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「イテテテテ…。」
「大丈夫?カモ君。」
「大丈夫なわけねぇっすよ兄貴。下手すりゃ死んでたかもしれないんですぜ。」
「うう…。」
あれからネギは学校が終わり部屋に帰って見ると、そこには包帯ぐるぐる巻きにされて小さなベッドで安静に眠っているカモの姿があった。
「しかしすまねぇ兄貴。アイツに教師になればいいなんて言っちまって…。」
「いや、仕方ないよ。それしか方法がなかったんだから。」
ネギはキッチンに立ち、カモのためにお粥を作っている。
「あれ?そういえばあいつは?」
「ああ、ネウロさんなら『我が輩は少しやる事がある。貴様は部屋に帰って、あの小動物と漫才でもしていろ。』だって。」
「(うーん、なんか嫌な予感が…)」
カモはあの男への不安が絶えることはなかった。

そのころネウロはある部屋の前に立っていた。
コンコン
「どうぞ。」
ドアの向こうから女性の声が聞こえてくる。
「失礼します。」
ドアを開くと、そこには昨日会った女性が部屋の隅で淋しく蹲っている。
「こんにちは。桜咲刹那さん。」
ネウロは部屋の空気に似合わないほどの満面の笑みを刹那に向けた。
「昨日はどうも。」
返事はない。おそらくネウロの声は今の刹那には届いていないのだろう。
「あなた…、ここを出て行くつもりでしょう。」
刹那の肩がぴくりと動く。
「ゴミ一つ落ちていない床、ほこり一つのっていない家具。おそらく貴方なりの礼儀でしょう。
そして何より片付けられた荷物。これでは出て行きますと言っているようなものです。」
「私は…もうここにいる理由がありませんから。」
ここで初めて刹那の口が動く。
「このかお嬢様が亡くなって…、私には護るものがありませんから…。」
刹那には昨日の覇気が全く感じられない。

まるで蝉の抜け殻のように腑抜けてしまっている。
「ふん、腑抜けが。」
「え?」
「貴様は腑抜けだと言っているのだ。このスズメが。」
突然態度が変わったネウロに戸惑う刹那。
「いつまでいない姫の幻影を追っている。いい加減手を振り払え。」
刹那のなかの何かが音をたてて切れた。
刹那はネウロを押し倒すと、そばにあった夕凪を乱暴に抜き、刃をネウロの首筋に突き付けた。
「お嬢様の悪口を言うな!」
刹那の眼にば怨゙ど慰゙が混ざりあっている。
とても深く、そして哀しい眼。
「人間とは愚かだ…。」
「なに?」
「なぜ人間はあかの他人のために悲しむ。なぜあかの他人のために怒る。なぜあかの他人のために死ぬ。」
ネウロは首に刃を突き付けられているにもかかわらず、全く動揺せずに語り始める。
「貴様はなぜ、あの女のために悲しむのだ。」
「そ、それは…お嬢様は私の大切な人…だから。」
なぜ、突然そんな事を聞いてきたのか。刹那の頭は混乱するばかりだ。
「なぜ自分のやりたいように動かないのだ。」
「それが…、私の使命だから…。」
「ほう…、ではそうやって部屋の隅でウジウジ自分を悔いるのも貴様の使命か?」
「!!」
刹那は後ろに跳び引いた。「本当は犯人を捕まえて、その刀で切り刻みたいのではないのか?」
刹那の心の奥底に封じ込めていた感情が、ネウロによって掘り起こされていく。
「今、お前を縛る者はない。ならば自分のやりたい様にやったらどうだ。
我が輩はそのくだらない忠誠心を利用させてもらうだけだ。」
刹那の目の色が変わる。
部屋の時間だけが止まっている様な気がした。