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終わりと始まりの間に」(2023/02/16 (木) 20:22:05) の最新版変更点

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「終わりと始まりの間に」 春、気がつけばもう卒業シーズン。 長いと思っていた高校生活は、意外とあっさり終わろうとしている。 明日は卒業式。仲のいいクラスメイトや先生たちともお別れだ。 通い慣れた通学路を歩くのも、明日が最後。 合格のお祝いや、新生活の準備などでバタバタして大変だったが、これから始まる大学生活への期待も大きい。 何故なら、18年生きてきた中で、一番多く勉強して、やっとの思いで合格出来た学校なのだから。 (ドラマやラノベみたいな高校生活じゃなかったけど、それなりに充実してたな…) 「お姉ちゃん、起きてる~」 つかさが部屋のドアをノックする。 「はいよ~。どうしたの?入りなさいよ」 つかさが入ってきた。 「…あ、あの、明日卒業式だからさ…緊張して眠れないんだ」 「何か心配事でもあるの」 「あのね…お姉ちゃん、本当にあの大学行くの?」 「え…うん、そうだけど」 「…私だけ実家に残るのって、やっぱり寂しいな」 「そんな、一人っきりになるわけじゃないんだし…父さんと母さんとか、姉さんたちだっているじゃない」 「そうだけど…私は今までお姉ちゃんに助けられっぱなしだったから、やっぱり心配になってきちゃったんだ…」 「…大丈夫よ、気にしすぎだって」 「で、でも、お姉ちゃんは私より偏差値の高い大学に受かったし、私よりしっかりしてるから…私、怖いんだ、 お姉ちゃんがいなくなっても…本当にやっていけるのかな…」 つかさはそう言ってうつむいた。 「大丈夫だってば。何も戦場に行くってわけじゃないのよ。神経質にならずに流れに任せて気楽にやろうって思えばいいの。 楽観的に考えることだって必要なのよ」 「そ…そっか、そういう…ものなのかな」 「心配しないで羊でも数えればいいのよ。気が楽になるわ」 「うん…ありがとう。……おやすみ」 つかさはドアを閉めて部屋へ戻っていった。 (心配性だな…変なサークルに入んなきゃいいんだけど) そうだ、あいつはどうしているだろう。 こなたの携帯に電話してみた。 …出ない。 メールを送ってみた。 …15分経っても返信が来ない。 (もう寝ちゃったのかな) 私は携帯を閉じると、布団に潜り込んだ。 翌日、いつもより早く目が覚めた。 朝食や支度を済ませて、出かける用意は済んだ。 つかさと一緒に登校するのも最後になると思うと、やはり寂しいものがある。 (…ものには終わりがあるんだから、しょうがないか) 「あ…おはよう…お姉ちゃん」 「ちょっと、早くしなさいよ。遅刻したらどうするの」 「ふぁ…はぁい…」 (やれやれ…) いつもの待ち合わせの場所に、あいつがいない。 「あれ、こなちゃんどうしたんだろう」 「まさか遅刻か?」 携帯を取り出して電話してみるが、10回以上コールしても出ない。 「しょうがないな…先に行くか」 「え、でも…」 「仕方ないじゃない。次のバス逃したら遅刻確定よ」 「う~~ん…」 卒業式だというのに、何をやっているんだ。 学校に着いたが、どうやらこなたは来ていない様だ。 「ねぇ、みゆき、こなた見なかった?」 「それが…どこにもいないのです。トイレや保健室かと思ったのですが、そこにもいないみたいで」 「どうしちゃったんだろうね…」 「まったくあいつは、人生で一回しかない日に何やってるんだ…」 その時、教室の扉が勢いよく開いた。 「ハァ…良かった…間に合ったか…」 「こなた!!!」 教室の入り口には青い長髪の小柄な女子学生、こなたが息切れしながら立っていた。 「何やってたんだよ、ていうか、どうやって来たの?」 「いやぁ、タクシーで飛ばしてもらってね」 「あぁ、そう言えばバイトしてたんだっけ…いやいや、それ以前に、なんで遅れたのよ?」 「ん…まぁ…明日卒業式だと思うと緊張して眠れなくて…」 「じゃあ私といっしょだね~」 「大きな行事の前日は、心が躍りますからね」 「携帯はどうしたのよ?夕べも今日も一回も出ないじゃない」 「あぁ…部屋のどこかにはあると思うんだけど…バイブにしたままでよくわからないんだ」 「おいおい、アレ結構高いやつだろ?」 「ん?何か大事な話でもあったのですかな?かがみんや」 「べ、別に…駅にいなかったから、どうしてるのかと思ったのよ」 「でもそれって今朝の話だよね。夕べは何だったのですかな?ん~?」 「よ、寄るな気色悪い!」 こいつ…いや、こなたとはいつもこうやってふざけあっていた。 それも今日で終わりか…。 (これで、良かったのかな…) 「かがみさん、そろそろ教室に戻らないと…」 「え?あぁ、そうね!じゃあまた後で!!」 「かがみんとお別れなんて寂しいよお~~…」 「わ、わかったから!とりあえず今は離れろ、思い出話なら後ですればいいんだから」 「かがみ様~、行っちゃいやぁ~~~」 「泉ぃ、何やっとるんや、その子は隣のクラスやろ?」 いつの間にか先生が来ている。しかも教室にいる全員がこっちに注目している。 (うわ、何なんだよ、もーーー!!) なんとかこなたを引き離して、教室に戻った。 それから、全員で体育館に入場して、一人ずつ名前を呼ばれ、送辞や答辞、校長やOBの話を聞き、 多くの学校で卒業式に歌う曲や、校歌を歌って、式は終わった。 教室に戻って、一人ずつ卒業証書をもらい、先生の話が終わると、みんな記念撮影を始めたり、名残惜しそうに話し始めた。 泣いている子も結構いる。 「おーい、柊~」 「おーっす」 「今日で卒業なんだよな!未だに実感ねーや」 「うっかり明日も学校来るんじゃないわよー」 「ははっ、そこまで間抜けじゃないってば!一緒に写真撮ろうぜ!」 「はいよ~」 そして、日下部たちと一緒に写真に納まった。 「私もカメラ持って来れば良かったなー」 「大丈夫、出来上がったら焼き増ししてプレゼントすっからさ」 「え、ありがとう、それは助かる!」 「とこ…」 「じゃあ私隣のクラス行くわ!」 「みゅ~……あたしは結局最後まで背景かよ」 「みさおちゃん…」 「最後くらい一緒に帰ろうと思ったのにさ…あやのぉ、後で一杯やりに行こうぜ…いい店知ってるからさ」 「え、私たち三月いっぱいは高校生なんだし、さすがにまずいんじゃ…」 「ん、誰もお酒なんて言ってないぞ。コーヒーだってば!チーズケーキもうまいんだぜ」 「あぁ、そういうことなら、喜んでお付き合いするわ」 「あたしらの友情は不滅だよ!」 「そうね…フフフッ」 「ねぇつかさ、こなた見なかった?」 「あれ、おかしいな、さっきまでいたんだけど…」 「名残惜しくなって、校内を散策しているのかもしれませんね」 「そっか…探してくる!」 三階、二階、一階…一通り探してみたが、どこにもいない。 あと、あいつが行きそうなところは…。 …そうだ、校庭だ。 ギャルゲーで桜の木の下がどうとか言っていたし…。 「…こなた!」 「やぁ、かがみ」 こなたは木の下に座り込んで、ぼんやりしていた。 「何でいきなりいなくなってんのよ…」 「だって、最後の日なんだよ、思い出の場所になりそうなところに行きたいじゃない」 「何だそれ…」 「まぁまぁ、ちょっと思い出話でもしようじゃありませんか」 「はいはい…」 こなたの隣に腰を下ろした。 「…あっという間だったね」 「そうね」 「私たち、これからどうなるんだろう…」 「さぁ…わかんないなぁ」 「私はこのままのんびりと暮らせたらいいなーって思ってるんだけどさ…大学出たら、もう世の中に出るんだよね…」 「そうねぇ…でもニートって手もあるわよ」 「あー、それも本気で考えたんだけどさ、なんかつまんなそうじゃん、さすがに死ぬまでずっとゲームっていうのはさ…」 「考えたのかよ…でもあんたに結構向いてそうね」 「んもー、かがみのいじわる…」 不機嫌そうな顔になるこなた。普段からかわれているお返しだ。 「かがみは凶暴だから、お嫁にいけなくて親を泣かせるんじゃないの?」 「ちょっと、どういう意味だよ」 「おぉう!」 少しハッとした。 そうだ、この日常が終わってしまうのだ。 頭ではわかっていたが、もうその時間が迫ってきている。 「かがみん…どうしたの」 「ん、なんかさ、今になって急に泣けてきちゃって…」 何故だろう、涙が止まらなくなった。 恥ずかしい、こなたに顔向けできない。 それでもどんどんあふれてくる。止まらない。止められない。 「これ、使いなよ」 こなたがハンカチを差し出す。こいつは時々優しくなる。 それがすごく嬉しい、抱きしめたいほどに。 「ありがと…グスッ」 ハンカチを返そうとした時、突然こなたが抱きついてきた。 「え、ちょっと…」 「かがみ…あったかいよ」 胸元に顔を埋めながら言う。 「ねぇ…ちょっと…」 「最後にかがみの温もりを感じておきたいんだ…」 「…」 私は何も言わず、ただ黙ってこなたの背中に手を回した。 「かがみ…本当に楽しかったよ。かがみがいなかったら、つまんない三年間で終わってたかも…」 「…素直に喜んでいいのかしら」 「当然だよ…なんか、かがみはさ…」 その後何か言ったようだが、よく聞き取れなかった。涙声になっている。 「…そろそろ、教室に戻らない?みんな探してるわよ」 「…もうちょっと、このままでいさせて…」 見つかったらどうしようかと思ったが、別にいい。どうせ今日で最後なのだから。 「……いいよ」 私は静かにこなたの髪を梳いた。綺麗な長髪に指が吸い込まれそうだ。 あと少しだけ、時が止まったような錯覚を味わっていたい。 -[[終わりと始まりの間に(続き)>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/477.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)
「終わりと始まりの間に」 春、気がつけばもう卒業シーズン。 長いと思っていた高校生活は、意外とあっさり終わろうとしている。 明日は卒業式。仲のいいクラスメイトや先生たちともお別れだ。 通い慣れた通学路を歩くのも、明日が最後。 合格のお祝いや、新生活の準備などでバタバタして大変だったが、これから始まる大学生活への期待も大きい。 何故なら、18年生きてきた中で、一番多く勉強して、やっとの思いで合格出来た学校なのだから。 (ドラマやラノベみたいな高校生活じゃなかったけど、それなりに充実してたな…) 「お姉ちゃん、起きてる~」 つかさが部屋のドアをノックする。 「はいよ~。どうしたの?入りなさいよ」 つかさが入ってきた。 「…あ、あの、明日卒業式だからさ…緊張して眠れないんだ」 「何か心配事でもあるの」 「あのね…お姉ちゃん、本当にあの大学行くの?」 「え…うん、そうだけど」 「…私だけ実家に残るのって、やっぱり寂しいな」 「そんな、一人っきりになるわけじゃないんだし…父さんと母さんとか、姉さんたちだっているじゃない」 「そうだけど…私は今までお姉ちゃんに助けられっぱなしだったから、やっぱり心配になってきちゃったんだ…」 「…大丈夫よ、気にしすぎだって」 「で、でも、お姉ちゃんは私より偏差値の高い大学に受かったし、私よりしっかりしてるから…私、怖いんだ、 お姉ちゃんがいなくなっても…本当にやっていけるのかな…」 つかさはそう言ってうつむいた。 「大丈夫だってば。何も戦場に行くってわけじゃないのよ。神経質にならずに流れに任せて気楽にやろうって思えばいいの。 楽観的に考えることだって必要なのよ」 「そ…そっか、そういう…ものなのかな」 「心配しないで羊でも数えればいいのよ。気が楽になるわ」 「うん…ありがとう。……おやすみ」 つかさはドアを閉めて部屋へ戻っていった。 (心配性だな…変なサークルに入んなきゃいいんだけど) そうだ、あいつはどうしているだろう。 こなたの携帯に電話してみた。 …出ない。 メールを送ってみた。 …15分経っても返信が来ない。 (もう寝ちゃったのかな) 私は携帯を閉じると、布団に潜り込んだ。 翌日、いつもより早く目が覚めた。 朝食や支度を済ませて、出かける用意は済んだ。 つかさと一緒に登校するのも最後になると思うと、やはり寂しいものがある。 (…ものには終わりがあるんだから、しょうがないか) 「あ…おはよう…お姉ちゃん」 「ちょっと、早くしなさいよ。遅刻したらどうするの」 「ふぁ…はぁい…」 (やれやれ…) いつもの待ち合わせの場所に、あいつがいない。 「あれ、こなちゃんどうしたんだろう」 「まさか遅刻か?」 携帯を取り出して電話してみるが、10回以上コールしても出ない。 「しょうがないな…先に行くか」 「え、でも…」 「仕方ないじゃない。次のバス逃したら遅刻確定よ」 「う~~ん…」 卒業式だというのに、何をやっているんだ。 学校に着いたが、どうやらこなたは来ていない様だ。 「ねぇ、みゆき、こなた見なかった?」 「それが…どこにもいないのです。トイレや保健室かと思ったのですが、そこにもいないみたいで」 「どうしちゃったんだろうね…」 「まったくあいつは、人生で一回しかない日に何やってるんだ…」 その時、教室の扉が勢いよく開いた。 「ハァ…良かった…間に合ったか…」 「こなた!!!」 教室の入り口には青い長髪の小柄な女子学生、こなたが息切れしながら立っていた。 「何やってたんだよ、ていうか、どうやって来たの?」 「いやぁ、タクシーで飛ばしてもらってね」 「あぁ、そう言えばバイトしてたんだっけ…いやいや、それ以前に、なんで遅れたのよ?」 「ん…まぁ…明日卒業式だと思うと緊張して眠れなくて…」 「じゃあ私といっしょだね~」 「大きな行事の前日は、心が躍りますからね」 「携帯はどうしたのよ?夕べも今日も一回も出ないじゃない」 「あぁ…部屋のどこかにはあると思うんだけど…バイブにしたままでよくわからないんだ」 「おいおい、アレ結構高いやつだろ?」 「ん?何か大事な話でもあったのですかな?かがみんや」 「べ、別に…駅にいなかったから、どうしてるのかと思ったのよ」 「でもそれって今朝の話だよね。夕べは何だったのですかな?ん~?」 「よ、寄るな気色悪い!」 こいつ…いや、こなたとはいつもこうやってふざけあっていた。 それも今日で終わりか…。 (これで、良かったのかな…) 「かがみさん、そろそろ教室に戻らないと…」 「え?あぁ、そうね!じゃあまた後で!!」 「かがみんとお別れなんて寂しいよお~~…」 「わ、わかったから!とりあえず今は離れろ、思い出話なら後ですればいいんだから」 「かがみ様~、行っちゃいやぁ~~~」 「泉ぃ、何やっとるんや、その子は隣のクラスやろ?」 いつの間にか先生が来ている。しかも教室にいる全員がこっちに注目している。 (うわ、何なんだよ、もーーー!!) なんとかこなたを引き離して、教室に戻った。 それから、全員で体育館に入場して、一人ずつ名前を呼ばれ、送辞や答辞、校長やOBの話を聞き、 多くの学校で卒業式に歌う曲や、校歌を歌って、式は終わった。 教室に戻って、一人ずつ卒業証書をもらい、先生の話が終わると、みんな記念撮影を始めたり、名残惜しそうに話し始めた。 泣いている子も結構いる。 「おーい、柊~」 「おーっす」 「今日で卒業なんだよな!未だに実感ねーや」 「うっかり明日も学校来るんじゃないわよー」 「ははっ、そこまで間抜けじゃないってば!一緒に写真撮ろうぜ!」 「はいよ~」 そして、日下部たちと一緒に写真に納まった。 「私もカメラ持って来れば良かったなー」 「大丈夫、出来上がったら焼き増ししてプレゼントすっからさ」 「え、ありがとう、それは助かる!」 「とこ…」 「じゃあ私隣のクラス行くわ!」 「みゅ~……あたしは結局最後まで背景かよ」 「みさおちゃん…」 「最後くらい一緒に帰ろうと思ったのにさ…あやのぉ、後で一杯やりに行こうぜ…いい店知ってるからさ」 「え、私たち三月いっぱいは高校生なんだし、さすがにまずいんじゃ…」 「ん、誰もお酒なんて言ってないぞ。コーヒーだってば!チーズケーキもうまいんだぜ」 「あぁ、そういうことなら、喜んでお付き合いするわ」 「あたしらの友情は不滅だよ!」 「そうね…フフフッ」 「ねぇつかさ、こなた見なかった?」 「あれ、おかしいな、さっきまでいたんだけど…」 「名残惜しくなって、校内を散策しているのかもしれませんね」 「そっか…探してくる!」 三階、二階、一階…一通り探してみたが、どこにもいない。 あと、あいつが行きそうなところは…。 …そうだ、校庭だ。 ギャルゲーで桜の木の下がどうとか言っていたし…。 「…こなた!」 「やぁ、かがみ」 こなたは木の下に座り込んで、ぼんやりしていた。 「何でいきなりいなくなってんのよ…」 「だって、最後の日なんだよ、思い出の場所になりそうなところに行きたいじゃない」 「何だそれ…」 「まぁまぁ、ちょっと思い出話でもしようじゃありませんか」 「はいはい…」 こなたの隣に腰を下ろした。 「…あっという間だったね」 「そうね」 「私たち、これからどうなるんだろう…」 「さぁ…わかんないなぁ」 「私はこのままのんびりと暮らせたらいいなーって思ってるんだけどさ…大学出たら、もう世の中に出るんだよね…」 「そうねぇ…でもニートって手もあるわよ」 「あー、それも本気で考えたんだけどさ、なんかつまんなそうじゃん、さすがに死ぬまでずっとゲームっていうのはさ…」 「考えたのかよ…でもあんたに結構向いてそうね」 「んもー、かがみのいじわる…」 不機嫌そうな顔になるこなた。普段からかわれているお返しだ。 「かがみは凶暴だから、お嫁にいけなくて親を泣かせるんじゃないの?」 「ちょっと、どういう意味だよ」 「おぉう!」 少しハッとした。 そうだ、この日常が終わってしまうのだ。 頭ではわかっていたが、もうその時間が迫ってきている。 「かがみん…どうしたの」 「ん、なんかさ、今になって急に泣けてきちゃって…」 何故だろう、涙が止まらなくなった。 恥ずかしい、こなたに顔向けできない。 それでもどんどんあふれてくる。止まらない。止められない。 「これ、使いなよ」 こなたがハンカチを差し出す。こいつは時々優しくなる。 それがすごく嬉しい、抱きしめたいほどに。 「ありがと…グスッ」 ハンカチを返そうとした時、突然こなたが抱きついてきた。 「え、ちょっと…」 「かがみ…あったかいよ」 胸元に顔を埋めながら言う。 「ねぇ…ちょっと…」 「最後にかがみの温もりを感じておきたいんだ…」 「…」 私は何も言わず、ただ黙ってこなたの背中に手を回した。 「かがみ…本当に楽しかったよ。かがみがいなかったら、つまんない三年間で終わってたかも…」 「…素直に喜んでいいのかしら」 「当然だよ…なんか、かがみはさ…」 その後何か言ったようだが、よく聞き取れなかった。涙声になっている。 「…そろそろ、教室に戻らない?みんな探してるわよ」 「…もうちょっと、このままでいさせて…」 見つかったらどうしようかと思ったが、別にいい。どうせ今日で最後なのだから。 「……いいよ」 私は静かにこなたの髪を梳いた。綺麗な長髪に指が吸い込まれそうだ。 あと少しだけ、時が止まったような錯覚を味わっていたい。 -[[終わりと始まりの間に(続き)>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/477.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-16 20:22:05)

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