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催眠術」(2022/12/15 (木) 02:27:39) の最新版変更点

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「催眠術ぅ?」 「そ」 突然何を言い出すかと思えば・・・ 今は昼休み。いつものように、いつもの4人で昼食を取っていた所だ。 「昨日、ネットをブラブラしてたら見つけてさ?すべての技法をマスターしてしまったのだよ、私は」 意味もなくエラソーな態度でふんぞり返るこなた。はっきり言って眉唾物だ。 「そもそも催眠術って、人を操るようなヘンテコリンな物でしょ?あんたに出来るとは思えないんだけど」 「そんなこと無いよー。ね、みゆきさん」 「はい、催眠術とは、トランス状態という、夢うつつに近い状態まで人の意識を後退させ、そこで 命令をすると従ってしまう、という物を応用したものだったと記憶しています。ですが、飽くまで 本人の意識は残っているので、信頼している人にしか術はかけられないとか」 「さっすがゆきちゃん、物知りだねー」 ふむ・・・みゆきに言われると説得力がある。さすが生き字引みたいな人だ。 「でさ、今朝お父さんで試してみたんだよ。そしたらもう泣きっぱなし!涙ちょちょぎれ!」 「・・・一体何したんだよ」 「ん?私がお母さんに見えるよーって」 「お前は悪魔か」 大体、肉親の死を思い出させたりすると落ち込み具合がひどいと聞く。今頃キーボードを涙で故障させていたり、 悪ければロープでも探してるんじゃないか、と少しばかり心配になった。 「まあ、あらかじめ合意の上でだけどね。もちろん。お父さん、とっても喜んでたし。かなたとまた話せたみたいで 感激だ、って」 「・・・なら良いけどさ」 ・・・ちゃんと人のこと考えてるのね。 急にこなたの頭をなでてやりたい衝動に駆られたが、つかさもみゆきも居る前だ。そういう訳にも行かない。第一、 二人っきりだとしても・・・気恥ずかしくて出来そうもない。 「じゃあ、体験してみたい人!挙手!!」 「おいおい、私らも実験台にする気か?」 「じゃあ、つかさ!」 「えっ?!」 「人募っといて指名するなよ!」 結局つかさが実験台になることになった。 「えへへ、何かドキドキするなー」 期待半分、不安半分と言った表情だ。 「嫌ならちゃんと言うのよ。もし変なことになったら大変だから」 「大丈夫だよ、お姉ちゃん」 「じゃあ行くよー。まず私の目を見て下さい」 「はい、見てるよ」 インチキ占い師のような口調である。こういう占い師は当たらなさそうだ。 するとこなたが、おもむろに人差し指を立てた。 「次はこの人差し指の先をジーッと見て下さい」 「見てるよー」 「動かしますから、目で追って下さい」 今度は人差し指で、円を描くようにし始めた。 「こなちゃん、目が回りそうだよ~」 「シッ!静かに、もう喋らないで」 こなたはいつになく真剣な表情をしている。こんなこなたも可愛いな・・・って、いつの間にか ときめいてる私が居る事に気づいて、こなたに対する想いを再確認させられる。今頃になって、 何でさっき立候補しなかったんだろう、と後悔がこみ上げてきた。 こなたは、暫くおまじないか何かの様にウンダカダーと呪文らしき物を唱えたりしていたが、やがて手も口も止まった。 「これから私が手を叩くと、貴女は今から何か面白いことを言います。しかし貴女はそれを覚えていません、 記憶から消してしまいます。私が指を鳴らすと、術は解けて元に戻ります。はい!」 パン!! こなたが柏手の様に手を勢い良く合わせると、つかさが目を開けて、笑顔でこう言った。 「あははー、バルサミコ酢~」 「ぷっ」 思わず吹き出す私。見ればみゆきも口元を抑えており、こなたは目を細めて満足げな顔をしていた。 パチン! 「あ、あれ?私何て言ってた?!」 「バ、バルサミコ酢ーって・・・」 笑いが止まらなくて声が震える。 「わ、私そんなこと言ってたの?!でも何でバルサミコ酢なんだろう?」 顔を赤くして、俯いたまま考え込むつかさ。 「たぶん、昔テレビとか漫画とかで見た面白いものだよ。記憶にあるもの以外はどうしたって呼び起こせ無いもん」 人差し指を立ててこなたが言う。 「あ、そうだ!料理番組で司会の人が言ってたんだ!!思い出した!」 合点がいったのか、一転、顔を明るくするつかさ。 「それにしても、本当にかかるのね」 これには感心した。 「そうだよ~。かがみんも試してみる?」 「何て言ってかけるつもりよ。変なのだったら許さないからね」 「大丈夫だよ、そんな変なのはかけたりしないって」 「・・・じゃあ試してみようかしら」 不安はあるけど、こなたがかけてくるのだ。期待の方が大きい。 「じゃあ行くよー」 暫くこなたの言うとおりに目を動かしたりしていると、段々と意識が遠のいていくのが解った。 「・・・・・・」 こなたが何か言っている・・・でも何を言っているのかは、もう解らない。 パン!! 突然大きな音がしたので、私の意識は現実に引き戻された。 「・・・何をかけたって言うのよ。全然何とも無いじゃん」 目の前に広がる光景はいつもの昼食時だし、口を開いても変な言葉は出てこない。 (ちょっとがっかりかな・・・) 「ちょっとがっかりかな・・・!!思ったことがそのまま口に出てる!!」 私は慌てて口を押さえた。 「だーいせーこー」 「こなちゃんすごーい!」 「本当にこういう事が出来るのですね。驚きです」 「つかさもみゆきも喜んでないで、何とかしてよ!!考えてること筒抜けじゃない!」 「私にしかどうにも出来ないよ?かがみん」 「ちょっとぉ、何とかしなさいよっ!!」 兎に角さっさとどうにかして欲しかった。 「考えが筒抜けなんて恥ずかしいじゃない・・・」 「んー、具体的にどう恥ずかしいんだぃ、かーがみーん」 いたずら好きな子供のような目が、こちらを見つめている。 だって、だって 「だって、私がこなたの事が好きだってみんなに分かっちゃうじゃない!」 「!!」 私を含めた4人の驚きの反応。 私は、本心が大きな声で出てしまった事への驚き。 つかさとみゆきは普通に驚いていて・・・こなたは・・・ こなたは心底驚いた顔で、口を開けたまま固まっていた。 私の視界がにじみ始め、やがて涙がこぼれる。 (知られちゃった・・・) 「知られちゃった・・・」 次第に悲しみがこみ上げてくる。術は、こんな時も律儀に私の考えを口にさせた。 「好きなの・・・好きなのよ・・・好きで仕方ないのよぉ・・・ぐずっ」 「かがみ・・・」 「ひっ、・・・そうよね・・・女の子が、ひっく、女の子のこと好きになる・・・なんて、ひっ、どうか、ううっ、してる・・・もんね、ひっく」 なかなか呂律が回らない。 私は机に突っ伏して泣き出した。 「もう・・・、うう、喋れないわよぉ・・・」 「・・・かがみ、ちょっと顔上げて・・・」 こなたの済まなそうな声が聞こえる。 「ひっ、こ、これ以上、何しようって言うのよ・・・」 「いいから」 「・・・」 こなたに言われたとおり、顔を上げる。 すると 「へ?」 その瞬間、何をされたのか、私には理解できなかった。 次第に感覚が戻って来る。目の前に見えるこれは、こなたの顔。私の頬に触れているこれは、こなたの手。私の唇に触れているこれは、こなたの唇。私の口の中にあるこれは、こなたの舌。 「!!!!!」 ようやく自分が何をされているのかが分かった。 (こなたと・・・キスしてる・・・しかもディープ・・・) 「!!」 ショックと恥ずかしさは後から来た。慌てて顔を離す。 「こ、ここ教室よ!!」 「だってさ・・・かがみ。私、かがみの気持ち知っちゃったもん・・・」 (だからって・・・でも・・・) そこで私は術が解けているのに気が付いた。 「あ、あれ?考えてることが口に登らない・・・」 「先ほどの術の解除条件は『かがみさんの唇に泉さんが触れること』でしたので」 少々困った顔をしたみゆきが解説してくれた。 「・・・ホントは、『かがみん、シーッ』って唇に人差し指当てて『はい、解けました』ってやるつもりだったんだけどね・・・・・・・・・」 こなたは何やらゴニョゴニョと言葉を続けているが、声が小さすぎて聞き取れない。私もショックの余韻が大きくて、こなたの言葉に意識が向かなかった。 呆然とする私を、つかさが私のクラスまで送ってくれた。 「だ、大丈夫だよ、お姉ちゃん。たぶん見てる人居なかったから・・・」 「・・・うん」 「おーっす、柊ぃー。お、柊妹も一緒か。どうしたん?」 「柊ちゃん・・・何だか元気無さそうだけど、どうしたの?」 クラスの友人二人が、一人は野次馬根性丸出しで、一人は心配そうに聞いてくる。 「あ、あの・・・」 その辺りはつかさが適当にごまかしてくれた。事情の欠片を察してくれた峰岸が、日下部を引き離してくれた。 「じゃあ、放課後来るから・・・」 そう残してつかさはクラスに戻っていった。 その後の授業なんて頭に入るはずもなく、とても長い時間が過ぎていった。永遠とも思える時間。 その間、思い起こされるのはこなたの事だけ。 突然のキス。 こなたの唇・・・柔らかかったなぁ・・・ そこで疑問が湧いてくる。何故こなたは私にかけられた術を解くためにキスをしたのか。しかもディープ。 術を解くだけなら、当初の予定通り、ちょんと私の唇に触れるだけで良いのだ。 何故・・・・・・ ようやく最後の授業の終了のチャイムが鳴った。しかし、私はまだ動けなかった。 頭がボーっとする。今口を開けば、第一声は「こなた」だろう。つかさが迎えに来てくれなければ、 いつまでもそのままだったかも知れない。 その日の帰り道は、つかさと二人だった。 私は何も言わない。つかさも何も言わなかった。 家に帰っても頭の中はこなた色一色。何とか服を着替えると、そのままベッドへ倒れ込んで、 しばらくそのままで居た。 (明日も、こなた来るかなぁ・・・) そう思っていると、携帯が着信音を奏で始めた。メールの着信音。みゆきからのメール。 開くとこう書かれていた。 『泉さんは今日のことを大変気にしていらっしゃる様です。もう一度よく泉さんとお話されてみては?』 「こなたっ!!」 気が付くと、力の限りこなたの名前を叫んでいた。 「お姉ちゃん、どうしたのっ?!」 慌ててつかさが飛び込んでくる。 「な、何でもないわよ・・・何でも・・・」 「そ、そう・・・」 お互いの間に気まずい雰囲気が流れる。 「あ、あのね、お姉ちゃん・・・」 切り出したのはつかさの方だった。 「私はね、女の子が女の子のこと好きになっても、別におかしくないと思うよ」 「つかさ・・・」 「だからね、・・・勇気出してこなちゃんと、もう一回、真剣に話してみたら良いと思うの。 お姉ちゃんの為にも、こなちゃんの為にも・・・」 「・・・」 パタン、と軽いドアの音と共に、つかさは部屋を出ていった。 「・・・」 そっと唇をなでてみる。ショックが大きく、あのときの感覚はあまり覚えていない。 唯一覚えているのは、あの柔らかさ。 「・・・」 もう一度、さっきみゆきから来たメールを読み返す。 私はこなたの携帯の番号を呼び出し、通話ボタンを押した。 プルルルル・・・プルルルル・・・ 呼び出し音の度に、心臓の鼓動が激しさの度合いを増して行く。そのせいで頭に血が巡ってきたのか、 まともに物を考えられるようになってきた。 プルルルル・・・プルルルル・・・ 何故ずっと頭が真っ白だったのか。もっと早くこなたと話すべきでは無かったのか。 ショックが大きかったから、頭が真っ白だったのだ。 では何故、ショックだったのか。 不本意な強制告白。しかも意中の相手は目の前に。おまけに同性に対する、多少なりともやましい恋。 それから、突然のキス。公衆の面前で。 果たしてそれらはショックと呼べるのか。 (ううん、こなたのキスだったんだもの。あのときこなたを引き離した私がどうかしてたのよ???人の目を気にするなんて???) プルルルル・・・プルルルル・・・ (今度こそ・・・私の本心から「こなたが好き」って言うんだ!) プルルルル・・・プルルルル・・・ 呼び出し音の度、緊張は高まって行く。心臓は早鐘の様に打ち、今にも口から飛び出すのではないかという程だ。 が、いつまで経っても電話に出る気配がない。 (何でよ・・・私と話さないつもりなの?) にじみ始めた視界の中、私は終話ボタンを押した。 今度は泉家の番号を呼び出し。再び響く呼び出し音。 プルルルル・・・プルルルガチャッ 「はい、泉です」 電話口に出たのは、この間から泉家の居候になっている、ゆたかちゃんだった。 「あ、あのっ柊です、こなた居ますか?」 早口になってしまった。緊張は隠せそうもない。 「こなたお姉ちゃんですか?今出かけちゃってますけど・・・」 「そ、そう・・・ごめんなさい、どうもありがとうございます」 「いいえ、こちらこそ」 「あ、じゃあこれで」 「はい、さようなら」 プッ、ツーツーツーツー・・・ 途端に大きなため息と、涙がこみ上げてきた。 「・・・私のこと避けてるのかな・・・あのキスで全部おしまいのつもりだったのかな・・・」 嗚咽をかみ殺せなくなり、喉から声が漏れる。 「うぅっ、こなたぁ、こなたぁ・・・うう、うわぁぁん」 枕に顔を埋め、つかさに鳴き声を聞かれないようにする。そのせいで私には、周りの音が聞こえていなかった。 こんこん 控えめなノックの音がすることに気づいたのは、涙が枯れかけてきた頃だった。 「おねぇちゃーん?お姉ちゃん?」 「・・・開いてるわよ・・・」 ガチャ ドアを少しだけ開けたつかさが、心配そうな目をしていた。 「・・・何?ご飯出来たの?」 「ううん、お客さん」 「悪いけど帰って貰って・・・とても人に会えるような状態じゃないし・・・」 「それでも会って貰いたいお客さんなんだけど・・・」 キイィィ・・・ 少し油が切れてきた様な音を立てて、部屋のドアが開く。誰だろう、私がこんな状態でもつかさが「会わせたい」という客人とは。 「かがみ・・・」 「!!!!!」 心臓が跳ね上がる。息が止まる。思考が止まる。 私のすべてが止まってしまったのではないかと思った。 枯れかけていた涙が、再び溢れ始める。 「・・・こ・・・こなた・・・」 「かがみ・・・ゴメンね。私・・・」 これ以上、こなたは先を続けなかった。否、私が続けさせなかった。 とっさに駆け寄った私が、こなたの唇を私の唇で塞いだ。 「ふっ・・・むぅ・・・ふぁぁ・・・んっ・・・」 時々、水音が部屋に響いた。 どれくらいの間こうしていただろうか。ゆっくりと顔を離す。つかさはいつの間にか、ドアを閉めて出て行ってくれていた。 こなたには、まだ聞きたいことがある。 「どうして電話に出なかったのよ!」 「い、いや、携帯は制服のポケットに入れっぱなしで・・・」 「どうして・・・あの時私にキスしたのよ!催眠術解くだけなら普通に触れば良かったじゃない!」 「・・・それは・・・」 こなたが俯いて口を噤む。 「何よ!言えないの!?」 私は声を荒げた。こなたに隠し事をされるのが嫌だったから。 「・・・それは・・・」 「さっさと言いなさいよ!!」 こなたの肩が震え始める。 そこでハッとなった。 こなたを泣かせてしまった・・・私の一番望まないものなのに 「ご、ゴメン・・・わ、私・・・どうしてもこなたに隠し事とかされたくなくて・・・」 こなたを抱き寄せる。小さい肩が震えている。 「ゴメンね・・・ゴメンね・・・本当はこなたの涙なんか見たくないのに・・・ううっ」 「違うんだよ、かがみぃ・・・違うの・・・」 こなたが顔を上げる。 「私もね、かがみの事大好きなの」 そこにあったのは、涙まみれの満面の笑み。 その顔を見たとき、私はどうしようもなくなって。 きつくこなたを抱きしめて、ただただこなたの名前を呼び続けた。 「こなたぁ・・・うぐっ・・・こなたぁ!」 「心配しなくてもかがみん、私はここにいるよ?」 「うわあぁぁん!こなたぁ!!」 「っちょ、ちょっとかがみ、・・・苦しい・・・」 「あ、ご、ごめん・・・」 こなたの苦しげな声にようやく気づき、力を緩めた。しかし絡めている腕は解かない。 「あ、あのさ、いつか・・・ら?」 「知り合って少ししてから・・・」 「・・・何で?」 「とっても良さそうな人で・・・みんなに気配りが出来る人で・・・でも、とっても寂しがりな人だから・・・私が何とかしてあげたいなって思って・・・それから次第に・・・」 こなたの顔が次第に俯いて行く。 「そっか・・・有り難う、こなた」 「へ?」 こなたがゆっくりと顔を上げる。 私はこなたへの感謝の言葉を、ゆっくりと、出来る限りの笑顔で紡いだ。 「理由話してくれて、また私に会いに来てくれて。それから、私を好きになってくれて」 「かがみ・・・」 「でもっ、私に無理矢理告白させたことは許さないわよ!」 「・・・ごめんなさい・・・」 こなたがシュンとなる。 そんなこなたがまた愛おしくて。 「じゃあ・・・責任・・・取ってよね?」 「・・・うん、分かった。取るよ」 その台詞を聞いて、再び唇を押し当てる。 こなたの味を出来る限り味わうように、こなたの口の中で舌を蹂躙させる。 「うむぅっ、んんっ」 少々甘い。今日の昼に食べたチョココロネの味だろうか。 「ふぁっ、うむんぅ・・・」 どちらからともなく、お互いの舌を絡める。 今はそうしているだけで幸せで。 私は、そのとき、自分が世界で一番幸せな女の子だと思った。 どれ位の間、そうしていただろうか。窓越しに見える空は、すっかり闇に染まっていた。 「・・・もう8時だよ」 「・・・そだね」 「あ、あのさ・・・こなた。今日は泊まっていったら?」 「え、良いの?」 「お姉ちゃん達は私がどうにかして説き伏せるわよ。今日からお父さんとお母さん、旅行行っちゃってるし」 「じゃあ私はお父さんに電話してくるよ。電話貸して?」 「オッケー」 さっきまでのモヤモヤは綺麗さっぱり、跡形もなく姿を消していた。 その日の夜、かがみの自室から、二人の押し殺したような喘ぎ声が漏れていたのは言うまでもない。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - つかさGJ! &br()ボクもまぜちょくれーッ!=(つ>▽<)つ -- ぷにゃねこ (2013-01-27 18:16:04) - こなたの「シーッ」の声を聞いてみたい -- 名無しさん (2012-11-12 20:54:15) - かがみんとこなた可愛すぎるぞ! &br() -- アオキ (2012-01-19 18:16:29) - 全く、イチャイチャしおって -- 名無しさん (2010-04-20 15:04:06) - かがみがねぇ -- 柊まつり (2010-01-22 17:44:49) - その喘ぎ声は、いのりさんとまつりさんとつかさに、ドアごしにバッチリ聞かれているわけか。 -- 名無しさん (2009-12-05 22:38:40) - つかさ出来る子! &br()良い話でしたw -- (2009-03-19 12:01:35) - つかさGJwww -- 0210 (2009-03-13 19:24:37) - 良いです。 -- 名無しさん (2008-05-27 21:00:18) - GJ! &br() -- ゆん (2008-04-14 16:59:13)
「催眠術ぅ?」 「そ」 突然何を言い出すかと思えば・・・ 今は昼休み。いつものように、いつもの4人で昼食を取っていた所だ。 「昨日、ネットをブラブラしてたら見つけてさ?すべての技法をマスターしてしまったのだよ、私は」 意味もなくエラソーな態度でふんぞり返るこなた。はっきり言って眉唾物だ。 「そもそも催眠術って、人を操るようなヘンテコリンな物でしょ?あんたに出来るとは思えないんだけど」 「そんなこと無いよー。ね、みゆきさん」 「はい、催眠術とは、トランス状態という、夢うつつに近い状態まで人の意識を後退させ、そこで 命令をすると従ってしまう、という物を応用したものだったと記憶しています。ですが、飽くまで 本人の意識は残っているので、信頼している人にしか術はかけられないとか」 「さっすがゆきちゃん、物知りだねー」 ふむ・・・みゆきに言われると説得力がある。さすが生き字引みたいな人だ。 「でさ、今朝お父さんで試してみたんだよ。そしたらもう泣きっぱなし!涙ちょちょぎれ!」 「・・・一体何したんだよ」 「ん?私がお母さんに見えるよーって」 「お前は悪魔か」 大体、肉親の死を思い出させたりすると落ち込み具合がひどいと聞く。今頃キーボードを涙で故障させていたり、 悪ければロープでも探してるんじゃないか、と少しばかり心配になった。 「まあ、あらかじめ合意の上でだけどね。もちろん。お父さん、とっても喜んでたし。かなたとまた話せたみたいで 感激だ、って」 「・・・なら良いけどさ」 ・・・ちゃんと人のこと考えてるのね。 急にこなたの頭をなでてやりたい衝動に駆られたが、つかさもみゆきも居る前だ。そういう訳にも行かない。第一、 二人っきりだとしても・・・気恥ずかしくて出来そうもない。 「じゃあ、体験してみたい人!挙手!!」 「おいおい、私らも実験台にする気か?」 「じゃあ、つかさ!」 「えっ?!」 「人募っといて指名するなよ!」 結局つかさが実験台になることになった。 「えへへ、何かドキドキするなー」 期待半分、不安半分と言った表情だ。 「嫌ならちゃんと言うのよ。もし変なことになったら大変だから」 「大丈夫だよ、お姉ちゃん」 「じゃあ行くよー。まず私の目を見て下さい」 「はい、見てるよ」 インチキ占い師のような口調である。こういう占い師は当たらなさそうだ。 するとこなたが、おもむろに人差し指を立てた。 「次はこの人差し指の先をジーッと見て下さい」 「見てるよー」 「動かしますから、目で追って下さい」 今度は人差し指で、円を描くようにし始めた。 「こなちゃん、目が回りそうだよ~」 「シッ!静かに、もう喋らないで」 こなたはいつになく真剣な表情をしている。こんなこなたも可愛いな・・・って、いつの間にか ときめいてる私が居る事に気づいて、こなたに対する想いを再確認させられる。今頃になって、 何でさっき立候補しなかったんだろう、と後悔がこみ上げてきた。 こなたは、暫くおまじないか何かの様にウンダカダーと呪文らしき物を唱えたりしていたが、やがて手も口も止まった。 「これから私が手を叩くと、貴女は今から何か面白いことを言います。しかし貴女はそれを覚えていません、 記憶から消してしまいます。私が指を鳴らすと、術は解けて元に戻ります。はい!」 パン!! こなたが柏手の様に手を勢い良く合わせると、つかさが目を開けて、笑顔でこう言った。 「あははー、バルサミコ酢~」 「ぷっ」 思わず吹き出す私。見ればみゆきも口元を抑えており、こなたは目を細めて満足げな顔をしていた。 パチン! 「あ、あれ?私何て言ってた?!」 「バ、バルサミコ酢ーって・・・」 笑いが止まらなくて声が震える。 「わ、私そんなこと言ってたの?!でも何でバルサミコ酢なんだろう?」 顔を赤くして、俯いたまま考え込むつかさ。 「たぶん、昔テレビとか漫画とかで見た面白いものだよ。記憶にあるもの以外はどうしたって呼び起こせ無いもん」 人差し指を立ててこなたが言う。 「あ、そうだ!料理番組で司会の人が言ってたんだ!!思い出した!」 合点がいったのか、一転、顔を明るくするつかさ。 「それにしても、本当にかかるのね」 これには感心した。 「そうだよ~。かがみんも試してみる?」 「何て言ってかけるつもりよ。変なのだったら許さないからね」 「大丈夫だよ、そんな変なのはかけたりしないって」 「・・・じゃあ試してみようかしら」 不安はあるけど、こなたがかけてくるのだ。期待の方が大きい。 「じゃあ行くよー」 暫くこなたの言うとおりに目を動かしたりしていると、段々と意識が遠のいていくのが解った。 「・・・・・・」 こなたが何か言っている・・・でも何を言っているのかは、もう解らない。 パン!! 突然大きな音がしたので、私の意識は現実に引き戻された。 「・・・何をかけたって言うのよ。全然何とも無いじゃん」 目の前に広がる光景はいつもの昼食時だし、口を開いても変な言葉は出てこない。 (ちょっとがっかりかな・・・) 「ちょっとがっかりかな・・・!!思ったことがそのまま口に出てる!!」 私は慌てて口を押さえた。 「だーいせーこー」 「こなちゃんすごーい!」 「本当にこういう事が出来るのですね。驚きです」 「つかさもみゆきも喜んでないで、何とかしてよ!!考えてること筒抜けじゃない!」 「私にしかどうにも出来ないよ?かがみん」 「ちょっとぉ、何とかしなさいよっ!!」 兎に角さっさとどうにかして欲しかった。 「考えが筒抜けなんて恥ずかしいじゃない・・・」 「んー、具体的にどう恥ずかしいんだぃ、かーがみーん」 いたずら好きな子供のような目が、こちらを見つめている。 だって、だって 「だって、私がこなたの事が好きだってみんなに分かっちゃうじゃない!」 「!!」 私を含めた4人の驚きの反応。 私は、本心が大きな声で出てしまった事への驚き。 つかさとみゆきは普通に驚いていて・・・こなたは・・・ こなたは心底驚いた顔で、口を開けたまま固まっていた。 私の視界がにじみ始め、やがて涙がこぼれる。 (知られちゃった・・・) 「知られちゃった・・・」 次第に悲しみがこみ上げてくる。術は、こんな時も律儀に私の考えを口にさせた。 「好きなの・・・好きなのよ・・・好きで仕方ないのよぉ・・・ぐずっ」 「かがみ・・・」 「ひっ、・・・そうよね・・・女の子が、ひっく、女の子のこと好きになる・・・なんて、ひっ、どうか、ううっ、してる・・・もんね、ひっく」 なかなか呂律が回らない。 私は机に突っ伏して泣き出した。 「もう・・・、うう、喋れないわよぉ・・・」 「・・・かがみ、ちょっと顔上げて・・・」 こなたの済まなそうな声が聞こえる。 「ひっ、こ、これ以上、何しようって言うのよ・・・」 「いいから」 「・・・」 こなたに言われたとおり、顔を上げる。 すると 「へ?」 その瞬間、何をされたのか、私には理解できなかった。 次第に感覚が戻って来る。目の前に見えるこれは、こなたの顔。私の頬に触れているこれは、こなたの手。私の唇に触れているこれは、こなたの唇。私の口の中にあるこれは、こなたの舌。 「!!!!!」 ようやく自分が何をされているのかが分かった。 (こなたと・・・キスしてる・・・しかもディープ・・・) 「!!」 ショックと恥ずかしさは後から来た。慌てて顔を離す。 「こ、ここ教室よ!!」 「だってさ・・・かがみ。私、かがみの気持ち知っちゃったもん・・・」 (だからって・・・でも・・・) そこで私は術が解けているのに気が付いた。 「あ、あれ?考えてることが口に登らない・・・」 「先ほどの術の解除条件は『かがみさんの唇に泉さんが触れること』でしたので」 少々困った顔をしたみゆきが解説してくれた。 「・・・ホントは、『かがみん、シーッ』って唇に人差し指当てて『はい、解けました』ってやるつもりだったんだけどね・・・・・・・・・」 こなたは何やらゴニョゴニョと言葉を続けているが、声が小さすぎて聞き取れない。私もショックの余韻が大きくて、こなたの言葉に意識が向かなかった。 呆然とする私を、つかさが私のクラスまで送ってくれた。 「だ、大丈夫だよ、お姉ちゃん。たぶん見てる人居なかったから・・・」 「・・・うん」 「おーっす、柊ぃー。お、柊妹も一緒か。どうしたん?」 「柊ちゃん・・・何だか元気無さそうだけど、どうしたの?」 クラスの友人二人が、一人は野次馬根性丸出しで、一人は心配そうに聞いてくる。 「あ、あの・・・」 その辺りはつかさが適当にごまかしてくれた。事情の欠片を察してくれた峰岸が、日下部を引き離してくれた。 「じゃあ、放課後来るから・・・」 そう残してつかさはクラスに戻っていった。 その後の授業なんて頭に入るはずもなく、とても長い時間が過ぎていった。永遠とも思える時間。 その間、思い起こされるのはこなたの事だけ。 突然のキス。 こなたの唇・・・柔らかかったなぁ・・・ そこで疑問が湧いてくる。何故こなたは私にかけられた術を解くためにキスをしたのか。しかもディープ。 術を解くだけなら、当初の予定通り、ちょんと私の唇に触れるだけで良いのだ。 何故・・・・・・ ようやく最後の授業の終了のチャイムが鳴った。しかし、私はまだ動けなかった。 頭がボーっとする。今口を開けば、第一声は「こなた」だろう。つかさが迎えに来てくれなければ、 いつまでもそのままだったかも知れない。 その日の帰り道は、つかさと二人だった。 私は何も言わない。つかさも何も言わなかった。 家に帰っても頭の中はこなた色一色。何とか服を着替えると、そのままベッドへ倒れ込んで、 しばらくそのままで居た。 (明日も、こなた来るかなぁ・・・) そう思っていると、携帯が着信音を奏で始めた。メールの着信音。みゆきからのメール。 開くとこう書かれていた。 『泉さんは今日のことを大変気にしていらっしゃる様です。もう一度よく泉さんとお話されてみては?』 「こなたっ!!」 気が付くと、力の限りこなたの名前を叫んでいた。 「お姉ちゃん、どうしたのっ?!」 慌ててつかさが飛び込んでくる。 「な、何でもないわよ・・・何でも・・・」 「そ、そう・・・」 お互いの間に気まずい雰囲気が流れる。 「あ、あのね、お姉ちゃん・・・」 切り出したのはつかさの方だった。 「私はね、女の子が女の子のこと好きになっても、別におかしくないと思うよ」 「つかさ・・・」 「だからね、・・・勇気出してこなちゃんと、もう一回、真剣に話してみたら良いと思うの。 お姉ちゃんの為にも、こなちゃんの為にも・・・」 「・・・」 パタン、と軽いドアの音と共に、つかさは部屋を出ていった。 「・・・」 そっと唇をなでてみる。ショックが大きく、あのときの感覚はあまり覚えていない。 唯一覚えているのは、あの柔らかさ。 「・・・」 もう一度、さっきみゆきから来たメールを読み返す。 私はこなたの携帯の番号を呼び出し、通話ボタンを押した。 プルルルル・・・プルルルル・・・ 呼び出し音の度に、心臓の鼓動が激しさの度合いを増して行く。そのせいで頭に血が巡ってきたのか、 まともに物を考えられるようになってきた。 プルルルル・・・プルルルル・・・ 何故ずっと頭が真っ白だったのか。もっと早くこなたと話すべきでは無かったのか。 ショックが大きかったから、頭が真っ白だったのだ。 では何故、ショックだったのか。 不本意な強制告白。しかも意中の相手は目の前に。おまけに同性に対する、多少なりともやましい恋。 それから、突然のキス。公衆の面前で。 果たしてそれらはショックと呼べるのか。 (ううん、こなたのキスだったんだもの。あのときこなたを引き離した私がどうかしてたのよ???人の目を気にするなんて???) プルルルル・・・プルルルル・・・ (今度こそ・・・私の本心から「こなたが好き」って言うんだ!) プルルルル・・・プルルルル・・・ 呼び出し音の度、緊張は高まって行く。心臓は早鐘の様に打ち、今にも口から飛び出すのではないかという程だ。 が、いつまで経っても電話に出る気配がない。 (何でよ・・・私と話さないつもりなの?) にじみ始めた視界の中、私は終話ボタンを押した。 今度は泉家の番号を呼び出し。再び響く呼び出し音。 プルルルル・・・プルルルガチャッ 「はい、泉です」 電話口に出たのは、この間から泉家の居候になっている、ゆたかちゃんだった。 「あ、あのっ柊です、こなた居ますか?」 早口になってしまった。緊張は隠せそうもない。 「こなたお姉ちゃんですか?今出かけちゃってますけど・・・」 「そ、そう・・・ごめんなさい、どうもありがとうございます」 「いいえ、こちらこそ」 「あ、じゃあこれで」 「はい、さようなら」 プッ、ツーツーツーツー・・・ 途端に大きなため息と、涙がこみ上げてきた。 「・・・私のこと避けてるのかな・・・あのキスで全部おしまいのつもりだったのかな・・・」 嗚咽をかみ殺せなくなり、喉から声が漏れる。 「うぅっ、こなたぁ、こなたぁ・・・うう、うわぁぁん」 枕に顔を埋め、つかさに鳴き声を聞かれないようにする。そのせいで私には、周りの音が聞こえていなかった。 こんこん 控えめなノックの音がすることに気づいたのは、涙が枯れかけてきた頃だった。 「おねぇちゃーん?お姉ちゃん?」 「・・・開いてるわよ・・・」 ガチャ ドアを少しだけ開けたつかさが、心配そうな目をしていた。 「・・・何?ご飯出来たの?」 「ううん、お客さん」 「悪いけど帰って貰って・・・とても人に会えるような状態じゃないし・・・」 「それでも会って貰いたいお客さんなんだけど・・・」 キイィィ・・・ 少し油が切れてきた様な音を立てて、部屋のドアが開く。誰だろう、私がこんな状態でもつかさが「会わせたい」という客人とは。 「かがみ・・・」 「!!!!!」 心臓が跳ね上がる。息が止まる。思考が止まる。 私のすべてが止まってしまったのではないかと思った。 枯れかけていた涙が、再び溢れ始める。 「・・・こ・・・こなた・・・」 「かがみ・・・ゴメンね。私・・・」 これ以上、こなたは先を続けなかった。否、私が続けさせなかった。 とっさに駆け寄った私が、こなたの唇を私の唇で塞いだ。 「ふっ・・・むぅ・・・ふぁぁ・・・んっ・・・」 時々、水音が部屋に響いた。 どれくらいの間こうしていただろうか。ゆっくりと顔を離す。つかさはいつの間にか、ドアを閉めて出て行ってくれていた。 こなたには、まだ聞きたいことがある。 「どうして電話に出なかったのよ!」 「い、いや、携帯は制服のポケットに入れっぱなしで・・・」 「どうして・・・あの時私にキスしたのよ!催眠術解くだけなら普通に触れば良かったじゃない!」 「・・・それは・・・」 こなたが俯いて口を噤む。 「何よ!言えないの!?」 私は声を荒げた。こなたに隠し事をされるのが嫌だったから。 「・・・それは・・・」 「さっさと言いなさいよ!!」 こなたの肩が震え始める。 そこでハッとなった。 こなたを泣かせてしまった・・・私の一番望まないものなのに 「ご、ゴメン・・・わ、私・・・どうしてもこなたに隠し事とかされたくなくて・・・」 こなたを抱き寄せる。小さい肩が震えている。 「ゴメンね・・・ゴメンね・・・本当はこなたの涙なんか見たくないのに・・・ううっ」 「違うんだよ、かがみぃ・・・違うの・・・」 こなたが顔を上げる。 「私もね、かがみの事大好きなの」 そこにあったのは、涙まみれの満面の笑み。 その顔を見たとき、私はどうしようもなくなって。 きつくこなたを抱きしめて、ただただこなたの名前を呼び続けた。 「こなたぁ・・・うぐっ・・・こなたぁ!」 「心配しなくてもかがみん、私はここにいるよ?」 「うわあぁぁん!こなたぁ!!」 「っちょ、ちょっとかがみ、・・・苦しい・・・」 「あ、ご、ごめん・・・」 こなたの苦しげな声にようやく気づき、力を緩めた。しかし絡めている腕は解かない。 「あ、あのさ、いつか・・・ら?」 「知り合って少ししてから・・・」 「・・・何で?」 「とっても良さそうな人で・・・みんなに気配りが出来る人で・・・でも、とっても寂しがりな人だから・・・私が何とかしてあげたいなって思って・・・それから次第に・・・」 こなたの顔が次第に俯いて行く。 「そっか・・・有り難う、こなた」 「へ?」 こなたがゆっくりと顔を上げる。 私はこなたへの感謝の言葉を、ゆっくりと、出来る限りの笑顔で紡いだ。 「理由話してくれて、また私に会いに来てくれて。それから、私を好きになってくれて」 「かがみ・・・」 「でもっ、私に無理矢理告白させたことは許さないわよ!」 「・・・ごめんなさい・・・」 こなたがシュンとなる。 そんなこなたがまた愛おしくて。 「じゃあ・・・責任・・・取ってよね?」 「・・・うん、分かった。取るよ」 その台詞を聞いて、再び唇を押し当てる。 こなたの味を出来る限り味わうように、こなたの口の中で舌を蹂躙させる。 「うむぅっ、んんっ」 少々甘い。今日の昼に食べたチョココロネの味だろうか。 「ふぁっ、うむんぅ・・・」 どちらからともなく、お互いの舌を絡める。 今はそうしているだけで幸せで。 私は、そのとき、自分が世界で一番幸せな女の子だと思った。 どれ位の間、そうしていただろうか。窓越しに見える空は、すっかり闇に染まっていた。 「・・・もう8時だよ」 「・・・そだね」 「あ、あのさ・・・こなた。今日は泊まっていったら?」 「え、良いの?」 「お姉ちゃん達は私がどうにかして説き伏せるわよ。今日からお父さんとお母さん、旅行行っちゃってるし」 「じゃあ私はお父さんに電話してくるよ。電話貸して?」 「オッケー」 さっきまでのモヤモヤは綺麗さっぱり、跡形もなく姿を消していた。 その日の夜、かがみの自室から、二人の押し殺したような喘ぎ声が漏れていたのは言うまでもない。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ! -- 名無しさん (2022-12-15 02:27:39) - つかさGJ! &br()ボクもまぜちょくれーッ!=(つ>▽<)つ -- ぷにゃねこ (2013-01-27 18:16:04) - こなたの「シーッ」の声を聞いてみたい -- 名無しさん (2012-11-12 20:54:15) - かがみんとこなた可愛すぎるぞ! &br() -- アオキ (2012-01-19 18:16:29) - 全く、イチャイチャしおって -- 名無しさん (2010-04-20 15:04:06) - かがみがねぇ -- 柊まつり (2010-01-22 17:44:49) - その喘ぎ声は、いのりさんとまつりさんとつかさに、ドアごしにバッチリ聞かれているわけか。 -- 名無しさん (2009-12-05 22:38:40) - つかさ出来る子! &br()良い話でしたw -- (2009-03-19 12:01:35) - つかさGJwww -- 0210 (2009-03-13 19:24:37) - 良いです。 -- 名無しさん (2008-05-27 21:00:18) - GJ! &br() -- ゆん (2008-04-14 16:59:13)

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