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―――2月14日。 恋心を抱く女の子が、意中の相手にチョコレートを送る日。 それが今日、聖・バレンタインデー。 ……自分で言うのも恥ずかしいけれど、私もその一人で……。 とある夜に、こなたが『俺の嫁』だからよ、と言った私だけど、女の子として付き合ってる相手に贈りたいのよ、やっぱり……。 それも……できれば、手作りチョコ。 工夫とか出来ないし、市販のより味は悪くなっちゃう……と思う。 でも、愛情をお金で賄うのは無理よ! ……きっと……。 私は、時計を見た。 短針は0と1の間、長針は3を指している。窓から見える外の風景は、黒一色。 つまり、AM0:15 学校の準備をしなきゃいけない時間まで、後約7時間足らず。 ……まだ、肝心のチョコは出来てない。 一週間前からつかさに協力してもらって、勉強の合間をぬって練習してきたけど、やっぱりなかなか上手くいかなかった。 頭ではわかっているけど、実践出来るだけの技術が私にはない。 何で私はこんな料理出来ないんだろ……。 思わずため息がこぼれる。 やっぱりつかさに手伝って………って、それはダメ……。 ―――数時間前。 「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」 「自信はないわ……。けど、やらなくちゃ」 「でも、今まで一人でやったことないんだよ?」 「うん……。だけど、これは私自身の力で作らなきゃダメなのよ。完全に自己満足なんだけどね」 「お姉ちゃん……」 「こなたに思いを伝える物だから、私一人でやりたいの。わざわざ言ってくれたのにごめんね、つかさ」 「ううん、いいよ。私こそ、何にも考えないでごめんね」 「何言ってるのよ、つかさは私たちのこと、よく考えてくれてるわ。つかさとみゆきがいてくれなかったら、今私がこうしてチョコを作っていられることはなかったわよ」 「そ、そう言われると、照れるなぁ……」 「二人のためにも、こなたのためにも、そして私のためにも、頑張りたいの」 「えへへ、お姉ちゃんがお料理でこんな頑張ってるの初めてみたよ。こなちゃんも、きっと喜んでくれるよ」 「ば、バカ、からかってくる、の間違いでしょ!」 「あはは、お姉ちゃん最近可愛くなったよね」 「はぁッ!?突然何わけわかんないこと言ってるのよ!?」 「わけわかんなくないよ~。実際そうだしね~♪お姉ちゃん、頑張ってね!」 「ちょ、ちょっとつかさ、言いっぱなしのままいかないでよ……って、行っちゃったし。……時間もあんまりないし、作り始めなきゃ」 ―――そして今。 うう……静かに混ぜるってあれだけ言われてたのに、忘れるなんて……。 つかさといるときはできてたのに、私一人になったら何であんな慌てちゃったんだろ……。 ―――冷やす時間も考えたら、これが最後。 今度は、ミスしないように……。 「なんか凄いねぇ。受験真っ只中の人もいるのに、空気がいつもみたいに殺気じみてないよ」 こなたが、自分の教室に入る直前に言う。 「そうね。やっぱりみんな、多かれ少なかれ期待してるんじゃない?」 「かがみもその一人かな~?」 こなたが、ニヤニヤしながら私を見る。 「う、うるさい。そうゆうのは黙して語らないものよ」 「デレながらも否定しないかがみ萌え♪」 「へ、変なこと言うな」 相変わらずニヤニヤしながらこなたは私を見て言う。 「ね、かがみ」 「何?」 こなたが突然私に近づき、背伸びして耳元でそっと囁いた。 ――――――放課後、教室来てね。 「う、うん……」 私は顔が熱くなるのを感じながら、小さく頷いた。 満ちた月が空に浮かんでいた『あの』夜。 私とこなたの恋人としての関係がスタートした。 まだ私たちの関係を知る人は多くない。 つかさとみゆきとこなたのご両親とゆたかちゃん、そして私の家族。 私たちは、お父さん、お母さん、姉さんたちにちゃんと関係を伝えた。 最初はみんな驚いてたし、先のことを諭すようなことも言われた。 でも、私とこなたの意志の強さをだんだん理解してくれて、最後には私たち二人の関係を認めてくれるだけでなく、どんな状況でも私たちの味方になってくれるとまで言ってくれた。 あのときは嬉しくて、みんないるのに涙が止まらなかったっけ……。 こなたもこなたで、私をからかいながらも、目に涙を溜めてた。 やっぱり、一番身近な人が味方になってくれるのは、とっても心強い……。 ありがとう、お父さん、お母さん、姉さんたち―――。 日下部と峰岸にも伝えた。 「なんだよ、やっぱり柊はちびっこの妻だったのかよ」 と日下部言ってきたので、私はすかさず返す。 「こなたが私の嫁なのよ。勘違いしないでよね?」 「ひ、柊……」 私の言葉に、日下部は何故か呆然としている。 「ん~?どうかした?」 「ずいぶん惚気てるな……」 「それを言うなら、峰岸のほうがそうなんじゃない?」 彼氏いるし、ね。 「ひ、柊ちゃん……そんなことないよ」 「そのあやのとおんなじ顔してっぞ……」 「み、みさちゃんまで……」 「いや、それ以上かもしんねぇ……」 そうかしら……?そこまで言われるほどじゃないと思うんだけどね……。 私の感覚がおかしいだけ? 「でも柊ちゃん」 「何?」 峰岸は、私にむかってにっこり微笑みながら言った。 「今の柊ちゃん、とっても幸せそう。悩みなんて何にもないって顔してるよ」 「そうだな、いつかの時の暗い顔がウソみたいだぜ」 峰岸はあの頃から気づいていたみたいだからね……。 日下部も多分同じだったんだと思う……。 やっぱり、あの頃の私は他の人が見てもわかるくらい悩んでたんだ……。 ―――あの頃は、本当に辛かったわ……。 ―――でも今は、本当に幸せ……。 「よかったな、柊」 「おめでとう、柊ちゃん」 日下部は快活な、峰岸は柔らかな笑顔で私に言ってくれた。 「うん、ありがとう、二人とも」 私は自然と微笑みながら、その言葉を口にしていた。 キーンコーンカーンコーン――。 今日という日の出来事も、開幕はチャイムだった。 そのチャイムは、最後の授業の終了を告げるもの。 つまり―――――放課後になったことを知らせる音。 「こなた、お待たせ」 私はこなたに言われた通り、3年B組の教室にきていた。 3年のこの時期となると、みんなすぐ帰って家や予備校での勉強に勤しむため、 掃除当番に当たっていたとは言え、まだ放課後になって二十分も経ってない今でさえ、もう教室は静まりかえっていた。 「お、かがみん、待ってたよ~♪」 「ごめん、ちょっと掃除当番になってて……」 「いやいやぁ、ちょっとくらい遅いほうが周りに人もいないし、恥ずかしくなくっていいよ」 「ま、まぁそうね」 その言葉の後、少しの間静寂が流れる。 お互い、切り出すのに少しの勇気が必要……。 けど、必要な少しの勇気が、絞り出せなくて……。 先に口火をきったのはこなた。 「それでね、かがみ」 こなたは少し言いづらそうに、切り出した。 「う、うん……」 「実は、ね」 「うん……」 「つかさとみゆきさんにも、いてもらってるんだ」 「えええっ!?」 こなたの口から出た想定外の言葉に、教室を見渡すと私達の対角線につかさとみゆきがいた。 「あはは、お姉ちゃん、ごめんね……」 「そ、その、お邪魔でしたらすぐ私たちは出て行きますので……」 つかさとみゆきは、二人とも気まずそうな顔をしていた。 私には、こなたが何を考えて二人に残ってもらってるのかがわからなかった。 けれど、その問題の解はすぐにこなたに明かされた。 「今日は実はチョコを渡しあうだけの日にしたくないんだ」 「えっ……?」 こなたの顔は、いつになく真面目だった。 「私が前に言った、お互いの選んだ料理を交換するって話、覚えてる?」 漠然と記憶にある、単語の欠片。 それを1つずつ結び、少しずつ浮かび上がる、記憶の像。 導き出されたその内容。 「それって……」 「う、うん……」 顔が熱くなるのを感じる。こなたの顔もいつの間にか真っ赤になっていた。 「け、けけけっけっけ………」 恥ずかしさのあまり、思考回路はショート寸前な私は、舌が回らない。 「そう、結婚式……」 こなたは小さな声でそう言った。 「な、なななな、なななぁぁぁ!?」 ―――――ッ。 「で、でね、かがみ」 「ハウウゥ……しょーとシマシタデスゥ……」 「か、かがみ?大丈夫…・…?」 「はっ!?わ、私どうかしてた!?」 こなたが心配そうな顔で私の言葉に頷く。 「う、うん……」 「ごめん……。それで、なに?」 私の言葉に、こなたはその小さな口を開いた。 「今日、ここでやりたいんだ。想いが詰まった食べ物を交換して食べあって、そして誓いの言葉を言う。そんな簡単な、ネトゲの中でのと同じ結婚式だけど……私はそれがやりたいんだ。………もちろん、かがみがよければ、だけど……」 そっか……。 今まで私たち、付き合ってからこれといってお互いにその証となるようなこと、ほとんどしてなかったからね……。 やっぱり、少し不安なんだ……。 それにしても、お互いの選んだ食べ物を交換して食べる結婚式、か――――。 「ねぇ、こなた……」 「うん、分かってるよ……。ネトゲの中でのなんて、バカみたいかもしれないね。遠慮しなくていいよ、嫌だったらはっきり―――」 「そんな素敵な結婚式をあげるつもりだったなら、ちゃんと言っておいてよね!」 「えっ?」 こなたは、きょとんとしていた。 「い、良いの?ネトゲのやつのなんだよ?」 「当たり前じゃない。そんな素敵な式、私もやってみたいわ。たとえネトゲのでも、中身は人なんだから、現実のと変わらないわよ。それでたくさんの人が幸せになれるんだから、私たちも幸せになれるに決まってるじゃない」 「かがみ…………ありがと」 「お礼を言いたいのは私のほうよ。ありがとね、こなた」 私の言葉に照れたような顔を一瞬するこなた。でも、それを隠すようにいつもにすぐ戻った。 「ツンとデレを両方兼ね備えた言い方とは流石だね、かがみん♪」 「もう………茶化すな」 いい雰囲気なんだから、余計なこと言わなきゃいいのに、こいつはまったく……。 「それで、つかさとみゆきさんにも、私たちの結婚式を祝って欲しかったんだ」 「だから、二人に残ってもらったわけね」 「うん……」 ―――そっか、そうだよね……。 二人のおかげで私たちは今こうしていられる。 そんな二人には祝って欲しいよね……。 「つかさ、みゆき」 私は二人のほうを向く。 「私からも、お願いしてもらって良い?」 私の言葉に、つかさとみゆきは笑顔を咲かせた。 「うんっ!」 「はい、まかせてください!」 「二人とも、ありがとう」 私も笑顔で返した。 「それじゃ、みゆきさん、お願いしていいかな?」 「はい、任せてください」 こなたの言葉に、みゆきが笑顔のまま頷く。 「え、どうしたの?」 よくわからない中、みゆきはそそくさと本を用意し始めた。 「ふふ、かがみん、やるなら本格的に、がいいでしょ?」 「そ、そりゃそうだけど……」 「ってことで、みゆきさんに神父様役をお願いしたのだよ!」 「ええっ!?」 こなたの言葉に、本日何度目かの吃驚。 「調べてまとめた台本を用意して一昨日に聞いたんだけど、快く引き受けてくれて助かったよ~」 「本物の神父様とは程遠いものとは思いますが、全力を尽くしますね」 「ありがと、お願いね、みゆきさん」 私は二人のやり取りを見て、こっそりとこなたに聞く。 「こ、こんな大掛かりなお願いしちゃって、もし私が作ってなかったらどうするつもりだったのよ……」 受験も始まってるし、作ってない可能性も十分にありえたのに……。 「私にはかがみが作ってくれてるって、分かってたからね♪」 自信満々に言うこなた。 まったくどっからその自身が沸いてくるのやら、と思った矢先に浮かぶ、一人の顔。 「またつかさか………。まったくあの子は―――」 「いや、違うよ?」 「え?」 「かがみの手、丁度一週間前くらいから絆創膏がどんどん増えてるんだもん。練習してくれてるんだって、すぐわかったよ」 こなたが笑った。でも、それは表現するなら、ニヤリ。 「ありがとね、かがみん♪」 「ば、バカ……分かってたなら言いなさいよ……」 「え~?だって、ねぇ?」 うう……、ずっと隠れてやっていたのに筒抜けだったなんて……。すごい恥ずかしい……。 「ああ、もういいわよ!!早く始めるわよ!!」 「にひひ、照れ隠しするかがみは相変わらず可愛いねぇぇ~?」 「う、うるさい!みゆき、お願い!」 「はい、わかりました。では、お二人とも、こちらへ」 窓を背にしながら、優しく微笑んでいるみゆき。 ちょっと離れたところで、にっこりと見ているつかさ。 みゆきの方を向きながら、少し緊張しているこなた。 こなたの横に並んで、始まりの時を待ち続ける私。 「えー、コホン。それではここに、柊かがみと泉こなたの挙式を始めます」 ―――そして、式は開かれた。 窓には真っ青にもかかわらず、月が浮かんでいた。 「――――でも、消して忘れないでくたさい。夜空を見上げることを」 すらすらと止まることなく、みゆきの口から紡がれていく言葉。 「星々のひとつひとつが大いなる天空を形づくっているように、私たちひとりひとりにも必ず意味があることを。皆が出会いを大切に、互いを愛している限り、この地は祝福と加護を受けられるのです、と」 その言葉のひとつひとつが、とてもゲームの中でのものとは思えない程、素敵な表現ばかり。 「出会いは星の運命ですが、愛を成就させるためには試練が必要です。星の運命によって出会いし、この2人も、今宵その試練を受けます。ここに集った我らは、その証人となるのです」 今はその証人は、つかさとみゆきだけ。 でも、いつかきっと、もっとたくさんの人が私たちを祝福してくれる日が来てくれる。 「かがみ、こなた、向かい合ってください」 みゆきの言葉に、向かい合う私とこなた。 「こなた、今日はかがみの血肉となるものを持ってきましたか?」 「はい。ホワイトチョコを用意しました。私たちの関係が円満なように、鏡のように丸く、月のように真っ白なチョコです」 こなた……そこまで考えてくれて、作ってくれてたのね……。 って、エピソードまで言わなきゃいけないの!?聞いてないわよーーッ! 「よいでしょう」 みゆきはそう言って頷いた後、今度は私の方を向く。 「かがみ、今日はこなたの血肉となるものを持ってきましたか?」 ど、どうしよう……。何も思い浮かばないし……。 ああ、もういいわ!はっきりそのまま言ってやるわ!! 「はい。生チョコを作ってきました。一週間前からつかさと練習して、最後には私一人の力で作りました。ちょっと不恰好だけど、私の想いをこめました」 「よいでしょう」 さっきと同じように頷いてから、みゆきは再びこなたの方を見る。 「こなた、汝、この者を夫とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、かがみと共に」 「よいでしょう」 みゆきはこなた向かってうなずいた後に、また私のほうを見る 「かがみ、汝、この者を嫁とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、こなたと共に」 「よいでしょう」 みゆきは今度はまっすぐ私たち2人を見る。 「それでは、互いの願いを血肉とするため、交換した食物を口にしてください」 みゆきの言葉通り、私はこなたにチョコレートを差し出す。 こなたも、キレイに包装されてリボンまで可愛く結んであるチョコレートを私に差し出してくれた。 私はこなたに、こなたは私に。 それぞれの思いが、それぞれの手に。 こなたの渡してくれたチョコのリボンをとって包みを敗れないように剥がして中の箱を開けると、こなたの言葉通りの丸い大きなホワイトチョコが1つと小さめのが1つ、きれいに収まっていた。 さ、流石こなた、上手ね……。 こなたの方を見ると、こなたも私の作ったチョコを丁度見ているところだった。 ――早朝、今度はなんとか成功したけど、時間がなくて……ううん、言い訳しないわ。私が不器用で、セルクルから外した後のカットが上手くいかなく出来なくて……。 それに、専用の箱に入れて包むときも、少しきたなくなっちゃったし……。 あれじゃ、こなたに笑われるかも……。 そう思ったけど、こなたの私の作った不恰好なチョコを見る目は、嬉しそうだった。 「かがみ」 突然こなたが小声で話しかけてくる。 「何?」 私も小声で返す。 「今はそっちの小さいほうを食べてね。そうすれば、同じくらいの時間で食べ終われるから」 「わかったわ」 「それと……せーの、で食べよ?」 「ふふ、そうね、わかったわ」 私とこなた、2人で頷きあう。 「「せーの」」 私とこなたは同時に食べた。 口の中に、甘い味が広がる。 「美味しい……」 つい、そう言葉が漏れていた。 「かがみのも、美味しいよ」 「あ、ありがと……」 素直に美味しいっていわれると、結構恥ずかしいわね……。 そう思いながら、わたしもこなたもお互いのチョコを食べ終える。 それを確認してから、みゆきが再び口を開いた。 「こなたよ、我が後に続いて、誓いの言葉を述べなさい」 みゆきの言葉をこなたが、その後に私が繰り返して、神への宣誓をする。 ―――そして、いよいよ式はクライマックスへ。 「指輪交換、といきたいところですが、それは数年後の楽しみにしておきましょう」 流石に指輪交換までは出来ないわね……。 「月とうさぎのように、2人が末永く時を共にせんことを……」 みゆきがにっこりと微笑む。 「さあ、歩み始めるのです―――と言いたいところですが」 みゆきがそこでこほん、と式の幕開けのとき同様に演出で咳き込んだ。 「その前に、お互いに向き合い、心で誓約の言葉を交わして下さい」 「ちょ、ちょっとみゆきさん、それはカットって言ったじゃん!」 こなたが当然慌てたように言い出す。 「どうしたの?」 「カットするはずだった場所をみゆきさんが……」 「どうしましたか?式の最中ですよ。神父である、私の指示通りにしてください」 みゆきがいつも以上ににっこりと微笑む。 「えっと、何すればいいの?いまいちよくわからないんだけど……」 私はこなたに小声で聞く。 何故かこなたは顔を真っ赤にして俯いていた。 何気なくつかさのほうを見ると、つかさもさっき以上の笑みを浮かべている。 なんなの、いったい………? 私だけ理解できていないようだった。 「―――――」 「え?」 こなたが突然小さな声で何かを言った。けど、小さすぎて聞き取れなかった。 今度は聞き逃さないように、と注意深くこなたを見る。 そしてこなたの口から、本日何度目かわからない程の吃驚単語が飛び出た。 「キス……」 「き、きキきき、キきキ!?」 「お姉ちゃん、結婚式なんだから当たり前だよ~」 そ、そりゃ、結婚式っていったら確かにそうかもだけど、でも……!! …………まだ1回もしたことないし…………。 「か、かがみ……どうする……?」 「どうするもこうするもないわよ……」 小声で話す私とこなた。 「お姉ちゃん、こなちゃん、頑張って!」 応援してくるつかさ。 「ふふ」 にっこりと微笑むみゆき。 こなたとのキス。 言われてみれば、一回もしていなかった。 ――――――――。 「そうね、こなた、せっかくの結婚式なんだから……」 「かがみ……?」 「しよっか……?」 「それ、すっごくいやらしく聞こえるよ」 「ば、バカ、キスよ、キス」 「わ、わかってるよ」 「い、いい?」 「う、うん……」 ああ、自分で言い出したのに、やっぱり意識しちゃう……。 少しずつ近づく、私とこなた。 その距離に比例して鼓動が、いつもよりもさらに速く鳴る。 こなたの顔が、もうほとんど目の前。 曖昧だけど、3センチくらい……。 こなたが瞳を閉じる。 私も、同じように瞳を閉じた。 そして、距離が―――――――――0になった。 お互いから感じられる、お互いの想いが詰まった味。 ファーストキスはレモンの味って聞くけど、私たちのそれは、とっても甘いチョコの味だった。 少しして、名残惜しい気持ちがありながらも、私とこなたの間に再び距離が出来た。 こなたの顔を見ると、真っ赤な顔で照れながら私を見つめていた。 多分、私もおんなじような顔、してるんだろうな……。 「おめでとうございます、泉さん、かがみさん」 「お姉ちゃん、こなちゃん、おめでと~~!」 つかさとみゆきが、拍手をして祝ってくれる。 「あ、ありがとう、二人とも……」 私は、恥ずかしい気持ちをなんとかこらえながら、2人にお礼をする。 「ありがと……」 こなたも聞こえないくらいの小声でそう言った。 「さあ、歩み始めるのです」 私とこなたは、自然とお互いの手を繋ぐ。 「祝福に満ちた、第一歩を………」 私たちは何も言わず、けれど同時に歩き出した。 「おめでとう~~、二人とも!」 つかさはまた私たちに祝いの言葉をくれる。 「お二人とも、本当におめでとうございます」 みゆきもいつもの口調に戻って、私たちを祝福してくれた。 「かがみん」 「どうしたの?」 「いつか本当の結婚式があげられる時はさ、私、純白のウェディングドレスが着たいな。かがみは白のタキシードを着てね」 「ふふ、いいわね。そうしよっか。そのときはちゃんと、指輪の交換もね」 「うん。つかさとみゆきさんにも、また祝ってもらわなきゃね」 「そうね。きっとつかさはラッパみたいのを吹いて、みゆきは紙ふぶきを撒いて祝福してくれるわよ。天使みたいにね」 「あはは、かがみの言ってる通りになる気がするよ」 私たちはゆっくりと並んで歩きつづける。 「ねぇ、かがみ、それとさ」 「ん、こなた?」 こなたは私のほうを向いて、顔を赤くしたまま笑顔を向ける。 「これからもよろしくね、ステキな旦那さま」 私もこなたに笑顔で返す。 「うん、この先もずっと一緒よ、カワイイお嫁さん」 ――時はうつるもの。 ――その先にある私たちの未来にうつるもの。 それは―――――『11』。 私とこなたが一緒に並んでお互いを助け合って生きていける、そんな『11』の世界。                                    Fin... **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - これ見たっけぇぇぇぇぇっ!? -- 猫好きカービィ (2021-01-24 18:36:07) - いやいや、俺はなあ、2020年じゃあああ!!! -- 猫好きカービィ (2020-02-16 11:47:12) - こなかがに幸あれ -- 名無しさん (2017-07-09 18:22:24) - 2017…だと… &br()みwikiさんすげぇ -- 名無しさん (2017-03-27 09:35:49) - いや....俺は2014年だ!! &br()感動した!! -- こなみん (2014-08-17 02:15:41) - とっても感動する話でした! &br()これからも、こういう作品を作り続けてください &br()応援しています! &br()まぁ・・・2013年じゃ遅い気もするけど(-。-; -- チョココロネ (2013-11-16 22:38:53) - 毎度おもうが、みwikiさん結構主要キャラになってないッスか? -- 名無しさん (2010-08-14 01:30:28) - 最高です…!! 本当にこうなれればいいね -- 名無し (2010-06-10 01:56:27) - なんという素晴らしいハッピーエンド…感動しました -- 名無し (2010-06-02 00:11:15) - 成る程これがあのメガミのピンナップのイラストに繋がって行くと -- 名無し (2010-05-18 17:48:20) - あれ、なぜだか目から汗がダラダラ出てくるぞ…。 -- 名無し (2010-05-05 19:57:55) - 同じく全俺が泣いた -- 白夜 (2009-12-16 23:55:45) - なんだろう…さっきから頬が湿っぽい…PCの画面も妙にぼやけてるぞ? -- こなかがは正義ッ (2009-11-13 01:02:19) - 全俺と表情筋ですら泣いた -- 名無しさん (2009-11-11 23:00:48) - 全俺が泣いた -- 名無しさん (2009-03-11 18:22:50) - 素敵なSSでした GJ☆ -- ポーター (2008-10-05 22:56:45) - 感動しました -- 名無しさん (2008-10-03 21:37:01) - 泣いた -- 名無しさん (2008-09-01 00:11:38) - GJ &br()本当に将来こうなるといいね -- 名無しさん (2008-03-17 16:47:12)
―――2月14日。 恋心を抱く女の子が、意中の相手にチョコレートを送る日。 それが今日、聖・バレンタインデー。 ……自分で言うのも恥ずかしいけれど、私もその一人で……。 とある夜に、こなたが『俺の嫁』だからよ、と言った私だけど、女の子として付き合ってる相手に贈りたいのよ、やっぱり……。 それも……できれば、手作りチョコ。 工夫とか出来ないし、市販のより味は悪くなっちゃう……と思う。 でも、愛情をお金で賄うのは無理よ! ……きっと……。 私は、時計を見た。 短針は0と1の間、長針は3を指している。窓から見える外の風景は、黒一色。 つまり、AM0:15 学校の準備をしなきゃいけない時間まで、後約7時間足らず。 ……まだ、肝心のチョコは出来てない。 一週間前からつかさに協力してもらって、勉強の合間をぬって練習してきたけど、やっぱりなかなか上手くいかなかった。 頭ではわかっているけど、実践出来るだけの技術が私にはない。 何で私はこんな料理出来ないんだろ……。 思わずため息がこぼれる。 やっぱりつかさに手伝って………って、それはダメ……。 ―――数時間前。 「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」 「自信はないわ……。けど、やらなくちゃ」 「でも、今まで一人でやったことないんだよ?」 「うん……。だけど、これは私自身の力で作らなきゃダメなのよ。完全に自己満足なんだけどね」 「お姉ちゃん……」 「こなたに思いを伝える物だから、私一人でやりたいの。わざわざ言ってくれたのにごめんね、つかさ」 「ううん、いいよ。私こそ、何にも考えないでごめんね」 「何言ってるのよ、つかさは私たちのこと、よく考えてくれてるわ。つかさとみゆきがいてくれなかったら、今私がこうしてチョコを作っていられることはなかったわよ」 「そ、そう言われると、照れるなぁ……」 「二人のためにも、こなたのためにも、そして私のためにも、頑張りたいの」 「えへへ、お姉ちゃんがお料理でこんな頑張ってるの初めてみたよ。こなちゃんも、きっと喜んでくれるよ」 「ば、バカ、からかってくる、の間違いでしょ!」 「あはは、お姉ちゃん最近可愛くなったよね」 「はぁッ!?突然何わけわかんないこと言ってるのよ!?」 「わけわかんなくないよ~。実際そうだしね~♪お姉ちゃん、頑張ってね!」 「ちょ、ちょっとつかさ、言いっぱなしのままいかないでよ……って、行っちゃったし。……時間もあんまりないし、作り始めなきゃ」 ―――そして今。 うう……静かに混ぜるってあれだけ言われてたのに、忘れるなんて……。 つかさといるときはできてたのに、私一人になったら何であんな慌てちゃったんだろ……。 ―――冷やす時間も考えたら、これが最後。 今度は、ミスしないように……。 「なんか凄いねぇ。受験真っ只中の人もいるのに、空気がいつもみたいに殺気じみてないよ」 こなたが、自分の教室に入る直前に言う。 「そうね。やっぱりみんな、多かれ少なかれ期待してるんじゃない?」 「かがみもその一人かな~?」 こなたが、ニヤニヤしながら私を見る。 「う、うるさい。そうゆうのは黙して語らないものよ」 「デレながらも否定しないかがみ萌え♪」 「へ、変なこと言うな」 相変わらずニヤニヤしながらこなたは私を見て言う。 「ね、かがみ」 「何?」 こなたが突然私に近づき、背伸びして耳元でそっと囁いた。 ――――――放課後、教室来てね。 「う、うん……」 私は顔が熱くなるのを感じながら、小さく頷いた。 満ちた月が空に浮かんでいた『あの』夜。 私とこなたの恋人としての関係がスタートした。 まだ私たちの関係を知る人は多くない。 つかさとみゆきとこなたのご両親とゆたかちゃん、そして私の家族。 私たちは、お父さん、お母さん、姉さんたちにちゃんと関係を伝えた。 最初はみんな驚いてたし、先のことを諭すようなことも言われた。 でも、私とこなたの意志の強さをだんだん理解してくれて、最後には私たち二人の関係を認めてくれるだけでなく、どんな状況でも私たちの味方になってくれるとまで言ってくれた。 あのときは嬉しくて、みんないるのに涙が止まらなかったっけ……。 こなたもこなたで、私をからかいながらも、目に涙を溜めてた。 やっぱり、一番身近な人が味方になってくれるのは、とっても心強い……。 ありがとう、お父さん、お母さん、姉さんたち―――。 日下部と峰岸にも伝えた。 「なんだよ、やっぱり柊はちびっこの妻だったのかよ」 と日下部言ってきたので、私はすかさず返す。 「こなたが私の嫁なのよ。勘違いしないでよね?」 「ひ、柊……」 私の言葉に、日下部は何故か呆然としている。 「ん~?どうかした?」 「ずいぶん惚気てるな……」 「それを言うなら、峰岸のほうがそうなんじゃない?」 彼氏いるし、ね。 「ひ、柊ちゃん……そんなことないよ」 「そのあやのとおんなじ顔してっぞ……」 「み、みさちゃんまで……」 「いや、それ以上かもしんねぇ……」 そうかしら……?そこまで言われるほどじゃないと思うんだけどね……。 私の感覚がおかしいだけ? 「でも柊ちゃん」 「何?」 峰岸は、私にむかってにっこり微笑みながら言った。 「今の柊ちゃん、とっても幸せそう。悩みなんて何にもないって顔してるよ」 「そうだな、いつかの時の暗い顔がウソみたいだぜ」 峰岸はあの頃から気づいていたみたいだからね……。 日下部も多分同じだったんだと思う……。 やっぱり、あの頃の私は他の人が見てもわかるくらい悩んでたんだ……。 ―――あの頃は、本当に辛かったわ……。 ―――でも今は、本当に幸せ……。 「よかったな、柊」 「おめでとう、柊ちゃん」 日下部は快活な、峰岸は柔らかな笑顔で私に言ってくれた。 「うん、ありがとう、二人とも」 私は自然と微笑みながら、その言葉を口にしていた。 キーンコーンカーンコーン――。 今日という日の出来事も、開幕はチャイムだった。 そのチャイムは、最後の授業の終了を告げるもの。 つまり―――――放課後になったことを知らせる音。 「こなた、お待たせ」 私はこなたに言われた通り、3年B組の教室にきていた。 3年のこの時期となると、みんなすぐ帰って家や予備校での勉強に勤しむため、 掃除当番に当たっていたとは言え、まだ放課後になって二十分も経ってない今でさえ、もう教室は静まりかえっていた。 「お、かがみん、待ってたよ~♪」 「ごめん、ちょっと掃除当番になってて……」 「いやいやぁ、ちょっとくらい遅いほうが周りに人もいないし、恥ずかしくなくっていいよ」 「ま、まぁそうね」 その言葉の後、少しの間静寂が流れる。 お互い、切り出すのに少しの勇気が必要……。 けど、必要な少しの勇気が、絞り出せなくて……。 先に口火をきったのはこなた。 「それでね、かがみ」 こなたは少し言いづらそうに、切り出した。 「う、うん……」 「実は、ね」 「うん……」 「つかさとみゆきさんにも、いてもらってるんだ」 「えええっ!?」 こなたの口から出た想定外の言葉に、教室を見渡すと私達の対角線につかさとみゆきがいた。 「あはは、お姉ちゃん、ごめんね……」 「そ、その、お邪魔でしたらすぐ私たちは出て行きますので……」 つかさとみゆきは、二人とも気まずそうな顔をしていた。 私には、こなたが何を考えて二人に残ってもらってるのかがわからなかった。 けれど、その問題の解はすぐにこなたに明かされた。 「今日は実はチョコを渡しあうだけの日にしたくないんだ」 「えっ……?」 こなたの顔は、いつになく真面目だった。 「私が前に言った、お互いの選んだ料理を交換するって話、覚えてる?」 漠然と記憶にある、単語の欠片。 それを1つずつ結び、少しずつ浮かび上がる、記憶の像。 導き出されたその内容。 「それって……」 「う、うん……」 顔が熱くなるのを感じる。こなたの顔もいつの間にか真っ赤になっていた。 「け、けけけっけっけ………」 恥ずかしさのあまり、思考回路はショート寸前な私は、舌が回らない。 「そう、結婚式……」 こなたは小さな声でそう言った。 「な、なななな、なななぁぁぁ!?」 ―――――ッ。 「で、でね、かがみ」 「ハウウゥ……しょーとシマシタデスゥ……」 「か、かがみ?大丈夫…・…?」 「はっ!?わ、私どうかしてた!?」 こなたが心配そうな顔で私の言葉に頷く。 「う、うん……」 「ごめん……。それで、なに?」 私の言葉に、こなたはその小さな口を開いた。 「今日、ここでやりたいんだ。想いが詰まった食べ物を交換して食べあって、そして誓いの言葉を言う。そんな簡単な、ネトゲの中でのと同じ結婚式だけど……私はそれがやりたいんだ。………もちろん、かがみがよければ、だけど……」 そっか……。 今まで私たち、付き合ってからこれといってお互いにその証となるようなこと、ほとんどしてなかったからね……。 やっぱり、少し不安なんだ……。 それにしても、お互いの選んだ食べ物を交換して食べる結婚式、か――――。 「ねぇ、こなた……」 「うん、分かってるよ……。ネトゲの中でのなんて、バカみたいかもしれないね。遠慮しなくていいよ、嫌だったらはっきり―――」 「そんな素敵な結婚式をあげるつもりだったなら、ちゃんと言っておいてよね!」 「えっ?」 こなたは、きょとんとしていた。 「い、良いの?ネトゲのやつのなんだよ?」 「当たり前じゃない。そんな素敵な式、私もやってみたいわ。たとえネトゲのでも、中身は人なんだから、現実のと変わらないわよ。それでたくさんの人が幸せになれるんだから、私たちも幸せになれるに決まってるじゃない」 「かがみ…………ありがと」 「お礼を言いたいのは私のほうよ。ありがとね、こなた」 私の言葉に照れたような顔を一瞬するこなた。でも、それを隠すようにいつもにすぐ戻った。 「ツンとデレを両方兼ね備えた言い方とは流石だね、かがみん♪」 「もう………茶化すな」 いい雰囲気なんだから、余計なこと言わなきゃいいのに、こいつはまったく……。 「それで、つかさとみゆきさんにも、私たちの結婚式を祝って欲しかったんだ」 「だから、二人に残ってもらったわけね」 「うん……」 ―――そっか、そうだよね……。 二人のおかげで私たちは今こうしていられる。 そんな二人には祝って欲しいよね……。 「つかさ、みゆき」 私は二人のほうを向く。 「私からも、お願いしてもらって良い?」 私の言葉に、つかさとみゆきは笑顔を咲かせた。 「うんっ!」 「はい、まかせてください!」 「二人とも、ありがとう」 私も笑顔で返した。 「それじゃ、みゆきさん、お願いしていいかな?」 「はい、任せてください」 こなたの言葉に、みゆきが笑顔のまま頷く。 「え、どうしたの?」 よくわからない中、みゆきはそそくさと本を用意し始めた。 「ふふ、かがみん、やるなら本格的に、がいいでしょ?」 「そ、そりゃそうだけど……」 「ってことで、みゆきさんに神父様役をお願いしたのだよ!」 「ええっ!?」 こなたの言葉に、本日何度目かの吃驚。 「調べてまとめた台本を用意して一昨日に聞いたんだけど、快く引き受けてくれて助かったよ~」 「本物の神父様とは程遠いものとは思いますが、全力を尽くしますね」 「ありがと、お願いね、みゆきさん」 私は二人のやり取りを見て、こっそりとこなたに聞く。 「こ、こんな大掛かりなお願いしちゃって、もし私が作ってなかったらどうするつもりだったのよ……」 受験も始まってるし、作ってない可能性も十分にありえたのに……。 「私にはかがみが作ってくれてるって、分かってたからね♪」 自信満々に言うこなた。 まったくどっからその自身が沸いてくるのやら、と思った矢先に浮かぶ、一人の顔。 「またつかさか………。まったくあの子は―――」 「いや、違うよ?」 「え?」 「かがみの手、丁度一週間前くらいから絆創膏がどんどん増えてるんだもん。練習してくれてるんだって、すぐわかったよ」 こなたが笑った。でも、それは表現するなら、ニヤリ。 「ありがとね、かがみん♪」 「ば、バカ……分かってたなら言いなさいよ……」 「え~?だって、ねぇ?」 うう……、ずっと隠れてやっていたのに筒抜けだったなんて……。すごい恥ずかしい……。 「ああ、もういいわよ!!早く始めるわよ!!」 「にひひ、照れ隠しするかがみは相変わらず可愛いねぇぇ~?」 「う、うるさい!みゆき、お願い!」 「はい、わかりました。では、お二人とも、こちらへ」 窓を背にしながら、優しく微笑んでいるみゆき。 ちょっと離れたところで、にっこりと見ているつかさ。 みゆきの方を向きながら、少し緊張しているこなた。 こなたの横に並んで、始まりの時を待ち続ける私。 「えー、コホン。それではここに、柊かがみと泉こなたの挙式を始めます」 ―――そして、式は開かれた。 窓には真っ青にもかかわらず、月が浮かんでいた。 「――――でも、消して忘れないでくたさい。夜空を見上げることを」 すらすらと止まることなく、みゆきの口から紡がれていく言葉。 「星々のひとつひとつが大いなる天空を形づくっているように、私たちひとりひとりにも必ず意味があることを。皆が出会いを大切に、互いを愛している限り、この地は祝福と加護を受けられるのです、と」 その言葉のひとつひとつが、とてもゲームの中でのものとは思えない程、素敵な表現ばかり。 「出会いは星の運命ですが、愛を成就させるためには試練が必要です。星の運命によって出会いし、この2人も、今宵その試練を受けます。ここに集った我らは、その証人となるのです」 今はその証人は、つかさとみゆきだけ。 でも、いつかきっと、もっとたくさんの人が私たちを祝福してくれる日が来てくれる。 「かがみ、こなた、向かい合ってください」 みゆきの言葉に、向かい合う私とこなた。 「こなた、今日はかがみの血肉となるものを持ってきましたか?」 「はい。ホワイトチョコを用意しました。私たちの関係が円満なように、鏡のように丸く、月のように真っ白なチョコです」 こなた……そこまで考えてくれて、作ってくれてたのね……。 って、エピソードまで言わなきゃいけないの!?聞いてないわよーーッ! 「よいでしょう」 みゆきはそう言って頷いた後、今度は私の方を向く。 「かがみ、今日はこなたの血肉となるものを持ってきましたか?」 ど、どうしよう……。何も思い浮かばないし……。 ああ、もういいわ!はっきりそのまま言ってやるわ!! 「はい。生チョコを作ってきました。一週間前からつかさと練習して、最後には私一人の力で作りました。ちょっと不恰好だけど、私の想いをこめました」 「よいでしょう」 さっきと同じように頷いてから、みゆきは再びこなたの方を見る。 「こなた、汝、この者を夫とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、かがみと共に」 「よいでしょう」 みゆきはこなた向かってうなずいた後に、また私のほうを見る 「かがみ、汝、この者を嫁とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、こなたと共に」 「よいでしょう」 みゆきは今度はまっすぐ私たち2人を見る。 「それでは、互いの願いを血肉とするため、交換した食物を口にしてください」 みゆきの言葉通り、私はこなたにチョコレートを差し出す。 こなたも、キレイに包装されてリボンまで可愛く結んであるチョコレートを私に差し出してくれた。 私はこなたに、こなたは私に。 それぞれの思いが、それぞれの手に。 こなたの渡してくれたチョコのリボンをとって包みを敗れないように剥がして中の箱を開けると、こなたの言葉通りの丸い大きなホワイトチョコが1つと小さめのが1つ、きれいに収まっていた。 さ、流石こなた、上手ね……。 こなたの方を見ると、こなたも私の作ったチョコを丁度見ているところだった。 ――早朝、今度はなんとか成功したけど、時間がなくて……ううん、言い訳しないわ。私が不器用で、セルクルから外した後のカットが上手くいかなく出来なくて……。 それに、専用の箱に入れて包むときも、少しきたなくなっちゃったし……。 あれじゃ、こなたに笑われるかも……。 そう思ったけど、こなたの私の作った不恰好なチョコを見る目は、嬉しそうだった。 「かがみ」 突然こなたが小声で話しかけてくる。 「何?」 私も小声で返す。 「今はそっちの小さいほうを食べてね。そうすれば、同じくらいの時間で食べ終われるから」 「わかったわ」 「それと……せーの、で食べよ?」 「ふふ、そうね、わかったわ」 私とこなた、2人で頷きあう。 「「せーの」」 私とこなたは同時に食べた。 口の中に、甘い味が広がる。 「美味しい……」 つい、そう言葉が漏れていた。 「かがみのも、美味しいよ」 「あ、ありがと……」 素直に美味しいっていわれると、結構恥ずかしいわね……。 そう思いながら、わたしもこなたもお互いのチョコを食べ終える。 それを確認してから、みゆきが再び口を開いた。 「こなたよ、我が後に続いて、誓いの言葉を述べなさい」 みゆきの言葉をこなたが、その後に私が繰り返して、神への宣誓をする。 ―――そして、いよいよ式はクライマックスへ。 「指輪交換、といきたいところですが、それは数年後の楽しみにしておきましょう」 流石に指輪交換までは出来ないわね……。 「月とうさぎのように、2人が末永く時を共にせんことを……」 みゆきがにっこりと微笑む。 「さあ、歩み始めるのです―――と言いたいところですが」 みゆきがそこでこほん、と式の幕開けのとき同様に演出で咳き込んだ。 「その前に、お互いに向き合い、心で誓約の言葉を交わして下さい」 「ちょ、ちょっとみゆきさん、それはカットって言ったじゃん!」 こなたが当然慌てたように言い出す。 「どうしたの?」 「カットするはずだった場所をみゆきさんが……」 「どうしましたか?式の最中ですよ。神父である、私の指示通りにしてください」 みゆきがいつも以上ににっこりと微笑む。 「えっと、何すればいいの?いまいちよくわからないんだけど……」 私はこなたに小声で聞く。 何故かこなたは顔を真っ赤にして俯いていた。 何気なくつかさのほうを見ると、つかさもさっき以上の笑みを浮かべている。 なんなの、いったい………? 私だけ理解できていないようだった。 「―――――」 「え?」 こなたが突然小さな声で何かを言った。けど、小さすぎて聞き取れなかった。 今度は聞き逃さないように、と注意深くこなたを見る。 そしてこなたの口から、本日何度目かわからない程の吃驚単語が飛び出た。 「キス……」 「き、きキきき、キきキ!?」 「お姉ちゃん、結婚式なんだから当たり前だよ~」 そ、そりゃ、結婚式っていったら確かにそうかもだけど、でも……!! …………まだ1回もしたことないし…………。 「か、かがみ……どうする……?」 「どうするもこうするもないわよ……」 小声で話す私とこなた。 「お姉ちゃん、こなちゃん、頑張って!」 応援してくるつかさ。 「ふふ」 にっこりと微笑むみゆき。 こなたとのキス。 言われてみれば、一回もしていなかった。 ――――――――。 「そうね、こなた、せっかくの結婚式なんだから……」 「かがみ……?」 「しよっか……?」 「それ、すっごくいやらしく聞こえるよ」 「ば、バカ、キスよ、キス」 「わ、わかってるよ」 「い、いい?」 「う、うん……」 ああ、自分で言い出したのに、やっぱり意識しちゃう……。 少しずつ近づく、私とこなた。 その距離に比例して鼓動が、いつもよりもさらに速く鳴る。 こなたの顔が、もうほとんど目の前。 曖昧だけど、3センチくらい……。 こなたが瞳を閉じる。 私も、同じように瞳を閉じた。 そして、距離が―――――――――0になった。 お互いから感じられる、お互いの想いが詰まった味。 ファーストキスはレモンの味って聞くけど、私たちのそれは、とっても甘いチョコの味だった。 少しして、名残惜しい気持ちがありながらも、私とこなたの間に再び距離が出来た。 こなたの顔を見ると、真っ赤な顔で照れながら私を見つめていた。 多分、私もおんなじような顔、してるんだろうな……。 「おめでとうございます、泉さん、かがみさん」 「お姉ちゃん、こなちゃん、おめでと~~!」 つかさとみゆきが、拍手をして祝ってくれる。 「あ、ありがとう、二人とも……」 私は、恥ずかしい気持ちをなんとかこらえながら、2人にお礼をする。 「ありがと……」 こなたも聞こえないくらいの小声でそう言った。 「さあ、歩み始めるのです」 私とこなたは、自然とお互いの手を繋ぐ。 「祝福に満ちた、第一歩を………」 私たちは何も言わず、けれど同時に歩き出した。 「おめでとう~~、二人とも!」 つかさはまた私たちに祝いの言葉をくれる。 「お二人とも、本当におめでとうございます」 みゆきもいつもの口調に戻って、私たちを祝福してくれた。 「かがみん」 「どうしたの?」 「いつか本当の結婚式があげられる時はさ、私、純白のウェディングドレスが着たいな。かがみは白のタキシードを着てね」 「ふふ、いいわね。そうしよっか。そのときはちゃんと、指輪の交換もね」 「うん。つかさとみゆきさんにも、また祝ってもらわなきゃね」 「そうね。きっとつかさはラッパみたいのを吹いて、みゆきは紙ふぶきを撒いて祝福してくれるわよ。天使みたいにね」 「あはは、かがみの言ってる通りになる気がするよ」 私たちはゆっくりと並んで歩きつづける。 「ねぇ、かがみ、それとさ」 「ん、こなた?」 こなたは私のほうを向いて、顔を赤くしたまま笑顔を向ける。 「これからもよろしくね、ステキな旦那さま」 私もこなたに笑顔で返す。 「うん、この先もずっと一緒よ、カワイイお嫁さん」 ――時はうつるもの。 ――その先にある私たちの未来にうつるもの。 それは―――――『11』。 私とこなたが一緒に並んでお互いを助け合って生きていける、そんな『11』の世界。                                    Fin... **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 2023年になった今でも素敵な作品出会えて良かったです。 &br()GJ!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-02 21:47:17) - これ見たっけぇぇぇぇぇっ!? -- 猫好きカービィ (2021-01-24 18:36:07) - いやいや、俺はなあ、2020年じゃあああ!!! -- 猫好きカービィ (2020-02-16 11:47:12) - こなかがに幸あれ -- 名無しさん (2017-07-09 18:22:24) - 2017…だと… &br()みwikiさんすげぇ -- 名無しさん (2017-03-27 09:35:49) - いや....俺は2014年だ!! &br()感動した!! -- こなみん (2014-08-17 02:15:41) - とっても感動する話でした! &br()これからも、こういう作品を作り続けてください &br()応援しています! &br()まぁ・・・2013年じゃ遅い気もするけど(-。-; -- チョココロネ (2013-11-16 22:38:53) - 毎度おもうが、みwikiさん結構主要キャラになってないッスか? -- 名無しさん (2010-08-14 01:30:28) - 最高です…!! 本当にこうなれればいいね -- 名無し (2010-06-10 01:56:27) - なんという素晴らしいハッピーエンド…感動しました -- 名無し (2010-06-02 00:11:15) - 成る程これがあのメガミのピンナップのイラストに繋がって行くと -- 名無し (2010-05-18 17:48:20) - あれ、なぜだか目から汗がダラダラ出てくるぞ…。 -- 名無し (2010-05-05 19:57:55) - 同じく全俺が泣いた -- 白夜 (2009-12-16 23:55:45) - なんだろう…さっきから頬が湿っぽい…PCの画面も妙にぼやけてるぞ? -- こなかがは正義ッ (2009-11-13 01:02:19) - 全俺と表情筋ですら泣いた -- 名無しさん (2009-11-11 23:00:48) - 全俺が泣いた -- 名無しさん (2009-03-11 18:22:50) - 素敵なSSでした GJ☆ -- ポーター (2008-10-05 22:56:45) - 感動しました -- 名無しさん (2008-10-03 21:37:01) - 泣いた -- 名無しさん (2008-09-01 00:11:38) - GJ &br()本当に将来こうなるといいね -- 名無しさん (2008-03-17 16:47:12)

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