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ガラッ
担任であるネギ・スプリングフィールドが教室に入ってくる。
ネギ君はこのクラスの真実を知らない。いや、ネギ君だけではない。桜咲刹那も何故かこの事を知らないのだ。
聞く所によると、このかが土下座までして超に頼んだらしい。
自分は裏で好き放題やっているくせに、隠す所はちゃんと隠す。
だから私はあいつが嫌いだ。
いや、このクラスであいつの事を好きな奴なんていないだろう。

「実は昨日、近衛木乃香さんがお亡くなりに…」
え?
私は自分の耳を疑った。
木乃香が死んだ?死んだ死んだ死んだ芯だ新だ臣だ秦だ信田死んだ
ハは刃羽覇HA把ha
ざまぁみろ。天罰が下った。あの女狐につ、ついに…、ついにぃぃ天罰がぁ!

私は奥から込み上げる笑いを必死に押え付け、悲しみにうちひしたような顔をしてみせた。
周りを見ると、クラス全員が悲しそうな顔をしていた。
それを見ていると吹き出しそうになったので、必死に泣いている振りをして両手で顔を隠す。
おそらくクラスの大半は、心のなかで腹を抱えて大笑いしているだろう。
特に見ていて面白かったのは朝倉だ。
笑いを堪える事ができず、肩が思いっきり震えていた。

みんな笑っている。みんな喜んでる。なのに…
何であんただけは喜んでないの?
「えー、葬儀は二日後に行います。」
酷い事…いっぱいされてたじゃん…。
「原則的にこのクラスは全員参加です。用事のある人は、放課後までに僕の所に言いに来てください。」
ねぇ…、そんな悲しい顔しないでよ…。笑ってた私が惨めじゃん…。
「では、ホームルームを終わりにします。」
ねぇ、まき絵…。どうして…
「起立、礼。」

ホームルームが終わった。

「ね、ねぇ、チャオリン。あのさ、面白い話ってさ…、もしかして…。」
桜子はネギが出ていくなり、突然血相を変えて超に問いただした。
桜子の笑顔は消えていた。何ヵ月ぶりだろう。笑顔を纏っていない桜子を見たのは…。
「なにを言うカ。私はおかしすぎて笑いを堪えるのが大変だったネ。」
超は桜子ばりの笑顔を向けて言った。
あの二人を見ていると、突然さっきの桜子と円を思い出してしまった。
桜子は先ほどと立場が180度変わってしまったのだ。
「全然笑えないよ…。」
桜子は超から目を逸らした。先ほどの威勢はどこに消えたのか…
すると超は懐から何かを取り出すと、それを隣りにいた桜子の顔に押しつけた。


黒く、L字型の物体、引き金…それは紛れもなく拳銃であった。
おもちゃか本物かは分からない。ただ言える事は、銃口は桜子の右目を捕らえている。
「どうしたネ?そんなに怯えて。」
超は満面の笑みなのに対し、桜子は今まで見せたことのない絶望感溢れる顔で超を見つめている。
「あ、これ実はエアガンネ。私が本物持ってるハズないヨー。」
超は笑顔で言っているが、本物だろがエアガンだろうが眼を撃たれて無事ですむはずがない。
桜子の目には涙が溜まってきている。
「冗談ネ。笑うヨロシ。」
超の顔は既に笑顔と呼べるものではない。
…あれは、恐怖の塊だ。
こんな状態で笑えるはずがない。
床に涙が落ちる。
クラス全員が桜子にベクトルを向けている。
「笑え!!」
超の人差し指に力が入る。
「い、いや、イヤーーー!!」

カスン…
何も起こらない。超はエアガンからマガジンを取り出すと、
「しまった。私としたことが弾を入れ忘れてしまったヨ。」
と、わざとおどけて言って見せた。
「あ、ああ…。」
桜子の顔は涙でグシャグシャになっていた。
「…で、何で桜子サンは何で泣いてるか?」
先ほどの笑顔とは真逆といっていいほど冷たい顔。
一瞬、教室が凍り付いた。
だから私はこの女が怖いのだ。

ガラッ
教室に入って来たのは円だった。
手には、幼稚な縄跳びを持ち、顔はタコの様に真っ赤である。
「縄跳び…借りて来た。」
円がどれだけ恥をかいたのか容易に想像できる。
彼女は縄跳びを乱暴に放り投げると、自分の鞄を持って教室を出ていってしまった。
「しかし、困ったネ。せっかく円サンが恥かいて借りてきたのに使うアテがないヨ。」
超は縄跳びを拾いあげると、縄跳びをどうするか真剣にかんがえている。
キーンコーンカーンコーン
「あ、もう一時間目が始まるネ。仕方がない、後で考えるヨ。」
超は乱暴に縄跳びを腕に巻くと、さっさと席についてしまった。
他の生徒も超が席に座った途端、我に帰り、自分の席に座り始めた。
ただ一人を除いて…

ガラッ
「起立、礼。」
一時間目は数学。数学の担当は瀬流彦先生だ。
「よーし、それじゃあ教科書56ページ開いて。」
なんて爽やかな笑顔なんだろう。今のこのクラスには彼の笑顔は似合わない。
「おい、桜子!先生来てんだろ!早く席につけよ!」
突然、床に座り込んで泣いていた桜子に罵声が浴びせられる。
言ったのは美砂。美砂はまるで汚いものでも見るかの様に桜子を睨み付けている。


「ん?どうしたんだ椎名?」
瀬流彦先生も泣いている桜子に気付いた様で、桜子の元に駆け寄った。
「あーあ、授業中断しちゃった。ふざけんな。」
桜子に浴びせられる罵倒。
「お、おい、みんな…。」
瀬流彦先生は罵倒の嵐にどう対処していいか分からずあたふたしている。
瀬流彦先生はあまり生徒達を纏めたりするのが苦手だ。
なので数学の時間では高い確率でなにかしらの騒ぎが起きる。
こう言ってしまっては失礼かもしれないが、私から言わせれば瀬流彦先生は教師に向いていない。

バンッ!!
突然、長谷川さんが立ち上がり、美砂を睨み付ける。
「うるせぇな…殺すぞ?」
ゾクッ!!
背中に寒気が走る。眼鏡の奥が殺気で満ちている。
「な、なに偽善者ぶって…」
ギロッ
「ぎ、ぐっ…。」
美砂の最後の抵抗も虚しく散り、クラス全体が静まり帰る。
「先生、続きを。」
長谷川さんは桜子を立ち上がらせると、そのまま桜子を背負って教室を出ていってしまった。
か、かっこいい…
でも、なんで今まで目立つことを避けていた長谷川さんがなぜあんな事を…
しかも桜子なんか…

あの後授業は流れる水の様にスラスラと進み、あっという間に一時間が終わっていた。

そして午前、午後ともにあっという間に過ぎ、やっと放課になる。
帰る時も私は独りだ。
登校の時とは違い、沢山の生徒が一斉に登校するので朝よりは賑やかだ。
部活は辞めてしまった。私は部活へ行くのが怖い。もしかしたら私も千鶴さんの様に…
私ってネガティブだな…

―電車、出発しま~す。
電車が走る。席に座れなかった私は吊り革に掴まって窓から見える景色をずっと眺めている。
家も森もトンネルもあっという間に過ぎて行く。
こんな地味な風景を見るのも、私の数少ない楽しみの一つ。
…嫌になる
「ねーねー、ちょっと眩しくない?」
「カーテン閉めようよ。」
こうして私の数少ない楽しみも簡単に奪われていく。
…本当に嫌になる。

―ご乗車、ありがとうございます。
ワイワイガヤガヤ
みんな、楽しそうに電車を降りていく。
彼女たちが羨ましい。
本当は私もアキラやまき絵たちとクレープ食べたり、電車の中で他人の迷惑など気にせず騒いだりしたい。

「え?」
私は自分の目を疑った。私の家の前にはまき絵が下を向いて誰かを待っている。
どうしよう…。なんで部屋の前なんかに…
私はどうすればいいか分からなかった。
私はまき絵と話したくない。でも、 『お、おはよう裕奈。』
…どうしよう。
これ以上足が前に進まない。
わたしは…どうしたら
「裕…奈?」
「!!」
気づかれた!私は急いで自分の部屋に入ろうと、まき絵を突き飛ばそうと手を伸ばす。
ガシッ
伸びた手はまき絵に掴まれ、私の抵抗虚しく簡単に捕まってしまった。
「―!」
私は頭に血が上り、無理矢理手を振り払うと、逃げるように自分の部屋に入っていった。
「ハァ…ハァ…。」
頭が痛い。胸が痛い。なんで自分に正直じゃないんだろう。
嫌だ。こんな自分が嫌だ。
せっかくむこうから来てくれたのに、結局私は自分の事しか考えてない。
「…裕奈。私、知ってるんだ。裕奈って怯えてるんだよね。あのクラスに…。」
「!!」
外からまき絵の声がする。
私はまき絵に全て見透されていのだ。
「私も気持ち分かるよ。私もこのかに何回も嫌な事されたし…。私もあのクラス怖いしね。」
まき絵はなにが言いたいのか。私にはまだ分からない。
「でも、私さ。このかが死んだの聞いた時…、笑う事ができなかった。イジメられてて…嫌いだったのに…。
やっぱり…、たとえ相手がどんなに憎い人でも…、その人が酷い目にあってたら…私、笑えないよ。」