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『Keep on dreaming』」(2023/09/18 (月) 15:40:34) の最新版変更点

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12月冬休み前日、高校では放課後に当たる時間に行われる5限目の講義。 本来この時間に講義は取っていないのだが、別の時間で取っていた 講義で先週1回休講があり、その分の補講として、今日のこの時間に 行われることとなった。 そして出席点ギリギリの私・・・泉こなたは、こうして今出席しているわけなのであるが、 この後、愛しのかがみんとの明日から1泊2日のスキー旅行が待っている為、 講義が始まってからずっと時計の針が気になり、いつも以上に身が入らない。 しかも今日の晩出発だから尚更だ。 実はこの講義、かがみの大学でも同じ講師が同じ講義を開講しており、 その講義をかがみも受講している。だからいざとなればかがみに頼ることが出来る、 な~んて少々気を抜いてやっていたらこんな結果になってしまった。 あ~今日会ったら、このことについて小言をいわれるんだろうな~。 『あんたとの腐れ縁も大学に入っても相変わらずとは言え、だらしないのも相変わらず ってどういうことだ。こちらとしては前向きな進歩を見たいものだがな。』って。 まあ自業自得だからしょうがないけどね~。 むしろ互いに違う環境になったとしても、高校の時と変わらないやりとりが出来ることが どこか嬉しい。・・・にしても早く終わらないかな、講義。 そんな感じで多少ソワソワして聴いていた、冬休み前最後の授業。 終了を告げるベルが鳴った瞬間、普段では考えられないスピードで ノートを閉じ、椅子を蹴って講義が行われた円形教室を飛び出していった。 『Keep on dreaming』 ―――――タッ、タッ、タッ・・・・・。 「こなた!もう間に合わないわよ!!」 「しょうがないでしょ!かがみ、もう!!」 「しょうがなくない。そもそもアンタが講義サボりまくって、 今日の夕方も出席しなくてはならない状態になったのが悪い!自業自得だ!!」」 「と、とにかく、口よりも足を動かして、かがみ。」 「・・・分かったわよ。(小声で)たく、誰のせいでそうなったんだ・・・ブツブツ・・ (結構楽しみにしてたのにな~)。」 私は今かがみと一緒に、スキー場へのバスが停まっている新宿駅西口の停車場を 目指し、新宿駅西口の地下通路をひたすら走っている。 「戸狩・野沢・木島平方面行きのバスはこちらで~す!!」 と首からプラカードをかけた、旅行会社の社員と思われるお姉さんが、 呼びかけをしている。 必死になって走ったおかげか、どうにか出発時間までに間に合ったようだ。 「ふう、どうにかつきましたな~かがみんや。」 「たく、一時はどうなるかと。もう少し時間に正確になりなさいよ。」 「へ~い、善処しますよ~。」 「こういう時の善処しますよって、信頼性ゼロよね。」 「そんなこと言ったら、かがみだってみさきちに同じ事言ったらしいじゃん。 この間聞いたよ。これってどういうことかな~。」 「と、とにかく少しは時間に正確になりなさい。」 そんなこんなでバスに乗り、指定された席に座った。 「(座席に座り)ふ~これで後はこのままスキー場まで直行だね。」 「そうね。」 「ところでかがみん、こういう観光バスに乗ると、小学校の時のピクニックを 思い出さない?」 「そうね。ピクニック自体も楽しかったけど、バスの中も楽しかった記憶があるからね。 こう、バスガイドさんとかいてね。」 「みなさんこんにちは。本日みなさんと旅をすることになりました、泉こなたです~。 (営業スマイル&若干声作って)」 「そうそう、そんな感じ。」 「それではバスガイドさんを紹介しま~す。」 「お前誰だよ!!」 「皆様右手をご覧ください。・・・・・バスガイドで~す。」 「お前いらないだろ!バスガイド紹介するガイドって何だ?」 「名前は、柊かがみで~す。」 「しつこいよ!」 「いや~バスガイドさんへの憧れや、そんなバスガイドを紹介して欲しいって願望から ・・つい。バスむすめとか・・。」 「なんかすごく引っかかるものがあるが、バスガイドさんへの憧れは多少分かるわよ。 でも・・」 「え、かがみんもバスガイドさんとか憧れたことがあるんだ~。 結構かわいいところあるんだね~。」 「(赤面して)う、うるさい!!それよりもバス内でお遊戯とかするでしょ、 バスガイドさんとさ。」 「そうだね~。かがみん、それロン、リーチ一発ドラドラで・・」 「おっさんか!!」 「おっさんじゃないよ。ツインテールでナイスバディな萌える女の子のつもりだよ。」 「どうでもいいわよ。とにかく、バス内で麻雀ってどんな小学生だ! 私は一緒にお歌とか歌うこととかを言ってたのよ。 ふう、そんなことよりも早く寝ろ、明日着いたらすぐスキー場なんだから。」 「あ~い、んじゃおやすみ。」 「おやすみ。」 しばらくしてバス内の照明が消灯し、車内は静かになった。 シャカ、シャカ、シャカ。 (こなたの奴、ヘッドホンで音楽聴いているのか?音漏れして周りにも迷惑だし、 ちょっと注意するか。) 「(小声で)ちょっとこなた。ヘッドホンの音量下げてくれない? さっきから音漏れしているんだけど。」 「いや今、肉まんとあんまん耳につけているんだけど。」 「何しているのよ、あんた。ホンモノのバカだろ。」 「イヤホンから流れる音楽でリズム取りながら、こうやって (肉まんとあんまんを耳につけ、体を揺らして)中の具をかき混ぜているんだよ。」 「意味分かんない。かき混ぜるんだったら、手で持ってやれよ。 ・・・『あ~その手があったか』ってジェスチャーするんじゃないじゃないわよ。 とにかく、イヤホンの音量下げろ。あと、肉まんとあんまん胸に持ってきておっぱい、 おっぱいって、肉まんとあんまんの無駄な活用するな。 (両手でこなたの頬をつねり)いいからとっとと寝ようか~、こなた~。」 「いひゃい、いひゃい。」 こうした私がボケをかまし、かがみが突っ込むといったやりとりをしていたが、 結局硬くて寝にくいシートにて、二人肩と頭を支えあい静かに眠る体勢をとり眠ること となった。 なお、今回の目的地は、長野県にある野沢温泉スキー場である。 野沢温泉に行くことになったきっかけは、かがみとの電話でのやりとりになる。 話の運びとしては、かがみが『来年の2月にサークルでスキー合宿するから、 行く前に一度練習がてらスキーに行きたい』と軽く言ったのに対し、 『じゃあ冬休みに入ったら行こうか』とこれまた軽く私が言ったことから、 なし崩し的に今回の旅行計画はスタートした。 候補地として苗場、白馬、ガーラ湯沢等が上がったが、スキーだけじゃなく 他に楽しめるところということで温泉街もある野沢温泉スキー場へと決まった。 こうして『私をスキーに連れてって』と言ったかがみを、なんとなく私が連れていく形 で計画は発案から実施へと進んでいった。 ・・・今のくだり、是非ともかがみん本人の突っ込みを頂きたいものだ。 けれど今かがみに振っても、とうに眠り『へんじがしない。ただのしかばねのようだ。』 な状態の為リアクションを期待できないので、私も明日に備えいい加減眠ることにした。 ―――そんなこんなでバスは、一路目的地へと向かっていった。 「やってきたきた北の湖www~。」 「来た早々におやじギャグかお前。」 バスに揺れること数時間、私たちは野沢温泉スキー場へとたどり着いた。 バスの停車場に到着してすぐ、旅行カバンを手に今回宿泊する、 温泉街にある民宿へと向かい、チェックインの手続きを行った。 宿にて持参したウェアに着替え、レンタルショップでスキー用具をレンタルし、 ゲレンデへ行く準備を整えた。そして、前日まで雪が降っていたからかすごく雪質が良く、 ふかふかしていて、踏みしめたらすごく心地いいゲレンデへとやってきた。 ちなみに、今回の為に私たちが購入したウェアは、神田の大手スポーツ用品店で購入した ものである。私が着用しているウェアはベアチェックブラックのファー付きジャケットに、 ブラウンのパンツで、とりあえず『最近のトレンド追いました』な格好をしている。 かがみが着用しているのは、切り返しがマルチチェックオレンジになっているブラックの ファー付きジャケットに、マルチチェックオレンジのパンツである。ただかがみの場合、 着用しているウェアもさることながら、雪による光の反射で、プリクラの様に顔に照明が 当たったみたいになって、肌が白く見える現象 ――通称『ゲレンデ効果』のおかげで、普段よりも3割増し可愛くなっている。 ・・・女の私も見惚れるくらいに・・。 その為、声をかけた男性係員の対応も、普段よりも優しく親切に感じられ、こころなしか、 かがみは少し嬉しそうだった。かがみん、その優しさには下心が混じったものだよと考え ていたら、なんと私にも親切に対応された ・・・こちらはかがみのとは違い、小さな子供に対してのものであったがorz・・ ただその対応が、最初から頂上の中級コースからスタートする私を心配したり、 私がある程度経験が有るから大丈夫と答えると小さいのにすごいねと本当に感心したりと、親友のみゆきさんの様な親切さで対応するものだから、『私、実は大学生なんですよ』と弁解するのも何か悪い気がして、子供として貫き通していた。 そんな私の隣でかがみが笑いを堪えていた・・・あのさかがみん、普段私に弄られているから、 今の私の様子はすごく滑稽で、面白いかい?ちなみに笑いをこらえている表情、 『ゲレンデ効果』を打ち消すくらいにひどい崩し様だからね。それはそれで滑稽だよ。 そう考えていることはつゆ知らず、かがみはいよいよ笑いを堪え切れず、 よりひどく崩した表情で噴き出た。 そこで係の男性に心配されたところ『いえ、人見知りするこの子がこんなに楽しそうな のを見て、嬉しくなってついwww・・・』などとのたまった。 そして笑いながら、出来る限り可愛らしく私に『ごめんね。』とジェスチャーしてきた。 おのれかがみ、後でそうとう弄ってやるから覚悟しろ! そんな可愛らしく謝っても無駄なんだからね!! 『ゲレンデ効果』だってなくなっているんだから!!! ゴンドラとリフトを乗り継ぎ、今ゲレンデとなっている毛無山の頂上にいる。 そこは下の温泉街とは別世界の大自然が、パノラマの様な広がりを見せ、 遠くに日本海を望むことができた。 空は雲ひとつなく晴れ渡り、太陽と若干青白く光る月が映り、それに加え冷たく 爽やかな北風がどこまでも透き通っているように思わせる透明感を感じさせた。 そんな情景に感動や興奮やらで気持ちが高まり、どう自分の感情を表したら いいか分からない私は一瞬言葉を無くした。それはかがみもいっしょで、 リフトに乗ったときから傍目から分かるくらいワクワクしていたが、この情景を見たこと で一瞬言葉を無くした。 ただその後、若干変なベクトルにテンションが上がり、 「ねえ、こなた~。」 「何かな?かがみん。」 「折角こんな見晴らしのいい山の山頂に来たんだから。ねえ、あれやってみようよ。」 「あれって、もしかして・・・」 「そう山彦!」 そう言って、かがみ様は有無も言わさぬ笑顔で迫ってきた。 こういう時のかがみって、思い立ったら一直線で突き進むんだよな~、はあ、どうしよ。 ん、まてよ。これはさっきの仕返しのできるチャンスでは? ちょっと仕掛けてみますかwww。 「え~、やだよ~。人もたくさんいて恥ずかしいじゃん。」 「大丈夫よ。旅の恥はかき捨てっていうじゃない。じゃいくわよ。ヤッ・・・」 「山の神々よ―。」 「はあ?」 「どうか我にご加護を!!・・・我は添い遂げる、添い遂げて見せる!! かがみんといっしょに!!!・・・・・ヤッホー。」 「ヤッホーだけでいいんだよ!どんな山彦だよ、それ! (赤面して)それと私と添い遂げるって、アホか。恥ずいわ!!」 よしよし、照れてる照れてるwww。これが私の求めていた反応なのだよ、かがみん。 「え~、常日頃『かがみは私の嫁』っていっているじゃん。今更じゃない?」 「う、うるさい。時と場所を考えろっていっているのよ。」 「誰もいなきゃいいの?かがみ~ん。」 「ち、違うわよ。まったくもう・・。とにかく先に行くからね。」 そう言うとかがみは、素早くエッジング(スキー板の先端を雪面に対して傾けること) をして滑っていった。ちょっと弄りすぎたか、ごめんねかがみん。 「あ~ん待ってよ~かがみ~ん。」 置いてかれた私は、急いでかがみを追いかけて行った。 それにしてもかがみはすごい。スキーは小学校のスキー教室以来だと話していたが、 初心者では厳しいコースでもスムーズにパラレルターン(2枚のスキー板を水平にして カーブしてゆく方法)をきめて滑らかに滑ってゆく。 それと一つ一つの挙動にキレがあり、動きに1本芯が通っていてすごくかっこよく、 美しい。そんなかがみの魅力に視線を奪われペースを乱し、かつスキーの上手さから まったく追いつくことがなく、頂上付近のコースの終点まで来た。 「こなた~。普段運動神経の良いあんたが、どうも振るいませんな~。どうしたのかな~。」 先に辿り着いていたかがみが、勝ち誇ったような笑顔で私を挑発する。 しかも無くなったはずの『ゲレンデ効果』が復活して、魅力が3割増しとなり、 正直可愛さ余って憎さ100倍だ。なんかさっき弄られていた分、妙に生き生きしているし。 「違うよまだ、本調子が戻っていないだけだよ。」 「ホントかな~こなたん。小学校の時のスキー教室で一番上手かったって、 実は嘘なんじゃない?」 「む、うそじゃないもん。ホントの事だもん。んじゃ、早くリフトで頂上まで戻ろうよ。 証明してみせるから。」 「(手をひらひらさせて)はいな~。」 こうしてかがみに煽りたてられて、頂上から競争をすることとなった。 こっちだって負けっぱなしは性にあわないんだ、必ず吠え面をかかせて見せるからな かがみ。 山の頂上へと進み、前の頂上付近のコースとは違う、山のふもとへと続くコースを選び 2人そろってスタートした。 安定感を持って一つ一つの動作確実にこなし滑るかがみとはちがい私は、 小回りが効きやすい点を生かし、一定のリズムを崩さず、 小刻みにエッジを刻みテンポよくスピーディに滑って行った。 結果、接戦ではあったがどうにか抜かし、2回目の勝負は私の勝ちであった。 この結果に物凄く悔しがったかがみは、次は近くにある中上級者コースでの勝負を 持ちかけてきた。 一連の勝負でテンションが上がりきっていた私は2つ返事で了承した。 ホント、冷静に考えると何故にここまで単純明快に熱くなっているのだろうね~私たち。 次は、山の中腹付近からスタートする中上級コースを舞台に2人のレースを開始した。 コース中盤までの、見晴らしの良い尾根コースである中級レベルの箇所は、 互いにペースを掴みかつ、互いのクセや仕掛け方が分かってきたからかどちらも引かぬ 展開で、差がまったく無く引き分けと言える内容であった。 そして中盤を過ぎ、斜面が急で若干コブのある上級レベルのエリアに入ると、 苦戦を強いられ互いにコースをクリアするのは厳しくなっていった。 けれど2人とも、ここで引くのは女がすたると言わんがばかりに意地と最大まで 高まったテンションで切り抜けていった。そうしている内に今までTVゲームの 対戦格闘ゲームやレースゲームの様に互いを競っていたが、いつの間にか同じステージ を2人協力してクリアを目指す、アクションゲームやシューティングゲームの協力プレイ の様な状況へ変化していった。 そしてゲームでは味わえない雪をかき分けて滑ってゆく感覚や、 滑走して熱くなった体に冷たい風が当たることで感じる爽快感が、 私たちの興奮を高まらせ、より熱中させた。 そんなこんなで出来あがった、高音や低音が織りなすハーモニーの様なコーラスワーク を連想させるペアワークで山のふもとまで辿りつき、あまりの気持ちの高まりと喜び でいつも以上に強くかがみに抱きついてしまった。 けれどかがみも、いつものように振りほどくことはなく、どことなく受け止めている 感じがした。 昼になり、山の中腹あたりの初心者コースにある食堂で私とかがみは昼食をとること にした。 「おお、来た来た。具のないカレー・・・じゃない、程良い大きさのじゃがいもがごろごろ、 他の野菜や肉もちゃんと入っている。」 「そうね、私が頼んだスパゲティミートソースもレトルトみたいな簡素なのじゃなく、 ちゃんと作ったものみたいで味もしっかりしているし。しかも、量が多い。」 「それでもかがみは、プリンとエクレアも付けるんだよね~。」 「・・・余裕があればね。」 「余裕はいつもあるんじゃないの?」 「ぐ・・・。(小声で)でも今回はホントに余裕あるかも。結構動いたし。 しかもこれからまだ動くし。・・・ブツブツ・・」 「お~い、かがみ~ん。戻ってこ~い・・・。」 高校2年生の夏に、みんなと行った海水浴で入った海の家で出てきた品のように、 ネタになりそうな位のチープさはなく、 質・量ともにレベルが高かった。なお、かがみは量の多いスパゲティをいただいた後、 きっちりプリンとエクレアを食するのであった。・・・どこの男子高校生だよ、かがみん。 午前中、中上級コースでエキサイトした私たちは、午後は林間コースを中心とした 初心者コースをゆったり、のんびり流してゆくことにした。 「ねえ、かがみ。カモシカがいるよ~、カモシカ~。」 「あっホントだ、すごいわね。さすが山中と言うべきか。 それだったら、野生のうさぎを見てみたいわね。白いやつ。」 「へ~www。それって可愛いもの好きアピールかな、かな。」 「そういうんじゃないわよ、別に。単純に見てみたいってだけよ。」 「いやいや、かがみんはこうでないと。 (重いものを持つジェスチャーをして)見て~、野生のコンドル~って。」 「日本の山に野生のコンドル居る訳ないだろ!あんたの中の私って、 何でそんな強靭に描かれるかな~。 あとコンドルの頭なでるジェスチャ―しなくていいわよ。」 ――― 「とりゃ!(ぼふっ)(背中から雪に飛び込む)。やっぱ、雪が降り積もっているとこ をみるとやりたくなるよね~。」 「あんたはまた子供みたいなことを。」 「かがみん~手をかして~。」 「しょうがないわね~。はい(と手を差し出す)。(手を握られた瞬間手を引っ張られ) うわっ(ぼふっ)何すんのよこなた~。」 「わ~い、ひっかかった~。・・かがみ?ぶっ(雪玉を顔面に当てられる)、ぺっぺっ、 なにするのさかがみん。」 「雪の中に突っ込ませた復讐よ、こなた。」 「よくもやったな~。」 そんなこんなで最終的には雪合戦をし、2人揃って濡れ鼠となった状態で、ゲレンデから 温泉街へと戻って来た。 レンタルショップにてスキー用具を返却し、宿でウェアから備え付けの浴衣に着替え、 民宿の地下にある乾燥室に濡れたウェアを置いた。 「それじゃ、お風呂入ってこうかな~。」 「かがみん、もしかして民宿内のに入ろうとしている?」 「そのつもりだけど。」 「ちっ、ちっ、ち、甘いねかがみん。何のためにここにしたのだと思うのだね。」 「え、源泉かけ流しの温泉があるからじゃないの。」 「それだけじゃないんだよ。ここ野沢温泉には、街の中にある宿に泊まると、 無料で入れる13の外湯があるのだよ。」 「へ~すごいわね。まさか、あんたがこういうスポットを見つけてくるなんて すごく意外だわ。」 「私だって、そうお金がかからず、たくさん楽しめるところに対して興味がわくもの ですよ~。そういう訳で行くよ、かがみん。」 こうして温泉街の中心にある、大湯と呼ばれる江戸時代の趣あふれる美しい湯屋 が目を引く外湯へと向かっていった。 脱衣所と浴場の区切りが無い建物内に戸惑い、あまりの湯の熱さにびっくりしつつも、 温泉の熱さがスキーで冷えた体には心地よく、すごく気持ち良かった。 また現地の方に声を掛けられ、スキー目的で来たことを伝えると、 温泉街には麻釜と呼ばれる地元の方が山菜や野菜を茹でる場所があり、 観光客も麻釜近くの温泉広場で温泉卵を作ることが出来るとのこと。 温泉街自体大きく、土産物屋や居酒屋などが結構並んでいて賑わっており、 散策するのも楽しいといったことを教えてくれた。 いろいろと教えてくれた現地の方にお礼を言いうと「温泉街楽しんでいってね。」 と返され、ちょっとした心配りに気持ちも温かくなりつつ、浴場の入り口にある 賽銭箱に100円を入れ、大湯を後にした。 宿の部屋へと戻ると、食事の時間になった。 メニューは、川魚や野菜に山菜料理、名物の野沢菜、中には馬刺しも入っており、 基本信州の地の物でまとめた内容となっていた。 そこでかがみは、ホクホクの笑顔でどぶろくの一升瓶をもって来た。 どうやらこういう温泉宿にはお酒は欠かせないとのことで、宿のフロントにて買って きたらしい。 なんかかがみんって、変なところでアクティブさが出てくるな~。 「ぷは~、どぶろくに野沢菜漬けは絶妙ね。他の料理もおいしくて、お酒にも合うし最高ね。」 「・・・かがみん、すごくおっさんくさいよ。明日帰ることも考えて、ある程度控えてね。」 「え~いいじゃない。こういう所でないとこう飲んだり食べたり出来ないし。 それよりもあんた、全然飲んでないじゃない。もう少し呑みなさいよ。それとも何? 私の酒が飲めないとでもいうの?」 ・・・からみ酒か、かがみんよ。 そんなかがみを私は止めることはできず、仕方なくどぶろくを2杯程飲んだ。 かがみは一人で1升瓶半分程空けた・・・どんだけうわばみなんだ・・・。 食事を頂いた後、私たちは浴衣に厚めの茶羽織を羽織り、その上に私服のアウターを着て 温泉街へ散策しに出かけた。 外へでると、かなり冷え込んでおり雪もちらちらと舞っていた。 そんな冷たい空気の中散策していると、1軒の土産物屋を見つけた。 その店先にある、信州名物の『おやき』を蒸している蒸籠(せいろ)から沸いている蒸気と、 どこか懐かしい香りに誘われ、『おやき』と飲み物として『紅玉リンゴジュース』買って ゆくことにした。 「なんかこう外で食べるのって、部屋の中で食べるのより美味しく感じるよね。 冷え込んでいて寒い分、おやきのホッカホッカさがすごく実感できるよね。」 そう言って、リンゴジュースを一口飲む。 リンゴジュースの爽やかな酸味と甘味が野沢菜味のおやきと絶妙に合っておいしい。 「そうね、確かによりホッカホッカに感じられて、美味しいわね。」 ほろ酔い気分のかがみが、私が言ったことに同意する。 にしてもかがみん・・・ 「あのさかがみ。」 「何?」 「野沢菜味とピリ辛味、それとあずき味と、おやきを3個買ったけど大丈夫?」 「別に大丈夫よ~。ちゃんと残さず食べれるし。」 「違うよ。体重的な意味で・・・。」 「ああ。別にいいわよ~今日はそんなの気にしないって決めているし~。 むしろ、美味しいものがたくさんあるというのに控えてしまうなんて、 食べ物に対して冒涜だわ!うん!!」 あ~かがみん。お酒入って気が大きくなっているな。 こりゃ明日あたり酒がぬけたら、また体重が~なんて泣くんだろうな~。 まあそうなっても後の祭りだし、私知~らないっと。 「それにしてもさ。」 「うん?」 「こうして何かしら食べながら歩いているとさ、高校時代の放課後を思い出さない? 特に雪が降った時のさ。」 「そうね。」 「今のように、かがみが太ると分かっていても、『寒いときは温かいものが美味しい のよね~』って、多目に買い食いして。」 「私がパクついていると、あんたが離れた所から雪玉を投げつけてきて、 雪合戦を始めたわよね」 「で結局2人とも濡れて、風邪をひきかけるんだよね。かがみん、 私それで1度ホントに風邪をひいたんだからね。お父さんなんか 『こんなんじゃ孫、雪合戦嫌いになってまうよ~』って言ってたんだから。」 「雪合戦を仕掛けてきたのはあんたからだろ。はっきり言って自業自得だ。 それとどう考えても、あんたのお父さんじゃないだろ。孫とか言ってるし。誰だよそれ。」 「・・・・・(口を開け、首をかしげる)」 「ノ―プランかよ!!」 「ま~いいじゃんそんなことは。他も回ってみて、酒のつまみになりそうなのを調達 してから部屋にもどろう。で、残りのお酒を空けようよ、かがみ~ん。」 「ん~なんか変な話題変更されたけど、まあいいわ。いいわよ、いきましょ。」 2人とも今は他校の大学生で、場所だってスキー場でかつ温泉街と立場も時間も場所も違う けれど、本当に楽しかった高校の時をリプレイしているようなやり取りが出来る。 そんな時間が過ごせることに喜びつつ、これからもこんな夢みたいな時間がすごせる ように願いながら、寒々しく雪の降る、昔ながらの風情が残り人が賑わう温泉街を、 2人ふざけあいながら歩いて行った。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - お…俺の近所に来た…だと…? &br()じゃああの時見たのはまさかあの二人…? &br()え…俺の妄想?へ? -- 名無しさん (2010-01-19 21:10:37) - 俺も一緒に連れてって! -- 名無しさん (2010-01-07 01:28:49) - スキー旅行って聞くと何故か大学生らしいな~っと思ってしまう。 &br()それにしても、どぶろくの一升瓶抱えてホックホクのかがみんが意外に破壊力高いのに驚いた・・・ -- 名無しさん (2010-01-07 00:05:14) - オイラの記憶ではSSでスキーネタは初めてかも?尚且つ舞台となった地域周辺はオイラも時々行くので、楽しく読ませていただきました。 &br()高校卒業後の2人の関係もリアルで・・・GJ -- kk (2010-01-04 23:57:12) **投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください) #vote3(2)
12月冬休み前日、高校では放課後に当たる時間に行われる5限目の講義。 本来この時間に講義は取っていないのだが、別の時間で取っていた 講義で先週1回休講があり、その分の補講として、今日のこの時間に 行われることとなった。 そして出席点ギリギリの私・・・泉こなたは、こうして今出席しているわけなのであるが、 この後、愛しのかがみんとの明日から1泊2日のスキー旅行が待っている為、 講義が始まってからずっと時計の針が気になり、いつも以上に身が入らない。 しかも今日の晩出発だから尚更だ。 実はこの講義、かがみの大学でも同じ講師が同じ講義を開講しており、 その講義をかがみも受講している。だからいざとなればかがみに頼ることが出来る、 な~んて少々気を抜いてやっていたらこんな結果になってしまった。 あ~今日会ったら、このことについて小言をいわれるんだろうな~。 『あんたとの腐れ縁も大学に入っても相変わらずとは言え、だらしないのも相変わらず ってどういうことだ。こちらとしては前向きな進歩を見たいものだがな。』って。 まあ自業自得だからしょうがないけどね~。 むしろ互いに違う環境になったとしても、高校の時と変わらないやりとりが出来ることが どこか嬉しい。・・・にしても早く終わらないかな、講義。 そんな感じで多少ソワソワして聴いていた、冬休み前最後の授業。 終了を告げるベルが鳴った瞬間、普段では考えられないスピードで ノートを閉じ、椅子を蹴って講義が行われた円形教室を飛び出していった。 『Keep on dreaming』 ―――――タッ、タッ、タッ・・・・・。 「こなた!もう間に合わないわよ!!」 「しょうがないでしょ!かがみ、もう!!」 「しょうがなくない。そもそもアンタが講義サボりまくって、 今日の夕方も出席しなくてはならない状態になったのが悪い!自業自得だ!!」」 「と、とにかく、口よりも足を動かして、かがみ。」 「・・・分かったわよ。(小声で)たく、誰のせいでそうなったんだ・・・ブツブツ・・ (結構楽しみにしてたのにな~)。」 私は今かがみと一緒に、スキー場へのバスが停まっている新宿駅西口の停車場を 目指し、新宿駅西口の地下通路をひたすら走っている。 「戸狩・野沢・木島平方面行きのバスはこちらで~す!!」 と首からプラカードをかけた、旅行会社の社員と思われるお姉さんが、 呼びかけをしている。 必死になって走ったおかげか、どうにか出発時間までに間に合ったようだ。 「ふう、どうにかつきましたな~かがみんや。」 「たく、一時はどうなるかと。もう少し時間に正確になりなさいよ。」 「へ~い、善処しますよ~。」 「こういう時の善処しますよって、信頼性ゼロよね。」 「そんなこと言ったら、かがみだってみさきちに同じ事言ったらしいじゃん。 この間聞いたよ。これってどういうことかな~。」 「と、とにかく少しは時間に正確になりなさい。」 そんなこんなでバスに乗り、指定された席に座った。 「(座席に座り)ふ~これで後はこのままスキー場まで直行だね。」 「そうね。」 「ところでかがみん、こういう観光バスに乗ると、小学校の時のピクニックを 思い出さない?」 「そうね。ピクニック自体も楽しかったけど、バスの中も楽しかった記憶があるからね。 こう、バスガイドさんとかいてね。」 「みなさんこんにちは。本日みなさんと旅をすることになりました、泉こなたです~。 (営業スマイル&若干声作って)」 「そうそう、そんな感じ。」 「それではバスガイドさんを紹介しま~す。」 「お前誰だよ!!」 「皆様右手をご覧ください。・・・・・バスガイドで~す。」 「お前いらないだろ!バスガイド紹介するガイドって何だ?」 「名前は、柊かがみで~す。」 「しつこいよ!」 「いや~バスガイドさんへの憧れや、そんなバスガイドを紹介して欲しいって願望から ・・つい。バスむすめとか・・。」 「なんかすごく引っかかるものがあるが、バスガイドさんへの憧れは多少分かるわよ。 でも・・」 「え、かがみんもバスガイドさんとか憧れたことがあるんだ~。 結構かわいいところあるんだね~。」 「(赤面して)う、うるさい!!それよりもバス内でお遊戯とかするでしょ、 バスガイドさんとさ。」 「そうだね~。かがみん、それロン、リーチ一発ドラドラで・・」 「おっさんか!!」 「おっさんじゃないよ。ツインテールでナイスバディな萌える女の子のつもりだよ。」 「どうでもいいわよ。とにかく、バス内で麻雀ってどんな小学生だ! 私は一緒にお歌とか歌うこととかを言ってたのよ。 ふう、そんなことよりも早く寝ろ、明日着いたらすぐスキー場なんだから。」 「あ~い、んじゃおやすみ。」 「おやすみ。」 しばらくしてバス内の照明が消灯し、車内は静かになった。 シャカ、シャカ、シャカ。 (こなたの奴、ヘッドホンで音楽聴いているのか?音漏れして周りにも迷惑だし、 ちょっと注意するか。) 「(小声で)ちょっとこなた。ヘッドホンの音量下げてくれない? さっきから音漏れしているんだけど。」 「いや今、肉まんとあんまん耳につけているんだけど。」 「何しているのよ、あんた。ホンモノのバカだろ。」 「イヤホンから流れる音楽でリズム取りながら、こうやって (肉まんとあんまんを耳につけ、体を揺らして)中の具をかき混ぜているんだよ。」 「意味分かんない。かき混ぜるんだったら、手で持ってやれよ。 ・・・『あ~その手があったか』ってジェスチャーするんじゃないじゃないわよ。 とにかく、イヤホンの音量下げろ。あと、肉まんとあんまん胸に持ってきておっぱい、 おっぱいって、肉まんとあんまんの無駄な活用するな。 (両手でこなたの頬をつねり)いいからとっとと寝ようか~、こなた~。」 「いひゃい、いひゃい。」 こうした私がボケをかまし、かがみが突っ込むといったやりとりをしていたが、 結局硬くて寝にくいシートにて、二人肩と頭を支えあい静かに眠る体勢をとり眠ること となった。 なお、今回の目的地は、長野県にある野沢温泉スキー場である。 野沢温泉に行くことになったきっかけは、かがみとの電話でのやりとりになる。 話の運びとしては、かがみが『来年の2月にサークルでスキー合宿するから、 行く前に一度練習がてらスキーに行きたい』と軽く言ったのに対し、 『じゃあ冬休みに入ったら行こうか』とこれまた軽く私が言ったことから、 なし崩し的に今回の旅行計画はスタートした。 候補地として苗場、白馬、ガーラ湯沢等が上がったが、スキーだけじゃなく 他に楽しめるところということで温泉街もある野沢温泉スキー場へと決まった。 こうして『私をスキーに連れてって』と言ったかがみを、なんとなく私が連れていく形 で計画は発案から実施へと進んでいった。 ・・・今のくだり、是非ともかがみん本人の突っ込みを頂きたいものだ。 けれど今かがみに振っても、とうに眠り『へんじがしない。ただのしかばねのようだ。』 な状態の為リアクションを期待できないので、私も明日に備えいい加減眠ることにした。 ―――そんなこんなでバスは、一路目的地へと向かっていった。 「やってきたきた北の湖www~。」 「来た早々におやじギャグかお前。」 バスに揺れること数時間、私たちは野沢温泉スキー場へとたどり着いた。 バスの停車場に到着してすぐ、旅行カバンを手に今回宿泊する、 温泉街にある民宿へと向かい、チェックインの手続きを行った。 宿にて持参したウェアに着替え、レンタルショップでスキー用具をレンタルし、 ゲレンデへ行く準備を整えた。そして、前日まで雪が降っていたからかすごく雪質が良く、 ふかふかしていて、踏みしめたらすごく心地いいゲレンデへとやってきた。 ちなみに、今回の為に私たちが購入したウェアは、神田の大手スポーツ用品店で購入した ものである。私が着用しているウェアはベアチェックブラックのファー付きジャケットに、 ブラウンのパンツで、とりあえず『最近のトレンド追いました』な格好をしている。 かがみが着用しているのは、切り返しがマルチチェックオレンジになっているブラックの ファー付きジャケットに、マルチチェックオレンジのパンツである。ただかがみの場合、 着用しているウェアもさることながら、雪による光の反射で、プリクラの様に顔に照明が 当たったみたいになって、肌が白く見える現象 ――通称『ゲレンデ効果』のおかげで、普段よりも3割増し可愛くなっている。 ・・・女の私も見惚れるくらいに・・。 その為、声をかけた男性係員の対応も、普段よりも優しく親切に感じられ、こころなしか、 かがみは少し嬉しそうだった。かがみん、その優しさには下心が混じったものだよと考え ていたら、なんと私にも親切に対応された ・・・こちらはかがみのとは違い、小さな子供に対してのものであったがorz・・ ただその対応が、最初から頂上の中級コースからスタートする私を心配したり、 私がある程度経験が有るから大丈夫と答えると小さいのにすごいねと本当に感心したりと、親友のみゆきさんの様な親切さで対応するものだから、『私、実は大学生なんですよ』と弁解するのも何か悪い気がして、子供として貫き通していた。 そんな私の隣でかがみが笑いを堪えていた・・・あのさかがみん、普段私に弄られているから、 今の私の様子はすごく滑稽で、面白いかい?ちなみに笑いをこらえている表情、 『ゲレンデ効果』を打ち消すくらいにひどい崩し様だからね。それはそれで滑稽だよ。 そう考えていることはつゆ知らず、かがみはいよいよ笑いを堪え切れず、 よりひどく崩した表情で噴き出た。 そこで係の男性に心配されたところ『いえ、人見知りするこの子がこんなに楽しそうな のを見て、嬉しくなってついwww・・・』などとのたまった。 そして笑いながら、出来る限り可愛らしく私に『ごめんね。』とジェスチャーしてきた。 おのれかがみ、後でそうとう弄ってやるから覚悟しろ! そんな可愛らしく謝っても無駄なんだからね!! 『ゲレンデ効果』だってなくなっているんだから!!! ゴンドラとリフトを乗り継ぎ、今ゲレンデとなっている毛無山の頂上にいる。 そこは下の温泉街とは別世界の大自然が、パノラマの様な広がりを見せ、 遠くに日本海を望むことができた。 空は雲ひとつなく晴れ渡り、太陽と若干青白く光る月が映り、それに加え冷たく 爽やかな北風がどこまでも透き通っているように思わせる透明感を感じさせた。 そんな情景に感動や興奮やらで気持ちが高まり、どう自分の感情を表したら いいか分からない私は一瞬言葉を無くした。それはかがみもいっしょで、 リフトに乗ったときから傍目から分かるくらいワクワクしていたが、この情景を見たこと で一瞬言葉を無くした。 ただその後、若干変なベクトルにテンションが上がり、 「ねえ、こなた~。」 「何かな?かがみん。」 「折角こんな見晴らしのいい山の山頂に来たんだから。ねえ、あれやってみようよ。」 「あれって、もしかして・・・」 「そう山彦!」 そう言って、かがみ様は有無も言わさぬ笑顔で迫ってきた。 こういう時のかがみって、思い立ったら一直線で突き進むんだよな~、はあ、どうしよ。 ん、まてよ。これはさっきの仕返しのできるチャンスでは? ちょっと仕掛けてみますかwww。 「え~、やだよ~。人もたくさんいて恥ずかしいじゃん。」 「大丈夫よ。旅の恥はかき捨てっていうじゃない。じゃいくわよ。ヤッ・・・」 「山の神々よ―。」 「はあ?」 「どうか我にご加護を!!・・・我は添い遂げる、添い遂げて見せる!! かがみんといっしょに!!!・・・・・ヤッホー。」 「ヤッホーだけでいいんだよ!どんな山彦だよ、それ! (赤面して)それと私と添い遂げるって、アホか。恥ずいわ!!」 よしよし、照れてる照れてるwww。これが私の求めていた反応なのだよ、かがみん。 「え~、常日頃『かがみは私の嫁』っていっているじゃん。今更じゃない?」 「う、うるさい。時と場所を考えろっていっているのよ。」 「誰もいなきゃいいの?かがみ~ん。」 「ち、違うわよ。まったくもう・・。とにかく先に行くからね。」 そう言うとかがみは、素早くエッジング(スキー板の先端を雪面に対して傾けること) をして滑っていった。ちょっと弄りすぎたか、ごめんねかがみん。 「あ~ん待ってよ~かがみ~ん。」 置いてかれた私は、急いでかがみを追いかけて行った。 それにしてもかがみはすごい。スキーは小学校のスキー教室以来だと話していたが、 初心者では厳しいコースでもスムーズにパラレルターン(2枚のスキー板を水平にして カーブしてゆく方法)をきめて滑らかに滑ってゆく。 それと一つ一つの挙動にキレがあり、動きに1本芯が通っていてすごくかっこよく、 美しい。そんなかがみの魅力に視線を奪われペースを乱し、かつスキーの上手さから まったく追いつくことがなく、頂上付近のコースの終点まで来た。 「こなた~。普段運動神経の良いあんたが、どうも振るいませんな~。どうしたのかな~。」 先に辿り着いていたかがみが、勝ち誇ったような笑顔で私を挑発する。 しかも無くなったはずの『ゲレンデ効果』が復活して、魅力が3割増しとなり、 正直可愛さ余って憎さ100倍だ。なんかさっき弄られていた分、妙に生き生きしているし。 「違うよまだ、本調子が戻っていないだけだよ。」 「ホントかな~こなたん。小学校の時のスキー教室で一番上手かったって、 実は嘘なんじゃない?」 「む、うそじゃないもん。ホントの事だもん。んじゃ、早くリフトで頂上まで戻ろうよ。 証明してみせるから。」 「(手をひらひらさせて)はいな~。」 こうしてかがみに煽りたてられて、頂上から競争をすることとなった。 こっちだって負けっぱなしは性にあわないんだ、必ず吠え面をかかせて見せるからな かがみ。 山の頂上へと進み、前の頂上付近のコースとは違う、山のふもとへと続くコースを選び 2人そろってスタートした。 安定感を持って一つ一つの動作確実にこなし滑るかがみとはちがい私は、 小回りが効きやすい点を生かし、一定のリズムを崩さず、 小刻みにエッジを刻みテンポよくスピーディに滑って行った。 結果、接戦ではあったがどうにか抜かし、2回目の勝負は私の勝ちであった。 この結果に物凄く悔しがったかがみは、次は近くにある中上級者コースでの勝負を 持ちかけてきた。 一連の勝負でテンションが上がりきっていた私は2つ返事で了承した。 ホント、冷静に考えると何故にここまで単純明快に熱くなっているのだろうね~私たち。 次は、山の中腹付近からスタートする中上級コースを舞台に2人のレースを開始した。 コース中盤までの、見晴らしの良い尾根コースである中級レベルの箇所は、 互いにペースを掴みかつ、互いのクセや仕掛け方が分かってきたからかどちらも引かぬ 展開で、差がまったく無く引き分けと言える内容であった。 そして中盤を過ぎ、斜面が急で若干コブのある上級レベルのエリアに入ると、 苦戦を強いられ互いにコースをクリアするのは厳しくなっていった。 けれど2人とも、ここで引くのは女がすたると言わんがばかりに意地と最大まで 高まったテンションで切り抜けていった。そうしている内に今までTVゲームの 対戦格闘ゲームやレースゲームの様に互いを競っていたが、いつの間にか同じステージ を2人協力してクリアを目指す、アクションゲームやシューティングゲームの協力プレイ の様な状況へ変化していった。 そしてゲームでは味わえない雪をかき分けて滑ってゆく感覚や、 滑走して熱くなった体に冷たい風が当たることで感じる爽快感が、 私たちの興奮を高まらせ、より熱中させた。 そんなこんなで出来あがった、高音や低音が織りなすハーモニーの様なコーラスワーク を連想させるペアワークで山のふもとまで辿りつき、あまりの気持ちの高まりと喜び でいつも以上に強くかがみに抱きついてしまった。 けれどかがみも、いつものように振りほどくことはなく、どことなく受け止めている 感じがした。 昼になり、山の中腹あたりの初心者コースにある食堂で私とかがみは昼食をとること にした。 「おお、来た来た。具のないカレー・・・じゃない、程良い大きさのじゃがいもがごろごろ、 他の野菜や肉もちゃんと入っている。」 「そうね、私が頼んだスパゲティミートソースもレトルトみたいな簡素なのじゃなく、 ちゃんと作ったものみたいで味もしっかりしているし。しかも、量が多い。」 「それでもかがみは、プリンとエクレアも付けるんだよね~。」 「・・・余裕があればね。」 「余裕はいつもあるんじゃないの?」 「ぐ・・・。(小声で)でも今回はホントに余裕あるかも。結構動いたし。 しかもこれからまだ動くし。・・・ブツブツ・・」 「お~い、かがみ~ん。戻ってこ~い・・・。」 高校2年生の夏に、みんなと行った海水浴で入った海の家で出てきた品のように、 ネタになりそうな位のチープさはなく、 質・量ともにレベルが高かった。なお、かがみは量の多いスパゲティをいただいた後、 きっちりプリンとエクレアを食するのであった。・・・どこの男子高校生だよ、かがみん。 午前中、中上級コースでエキサイトした私たちは、午後は林間コースを中心とした 初心者コースをゆったり、のんびり流してゆくことにした。 「ねえ、かがみ。カモシカがいるよ~、カモシカ~。」 「あっホントだ、すごいわね。さすが山中と言うべきか。 それだったら、野生のうさぎを見てみたいわね。白いやつ。」 「へ~www。それって可愛いもの好きアピールかな、かな。」 「そういうんじゃないわよ、別に。単純に見てみたいってだけよ。」 「いやいや、かがみんはこうでないと。 (重いものを持つジェスチャーをして)見て~、野生のコンドル~って。」 「日本の山に野生のコンドル居る訳ないだろ!あんたの中の私って、 何でそんな強靭に描かれるかな~。 あとコンドルの頭なでるジェスチャ―しなくていいわよ。」 ――― 「とりゃ!(ぼふっ)(背中から雪に飛び込む)。やっぱ、雪が降り積もっているとこ をみるとやりたくなるよね~。」 「あんたはまた子供みたいなことを。」 「かがみん~手をかして~。」 「しょうがないわね~。はい(と手を差し出す)。(手を握られた瞬間手を引っ張られ) うわっ(ぼふっ)何すんのよこなた~。」 「わ~い、ひっかかった~。・・かがみ?ぶっ(雪玉を顔面に当てられる)、ぺっぺっ、 なにするのさかがみん。」 「雪の中に突っ込ませた復讐よ、こなた。」 「よくもやったな~。」 そんなこんなで最終的には雪合戦をし、2人揃って濡れ鼠となった状態で、ゲレンデから 温泉街へと戻って来た。 レンタルショップにてスキー用具を返却し、宿でウェアから備え付けの浴衣に着替え、 民宿の地下にある乾燥室に濡れたウェアを置いた。 「それじゃ、お風呂入ってこうかな~。」 「かがみん、もしかして民宿内のに入ろうとしている?」 「そのつもりだけど。」 「ちっ、ちっ、ち、甘いねかがみん。何のためにここにしたのだと思うのだね。」 「え、源泉かけ流しの温泉があるからじゃないの。」 「それだけじゃないんだよ。ここ野沢温泉には、街の中にある宿に泊まると、 無料で入れる13の外湯があるのだよ。」 「へ~すごいわね。まさか、あんたがこういうスポットを見つけてくるなんて すごく意外だわ。」 「私だって、そうお金がかからず、たくさん楽しめるところに対して興味がわくもの ですよ~。そういう訳で行くよ、かがみん。」 こうして温泉街の中心にある、大湯と呼ばれる江戸時代の趣あふれる美しい湯屋 が目を引く外湯へと向かっていった。 脱衣所と浴場の区切りが無い建物内に戸惑い、あまりの湯の熱さにびっくりしつつも、 温泉の熱さがスキーで冷えた体には心地よく、すごく気持ち良かった。 また現地の方に声を掛けられ、スキー目的で来たことを伝えると、 温泉街には麻釜と呼ばれる地元の方が山菜や野菜を茹でる場所があり、 観光客も麻釜近くの温泉広場で温泉卵を作ることが出来るとのこと。 温泉街自体大きく、土産物屋や居酒屋などが結構並んでいて賑わっており、 散策するのも楽しいといったことを教えてくれた。 いろいろと教えてくれた現地の方にお礼を言いうと「温泉街楽しんでいってね。」 と返され、ちょっとした心配りに気持ちも温かくなりつつ、浴場の入り口にある 賽銭箱に100円を入れ、大湯を後にした。 宿の部屋へと戻ると、食事の時間になった。 メニューは、川魚や野菜に山菜料理、名物の野沢菜、中には馬刺しも入っており、 基本信州の地の物でまとめた内容となっていた。 そこでかがみは、ホクホクの笑顔でどぶろくの一升瓶をもって来た。 どうやらこういう温泉宿にはお酒は欠かせないとのことで、宿のフロントにて買って きたらしい。 なんかかがみんって、変なところでアクティブさが出てくるな~。 「ぷは~、どぶろくに野沢菜漬けは絶妙ね。他の料理もおいしくて、お酒にも合うし最高ね。」 「・・・かがみん、すごくおっさんくさいよ。明日帰ることも考えて、ある程度控えてね。」 「え~いいじゃない。こういう所でないとこう飲んだり食べたり出来ないし。 それよりもあんた、全然飲んでないじゃない。もう少し呑みなさいよ。それとも何? 私の酒が飲めないとでもいうの?」 ・・・からみ酒か、かがみんよ。 そんなかがみを私は止めることはできず、仕方なくどぶろくを2杯程飲んだ。 かがみは一人で1升瓶半分程空けた・・・どんだけうわばみなんだ・・・。 食事を頂いた後、私たちは浴衣に厚めの茶羽織を羽織り、その上に私服のアウターを着て 温泉街へ散策しに出かけた。 外へでると、かなり冷え込んでおり雪もちらちらと舞っていた。 そんな冷たい空気の中散策していると、1軒の土産物屋を見つけた。 その店先にある、信州名物の『おやき』を蒸している蒸籠(せいろ)から沸いている蒸気と、 どこか懐かしい香りに誘われ、『おやき』と飲み物として『紅玉リンゴジュース』買って ゆくことにした。 「なんかこう外で食べるのって、部屋の中で食べるのより美味しく感じるよね。 冷え込んでいて寒い分、おやきのホッカホッカさがすごく実感できるよね。」 そう言って、リンゴジュースを一口飲む。 リンゴジュースの爽やかな酸味と甘味が野沢菜味のおやきと絶妙に合っておいしい。 「そうね、確かによりホッカホッカに感じられて、美味しいわね。」 ほろ酔い気分のかがみが、私が言ったことに同意する。 にしてもかがみん・・・ 「あのさかがみ。」 「何?」 「野沢菜味とピリ辛味、それとあずき味と、おやきを3個買ったけど大丈夫?」 「別に大丈夫よ~。ちゃんと残さず食べれるし。」 「違うよ。体重的な意味で・・・。」 「ああ。別にいいわよ~今日はそんなの気にしないって決めているし~。 むしろ、美味しいものがたくさんあるというのに控えてしまうなんて、 食べ物に対して冒涜だわ!うん!!」 あ~かがみん。お酒入って気が大きくなっているな。 こりゃ明日あたり酒がぬけたら、また体重が~なんて泣くんだろうな~。 まあそうなっても後の祭りだし、私知~らないっと。 「それにしてもさ。」 「うん?」 「こうして何かしら食べながら歩いているとさ、高校時代の放課後を思い出さない? 特に雪が降った時のさ。」 「そうね。」 「今のように、かがみが太ると分かっていても、『寒いときは温かいものが美味しい のよね~』って、多目に買い食いして。」 「私がパクついていると、あんたが離れた所から雪玉を投げつけてきて、 雪合戦を始めたわよね」 「で結局2人とも濡れて、風邪をひきかけるんだよね。かがみん、 私それで1度ホントに風邪をひいたんだからね。お父さんなんか 『こんなんじゃ孫、雪合戦嫌いになってまうよ~』って言ってたんだから。」 「雪合戦を仕掛けてきたのはあんたからだろ。はっきり言って自業自得だ。 それとどう考えても、あんたのお父さんじゃないだろ。孫とか言ってるし。誰だよそれ。」 「・・・・・(口を開け、首をかしげる)」 「ノ―プランかよ!!」 「ま~いいじゃんそんなことは。他も回ってみて、酒のつまみになりそうなのを調達 してから部屋にもどろう。で、残りのお酒を空けようよ、かがみ~ん。」 「ん~なんか変な話題変更されたけど、まあいいわ。いいわよ、いきましょ。」 2人とも今は他校の大学生で、場所だってスキー場でかつ温泉街と立場も時間も場所も違う けれど、本当に楽しかった高校の時をリプレイしているようなやり取りが出来る。 そんな時間が過ごせることに喜びつつ、これからもこんな夢みたいな時間がすごせる ように願いながら、寒々しく雪の降る、昔ながらの風情が残り人が賑わう温泉街を、 2人ふざけあいながら歩いて行った。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-09-18 15:40:34) - お…俺の近所に来た…だと…? &br()じゃああの時見たのはまさかあの二人…? &br()え…俺の妄想?へ? -- 名無しさん (2010-01-19 21:10:37) - 俺も一緒に連れてって! -- 名無しさん (2010-01-07 01:28:49) - スキー旅行って聞くと何故か大学生らしいな~っと思ってしまう。 &br()それにしても、どぶろくの一升瓶抱えてホックホクのかがみんが意外に破壊力高いのに驚いた・・・ -- 名無しさん (2010-01-07 00:05:14) - オイラの記憶ではSSでスキーネタは初めてかも?尚且つ舞台となった地域周辺はオイラも時々行くので、楽しく読ませていただきました。 &br()高校卒業後の2人の関係もリアルで・・・GJ -- kk (2010-01-04 23:57:12) **投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください) #vote3(2)

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