悪い男に騙されないか心配だよ。かがみんは純粋だから」 「大丈夫よ。そこまで隙見せないから。あんたこそ、大学はどうなのよ」 「ん~、なんか、微妙かな。もっと楽かと思ってたんだけど」 「どうせ遊ぶことばっか考えてたんだろ」 「え、大学って遊ぶところじゃないの?」 「おいおい…そういう考えでいると本当に留年するぞ」 「大丈夫だよ。それなりに話し相手も出来たし、何とかなるんじゃないかな」 「だといいんだけど…」 まぁ、こいつの事だ、要領よく生きていきそうだな。 「それでさ、いつこっちに帰ってくるの?」 「ん~…とりあえずゴールデンウィークには実家に戻るわ。その時に会いましょう」 「いいねぇ!かがみんと二人っきりで…ムフフフフ」 「はいはい、気持ち悪いこと言わない」 時々、こんな会話をしている。便利な世の中になったものだ。 わたしとこなたの関係は、今のところ、友達以上というところだろうか。 これからどうなっていくかは分からない。でも私にとってこなたは、かけがえの無い大切な人。 「じゃ、もう寝るわ。明日はちゃんと学校行きなさいよ」 「ほーい、じゃーにー」 通信終了。 PCの電源を切ると、私は一人つぶやいた。 「大好き、こなた…ちゃんと待ってなさいよ」 自分がツンデレだと、最近少しだけ自覚したような気がする。 人生\(=ω=.)/コナタ! (終) **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - &br()人生こなた!\(=ω=.)/ -- ( ^ω^) (2009-12-31 07:36:01)
「あ~ぁ…」 私はため息をついた。 (何で、あんな事しちゃったんだろう…) 昨日、私はかなり落ち込んでいた。 食事中も家族から、具合でも悪いのかと言われてしまった。 お父さんは、悩み事があれば遠慮なく言いなさいと言ってくれたが、親に話せるような内容じゃない。 つかさは何かを察したのか、食事の後で、ケンカしたなら仲直りしなよと言ってくれたが、なかなか自分からは言い出せない。 結局、朝から電車に乗り込むと、目的地も決めず、適当な駅で降りた。 人の多い街だ。ここなら、知り合いに会うこともないだろう。買い物でもすれば、少しは気が晴れるかもしれない。 (しかし…どこに行こうかしら) 今日がたまたま週末ということもあり、百貨店の紙袋を持った人がたくさん歩いている。 (そうか…卒業や入学シーズンだもんね…) あてもなく街を歩いていると、 「あら、かがみさん」 「え?」 聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、そこにはピンク髪の眼鏡娘。 「お買い物ですか?」 「え、うん、なんとなく…暇だったから来てみたのよ。みゆきはどうしたのよ」 「私は、大学の入学式で着るスーツをオーダーしに来ました」 「あ、なるほどね…」 (オーダーメイドのスーツか、やっぱり金持ちは違うな) 「私はちょうど用件が済みましたので、良かったらお茶でも飲みに行きませんか?」 「え…う、うん、行きましょう!」 (世の中って狭い…) 「それがちょっとね~」 「大変ですね」 私達は、近くにあった喫茶店でコーヒーを飲んでいる。 落ち着いた上品な雰囲気の店だ。たまにはこういう所に来るのも悪くない。 「かがみさん、何か困ったことでもあるのですか」 「え?」 「先ほどから、何かを気にしているように見えますが…」 「そ…そうかな」 「何か気になることがありましたら、遠慮せずにおっしゃってください。他言はしませんから」 まっすぐに私を見つめる。 「実はね…好きになった人がいるの」 「まぁ…素晴らしいことですね」 「で、その人と…ちょっと気まずい感じになってるの」 「…何があったんですか?」 「…」 少し沈黙した後、 「…ねぇ…私達、友達よね」 「えぇ、もちろんです」 「じゃあ、みゆきを信じて言うわ。好きな相手は、こなたなの」 「え…?」 流石に少し動揺したようだ。 「昨日、こなたに無理やりキスしたのよ、肩をつかんでね」 「……」 しばらく、お互いに沈黙した後、みゆきが口を開いた。 「…お二人はすごく仲がいいとは思っていましたが、そこまで…」 「………」 何も言えない。ただ黙って目の前のコーヒーを眺めていた。 「…確か泉さんは、以前、空手か何か習っていましたよね」 「え…うん、それがどうかした?」 「かがみさんを拒絶しようと思ったら、突き飛ばすことも出来たはずです」 言われてみれば、確かにその通りだ。 私は決してひ弱ではないが、あいつの腕っ節がどの程度かは知らない。 本気を出せば、私を簡単に倒してしまうかもしれない。 「私は、泉さんが、かがみさんのことを嫌いになったとは思えないのです。むしろ、逆に、関係が発展することを望んでいる気がします」 「え…そう…かな」 「学校でのお二人を見て、正直、羨ましいと思ったくらいです。女同士でここまで仲良くなれるなんて、いいなぁって思ってたんですよ」 「うーん…」 みゆきがこういう話に理解のある人間で良かった。 もし、ここで露骨に嫌な顔でもされたら、私は本気で落ち込んでいただろう。 まぁ、みゆきはそんなことしないだろうけど。 「あ、そろそろ行かないと…。とにかく、きちんと話をすれば、きっと泉さんも分かってくれるはずですよ」 「うん…」 「では、またいずれ機会があればお会いしましょう」 そう言うとみゆきは伝票を持って、椅子から立ち上がった。 「あ、お金…」 「構いません、今回は私が出しておきます。応援してますよ」 そう言うとみゆきはにっこり笑って、レジのほうへ向かった。 (…ありがとう、本当に…) 今日ほど友達の存在をありがたいと思ったことはなかった。 しばらく店内で残りのコーヒーを飲みながらぼんやりしていたが、表が暗くなり始めたので、店を出ることにした。 (あ、そうだ…!) 喫茶店を出た私は、近くの用品店に入った。 (私らしくないけど…いいわよね、別に…) 家に着いたのは、日が沈む少し前だった。 「ただいまー」 「あ、お姉ちゃん、こなちゃんから電話あったよ~」 「え…何て言ってた?」 「ん~、用事があるから電話してって言ってたよ」 「そ…そうなんだ!わかったわ」 「ん?その紙袋どうしたの?」 「あ…これは、じ、自分へのご褒美よ」 「ふぅ~ん…」 つかさが私をじっと見つめる。 「な、何よ?」 「仲直り」 「えっ!!!」 「大丈夫だよ。こなちゃんはお姉ちゃんのこと大好きだし、すぐ元通りになれるよ~」 「う…」 「あー、仲が良くて羨ましいな~」 つかさは楽しそうに笑いながら台所のほうへ歩いていった。 (わ…私って、そんなに誤魔化すのが下手なのかしら) 夕飯の後、思い切ってこなたに電話した。 別に怒っているわけでもなく、いつも通りのあいつだった。 明日、アキバへ行くから付き合ってほしいらしい。なるほど、どうやらあいつのオタク根性は筋金入りのようだ。 色々と世間話をした後、いつもより早く床に就いた。 不安はあったが、こなたに会えることが嬉しくてたまらなかった。 午前10時30分、アキバ駅前。 「……遅い!」 私はいらいらしながら、駅の周りをうろうろしていた。 「やあ、お待たせ~」 来た。あいつだ。 「何やってたのよ、寝坊したの?」 「いやぁ~、昨日ネットの動画で面白いの見つけて、寝たのが5時でさ…」 「全く…少しは成長しなさいよね」 口では不満を言うが、本当は嬉しかった。 二人で街を歩いて、色々な所へ行った。 やたらとテンションが高い店長のいるアニメショップや、こなたが働いていた仮装喫茶、 ゲームセンター、色々なモノがある店…。 どこへ行っても楽しくてたまらなかった。 だが、気になることだってある。 こなたはあの日のこと、どう思っているのだろう。 「いやー、今日は楽しかったなー。レアアイテムも手に入ったし」 「あんたってホント、こういう事になると元気になるのねー」 「当然だよ、この街の全てが、私の活力の源なんだから!」 駅の近くで話す私たち。 こなたとは結局、いつも通りの時間を過ごした。 (このまま帰ったら、もうチャンスは無いかもしれない…) 「ねぇ、こなた」 「ん?」 「…はい」 小さな紙袋をこなたの前に差し出した。 「何コレ?」 「こ…この前のお詫びと、合格祝いよ」 こなたはフフンと笑った。 「もー、かがみは律儀なんだから」 「いいから…早く…開けなさいよ」 ガサガサと袋を開けるこなた。 「どれどれ…おぉう!」 白色の革製の定期入れだ。こなたが使っていたものが随分傷んでいたので、そろそろ買い替えたらいいのにと思っていたのだ。 「これと同じやつ、今日持ってたよね?」 「う…」 「お揃いの定期入れを使いたいと?」 「…そうよ!」 思わず声が大きくなってしまい、近くを歩いていたサラリーマンが数人振り返った。 「ありがと……かがみ」 「え?」 こなたが急に抱きついてきた。 「おわ!ちょっと、人前で…」 「大丈夫だよ。都会の人はみんな無関心だから」 私の耳の横で、こなたが言う。 私たちの横を、家路を急ぐ人たちが、物凄い速さで歩いていく。誰も私たちを見ようとしない。 「私さ、恋愛感覚って、よくわからないんだ」 「え?」 「今まで、リアルで人と付き合うなんて考えたことなかったし。友達から恋人になるなんて、自分には関係ない話だと思ってた。それが女同士だったら、尚更だよ」 「…」 「でもね、私はかがみが傍にいてほしいと思ってるんだ…」 「こなた…」 「かがみ…好きになるって、こういうことなのかな…」 上目遣いで私を見るこなた。もう少しだ。 「好きの後の言葉を削って、もう一度言ってみて」 こなたは微笑して、はっきりとした口調で言った。 「かがみ…好き」 「こなた!」 私はこなたの背に手を回し、強く抱きしめた。 「その言葉が聞きたかった、ずっと…」 「本当に強引だなぁ…もう…」 「あんたが私を変えたのよ」 「うーむ…暴走すると手がつけられないタイプだな。これからしっかり面倒見ないと」 「あ…あんたに言われたくないわ!」 こなたと一緒に過ごせる時間が、これからも続く。私には十分すぎる幸せだ。 腕の力を緩めると、こなたが急に飛び上がって私にしがみついてきた。 目の前には、こなたのどアップ。 「な…何?」 「この前のお返し」 唇に柔らかい感触を感じた。 「あ…」 こなたは地面に着地すると、私の顔を見上げていった。 「これでおあいこだね」 「…ば、ばかっ。恥ずかしいじゃない」 こなたとの軽いキス。 唇に跡が残っているような、不思議な気分になった。 「かがみ~ん、元気~?」 「当然よ。あんた、ちゃんと学校行ってるの?」 「ん~、今日は自主休講」 「あのなぁ…留年しても知らないぞ…」 四月に入り、新しい生活が始まった。 私はアパートで一人暮らしを始め、こなたは都心の大学まで毎日長時間かけて通っている。 今、部屋のパソコンを使って、テレビ電話で話している。 「かがみこそちゃんと部屋掃除しなよ。ホコリ溜まると鼻毛伸びるんだよ」 「う…わかってるわよ。今は時間割組み立てたり、サークルの歓迎会に付き合ったりしてるから、そこまで手が回らないのよ」 「ふ~ん…悪い男に騙されないか心配だよ。かがみんは純粋だから」 「大丈夫よ。そこまで隙見せないから。あんたこそ、大学はどうなのよ」 「ん~、なんか、微妙かな。もっと楽かと思ってたんだけど」 「どうせ遊ぶことばっか考えてたんだろ」 「え、大学って遊ぶところじゃないの?」 「おいおい…そういう考えでいると本当に留年するぞ」 「大丈夫だよ。それなりに話し相手も出来たし、何とかなるんじゃないかな」 「だといいんだけど…」 まぁ、こいつの事だ、要領よく生きていきそうだな。 「それでさ、いつこっちに帰ってくるの?」 「ん~…とりあえずゴールデンウィークには実家に戻るわ。その時に会いましょう」 「いいねぇ!かがみんと二人っきりで…ムフフフフ」 「はいはい、気持ち悪いこと言わない」 時々、こんな会話をしている。便利な世の中になったものだ。 わたしとこなたの関係は、今のところ、友達以上というところだろうか。 これからどうなっていくかは分からない。でも私にとってこなたは、かけがえの無い大切な人。 「じゃ、もう寝るわ。明日はちゃんと学校行きなさいよ」 「ほーい、じゃーにー」 通信終了。 PCの電源を切ると、私は一人つぶやいた。 「大好き、こなた…ちゃんと待ってなさいよ」 自分がツンデレだと、最近少しだけ自覚したような気がする。 人生\(=ω=.)/コナタ! (終) **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-17 06:42:24) - &br()人生こなた!\(=ω=.)/ -- ( ^ω^) (2009-12-31 07:36:01)

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