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3話 目の合わせ方」(2023/01/04 (水) 16:24:06) の最新版変更点

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「ホラ行くぞ!忘れ物ない?生徒手帳は?」 「あ、忘れた。」 「ったく。早くしなさいよ。」 「おはよー、お姉ちゃん。こなちゃんは?」 「おはよ、つかさ。こなたは生徒手帳取りに行ってるわ。」 「あ、いっけない。生徒手帳忘れてた!」 「・・・どいつもこいつも全く。」 眠い。結局寝たのは3時間くらい。なんだかんだでこなたの宿題が終わるまで起きてた。 今日から陵桜学園での3年間が始まる。なのにこの眠さ、だるさ、やる気なさ。幸先悪すぎ。 「ごめん、かがみ。生徒手帳、制服のポケットに入ってた。」 「お待たせ!生徒手帳、バックの中に入ってたの忘れてたよ。」 「・・・」 手のかかる妹がもう1人増えたような感覚。本当にこんな日が新学園生活の第一歩でいいのだろうか。 「あんた達ね・・・まぁ、いいや。早く行かないとバスに遅れるわよ。」 「そだね。」 「あ、待ってよお姉ちゃん、こなちゃん!」 相変わらず、こなたは無愛想。昨日、ちょっとは距離が縮まったと思ったのは、勘違いだったのかな? 「所でつかさ。こなちゃんって私の事?」 「そーだよ。こなた、だからこなちゃん!」 「やけに単純だな。」 「だってあだ名があった方が良くない?こなちゃんは?」 「んー、変なのじゃなかったらいいんじゃない?」 「じゃ、これからこなちゃん、って呼ぶね。」 「うん。」 つかさに対しても愛想がいいとは思えない。これがこいつのデフォなのか? いつになったら、こなたは私に慣れてくれるのかな?いつになったら、心を開くのかな? ちょっとした、高揚感。メランコリーな気分を吹き飛ばす。さぁ、楽しい1日の始まりだ。 「ホラ、早く行くわよ!」 変わりゆく普通。早く、この状況が普通になりますように。 天は青い。見事な快晴。私達の隣を駆け抜ける春風。甘い桜の香り。 いい1日になりそうだ。 ‐‐‐‐ 「あ、クラスが発表になってるよ。お姉ちゃんとこなちゃんと同じクラスがいいなぁ。」 中学校とは全く異なった校舎内、匂い、雰囲気。やっと実感できた私の成長。 1年生廊下の前に張り出されるクラス編成。目に写るのは何百というたくさんの名前。 「あ、こなちゃんと私同じクラスだー!1年間、ヨロシクね。」 「ヨロシク、つかさ。あれ?かがみは?」 やっとの思いで見つけた『柊かがみ』の傍には、『泉こなた』と『柊つかさ』はなかった。 「私はあんたの隣のクラスよ。ま、これであんたとつかさが忘れ物した時の頼れる人が出来たわけだ。」 「うっ・・・お姉ちゃんエスパー?」 「やるな、かがみ。」 「あんた達の考えなんかお見通しよ。じゃ、そろそろ私はクラスに行くね。」 「じゃ、私達もいこっか、こなちゃん。」 「うん、じゃ、またねかがみ。」 本当に不思議な奴だ。無愛想だと思ったら、今は微笑みながら私に手を振る。 正直、二人と同じクラスになれなくて、残念っていう気持ちもある。そんな自分も不思議だ。 そういえば、私の名前の近くには見慣れた2つの名前があった。 「おーっす、柊ぃ。久しぶりだなー!」 噂をすればなんとやら。中学時代に聞き慣れた友達の声。 黒と茶色のマーブル。にかっと笑った時にちらつく八重歯。子供みたいな笑顔。よく響く大きな声。 「おはよう、柊ちゃん。卒業式以来ね。」 爽やかなベージュ。さらさらとなびく髪。ヘアバンドで上げた前髪。優しく私の耳をくすぐる声。 「おー、日下部!峰岸!久しぶりね。もしかして・・・また同じクラス?」 「そーなんだよ。3年連続だな。また今年もよろしくなー。」 「あんたは相変わらずうるさいぐらい元気だな。ま、ヨロシク。」 「そういえば、さっき柊ちゃんと一緒にいた内の一人は妹ちゃんよね?あと一人は誰?」 あと一人。それは私の奇妙な同居人かつ新しい友達。でも、今のあいつの態度は本当に友達なのかな? 「それがさー、話すと長くなるのよね。」 ‐‐‐‐ 入学式。長い校長講話。先輩方のあいさつ。そして始業式。ちょっと退屈なのもお約束。 そんな行事も終わり、今は初めての昼休み。私の傍には日下部と峰岸。 「へー。こーいうのって不思議な巡り合わせって言うんじゃね?」 「不思議なのはあいつの方よ。何考えてるか分かんないし、あんまり話し掛けてこないし。」 「恥ずかしがり屋なんじゃないかな?」 「それか柊にびびってるとか!?」 「失礼ねっ!何もしてないわよ。」 中学から変わらないこの風景。変わったのは私の周囲だけ。 日下部と峰岸にこなたの事を話してみたけれど、考えている事は私と大して変わらない。 「でも柊ちゃん、よく知らない人を見て面白そうなんて思ったね。」 「度胸あるよなー。」 「んー。そこが自分でも不思議なのよね。」 取り敢えず、面白そう、とは言った。惹かれた、なんて恥ずかしくて言えなかった。 惹かれる。それは、男女間だけだと思ってた。それに、そんな感情は生まれてまだ1回もなかった。 だからこそ、信じられないからこそ、信じる気になったのかもしれない。 「じゃーさ、柊はそのちびっ子の趣味聞いたのか?」 「・・・え?まだだけど、何で?」 「あっちゃー。趣味聞かない事には始まんねーだろ。」 「・・・それは偏見じゃないのか?」 「でも、みさちゃんの考えは何気に的を獲てるかもよ?」 ふふふ、と微笑む峰岸。この笑顔が日下部の兄貴を落としたのかと思うと、すごく綺麗に見える。 「表面だけじゃ、分からない事ってたくさんあると思うの。例えば・・・ちょっと見た目がオタクみたいな人でも、中身が素敵な人ってたくさんいると、私は思うな。」 「おっ!あやのはいい事言うなー。」 「そうね。日下部には勿体ないお義姉さんかもね!」 「ひ、柊ちゃん!?」 「ふふっ、冗談だって。でも、なんとなく分かったかも、外交手段。」 そう、私はただ手に入れただけ。今まで見たことがない、とても綺麗な宝箱を。 中身はまだ見ていない。神話のように、もたらすのはパンドラの箱のような不幸かもしれない。 でも、私は信じる。私の手に入れた宝箱に詰め込まれたのは、幸福であると。 ‐‐‐‐ 『明日、宿題の答え合わせしようね。頑張ってね、柊ちゃん。土産話、聞かせてね。』 「あ、り、が、と、峰、岸、エクスクラメーションマーク、っと。送信。」 携帯電話のデジタル時計はもう23時50分を刻んでいた。それでもこたなの部屋からは、やはり光が漏れている。 「こんな時間まで何やってるのかな?よい子は寝る時間だぞ?またゲームか?」 「まぁね。」 やっぱり素っ気ない。返事も画面を向いたまま、私と顔を合わせない。 「ねぇ、こなた?」 「んー?」 パンドラも、こんな気持ちでゼウスからもらった箱を開けたのかな?でも、私は貴女みたいに、不幸にはならない。 「私も、そのゲームに付き合っても良いかな?」 「えっ?あの、その・・・それは・・・」 「いいでしょ?あんたのパソコンの音のせいで眠れないんだから・・・責任とりなさいよ。」 「・・・仕方ないな。いいけど・・・がっかりしないでよ?」 「それってどういう意味・・・ってちょっとこなたっ!?」 「だから言ったじゃん・・・」 画面に映るのは、可愛らしいアニメーションキャラ。セリフにはこなたくん、と書いてある。 「こなたさん、これ、もしやいわゆる・・・」 「はい、ギャルゲーですが・・・」 「しかも・・このキャラ・・・」 「あっ、やっぱり?このキャラかがみに似てるよねー?」 赤いセーラー服。長いツインテール。つり目。不覚にもそう思ってしまった。それと同時に、鼓動が早くなったのは気のせいじゃない。 「ま、いわゆるオタクですが何か?」 「・・・いばるな。全く・・・昨日といい今日といい。あんたといると退屈しないわ。」 「それって褒めてる?」 ありがとう。私のインスピレーション。同居人は、ちょっとどころじゃなく変わった友達。 「当たり前よ。これからも退屈しない毎日にしてくれるんでしょ?」 「望むところだよ、かがみん。まかせたまへー。って事で宿題貸してー?」 「またかよ!ギャルゲーやる前に勉強しろ!」 ギャルゲーとか、ツンデレのような単語を当たり前のように口にする少女。戸惑ったけど、やっぱりパンドラの箱じゃなかった。 今は、こなたのエメラルドがよく見える。私の目を見て、笑っているから。これだけで、今日は大収穫。 ‐‐‐‐ -[[4話 友達の作り方 >http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/376.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)
「ホラ行くぞ!忘れ物ない?生徒手帳は?」 「あ、忘れた。」 「ったく。早くしなさいよ。」 「おはよー、お姉ちゃん。こなちゃんは?」 「おはよ、つかさ。こなたは生徒手帳取りに行ってるわ。」 「あ、いっけない。生徒手帳忘れてた!」 「・・・どいつもこいつも全く。」 眠い。結局寝たのは3時間くらい。なんだかんだでこなたの宿題が終わるまで起きてた。 今日から陵桜学園での3年間が始まる。なのにこの眠さ、だるさ、やる気なさ。幸先悪すぎ。 「ごめん、かがみ。生徒手帳、制服のポケットに入ってた。」 「お待たせ!生徒手帳、バックの中に入ってたの忘れてたよ。」 「・・・」 手のかかる妹がもう1人増えたような感覚。本当にこんな日が新学園生活の第一歩でいいのだろうか。 「あんた達ね・・・まぁ、いいや。早く行かないとバスに遅れるわよ。」 「そだね。」 「あ、待ってよお姉ちゃん、こなちゃん!」 相変わらず、こなたは無愛想。昨日、ちょっとは距離が縮まったと思ったのは、勘違いだったのかな? 「所でつかさ。こなちゃんって私の事?」 「そーだよ。こなた、だからこなちゃん!」 「やけに単純だな。」 「だってあだ名があった方が良くない?こなちゃんは?」 「んー、変なのじゃなかったらいいんじゃない?」 「じゃ、これからこなちゃん、って呼ぶね。」 「うん。」 つかさに対しても愛想がいいとは思えない。これがこいつのデフォなのか? いつになったら、こなたは私に慣れてくれるのかな?いつになったら、心を開くのかな? ちょっとした、高揚感。メランコリーな気分を吹き飛ばす。さぁ、楽しい1日の始まりだ。 「ホラ、早く行くわよ!」 変わりゆく普通。早く、この状況が普通になりますように。 天は青い。見事な快晴。私達の隣を駆け抜ける春風。甘い桜の香り。 いい1日になりそうだ。 ‐‐‐‐ 「あ、クラスが発表になってるよ。お姉ちゃんとこなちゃんと同じクラスがいいなぁ。」 中学校とは全く異なった校舎内、匂い、雰囲気。やっと実感できた私の成長。 1年生廊下の前に張り出されるクラス編成。目に写るのは何百というたくさんの名前。 「あ、こなちゃんと私同じクラスだー!1年間、ヨロシクね。」 「ヨロシク、つかさ。あれ?かがみは?」 やっとの思いで見つけた『柊かがみ』の傍には、『泉こなた』と『柊つかさ』はなかった。 「私はあんたの隣のクラスよ。ま、これであんたとつかさが忘れ物した時の頼れる人が出来たわけだ。」 「うっ・・・お姉ちゃんエスパー?」 「やるな、かがみ。」 「あんた達の考えなんかお見通しよ。じゃ、そろそろ私はクラスに行くね。」 「じゃ、私達もいこっか、こなちゃん。」 「うん、じゃ、またねかがみ。」 本当に不思議な奴だ。無愛想だと思ったら、今は微笑みながら私に手を振る。 正直、二人と同じクラスになれなくて、残念っていう気持ちもある。そんな自分も不思議だ。 そういえば、私の名前の近くには見慣れた2つの名前があった。 「おーっす、柊ぃ。久しぶりだなー!」 噂をすればなんとやら。中学時代に聞き慣れた友達の声。 黒と茶色のマーブル。にかっと笑った時にちらつく八重歯。子供みたいな笑顔。よく響く大きな声。 「おはよう、柊ちゃん。卒業式以来ね。」 爽やかなベージュ。さらさらとなびく髪。ヘアバンドで上げた前髪。優しく私の耳をくすぐる声。 「おー、日下部!峰岸!久しぶりね。もしかして・・・また同じクラス?」 「そーなんだよ。3年連続だな。また今年もよろしくなー。」 「あんたは相変わらずうるさいぐらい元気だな。ま、ヨロシク。」 「そういえば、さっき柊ちゃんと一緒にいた内の一人は妹ちゃんよね?あと一人は誰?」 あと一人。それは私の奇妙な同居人かつ新しい友達。でも、今のあいつの態度は本当に友達なのかな? 「それがさー、話すと長くなるのよね。」 ‐‐‐‐ 入学式。長い校長講話。先輩方のあいさつ。そして始業式。ちょっと退屈なのもお約束。 そんな行事も終わり、今は初めての昼休み。私の傍には日下部と峰岸。 「へー。こーいうのって不思議な巡り合わせって言うんじゃね?」 「不思議なのはあいつの方よ。何考えてるか分かんないし、あんまり話し掛けてこないし。」 「恥ずかしがり屋なんじゃないかな?」 「それか柊にびびってるとか!?」 「失礼ねっ!何もしてないわよ。」 中学から変わらないこの風景。変わったのは私の周囲だけ。 日下部と峰岸にこなたの事を話してみたけれど、考えている事は私と大して変わらない。 「でも柊ちゃん、よく知らない人を見て面白そうなんて思ったね。」 「度胸あるよなー。」 「んー。そこが自分でも不思議なのよね。」 取り敢えず、面白そう、とは言った。惹かれた、なんて恥ずかしくて言えなかった。 惹かれる。それは、男女間だけだと思ってた。それに、そんな感情は生まれてまだ1回もなかった。 だからこそ、信じられないからこそ、信じる気になったのかもしれない。 「じゃーさ、柊はそのちびっ子の趣味聞いたのか?」 「・・・え?まだだけど、何で?」 「あっちゃー。趣味聞かない事には始まんねーだろ。」 「・・・それは偏見じゃないのか?」 「でも、みさちゃんの考えは何気に的を獲てるかもよ?」 ふふふ、と微笑む峰岸。この笑顔が日下部の兄貴を落としたのかと思うと、すごく綺麗に見える。 「表面だけじゃ、分からない事ってたくさんあると思うの。例えば・・・ちょっと見た目がオタクみたいな人でも、中身が素敵な人ってたくさんいると、私は思うな。」 「おっ!あやのはいい事言うなー。」 「そうね。日下部には勿体ないお義姉さんかもね!」 「ひ、柊ちゃん!?」 「ふふっ、冗談だって。でも、なんとなく分かったかも、外交手段。」 そう、私はただ手に入れただけ。今まで見たことがない、とても綺麗な宝箱を。 中身はまだ見ていない。神話のように、もたらすのはパンドラの箱のような不幸かもしれない。 でも、私は信じる。私の手に入れた宝箱に詰め込まれたのは、幸福であると。 ‐‐‐‐ 『明日、宿題の答え合わせしようね。頑張ってね、柊ちゃん。土産話、聞かせてね。』 「あ、り、が、と、峰、岸、エクスクラメーションマーク、っと。送信。」 携帯電話のデジタル時計はもう23時50分を刻んでいた。それでもこたなの部屋からは、やはり光が漏れている。 「こんな時間まで何やってるのかな?よい子は寝る時間だぞ?またゲームか?」 「まぁね。」 やっぱり素っ気ない。返事も画面を向いたまま、私と顔を合わせない。 「ねぇ、こなた?」 「んー?」 パンドラも、こんな気持ちでゼウスからもらった箱を開けたのかな?でも、私は貴女みたいに、不幸にはならない。 「私も、そのゲームに付き合っても良いかな?」 「えっ?あの、その・・・それは・・・」 「いいでしょ?あんたのパソコンの音のせいで眠れないんだから・・・責任とりなさいよ。」 「・・・仕方ないな。いいけど・・・がっかりしないでよ?」 「それってどういう意味・・・ってちょっとこなたっ!?」 「だから言ったじゃん・・・」 画面に映るのは、可愛らしいアニメーションキャラ。セリフにはこなたくん、と書いてある。 「こなたさん、これ、もしやいわゆる・・・」 「はい、ギャルゲーですが・・・」 「しかも・・このキャラ・・・」 「あっ、やっぱり?このキャラかがみに似てるよねー?」 赤いセーラー服。長いツインテール。つり目。不覚にもそう思ってしまった。それと同時に、鼓動が早くなったのは気のせいじゃない。 「ま、いわゆるオタクですが何か?」 「・・・いばるな。全く・・・昨日といい今日といい。あんたといると退屈しないわ。」 「それって褒めてる?」 ありがとう。私のインスピレーション。同居人は、ちょっとどころじゃなく変わった友達。 「当たり前よ。これからも退屈しない毎日にしてくれるんでしょ?」 「望むところだよ、かがみん。まかせたまへー。って事で宿題貸してー?」 「またかよ!ギャルゲーやる前に勉強しろ!」 ギャルゲーとか、ツンデレのような単語を当たり前のように口にする少女。戸惑ったけど、やっぱりパンドラの箱じゃなかった。 今は、こなたのエメラルドがよく見える。私の目を見て、笑っているから。これだけで、今日は大収穫。 ‐‐‐‐ -[[4話 友達の作り方 >http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/376.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-04 16:24:06)

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