「二人乗り」(2023/06/25 (日) 02:10:30) の最新版変更点
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「......ン」
頬を撫でる風に誘われるまま瞳を開けた。
少しの間目を瞑っていただけなのに太陽の光が眩しくて。
一瞬真っ白になった視界に浮かんできたのは、見知った薄紫色の影。
「...かがみ」
「ん?」
背中越しに名前を呼ぶと、少し肩を揺らして答えてくれた。
二つに結ばれた髪の毛が風に靡いて私の頬を掠める。
サラサラと揺れる髪がなんだか可愛くて、そっと大事なものに触る様に指先で触れてみる。
――髪、キレイだなぁ...
髪になんてもう何回も触ってるのに、それでもやっぱりかがみの髪は綺麗で。
指に絡めた毛先がスルリと逃げていくのがなんだか悔しくて、そのままじゃれているとかがみが楽しそうに笑った。
「何してんの?」
「かがみの髪が遊んで欲しいって」
「そりゃ迷惑かけたわね」
くくっ、と笑いを噛み締めるように笑うかがみの髪を少し引っ張ってみる。
悔しいとか、構ってほしいとか、そんなんじゃなくて...
なんか分かんないけど面白くない。
子供扱いされたみたいな、そんな笑い方のかがみに抵抗の意を示す。
でも結局「ごめんごめん」なんて悪びれた様子もなく肩を揺らすかがみに私の不満は募るばかりだ。
一回立ってしまった形勢をなんとか逆転できないものかと揺れているかがみの背中に額を付けた。
「かがみ、温かい」
「確かに今日は暖かいかもね」
「...そうじゃなくて」
「ん?」
「.........なんでもない」
結局また笑われる。
仕方ないなって言うような、でも楽しげに笑うかがみが背中に触れている額から伝わってきた。
微かに聞こえてくるかがみの心音がやけに早くて。
自分の心音とはちょっと違うかがみの心音。
速さとか、リズムとか、そんな簡単なものじゃなくて。
かがみが生きているって実感できる音。
「かがみ、そろそろ変わる?」
「何を?」
「運転」
あぁ、なんて言いながらも回っているかがみの足のスピードは変わらなくて。
二人分の体重を乗せた自転車がギィと錆びた金属音を鳴らした。
速くもなくて、遅いわけでもない自転車の速度がやけに気持ちいい。
それにしても、
――風、気持ちいいな...
まだまだ冬だと思っていたけど、立春が過ぎただけのことはあるのかもしれない。
先月まで感じていた寒さとは打って変わって今日の天候は小春日和、だっけ?そんな感じだと思う。
そりゃさすがに半袖になる程暖かくはないけど、風を気持ちいいって思えるくらいの余裕はあるから。
「風、気持ちいいわね」
あぁ、なんだ。
かがみも同じ事考えてたんだ。
背中から額を離して出来るだけ体を近づかせてかがみの顔を見上げてみる。
私の位置からじゃかがみの横顔しか見えないけど、その瞳はまっすぐに前を向いていて。
悔しいけど、一瞬見とれた。
この瞳が私だけを見つめる瞬間を知っているから。
だからこんなにも顔が熱くなるんだ。
「うん?どうしたの?こなた」
「な、なんでもない!!!」
視界の端に私を捕らえたのか、ちらっと横目で視線を合わせてくるかがみに慌てて顔を引っ込めた。
今顔見られたらきっとからかわれる。
熱を帯びてるだろう顔をかがみの背中に押しつけると、一瞬ピクッと反応した後、深く息を吸う音が聞こえた。
自転車のスピードは相変わらず変わらなくて、車輪から聞こえる金属音も音を立ててばかりだ。
そして目の前にいるかがみも...
「かがみ」
「ん?」
呼べばちゃんと答えてくれて、少し汗ばんだ背中から伝わる熱もこうしてちゃんと伝わってくる。
「ずっと、こうしていたいね」
「私の足が悲鳴をあげるわね」
「でも痩せるんじゃない?」
そう言うとなんだか自然に笑いがこみあげてきて、かがみの制服を掴んでいた指に力を入れた。
「たく、余計なお世話よ......でも」
「ん?」
「ずっとアンタの傍でこうして笑っていたい、ってのは同感」
頬をくすぐる風がやけに熱い。
そんなこと言うなんて、やっぱりかがみはズルイ。
さっきよりも何倍も熱くなってしまった顔を左手で隠す。
かがみが前を向いていてホント良かった。
きっと今の私の顔はびっくりするくらい赤くてにやけてると思うから。
見られていないだろうかと指の隙間からかがみを見上げると、そこにはさっきと変らないかがみの背中。
だけど。
本当にほんのちょっとだけど。
靡く髪の毛の隙間から見える頬は赤みを帯びていて...
「かがみ、ほっぺた赤いよ?」
「るっさい」
「耳も真っ赤だよ?」
「......それはアンタもだろ」
見えてないのに分かるなんてさすがだね。
なんか無性に嬉しくなって、胸の奥が締め付けられて。
そのまま勢いよくかがみに抱きつくと、かがみの体ごと自転車がよろけた。
「だー、もうなんなんだ、アンタは!」
「だって抱きつきたくなったんだもん」
「はいはい」
「かがみ?」
「今度はなによ?」
「好きだよ」
「......知ってる」
「かがみは?」
「.........好きよ」
「知ってる」
そう言うと抱きついていた背中が急に後ろに倒れてきて、かがみが凄い幸せそうに笑うから、私もつられて一緒に笑った。
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- 表現が凄く好き! &br()作者様GJです!! -- 名無しさん (2010-06-16 01:06:25)
- 今の季節にピッタリですね -- 名無しさん (2010-06-15 16:49:01)
- 和んだ -- 名無しさん (2010-04-02 17:49:06)
- 心が温かくナッパ -- 名無しさん (2009-11-26 22:42:10)
- 体温が伝わってくる!暖かくて甘い -- 名無しさん (2009-02-27 22:12:10)
- ふおお!甘いよー。GJ!! -- 名無しさん (2009-02-23 19:59:14)
- 仄かに香る、といった甘さです。 &br()権現堂とは言い得て妙なw &br()今年の春が楽しみだ。 -- 名無しさん (2009-02-21 01:05:28)
- ええ。知ってますとも。 &br()あなた方がとても甘いことは &br()知ってますとも。 -- 無垢無垢 (2009-02-20 22:13:22)
- たまんねーwwテラアマス -- 名無しさん (2009-02-19 00:12:30)
- 甘いw甘すぎますww歯医者に予約してきました。GJ! -- 名無しさん (2009-02-18 13:58:53)
- 以前拝見した某絵師さんの、「こな×かがチャリ二人乗り」の絵が脳内に鮮明に浮かんだ。GJ &br() -- kk (2009-02-17 22:20:31)
- こなたとかがみのほのぼのとした暖かさと共に優しげな甘さが伝わって来ました。 &br()何となく聖地巡礼で行った権現堂堤(OPでこなたが踊ってる後ろの高台の様なところ)で二人がゆったりと自転車を走らせてるイメージが湧きました -- こなかがは正義ッ! (2009-02-17 00:46:04)
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「......ン」
頬を撫でる風に誘われるまま瞳を開けた。
少しの間目を瞑っていただけなのに太陽の光が眩しくて。
一瞬真っ白になった視界に浮かんできたのは、見知った薄紫色の影。
「...かがみ」
「ん?」
背中越しに名前を呼ぶと、少し肩を揺らして答えてくれた。
二つに結ばれた髪の毛が風に靡いて私の頬を掠める。
サラサラと揺れる髪がなんだか可愛くて、そっと大事なものに触る様に指先で触れてみる。
――髪、キレイだなぁ...
髪になんてもう何回も触ってるのに、それでもやっぱりかがみの髪は綺麗で。
指に絡めた毛先がスルリと逃げていくのがなんだか悔しくて、そのままじゃれているとかがみが楽しそうに笑った。
「何してんの?」
「かがみの髪が遊んで欲しいって」
「そりゃ迷惑かけたわね」
くくっ、と笑いを噛み締めるように笑うかがみの髪を少し引っ張ってみる。
悔しいとか、構ってほしいとか、そんなんじゃなくて...
なんか分かんないけど面白くない。
子供扱いされたみたいな、そんな笑い方のかがみに抵抗の意を示す。
でも結局「ごめんごめん」なんて悪びれた様子もなく肩を揺らすかがみに私の不満は募るばかりだ。
一回立ってしまった形勢をなんとか逆転できないものかと揺れているかがみの背中に額を付けた。
「かがみ、温かい」
「確かに今日は暖かいかもね」
「...そうじゃなくて」
「ん?」
「.........なんでもない」
結局また笑われる。
仕方ないなって言うような、でも楽しげに笑うかがみが背中に触れている額から伝わってきた。
微かに聞こえてくるかがみの心音がやけに早くて。
自分の心音とはちょっと違うかがみの心音。
速さとか、リズムとか、そんな簡単なものじゃなくて。
かがみが生きているって実感できる音。
「かがみ、そろそろ変わる?」
「何を?」
「運転」
あぁ、なんて言いながらも回っているかがみの足のスピードは変わらなくて。
二人分の体重を乗せた自転車がギィと錆びた金属音を鳴らした。
速くもなくて、遅いわけでもない自転車の速度がやけに気持ちいい。
それにしても、
――風、気持ちいいな...
まだまだ冬だと思っていたけど、立春が過ぎただけのことはあるのかもしれない。
先月まで感じていた寒さとは打って変わって今日の天候は小春日和、だっけ?そんな感じだと思う。
そりゃさすがに半袖になる程暖かくはないけど、風を気持ちいいって思えるくらいの余裕はあるから。
「風、気持ちいいわね」
あぁ、なんだ。
かがみも同じ事考えてたんだ。
背中から額を離して出来るだけ体を近づかせてかがみの顔を見上げてみる。
私の位置からじゃかがみの横顔しか見えないけど、その瞳はまっすぐに前を向いていて。
悔しいけど、一瞬見とれた。
この瞳が私だけを見つめる瞬間を知っているから。
だからこんなにも顔が熱くなるんだ。
「うん?どうしたの?こなた」
「な、なんでもない!!!」
視界の端に私を捕らえたのか、ちらっと横目で視線を合わせてくるかがみに慌てて顔を引っ込めた。
今顔見られたらきっとからかわれる。
熱を帯びてるだろう顔をかがみの背中に押しつけると、一瞬ピクッと反応した後、深く息を吸う音が聞こえた。
自転車のスピードは相変わらず変わらなくて、車輪から聞こえる金属音も音を立ててばかりだ。
そして目の前にいるかがみも...
「かがみ」
「ん?」
呼べばちゃんと答えてくれて、少し汗ばんだ背中から伝わる熱もこうしてちゃんと伝わってくる。
「ずっと、こうしていたいね」
「私の足が悲鳴をあげるわね」
「でも痩せるんじゃない?」
そう言うとなんだか自然に笑いがこみあげてきて、かがみの制服を掴んでいた指に力を入れた。
「たく、余計なお世話よ......でも」
「ん?」
「ずっとアンタの傍でこうして笑っていたい、ってのは同感」
頬をくすぐる風がやけに熱い。
そんなこと言うなんて、やっぱりかがみはズルイ。
さっきよりも何倍も熱くなってしまった顔を左手で隠す。
かがみが前を向いていてホント良かった。
きっと今の私の顔はびっくりするくらい赤くてにやけてると思うから。
見られていないだろうかと指の隙間からかがみを見上げると、そこにはさっきと変らないかがみの背中。
だけど。
本当にほんのちょっとだけど。
靡く髪の毛の隙間から見える頬は赤みを帯びていて...
「かがみ、ほっぺた赤いよ?」
「るっさい」
「耳も真っ赤だよ?」
「......それはアンタもだろ」
見えてないのに分かるなんてさすがだね。
なんか無性に嬉しくなって、胸の奥が締め付けられて。
そのまま勢いよくかがみに抱きつくと、かがみの体ごと自転車がよろけた。
「だー、もうなんなんだ、アンタは!」
「だって抱きつきたくなったんだもん」
「はいはい」
「かがみ?」
「今度はなによ?」
「好きだよ」
「......知ってる」
「かがみは?」
「.........好きよ」
「知ってる」
そう言うと抱きついていた背中が急に後ろに倒れてきて、かがみが凄い幸せそうに笑うから、私もつられて一緒に笑った。
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- GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-06-25 02:10:30)
- 表現が凄く好き! &br()作者様GJです!! -- 名無しさん (2010-06-16 01:06:25)
- 今の季節にピッタリですね -- 名無しさん (2010-06-15 16:49:01)
- 和んだ -- 名無しさん (2010-04-02 17:49:06)
- 心が温かくナッパ -- 名無しさん (2009-11-26 22:42:10)
- 体温が伝わってくる!暖かくて甘い -- 名無しさん (2009-02-27 22:12:10)
- ふおお!甘いよー。GJ!! -- 名無しさん (2009-02-23 19:59:14)
- 仄かに香る、といった甘さです。 &br()権現堂とは言い得て妙なw &br()今年の春が楽しみだ。 -- 名無しさん (2009-02-21 01:05:28)
- ええ。知ってますとも。 &br()あなた方がとても甘いことは &br()知ってますとも。 -- 無垢無垢 (2009-02-20 22:13:22)
- たまんねーwwテラアマス -- 名無しさん (2009-02-19 00:12:30)
- 甘いw甘すぎますww歯医者に予約してきました。GJ! -- 名無しさん (2009-02-18 13:58:53)
- 以前拝見した某絵師さんの、「こな×かがチャリ二人乗り」の絵が脳内に鮮明に浮かんだ。GJ &br() -- kk (2009-02-17 22:20:31)
- こなたとかがみのほのぼのとした暖かさと共に優しげな甘さが伝わって来ました。 &br()何となく聖地巡礼で行った権現堂堤(OPでこなたが踊ってる後ろの高台の様なところ)で二人がゆったりと自転車を走らせてるイメージが湧きました -- こなかがは正義ッ! (2009-02-17 00:46:04)
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