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 日も傾き、教室が紅に染まり始めた頃。  柊かがみは、泉こなたのいるB組へと足を運んだ。 「こなた?」  なぜ疑問形なのかは分からないが、友人の名前を呼ぶかがみ。  既に教室には影が見当たらず、少し高めに発した声は壁に吸い込まれるように消えた。  ちょっと意気消沈したように肩を落としたかがみだが…… 「あれ?」  教室に敷き詰められた机のうちの一つに、明らかに他とは違った形の影を作るものがあった。  微動だにしない無機質な影に、少しだけ上下に動く小さな影が乗っている。  小学生のような高校生が寝息をたてていた。存在感のある青髪は夕日の赤い光を浴びて紫色に輝く。  特徴的に頭部から飛び出たアンテナが、呼吸に合わせて揺れている。 「なんだ、寝ちゃってたんだ……」 「むにゃ……んぅ……」  いつものような飄々とした雰囲気はなりを潜め、あどけなさの残る寝顔をしている。  それを優しい眼差しで覗き込むかがみ。  その瞳には友人に送るそれとは、違ったものが乗せられているように感じたのは、気のせいだろうか。  ふと、漂っていた視線が動きを止める。  その目線は、小さく息を吐き出す唇に注がれている。 「ちょ、ちょっとだけ」  まるで自分に言い聞かせるように呟くかがみ。  優しく、触れたかどうか分からないほど、ささやかに重ねられた唇は  秒数を指折りで数えるほどでもないくらい、瞬時に離れた。  瞬間、かがみの顔が茹蛸のように真っ赤になる。 「……んぁ?」 「!!」  間もなくして、こなたが目を覚ます。  いつの間にやらかがみは、机一つ分離れた場所へと移動していた。  しどろもどろに表情を整え、笑顔で待機する。その口元は少し引きつっているように見えた。 「あるぇ? かがみどうしたの?」 「え!? いや、その……そう!! 一緒に帰ろうと思って!!」  勿論最初はそのために来たはずなのに、先ほどの行為によっての焦りからか、思考回路が混雑しているようだ。  対するこなたは起き抜けのせいか、目線は、揺れるツインテールの先端に向けられている。 「あの、つかさとみゆきは?」 「みゆきさんは委員会で、つかさは夕飯の買い物があるからって……てか昼休みに言ってたと思うけど」 「あ、そそ、そうだったわね」  頬を掻きながら目を逸らすかがみ。恥ずかしさからかだろうか、おでこから一筋の汗が流れた。 「変なの……まぁいいや、帰ろっかかがみ」  無言で頷くかがみに少し微笑み、鞄を引っつかんでてこてこ小走りに傍に寄る。  かがみは片手で持っていた鞄を両手に持ち替え、ぎゅっと握り締めた。  言い淀むような仕草をした後、意を決して口を開くが  すぐに閉じて、俯いてしまった。 「どったの? かがみ」 「あ、いぃやぁ~……」  二つほど携えた青紫色の大きな瞳が、あっちへゆらゆらこっちへゆらゆら。  その定まらない目線を追うように、こなたの視線が追いかける。  追いかけっこを始めて少し時間が経過した頃、かがみがこなたを見据えた。  突然のことにこなたがびくんと反応する。  ツリ目がさらにつりあがって、怖い表情になっていたことが原因でもあるだろう。 「て、てて、ててててて」 「……?」 「手……繋がない?」 「え? ……う、うん」  またもや疑問形であったが、少しだけ強い意志の込められた言葉。  こなたは、かがみのお願いを断る理由もないし  断ろうという気も起きなかったようで……  ぎゅっ  確かめるように、手を握った。 「こなた……」 「かがみ……」  震える手で、互いの掌を確かめ合う。  2人の顔が赤く見えたのは、夕焼けだけのせいではないだろう。 「ふふ」 「えへへ」  照れたような笑い声。即座にB組が甘い空間に変わる。  誰か残っていたなら、きっと熱に当てられていたに違いない。  こういうことは公共の場ではあまり繰り広げないでいただきたいものだ。 「帰ろっかがみ♪」 「うん♪」  意気揚々と教室を出るかがみとこなた。  もし誰かがこの場を覗いていたとしたならば  お互いに見つめあい仲良く手を繋ぐその姿が、恋人同士に見えていたことは間違いないだろう。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 確かにいいストリー展開だ。 -- 伝説の作家 (2009-07-07 00:41:23) - 個人的に &br()この保管庫で一番うまい作品だと思う。 &br()背景描写とかストリー展開とか。 &br()長さも丁度いいし読みやすい。 &br()次回作待ってます。 -- 名無しさん (2008-03-21 23:43:48) - うまいなぁ……書き慣れてる感が滲み出てるよ。&br()3人称は難しいのに、こんなにうまくまとめられるなんてお兄さんびっくりだ!!&br()素直に尊敬します。&br()次回作にwktkしつつ、今から全裸で待機しますね。 -- 名無しさん (2007-11-19 12:35:57) - こなかがスレは初期からいるんですが、まさか貴方の正体があの人とは…(汗)&br()&br()通りでこの話が投下当初から群を抜いて上手いと思った訳ですね。&br()ギャグも書けてシリアスも書けるのは本当に尊敬します。&br()たまにはこちらのスレにも力作をお願いしますね! -- 某書き手 (2007-11-11 20:28:26)
 日も傾き、教室が紅に染まり始めた頃。  柊かがみは、泉こなたのいるB組へと足を運んだ。 「こなた?」  なぜ疑問形なのかは分からないが、友人の名前を呼ぶかがみ。  既に教室には影が見当たらず、少し高めに発した声は壁に吸い込まれるように消えた。  ちょっと意気消沈したように肩を落としたかがみだが…… 「あれ?」  教室に敷き詰められた机のうちの一つに、明らかに他とは違った形の影を作るものがあった。  微動だにしない無機質な影に、少しだけ上下に動く小さな影が乗っている。  小学生のような高校生が寝息をたてていた。存在感のある青髪は夕日の赤い光を浴びて紫色に輝く。  特徴的に頭部から飛び出たアンテナが、呼吸に合わせて揺れている。 「なんだ、寝ちゃってたんだ……」 「むにゃ……んぅ……」  いつものような飄々とした雰囲気はなりを潜め、あどけなさの残る寝顔をしている。  それを優しい眼差しで覗き込むかがみ。  その瞳には友人に送るそれとは、違ったものが乗せられているように感じたのは、気のせいだろうか。  ふと、漂っていた視線が動きを止める。  その目線は、小さく息を吐き出す唇に注がれている。 「ちょ、ちょっとだけ」  まるで自分に言い聞かせるように呟くかがみ。  優しく、触れたかどうか分からないほど、ささやかに重ねられた唇は  秒数を指折りで数えるほどでもないくらい、瞬時に離れた。  瞬間、かがみの顔が茹蛸のように真っ赤になる。 「……んぁ?」 「!!」  間もなくして、こなたが目を覚ます。  いつの間にやらかがみは、机一つ分離れた場所へと移動していた。  しどろもどろに表情を整え、笑顔で待機する。その口元は少し引きつっているように見えた。 「あるぇ? かがみどうしたの?」 「え!? いや、その……そう!! 一緒に帰ろうと思って!!」  勿論最初はそのために来たはずなのに、先ほどの行為によっての焦りからか、思考回路が混雑しているようだ。  対するこなたは起き抜けのせいか、目線は、揺れるツインテールの先端に向けられている。 「あの、つかさとみゆきは?」 「みゆきさんは委員会で、つかさは夕飯の買い物があるからって……てか昼休みに言ってたと思うけど」 「あ、そそ、そうだったわね」  頬を掻きながら目を逸らすかがみ。恥ずかしさからかだろうか、おでこから一筋の汗が流れた。 「変なの……まぁいいや、帰ろっかかがみ」  無言で頷くかがみに少し微笑み、鞄を引っつかんでてこてこ小走りに傍に寄る。  かがみは片手で持っていた鞄を両手に持ち替え、ぎゅっと握り締めた。  言い淀むような仕草をした後、意を決して口を開くが  すぐに閉じて、俯いてしまった。 「どったの? かがみ」 「あ、いぃやぁ~……」  二つほど携えた青紫色の大きな瞳が、あっちへゆらゆらこっちへゆらゆら。  その定まらない目線を追うように、こなたの視線が追いかける。  追いかけっこを始めて少し時間が経過した頃、かがみがこなたを見据えた。  突然のことにこなたがびくんと反応する。  ツリ目がさらにつりあがって、怖い表情になっていたことが原因でもあるだろう。 「て、てて、ててててて」 「……?」 「手……繋がない?」 「え? ……う、うん」  またもや疑問形であったが、少しだけ強い意志の込められた言葉。  こなたは、かがみのお願いを断る理由もないし  断ろうという気も起きなかったようで……  ぎゅっ  確かめるように、手を握った。 「こなた……」 「かがみ……」  震える手で、互いの掌を確かめ合う。  2人の顔が赤く見えたのは、夕焼けだけのせいではないだろう。 「ふふ」 「えへへ」  照れたような笑い声。即座にB組が甘い空間に変わる。  誰か残っていたなら、きっと熱に当てられていたに違いない。  こういうことは公共の場ではあまり繰り広げないでいただきたいものだ。 「帰ろっかがみ♪」 「うん♪」  意気揚々と教室を出るかがみとこなた。  もし誰かがこの場を覗いていたとしたならば  お互いに見つめあい仲良く手を繋ぐその姿が、恋人同士に見えていたことは間違いないだろう。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ! -- 名無しさん (2022-12-18 11:50:34) - 確かにいいストリー展開だ。 -- 伝説の作家 (2009-07-07 00:41:23) - 個人的に &br()この保管庫で一番うまい作品だと思う。 &br()背景描写とかストリー展開とか。 &br()長さも丁度いいし読みやすい。 &br()次回作待ってます。 -- 名無しさん (2008-03-21 23:43:48) - うまいなぁ……書き慣れてる感が滲み出てるよ。&br()3人称は難しいのに、こんなにうまくまとめられるなんてお兄さんびっくりだ!!&br()素直に尊敬します。&br()次回作にwktkしつつ、今から全裸で待機しますね。 -- 名無しさん (2007-11-19 12:35:57) - こなかがスレは初期からいるんですが、まさか貴方の正体があの人とは…(汗)&br()&br()通りでこの話が投下当初から群を抜いて上手いと思った訳ですね。&br()ギャグも書けてシリアスも書けるのは本当に尊敬します。&br()たまにはこちらのスレにも力作をお願いしますね! -- 某書き手 (2007-11-11 20:28:26)

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