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『二人の時間』 車は高速道路を走り続けている。 神奈川県に入りましたというナビの声が聞こえた。 座席の座り心地の良さ、快適な空調、静かなエンジン音。 (うーん、高級車を操るかがみは凛々しくてかっこいいなぁ) そんなことを考えていると、眠くなってきた。 「ねぇー、かがみーん」 「何」 「どうやって背もたれ倒すの?」 「何、眠いの?」 「実は…早起きしちゃったものだから今になって眠気が…」 「相変わらずマイペースなのね…そこのボタン押して」 「え、コレ電動?おわぁ!」 思わず叫んでしまった。 衝撃的だ…ゲームで裏面を見つけたようだ。この世にこんな物があったなんて…。 (あぁ…なんかベッドみたいだなこの座席…私のベッドより大きいんじゃないかな…) 私は少しずつ、心地よい睡魔に身を委ねていった。 目を閉じたかと思ったら、本当に寝てしまった。 CDでも持って来れば良かった。そうすればこなたはずっと起きていて、色々と話せたかもしれない。 すやすやと寝息を立てるこなた。かわいい…。 身長も少し伸びて、胸も少しだけ大きくなっている気がする。今になって成長期が始まったのだろうか。 いけない。運転に集中しなくては。車がスクラップになるより、こなたに怪我をされるほうが困る。 少しサービスエリアで休憩しよう。 サービスエリアに車を入れると、どうにか駐車スペースを見つけることができた。 車体が大きいので、慎重に操作しないとすぐにぶつけてしまうそうになる。 狭い道路で、無理して高級車に乗る必要は無いのかもしれない。良い雰囲気は出るのだけど。 自販機で缶コーヒーを二本買った私は、駆け足で車に戻り、こなたの頬に缶を押し当てた。 「うあー、熱い~~…」 「こなたー、コーヒー買って来たよー」 「ん…あとどのくらいで着くのー」 「もうちょっとだから、そろそろ起きて」 「うー…」 猫のような仕草で顔をこすると、伸びをするこなた。あくびの声が可愛らしい。 缶を空けると、こくんこくんと音を立てて飲み始めた。余程のどが渇いていたのだろうか。 私もコーヒーの缶を開けて、少し口に入れた。 「ねぇ、かがみん」 「何よ」 「なんでまた、こんな車用意したわけ」 「んー、ちょっと山奥のほうに行くから、電車だと駅からかなり歩くのよ。車で行ったほうが楽なのよね」 「でもこんな高そうな車貸してくれるなんて、太っ腹な人がいるもんだねぇ」 「んー、お金があるところにはあるってことよ」 「どんな人なの」 「…そこそこ大きい会社の社長息子よ。将来は親の後を継ぐらしいけど、 あんなちゃらんぽらんな人間に経営者なんて勤まるのかしらね」 「え…まさか、彼氏?」 「ん、そういう頃もあったなー。でも別れたわ。今は友達みたいなものだけど、アメリカに留学するって言ってたし、 卒業したらもう会わないでしょうね」 「なんで付き合ったのさ?」 「たまたま大学のサークルで一緒になったのよ。それで、コクられたってわけ」 「ふんふん、それからどしたの?」 「…軽い気持ちで付き合ってみたんだけどね、金持ってるって自慢するくせに、デートはいつも割り勘だったし、 ブランド物見せびらかすかと思えば、パチスロで負けたから金貸してって言って来たり…」 「うわ、なんかそれ間違ってる」 「ま、結構過保護に育ったみたいで、自分の思い通りにならないと怒り出すこともあったわ。 そういうところに嫌気が差して、冷めるのも結構早かったわね」 「でもこうやって車貸してくれるってことは、まだかがみんに気があるんじゃ…」 「こ、これは、あいつが、留年しそうだから助けてー、って、学校の食堂で土下座までするから、 仕方なくレポートを手伝ってやったお礼よ。もう一回コクられても、よりを戻す気はないから」 「ふーん…」 「な、何よ?」 「かがみんって優しいんだねー」 何かを企んでいる悪戯っ子のような顔で私を見つめるこなた。 恥ずかしいような照れくさいような、妙な気分になった私は、慌ててこなたから目をそらした。 「もう行くわよ、トイレはいいの?」 「あ、一応行っとく」 「あっちにあるから。迷わないでよ」 「んもー、心配性だなかがみは」 こなたは無邪気に笑うと、トイレのほうへ走っていった。足の速さは相変わらずだ。 何だろう、このもやもやした気分は。 車酔いだろうか。 窓を開けて冷たい空気を浴びても、気分は変わらない。 何だろう、私、どうかしてる…。 -[[二人の時間/3話>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/438.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 車体が大きいんだから・・・ &br()ロールスロイスかな? -- 名無しさん (2012-01-29 14:59:22)
『二人の時間』 車は高速道路を走り続けている。 神奈川県に入りましたというナビの声が聞こえた。 座席の座り心地の良さ、快適な空調、静かなエンジン音。 (うーん、高級車を操るかがみは凛々しくてかっこいいなぁ) そんなことを考えていると、眠くなってきた。 「ねぇー、かがみーん」 「何」 「どうやって背もたれ倒すの?」 「何、眠いの?」 「実は…早起きしちゃったものだから今になって眠気が…」 「相変わらずマイペースなのね…そこのボタン押して」 「え、コレ電動?おわぁ!」 思わず叫んでしまった。 衝撃的だ…ゲームで裏面を見つけたようだ。この世にこんな物があったなんて…。 (あぁ…なんかベッドみたいだなこの座席…私のベッドより大きいんじゃないかな…) 私は少しずつ、心地よい睡魔に身を委ねていった。 目を閉じたかと思ったら、本当に寝てしまった。 CDでも持って来れば良かった。そうすればこなたはずっと起きていて、色々と話せたかもしれない。 すやすやと寝息を立てるこなた。かわいい…。 身長も少し伸びて、胸も少しだけ大きくなっている気がする。今になって成長期が始まったのだろうか。 いけない。運転に集中しなくては。車がスクラップになるより、こなたに怪我をされるほうが困る。 少しサービスエリアで休憩しよう。 サービスエリアに車を入れると、どうにか駐車スペースを見つけることができた。 車体が大きいので、慎重に操作しないとすぐにぶつけてしまうそうになる。 狭い道路で、無理して高級車に乗る必要は無いのかもしれない。良い雰囲気は出るのだけど。 自販機で缶コーヒーを二本買った私は、駆け足で車に戻り、こなたの頬に缶を押し当てた。 「うあー、熱い~~…」 「こなたー、コーヒー買って来たよー」 「ん…あとどのくらいで着くのー」 「もうちょっとだから、そろそろ起きて」 「うー…」 猫のような仕草で顔をこすると、伸びをするこなた。あくびの声が可愛らしい。 缶を空けると、こくんこくんと音を立てて飲み始めた。余程のどが渇いていたのだろうか。 私もコーヒーの缶を開けて、少し口に入れた。 「ねぇ、かがみん」 「何よ」 「なんでまた、こんな車用意したわけ」 「んー、ちょっと山奥のほうに行くから、電車だと駅からかなり歩くのよ。車で行ったほうが楽なのよね」 「でもこんな高そうな車貸してくれるなんて、太っ腹な人がいるもんだねぇ」 「んー、お金があるところにはあるってことよ」 「どんな人なの」 「…そこそこ大きい会社の社長息子よ。将来は親の後を継ぐらしいけど、 あんなちゃらんぽらんな人間に経営者なんて勤まるのかしらね」 「え…まさか、彼氏?」 「ん、そういう頃もあったなー。でも別れたわ。今は友達みたいなものだけど、アメリカに留学するって言ってたし、 卒業したらもう会わないでしょうね」 「なんで付き合ったのさ?」 「たまたま大学のサークルで一緒になったのよ。それで、コクられたってわけ」 「ふんふん、それからどしたの?」 「…軽い気持ちで付き合ってみたんだけどね、金持ってるって自慢するくせに、デートはいつも割り勘だったし、 ブランド物見せびらかすかと思えば、パチスロで負けたから金貸してって言って来たり…」 「うわ、なんかそれ間違ってる」 「ま、結構過保護に育ったみたいで、自分の思い通りにならないと怒り出すこともあったわ。 そういうところに嫌気が差して、冷めるのも結構早かったわね」 「でもこうやって車貸してくれるってことは、まだかがみんに気があるんじゃ…」 「こ、これは、あいつが、留年しそうだから助けてー、って、学校の食堂で土下座までするから、 仕方なくレポートを手伝ってやったお礼よ。もう一回コクられても、よりを戻す気はないから」 「ふーん…」 「な、何よ?」 「かがみんって優しいんだねー」 何かを企んでいる悪戯っ子のような顔で私を見つめるこなた。 恥ずかしいような照れくさいような、妙な気分になった私は、慌ててこなたから目をそらした。 「もう行くわよ、トイレはいいの?」 「あ、一応行っとく」 「あっちにあるから。迷わないでよ」 「んもー、心配性だなかがみは」 こなたは無邪気に笑うと、トイレのほうへ走っていった。足の速さは相変わらずだ。 何だろう、このもやもやした気分は。 車酔いだろうか。 窓を開けて冷たい空気を浴びても、気分は変わらない。 何だろう、私、どうかしてる…。 -[[二人の時間/3話>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/438.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-07 02:37:25) - 車体が大きいんだから・・・ &br()ロールスロイスかな? -- 名無しさん (2012-01-29 14:59:22)

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