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古ぼけた佇まいの雑貨屋。 西洋風の建物で、レンガでできているそこは、私のお気に入りの場所。 不思議な雰囲気が漂うそこは、喧騒で広がる世界とは切り離されている感覚にとらわれる。 一度その店に足を踏み入れれば、まるでヨーロッパのような、そんな場所。 そここそ、私が大好きな雑貨屋。 今日もまた、大学の帰りに寄る。 その日本離れした雰囲気に惹かれついつい足を運んでしまうのだけれど、毎日のように通うのには実はまだ理由がある。 扉を開けると、カランカラン、とベルが挨拶してくれる。 中にはアクセサリー、アンティークの小物なんかが棚にある。 店の奥。カウンターがそこにはある。 「やっぱり、いた…」 カウンターに腰掛ける、若い女のコ。 実はこの人目当てで来ていたりもする。 彼女の名前は知らない。背が低く、青い髪を靡かせる彼女。 ミステリアスな彼女は、この店にぴったり。 年はいくつくらいだろうか。 背から察するに中学生くらいだろうか。 まだまだ子供に見える。 学校行かなくていいのかな? 「お客さん、よく来るね~」 「…え!?」 は、話しかけられた。 「…顔、覚えられてた?」 「だって毎日来てくれるんだもん。なんか欲しいものがあるの?」 …そっか。やっぱり来すぎだったかな。 「と、特に欲しいものがあるわけじゃないんだけど…このお店の、不思議な雰囲気が好きで…」 「あ~、わかる。私も好きなんだよ~」 会話は弾んだ。たわいない談笑が、店内に広がる。 お客さんは私以外には誰もいない。二人きりの店内。 あまりにも、静か。 「へ~、あの大学に行ってるんだ。優秀なんだネ」 「そういうあなたは…」 「泉」 「え?」 「泉、こなた。私の、名前」 「……そうゆう、泉さんは中学行かなくていいの?」 名前を知ることができた。…嬉しい。 「…こほん。私は大学生だよ?」 「え゛え゛!?」 嘘…こんなに小さいのに!? 「まぁ、よく言われるョ。下手すると小学生に間違われちゃうんだ」 「…ごめんなさい」 悪いことを言ってしまった。なんかしょんぼりしてるように見える。 「いやいや、いいよ…ええと、名前は?」 「かがみ。柊かがみが私の名前…」 「へぇ~、いい名前。かがみだなんて」 「そんなことないけど…こなたも可愛い名前でいいじゃない」 「またまた。私を口説いても何も出ないよ」 二人きりの時間は過ぎた。 もう夕方になりかけていた。 「私、そろそろ帰らないと…」 「もうこんな時間だもんネ」 「じゃあ、さよなら…」 「あ、待って待って」 呼び止められた。 「お土産、あげるョ」 …なんと。 「別にいいよ」 「ほらほらー。ガラにもなく遠慮しない」 「ガラにもないって何よ」 「がめついんだから、遠慮しなくていいよ♪」 「が、がめつくなんてないわよ」 「はい、お土産…」 差し出されたのは…小さな手鏡だった。 手のひらに収まってしまう小さなそれは、私を少しだけ映し出す。 「…いいの?」 「いいよ。常連さんだもん…」 「…まだ何も買ったことないけどね」 「まぁ、細かいことは気にしない気にしない」 私がそれを受け取ろうとすると、彼女はその鏡を自身の唇に触れさせた。 音もなく、すっと。 「…何してるの?鏡にキスなんてして」 「…おまじない」 「何の?」 「…かがみが、また…私の元へ来ますように」 ドキッとしてしまった。 かがみと鏡、どっちのことを言ったんだろう…。 私にはそれを確かめる術はなかった。 「…はい、おまじないおしまい。あげる…♪」 二人だけの店内は、二人だけだと広すぎて。 静かな静かな店内は、やはりこの世のものではないようだった。 「…ありがと」 「どういたしまして♪」 そうして、私は店を出る。 私は店を見上げる。 古ぼけた佇まいの雑貨屋。 西洋風の建物で、レンガでできているそこは、私のお気に入りの場所。 不思議な雰囲気が漂うそこは、喧騒で広がる世界とは切り離されている感覚にとらわれる。 一度その店に足を踏み入れれば、まるでヨーロッパのような、そんな場所。 そここそ、私が大好きな雑貨屋。 さっき受け取ったその鏡を、私は自分の唇にそっとつけた。 明日もまた来よう。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 不思議な &br()雰囲気の話ですね。 &br()こういうのも &br()いいですね(^-^) -- 無垢無垢 (2009-05-24 00:31:21) **投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください) #vote3(13)
古ぼけた佇まいの雑貨屋。 西洋風の建物で、レンガでできているそこは、私のお気に入りの場所。 不思議な雰囲気が漂うそこは、喧騒で広がる世界とは切り離されている感覚にとらわれる。 一度その店に足を踏み入れれば、まるでヨーロッパのような、そんな場所。 そここそ、私が大好きな雑貨屋。 今日もまた、大学の帰りに寄る。 その日本離れした雰囲気に惹かれついつい足を運んでしまうのだけれど、毎日のように通うのには実はまだ理由がある。 扉を開けると、カランカラン、とベルが挨拶してくれる。 中にはアクセサリー、アンティークの小物なんかが棚にある。 店の奥。カウンターがそこにはある。 「やっぱり、いた…」 カウンターに腰掛ける、若い女のコ。 実はこの人目当てで来ていたりもする。 彼女の名前は知らない。背が低く、青い髪を靡かせる彼女。 ミステリアスな彼女は、この店にぴったり。 年はいくつくらいだろうか。 背から察するに中学生くらいだろうか。 まだまだ子供に見える。 学校行かなくていいのかな? 「お客さん、よく来るね~」 「…え!?」 は、話しかけられた。 「…顔、覚えられてた?」 「だって毎日来てくれるんだもん。なんか欲しいものがあるの?」 …そっか。やっぱり来すぎだったかな。 「と、特に欲しいものがあるわけじゃないんだけど…このお店の、不思議な雰囲気が好きで…」 「あ~、わかる。私も好きなんだよ~」 会話は弾んだ。たわいない談笑が、店内に広がる。 お客さんは私以外には誰もいない。二人きりの店内。 あまりにも、静か。 「へ~、あの大学に行ってるんだ。優秀なんだネ」 「そういうあなたは…」 「泉」 「え?」 「泉、こなた。私の、名前」 「……そうゆう、泉さんは中学行かなくていいの?」 名前を知ることができた。…嬉しい。 「…こほん。私は大学生だよ?」 「え゛え゛!?」 嘘…こんなに小さいのに!? 「まぁ、よく言われるョ。下手すると小学生に間違われちゃうんだ」 「…ごめんなさい」 悪いことを言ってしまった。なんかしょんぼりしてるように見える。 「いやいや、いいよ…ええと、名前は?」 「かがみ。柊かがみが私の名前…」 「へぇ~、いい名前。かがみだなんて」 「そんなことないけど…こなたも可愛い名前でいいじゃない」 「またまた。私を口説いても何も出ないよ」 二人きりの時間は過ぎた。 もう夕方になりかけていた。 「私、そろそろ帰らないと…」 「もうこんな時間だもんネ」 「じゃあ、さよなら…」 「あ、待って待って」 呼び止められた。 「お土産、あげるョ」 …なんと。 「別にいいよ」 「ほらほらー。ガラにもなく遠慮しない」 「ガラにもないって何よ」 「がめついんだから、遠慮しなくていいよ♪」 「が、がめつくなんてないわよ」 「はい、お土産…」 差し出されたのは…小さな手鏡だった。 手のひらに収まってしまう小さなそれは、私を少しだけ映し出す。 「…いいの?」 「いいよ。常連さんだもん…」 「…まだ何も買ったことないけどね」 「まぁ、細かいことは気にしない気にしない」 私がそれを受け取ろうとすると、彼女はその鏡を自身の唇に触れさせた。 音もなく、すっと。 「…何してるの?鏡にキスなんてして」 「…おまじない」 「何の?」 「…かがみが、また…私の元へ来ますように」 ドキッとしてしまった。 かがみと鏡、どっちのことを言ったんだろう…。 私にはそれを確かめる術はなかった。 「…はい、おまじないおしまい。あげる…♪」 二人だけの店内は、二人だけだと広すぎて。 静かな静かな店内は、やはりこの世のものではないようだった。 「…ありがと」 「どういたしまして♪」 そうして、私は店を出る。 私は店を見上げる。 古ぼけた佇まいの雑貨屋。 西洋風の建物で、レンガでできているそこは、私のお気に入りの場所。 不思議な雰囲気が漂うそこは、喧騒で広がる世界とは切り離されている感覚にとらわれる。 一度その店に足を踏み入れれば、まるでヨーロッパのような、そんな場所。 そここそ、私が大好きな雑貨屋。 さっき受け取ったその鏡を、私は自分の唇にそっとつけた。 明日もまた来よう。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-09 05:06:01) - 不思議な &br()雰囲気の話ですね。 &br()こういうのも &br()いいですね(^-^) -- 無垢無垢 (2009-05-24 00:31:21) **投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください) #vote3(13)

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