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「変わるものと変わらないもの」(2022/12/21 (水) 12:08:22) の最新版変更点
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お昼休み。私達はいつものように4人でお弁当を広げていた。
うん、お弁当。今日はチョココロネじゃないのですヨ。
「もぐもぐ・・・」
「どう、こなた。おいしい?」
「おっ、また腕を上げたね。とってもおいしいよ、かがみ」
「よかった~、味付け不安だったけど、大丈夫だったみたいね」
「よかったね、お姉ちゃん」
わたしの心からの即答に、神妙な面持ちだったかがみの表情が明るくなった。
そう、今日のお昼はかがみお手製のお弁当。
わたしとかがみがお互いの気持ちを伝え合った────恋人になったあの日から
しばらくして、時々作ってきてくれるようになった。
当初はチョココロネばかりじゃ栄養が偏ってよくない、とまぁかがみらしい言い訳を
していたけど、最近はそんなこと言ったのを忘れてるくらい入れ込んでるみたい。
もちろん、わたしにとっては嬉しいことだったし、拒む理由は微塵もない。
味のほうはまだまだ普通なんだろうけど、腕が上がってきてるのは確かだし、かがみん補正で
どんなもんでも美味しく感じちゃう。わたしも染まってるなぁ~。
「お姉ちゃん、最近がんばってるもんね。突然、料理のこと教えて、って言われたときは
びっくりしたけど」
「まぁね。このままずっと下手のままでもいいかって思ってたくらい、料理に興味なかったし」
「だよね~。あのかがみがね」
「何か言ったか?」
「イエイエ、気のせいですヨ?」
「よっぽど泉さんのこと想っていらっしゃるんですね。ほら、想いは人を動かすといいますし」
「うんうん、特に料理は心込めて作るのが一番だよ」
「ちょ、ちょっと。みゆき、つかさぁ・・・」
「こなちゃんも嬉しそうだね~」
「愛情いっぱいの手作り弁当、そして照れるかがみん、なんて萌えるシチュエーション」
とうっ! 箸をおいてかがみんへダイブ。
「こら、抱きつくな! 場所わきまえろって……。ほらほら、馬鹿なことやってないで
さっさと食べなさいって。なんなら私が代わりに食べてやろうか?」
「あぁん、そんな殺生な~」
言われなくともっ、と席に戻りほおばる。って、なにじーっと見てるんですかかがみさん。
つかさにみゆきさんがなんとも生暖かい目で見てるよ。
「微笑ましいですね~」
「そうだね~」
教室は今日も騒がしい。以前とちょっと変わったわたしたちの掛け合いも
周りからは相変わらずの風景と思われてるようで、とりたてて気にかける人もいない。
相変わらずといえば、つかさとみゆきさん。二人とも、わたしたちの関係を知っても
同じように接してくれる。今みたいに、ちょっとひやかされたりもするけどね。
────それは、少し前の放課後。
めずらしくみゆきさんに、「どこかでみんなでお茶しませんか?」と誘われたので、4人で
学校近くの喫茶店へ。
注文を一通り頼むと、みゆきさんが口を開いた。
「実は……その、ですね。泉さんとかがみさんにお尋ねしたいことがありまして。
個人的なことですし、もしかしたら勘違いでとんでもなく失礼かもしれないのですが……」
「ん~、なになに? どんと聞きたまへ」
「みゆき、どうしたの?」
「えっと、ですね……」
目をそわそわさせて、なにか躊躇ってたみゆきさんだったけど、意を決したのか私達の方を
見て続けた。
「その、お二人は……お付き合いをなされてるのでしょうか」
「えっ? ええええええっ!!」
一番びっくりしたのが図星を突かれたわたしたちではなく、突拍子な話をいきなり聞かされた
つかさだったのは、まぁなんというか。
とりあえず落ちついてください、とみゆきさんに宥められている。
苦笑しながらかがみと顔を見合わせる。
「あはは、流石みゆきさんだね」
「ふふ、そうね。やっぱり気づいちゃってたかー」
本当はしばらく隠すつもりだったけど、やっぱ後ろめたい気持ちもあり、どうしようかと
かがみと悩んでた矢先だっただけに、みゆきさんが先手を買ってでてくれた形になった。
「あまり詮索するのはよろしくないと思ったですが、何かよそよそしいというか、私と
つかささんに遠慮されている感じがしまして……」
「そっかぁ。普通を装ってたんだけど、それがかえって変だったかな」
「まぁこなたが普通って、ある意味変だし」
「……容赦ないね、かがみん」
「結構前から薄々はそんな気はしてましたよ。お二人が一緒のときはとても嬉しそうでしたから。
でも、最近の異変に気づいたのはつかささんなんですよ」
「へっ、つかさが?」
ちょっとびっくり、という感じでつかさを見た。うん、とうなづきながら、
「最近のお姉ちゃん、お家で難しい顔してることがあったし、こなちゃんも学校で
ぼーっとしてること多くなかった?」
「そういわれると、そうねぇ。どうしようか考えてたりしてたから」
「わたしの場合はただの寝不足な気もー」
「あんたは……」
「寝不足だったら、こなちゃん我慢しないで眠りしちゃうでしょ。それとは別に、起きてんだけど
授業中とか外眺めてたりとか」
「へぇ~。あんたでもそんなセンチメンタルな気分になるのね」
「ひっどぉ~わたしを何だと思いかっ」
「ごめんごめん、こなたのそんな姿ってなかなか想像つかなくてっさぁ」
ぷぅー、とふくれてるわたしをかがみがよしよしと撫でてくれる。きもちいいなー。
つかさがニコニコしてこっちを見ている。
「ほんとうに仲いいよね~。よかったぁ。まさかとはおもったけど、ケンカとか
しちゃったのかなって。それでね、ちょっと心配でゆきちゃんに相談乗ってもらったの」
「それはいくらなんでもないっしょ。意外なことは気づくのになー」
「まぁ、つかさなりに心配だったんだろうけど。私とこなた、いつも一緒にいたでしょうに。
ケンカしてる相手と四六時中いるほどお人よしじゃないわよ?」
「あはは、そうだね~。でもお姉ちゃんとこなちゃんが付き合ってるなんて、ゆきちゃんも
言ってなかったし、びっくりだよぉ~」
やっぱつかさはつかさだなぁ。鋭いのかやっぱり鈍いのかよくわからないヨ。
でー、とかがみが改めてみゆきさんのほうを見て、
「つかさに相談されて確信した、と」
「えぇ。確信はあったのですが、やはり万が一ということもありますし。お二人から
話してくださるまで私の心の中に留めて置くつもりでした。でも、つかささんではないのですが、
改めてお二人の様子を見ると私も心配なってきてしまいまして。すみません、答え難いことを
お聞きしてしまって……」
みゆきさんがとても申し訳なさそうにしてるので、あわてて答え返した。
「いやいや、謝らなくていいよ。いずれは話すつもりだったし、むしろ切っ掛けを作ってくれて
感謝、って感じかな。ね、かがみ」
「そうね。どう切り出したらいいものかずっと悩んでたし。気にしなくていいわよ、みゆき」
「そうですか……ありがとうございます」
「心配かけちゃってごめんネ、二人とも」
「いえ、予感はいい方向で当たってたましたから。お二人とも幸せそうで何よりです」
「うんうん。おめでとう、お姉ちゃん、こなちゃん」
…………って、あれ?
「いやいやいやまてまて。その前に疑問はないのか?」
かがみもおかしいことに気づいたらしい。
「え、なんでしょう?」
「いや、だからその、わたしたち女の子同士で付き合ってる訳なんだけど」
「うん、そうだね~」
「それが、どうかしましたか?」
「あー……うん。つかさがそんな反応しそうなのはわかるんだけど」
こなちゃん、さりげなぐひどいこと言ってる、とつかさが抗議してるがとりあえずおいといて。
「みゆき、本当に変だと思ってないの?」
「ええ」
一呼吸置いてからみゆきさんがつづけた。
「お二人の恋愛がこの国で必ずしも祝福されるものとは言えないのは承知しています。
それでも頑張ってる方はいますし、世界に目を向ければ決して稀なことでもありません。
もちろん茨の道ですし、厳しい事が多々待ち受けてると思います」
うん。決して手放しで喜べる関係じゃない。
お互いがどうしてもあと一歩踏み出せなかったのも、これが理由の1つなのは
違いなかったし。もちろん、それだけじゃなかったけど。
「でも、お二人でお決めになさった事ですし」
それでも、勇気を出して告白しあったんだよ。
「泉さんもかがみさんも、心からお互い好き合っているのですよね?」
想い、通じ合えたよ。
わたしの思ってるが読み取れたのか、いつものほんわりとした表情でみゆきさんが応えてくれた。
「それなら、私は親友として、お二人を影ながら応援させて頂くまでですよ。つかささんも
そうですよね」
「うん! 難しい話はあまりよく分からないけど、お姉ちゃんとこなちゃんに幸せになって欲しいな。」
つかさも持ち前の笑顔で言ってくれた。
「つかさ……みゆきさん……」
「ありがとう、二人とも」
様子を察して心配してくれて、うまれたての、でも女同士という奇特な恋、それでも
祝福してくれるふたりに胸の奥がほっこりする。
はは、ちょっと視界が曇っちゃたヨ。ここは一つごまかすために……。
「あー、かがみん涙目~」
「な、何いってんのよっ。あんたこそ普段ありえないくらいうるうるさせてるじゃない」
「気のせいだヨー」
しばらく見合ってたけど、あまりにベタ過ぎて、おもわず笑い出してしまった。
つられてかがみも、様子を見てたつかさとみゆきさんも笑い出した。
「そうだ、ふたりとも」
「はい?」
「な~に、こなちゃん」
「これからも、今までどおり接してもらえるかな?」
「周りにあまり感づかれないようにですか?」
「んーん。変に気使われるのも恥ずかしいしさ。それに、この4人での空気は大事に
したいなぁ、って。かがみは一番大事だけど、それに負けないくらいつかさやみゆきさんも
大切な友達だからね」
「そーゆーこと。改めて言うのも変だけど、これからもよろしくね」
わたしたちからのお願いに、二人は顔をちょっと見合わせてたけど、すぐに答えてくれた。
「言われずとも、もちろんですよ。これからもよろしくお願いしますね」
「うん、当然だよ。嫌だっていっても一緒だからね?」
「あ、もちろんご用事の際は遠慮なく言ってくださいね」
「そうそう、お邪魔しちゃ悪いからね~」
快い回答とともに表情はちょっとニヤニヤしてる。や、やるなー……。
まぁ、これぐらいは親友の特権ということで。
またどこからとなくわたしたちの間に笑いがおこる。和やかな空気。
この空気を壊さずにすんでよかった。
ありがとう、つかさ、みゆきさん。
────かがみの"手料理"を食べながら、ふとこないだのことを思い出していた。
「そういえば、あんた今度の休み、暇?」
「んー?」
呼ばれて、我に戻って返事をする。
「もしよければ買い物に付き合って欲しいんだけど。あ、嫌ならいいのよ」
「ほうほう、デートですか~」
「で、デートってそんなんじゃぁ…」
「えぇっ、ちがうのー? これってデートのお誘いだよね、つかさ、みゆきさん」
「そうですね。泉さんとかがみさんは恋人同士なんですし、デートだと思いますよ」
「そうだよー、お姉ちゃん。素直になろうよ~」
「ほらほら、二人もこう申しておりますヨ」
集中砲火でかがみがゆでだこよろしく真っ赤。
ツンデレっぷりもさえてるし、ほんとかわいいなぁ。
「うっさい! …んでどうなのよ、いけるの?」
「かがみとならどこでもばっちこーい。あ、でも今度の休みは確か先約があった気が……」
「あらまぁ」
「残念~」
いやいや、かがみが残念がるなら分かるけど、なぜそこの二人もそんなに暗くなってるの。
「あんたが用事とは珍しいわね。また何かのイベントか?」
「ん~・・・あ、思い出した。ネトゲ仲間との約束だった」
「ちょ、ネトゲかよっ!」
「いやね。ここんとこかがみとの時間を大事にしてたから、休みとかもあんま繋いでなくてね。
わたしはそれでも全然かまわなかったんだけど。こないだ久々に入ってたらさ、たまには
どーよ、と。まだ特に用事もなかったし」
「まぁ先約じゃ仕方ないわね」
「でもいいや、あっちはキャンセルするよ。わたしもかがみといるほうが楽しいしさ」
「いいわよ無理しなくっても。それにいくらゲームといっても相手に悪いじゃないの」
と口ではいってるけど、がっかりしてる感がみえみえデスヨ、かがみさん。そこまで
ツンデレなくていいって。
「ううん、かがみ様が最優先事項だヨ? リアルが最優先、みんなそうだしね。つい
こないだまで逆だったわたしが言うのもなんだけど。それに……」
耳元で、かがみにだけ聞こえる小さい声で────
────なにいってんのよ、馬鹿……
「お姉ちゃん、顔真っ赤だよ~。こなちゃん、なに言ったの?」
「それは、秘密です」
どっかの誰かのような口真似でごまかしたけど、わたしの顔も多分真っ赤だ。こんな台詞、
かがみ以外には聞かせられないヨ。
「そゆことで、かがみんにお付き合いするよ~」
「ほんとにいいの?」
「もちっ」
「ふふっ。ありがと、こなた」
かがみとっても嬉しそう。わたしもしあわせな気分になる。
すると、目で合図してきたので、もちろんとうなずく。
「で、つかさとみゆきも一緒に行かない?」
「えっ、お姉ちゃん達デートじゃないの?」
「そうですよ、お二人のお邪魔したら悪いですし」
「いいのいいの。私達は一緒にいられればそれで十分だし」
うん。心が通じ合ってるから、それだけで幸せになれるんだよ。
「どうしても二人っきりでどっか行きたい時はわざわざ人前で言ったりしないわよ。
それこそただの惚気じゃない」
「さっきまでのも十分のろけだと思うよー」
「そ、それは……その……」
つかさがどんだけー、といいだけだ。図星つかれてかがみんたじたじ。
「かがみははっきりデレるようになったからねー。わたしは以前とあまり変わってない気が
するんだけどネ」
「泉さんも変わられましたよー。以前は結構茶化してごまかすこととか多かったですし。
最近はきちんとかがみさんの気持ちに応えてあげてますしね」
「うんうん、こなちゃんのほうが変わった感じするよ。ほんと、お姉ちゃんのことが
好きなんだね~」
うぉっ、地雷踏んだか。みゆきさん、表情はニコニコなのに発言えぐいデス。つかさも
追加攻撃してくるし。
じゃれあうのは慣れてるけど、こういうのはとても恥ずかしいヨ。
「ヒヒヒ、たまにはこっ恥ずかしい思いしなー。んで、二人ともどうする?」
「それじゃ、せっかく誘っていただいてますし。ご一緒させてもらいます」
「うん、私も行くよ~」
「よし、んじゃ今度の休みは4人でパッーと遊ぶかっ」
「らじゃぁー」
「それに、お姉ちゃん達見てると楽しいし。ね、ゆきちゃん」
「そうですね~」
「今度はどんな惚気を見せてくれるのかなー」
「私達はオチ対象かっ! こなたも何か言ってやんなさいよ」
「えー、わたしは別にかまわないし~。かがみんは照れ屋さんだもんネ」
「さっきまで真っ赤にしてたヤツの台詞か!!!」
今日もいつもと同じように時が流れてく。
いや、やっぱちょっと変わったかな。
わたしとかがみの関係がちょっと変わったように、お昼ごはんがチョココロネから
お弁当に変わったように、わたしたち4人の関係もすこし変わったかな。ずっと
同じままなんてありえないしね。
でも、親友であることは変わらないし、これからもずっと変わらないと思う。
みんながそう望んでいれば、きっと大丈夫だよね。
そして、かがみの恋人であることも、ずっと。
あ……でも、こっちは変わってほしいかな。もっとより進んだ関係に、ネ。
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- 恋人同士になっても、いつもの延長に居れる4人全員に萌えた!GJです! -- 名無しさん (2010-04-14 22:17:19)
お昼休み。私達はいつものように4人でお弁当を広げていた。
うん、お弁当。今日はチョココロネじゃないのですヨ。
「もぐもぐ・・・」
「どう、こなた。おいしい?」
「おっ、また腕を上げたね。とってもおいしいよ、かがみ」
「よかった~、味付け不安だったけど、大丈夫だったみたいね」
「よかったね、お姉ちゃん」
わたしの心からの即答に、神妙な面持ちだったかがみの表情が明るくなった。
そう、今日のお昼はかがみお手製のお弁当。
わたしとかがみがお互いの気持ちを伝え合った────恋人になったあの日から
しばらくして、時々作ってきてくれるようになった。
当初はチョココロネばかりじゃ栄養が偏ってよくない、とまぁかがみらしい言い訳を
していたけど、最近はそんなこと言ったのを忘れてるくらい入れ込んでるみたい。
もちろん、わたしにとっては嬉しいことだったし、拒む理由は微塵もない。
味のほうはまだまだ普通なんだろうけど、腕が上がってきてるのは確かだし、かがみん補正で
どんなもんでも美味しく感じちゃう。わたしも染まってるなぁ~。
「お姉ちゃん、最近がんばってるもんね。突然、料理のこと教えて、って言われたときは
びっくりしたけど」
「まぁね。このままずっと下手のままでもいいかって思ってたくらい、料理に興味なかったし」
「だよね~。あのかがみがね」
「何か言ったか?」
「イエイエ、気のせいですヨ?」
「よっぽど泉さんのこと想っていらっしゃるんですね。ほら、想いは人を動かすといいますし」
「うんうん、特に料理は心込めて作るのが一番だよ」
「ちょ、ちょっと。みゆき、つかさぁ・・・」
「こなちゃんも嬉しそうだね~」
「愛情いっぱいの手作り弁当、そして照れるかがみん、なんて萌えるシチュエーション」
とうっ! 箸をおいてかがみんへダイブ。
「こら、抱きつくな! 場所わきまえろって……。ほらほら、馬鹿なことやってないで
さっさと食べなさいって。なんなら私が代わりに食べてやろうか?」
「あぁん、そんな殺生な~」
言われなくともっ、と席に戻りほおばる。って、なにじーっと見てるんですかかがみさん。
つかさにみゆきさんがなんとも生暖かい目で見てるよ。
「微笑ましいですね~」
「そうだね~」
教室は今日も騒がしい。以前とちょっと変わったわたしたちの掛け合いも
周りからは相変わらずの風景と思われてるようで、とりたてて気にかける人もいない。
相変わらずといえば、つかさとみゆきさん。二人とも、わたしたちの関係を知っても
同じように接してくれる。今みたいに、ちょっとひやかされたりもするけどね。
────それは、少し前の放課後。
めずらしくみゆきさんに、「どこかでみんなでお茶しませんか?」と誘われたので、4人で
学校近くの喫茶店へ。
注文を一通り頼むと、みゆきさんが口を開いた。
「実は……その、ですね。泉さんとかがみさんにお尋ねしたいことがありまして。
個人的なことですし、もしかしたら勘違いでとんでもなく失礼かもしれないのですが……」
「ん~、なになに? どんと聞きたまへ」
「みゆき、どうしたの?」
「えっと、ですね……」
目をそわそわさせて、なにか躊躇ってたみゆきさんだったけど、意を決したのか私達の方を
見て続けた。
「その、お二人は……お付き合いをなされてるのでしょうか」
「えっ? ええええええっ!!」
一番びっくりしたのが図星を突かれたわたしたちではなく、突拍子な話をいきなり聞かされた
つかさだったのは、まぁなんというか。
とりあえず落ちついてください、とみゆきさんに宥められている。
苦笑しながらかがみと顔を見合わせる。
「あはは、流石みゆきさんだね」
「ふふ、そうね。やっぱり気づいちゃってたかー」
本当はしばらく隠すつもりだったけど、やっぱ後ろめたい気持ちもあり、どうしようかと
かがみと悩んでた矢先だっただけに、みゆきさんが先手を買ってでてくれた形になった。
「あまり詮索するのはよろしくないと思ったですが、何かよそよそしいというか、私と
つかささんに遠慮されている感じがしまして……」
「そっかぁ。普通を装ってたんだけど、それがかえって変だったかな」
「まぁこなたが普通って、ある意味変だし」
「……容赦ないね、かがみん」
「結構前から薄々はそんな気はしてましたよ。お二人が一緒のときはとても嬉しそうでしたから。
でも、最近の異変に気づいたのはつかささんなんですよ」
「へっ、つかさが?」
ちょっとびっくり、という感じでつかさを見た。うん、とうなづきながら、
「最近のお姉ちゃん、お家で難しい顔してることがあったし、こなちゃんも学校で
ぼーっとしてること多くなかった?」
「そういわれると、そうねぇ。どうしようか考えてたりしてたから」
「わたしの場合はただの寝不足な気もー」
「あんたは……」
「寝不足だったら、こなちゃん我慢しないで眠りしちゃうでしょ。それとは別に、起きてんだけど
授業中とか外眺めてたりとか」
「へぇ~。あんたでもそんなセンチメンタルな気分になるのね」
「ひっどぉ~わたしを何だと思いかっ」
「ごめんごめん、こなたのそんな姿ってなかなか想像つかなくてっさぁ」
ぷぅー、とふくれてるわたしをかがみがよしよしと撫でてくれる。きもちいいなー。
つかさがニコニコしてこっちを見ている。
「ほんとうに仲いいよね~。よかったぁ。まさかとはおもったけど、ケンカとか
しちゃったのかなって。それでね、ちょっと心配でゆきちゃんに相談乗ってもらったの」
「それはいくらなんでもないっしょ。意外なことは気づくのになー」
「まぁ、つかさなりに心配だったんだろうけど。私とこなた、いつも一緒にいたでしょうに。
ケンカしてる相手と四六時中いるほどお人よしじゃないわよ?」
「あはは、そうだね~。でもお姉ちゃんとこなちゃんが付き合ってるなんて、ゆきちゃんも
言ってなかったし、びっくりだよぉ~」
やっぱつかさはつかさだなぁ。鋭いのかやっぱり鈍いのかよくわからないヨ。
でー、とかがみが改めてみゆきさんのほうを見て、
「つかさに相談されて確信した、と」
「えぇ。確信はあったのですが、やはり万が一ということもありますし。お二人から
話してくださるまで私の心の中に留めて置くつもりでした。でも、つかささんではないのですが、
改めてお二人の様子を見ると私も心配なってきてしまいまして。すみません、答え難いことを
お聞きしてしまって……」
みゆきさんがとても申し訳なさそうにしてるので、あわてて答え返した。
「いやいや、謝らなくていいよ。いずれは話すつもりだったし、むしろ切っ掛けを作ってくれて
感謝、って感じかな。ね、かがみ」
「そうね。どう切り出したらいいものかずっと悩んでたし。気にしなくていいわよ、みゆき」
「そうですか……ありがとうございます」
「心配かけちゃってごめんネ、二人とも」
「いえ、予感はいい方向で当たってたましたから。お二人とも幸せそうで何よりです」
「うんうん。おめでとう、お姉ちゃん、こなちゃん」
…………って、あれ?
「いやいやいやまてまて。その前に疑問はないのか?」
かがみもおかしいことに気づいたらしい。
「え、なんでしょう?」
「いや、だからその、わたしたち女の子同士で付き合ってる訳なんだけど」
「うん、そうだね~」
「それが、どうかしましたか?」
「あー……うん。つかさがそんな反応しそうなのはわかるんだけど」
こなちゃん、さりげなぐひどいこと言ってる、とつかさが抗議してるがとりあえずおいといて。
「みゆき、本当に変だと思ってないの?」
「ええ」
一呼吸置いてからみゆきさんがつづけた。
「お二人の恋愛がこの国で必ずしも祝福されるものとは言えないのは承知しています。
それでも頑張ってる方はいますし、世界に目を向ければ決して稀なことでもありません。
もちろん茨の道ですし、厳しい事が多々待ち受けてると思います」
うん。決して手放しで喜べる関係じゃない。
お互いがどうしてもあと一歩踏み出せなかったのも、これが理由の1つなのは
違いなかったし。もちろん、それだけじゃなかったけど。
「でも、お二人でお決めになさった事ですし」
それでも、勇気を出して告白しあったんだよ。
「泉さんもかがみさんも、心からお互い好き合っているのですよね?」
想い、通じ合えたよ。
わたしの思ってるが読み取れたのか、いつものほんわりとした表情でみゆきさんが応えてくれた。
「それなら、私は親友として、お二人を影ながら応援させて頂くまでですよ。つかささんも
そうですよね」
「うん! 難しい話はあまりよく分からないけど、お姉ちゃんとこなちゃんに幸せになって欲しいな。」
つかさも持ち前の笑顔で言ってくれた。
「つかさ……みゆきさん……」
「ありがとう、二人とも」
様子を察して心配してくれて、うまれたての、でも女同士という奇特な恋、それでも
祝福してくれるふたりに胸の奥がほっこりする。
はは、ちょっと視界が曇っちゃたヨ。ここは一つごまかすために……。
「あー、かがみん涙目~」
「な、何いってんのよっ。あんたこそ普段ありえないくらいうるうるさせてるじゃない」
「気のせいだヨー」
しばらく見合ってたけど、あまりにベタ過ぎて、おもわず笑い出してしまった。
つられてかがみも、様子を見てたつかさとみゆきさんも笑い出した。
「そうだ、ふたりとも」
「はい?」
「な~に、こなちゃん」
「これからも、今までどおり接してもらえるかな?」
「周りにあまり感づかれないようにですか?」
「んーん。変に気使われるのも恥ずかしいしさ。それに、この4人での空気は大事に
したいなぁ、って。かがみは一番大事だけど、それに負けないくらいつかさやみゆきさんも
大切な友達だからね」
「そーゆーこと。改めて言うのも変だけど、これからもよろしくね」
わたしたちからのお願いに、二人は顔をちょっと見合わせてたけど、すぐに答えてくれた。
「言われずとも、もちろんですよ。これからもよろしくお願いしますね」
「うん、当然だよ。嫌だっていっても一緒だからね?」
「あ、もちろんご用事の際は遠慮なく言ってくださいね」
「そうそう、お邪魔しちゃ悪いからね~」
快い回答とともに表情はちょっとニヤニヤしてる。や、やるなー……。
まぁ、これぐらいは親友の特権ということで。
またどこからとなくわたしたちの間に笑いがおこる。和やかな空気。
この空気を壊さずにすんでよかった。
ありがとう、つかさ、みゆきさん。
────かがみの"手料理"を食べながら、ふとこないだのことを思い出していた。
「そういえば、あんた今度の休み、暇?」
「んー?」
呼ばれて、我に戻って返事をする。
「もしよければ買い物に付き合って欲しいんだけど。あ、嫌ならいいのよ」
「ほうほう、デートですか~」
「で、デートってそんなんじゃぁ…」
「えぇっ、ちがうのー? これってデートのお誘いだよね、つかさ、みゆきさん」
「そうですね。泉さんとかがみさんは恋人同士なんですし、デートだと思いますよ」
「そうだよー、お姉ちゃん。素直になろうよ~」
「ほらほら、二人もこう申しておりますヨ」
集中砲火でかがみがゆでだこよろしく真っ赤。
ツンデレっぷりもさえてるし、ほんとかわいいなぁ。
「うっさい! …んでどうなのよ、いけるの?」
「かがみとならどこでもばっちこーい。あ、でも今度の休みは確か先約があった気が……」
「あらまぁ」
「残念~」
いやいや、かがみが残念がるなら分かるけど、なぜそこの二人もそんなに暗くなってるの。
「あんたが用事とは珍しいわね。また何かのイベントか?」
「ん~・・・あ、思い出した。ネトゲ仲間との約束だった」
「ちょ、ネトゲかよっ!」
「いやね。ここんとこかがみとの時間を大事にしてたから、休みとかもあんま繋いでなくてね。
わたしはそれでも全然かまわなかったんだけど。こないだ久々に入ってたらさ、たまには
どーよ、と。まだ特に用事もなかったし」
「まぁ先約じゃ仕方ないわね」
「でもいいや、あっちはキャンセルするよ。わたしもかがみといるほうが楽しいしさ」
「いいわよ無理しなくっても。それにいくらゲームといっても相手に悪いじゃないの」
と口ではいってるけど、がっかりしてる感がみえみえデスヨ、かがみさん。そこまで
ツンデレなくていいって。
「ううん、かがみ様が最優先事項だヨ? リアルが最優先、みんなそうだしね。つい
こないだまで逆だったわたしが言うのもなんだけど。それに……」
耳元で、かがみにだけ聞こえる小さい声で────
────なにいってんのよ、馬鹿……
「お姉ちゃん、顔真っ赤だよ~。こなちゃん、なに言ったの?」
「それは、秘密です」
どっかの誰かのような口真似でごまかしたけど、わたしの顔も多分真っ赤だ。こんな台詞、
かがみ以外には聞かせられないヨ。
「そゆことで、かがみんにお付き合いするよ~」
「ほんとにいいの?」
「もちっ」
「ふふっ。ありがと、こなた」
かがみとっても嬉しそう。わたしもしあわせな気分になる。
すると、目で合図してきたので、もちろんとうなずく。
「で、つかさとみゆきも一緒に行かない?」
「えっ、お姉ちゃん達デートじゃないの?」
「そうですよ、お二人のお邪魔したら悪いですし」
「いいのいいの。私達は一緒にいられればそれで十分だし」
うん。心が通じ合ってるから、それだけで幸せになれるんだよ。
「どうしても二人っきりでどっか行きたい時はわざわざ人前で言ったりしないわよ。
それこそただの惚気じゃない」
「さっきまでのも十分のろけだと思うよー」
「そ、それは……その……」
つかさがどんだけー、といいだけだ。図星つかれてかがみんたじたじ。
「かがみははっきりデレるようになったからねー。わたしは以前とあまり変わってない気が
するんだけどネ」
「泉さんも変わられましたよー。以前は結構茶化してごまかすこととか多かったですし。
最近はきちんとかがみさんの気持ちに応えてあげてますしね」
「うんうん、こなちゃんのほうが変わった感じするよ。ほんと、お姉ちゃんのことが
好きなんだね~」
うぉっ、地雷踏んだか。みゆきさん、表情はニコニコなのに発言えぐいデス。つかさも
追加攻撃してくるし。
じゃれあうのは慣れてるけど、こういうのはとても恥ずかしいヨ。
「ヒヒヒ、たまにはこっ恥ずかしい思いしなー。んで、二人ともどうする?」
「それじゃ、せっかく誘っていただいてますし。ご一緒させてもらいます」
「うん、私も行くよ~」
「よし、んじゃ今度の休みは4人でパッーと遊ぶかっ」
「らじゃぁー」
「それに、お姉ちゃん達見てると楽しいし。ね、ゆきちゃん」
「そうですね~」
「今度はどんな惚気を見せてくれるのかなー」
「私達はオチ対象かっ! こなたも何か言ってやんなさいよ」
「えー、わたしは別にかまわないし~。かがみんは照れ屋さんだもんネ」
「さっきまで真っ赤にしてたヤツの台詞か!!!」
今日もいつもと同じように時が流れてく。
いや、やっぱちょっと変わったかな。
わたしとかがみの関係がちょっと変わったように、お昼ごはんがチョココロネから
お弁当に変わったように、わたしたち4人の関係もすこし変わったかな。ずっと
同じままなんてありえないしね。
でも、親友であることは変わらないし、これからもずっと変わらないと思う。
みんながそう望んでいれば、きっと大丈夫だよね。
そして、かがみの恋人であることも、ずっと。
あ……でも、こっちは変わってほしいかな。もっとより進んだ関係に、ネ。
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- GJ! -- 名無しさん (2022-12-21 12:08:22)
- 恋人同士になっても、いつもの延長に居れる4人全員に萌えた!GJです! -- 名無しさん (2010-04-14 22:17:19)
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