MAGISTER NEGI MAGI from Hell

苛【いじめ】

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「あれ?ネウロさんは?」
ネギが部屋に戻ると、そこにはネウロの姿はなかった。
少し寂しいものを感じたが、事件解決の爽快感と部屋に独りぼっちの孤独感で、そんな気持ちも頭の片隅に追いやられていく。
こうしてネギは久しぶりにぐっすりと眠りについた。

「えー…、オホンッ!今日は先生方に大事な話がある。」
麻帆良学園中等部の各々の教師が学園長の前できれいに長方形に並んでいる。
「今日から都合により新しい先生が転入ならる。」
学園長の様子はいつもと変わらず、孫が死んだ事を全く感じさせない。
―やっぱり学園長はすごいなぁ…。このかさんが亡くなったのに…それに比べて僕は…
『何も知らないくせに!!」
―…嫌な事思い出しちゃったな…
ネギは独り自己嫌悪に浸っている。

「それでは紹介する。どうぞお入りください。」
ガラッ…
右側の扉が開き、教師たちがそちらに注目する。
―あ、え…?
ネギは愕然とした。
「理科の担当になりました脳噛ネウロです。よろしくおねがいします。」
そこに立っていた男はここにいるハズのない怪人。
謎を主食とし、人間をゴミのように扱うある意味危険な男。
そしてネギは悟った。
この人からは逃げられない…と

「ネウロ先生には3ーAの副担任になってもらう。ネギ先生、よろしく。」
―え?ええ~!
なんの因果でこんな事になるのか…。ネギは運命を呪った。
「ネギ先生、初めまして。こ・れ・か・ら・よ・ろ・し・く・お・ね・が・い・し・ま・す。」
ネウロの顔は満面の作り笑みであった。

「なんでまだここにいるんですか!謎食べ終わったんでしょ!?しかも教師って…。」
学園の体育館裏にネギの声が響き渡る。
「ふん、なぜ貴様の指図を請けなければならぬのだ。」
それをネウロは華麗にかわす。
「だいたい貴様はなにを怒り狂っているのだ。」
ネウロは本気で首をかしげている。
「突然消えて、現れたと思ったら、いきなり教師になったとか言うからですよ。あと狂ってはいません。」
「おお、そういうことか!」
ネウロはアホ面して納得している。…多分わざとだ…。
「まあ、そう怒るな。貴様の下僕が勝手に話を進めたのだ。我が輩はただそいつに言われた通りに役を演じていただけだ。」
「え、僕の下僕?僕、下僕なんて呼べる人…」
そのとき、ネギの脳裏に一匹のオコジョが浮かび上がった。
―カモくん!!

時は逆上る
「兄貴、帰って来たぜ。」
茶色の縁あり帽子に茶色いコート、茶色いトランクを背負ったオコジョ アルベール・カモミールは半開きのドアの隙間からちょこちょこと入って来た。
しかし、そのときネギは狂った明日菜を追いかけていて、部屋にはいない。そしてそのとき部屋にいたのは…
「ん?なんだ貴様は?」
そこにいたのは謎の怪人 脳噛ネウロ。しかもその時、ネウロの足下には龍宮の血で小さな水溜まりが出来ていた。
「て、てめー何者だ!兄貴をどこやった!」
言っている言葉の割には腰が引けているカモ。
「兄貴?ああ、ネギか。ヤツならアスナとかいう女を追っかけていったぞ。」
「へ?」
カモは思わず間抜けな声を出してしまった。

ネギと明日菜はどうせいつもの事だろうが、じゃあこの危なそうな男はだれ?
「じ、じゃああんたは誰だ。」
「ん?我が輩か。我が輩は脳噛ネウロ。ヤツの助手…もとい、飼い主だ。」
―え?飼い主?あれ?
カモは飼い主という部分が気になったが、あえて流す事にした。
「貴様はなんだ?」
「俺っちはアルベール・カモミールだ。兄貴の一番弟子だぜ!」
もちろんネギはそんなものとるなんて一言も言っていない。
「ほう、すると貴様はヤツの奴隷か。」
「え?」
カモはまたまた間抜けな声を出した。
それもそのはず、カモは弟子と言ったハズが何故かネウロは奴隷と言っているからだ。
「我が輩の奴隷の奴隷は我が輩の奴隷だ。お前も我が輩の下で働け。」
エ?ナニヲイッテルンデスカ?やばい!逃げねーと!今すぐ逃げねーと!一生ただ働きさせられる…
カモの脳裏にネウロが乗っている人力車を自分が押しているというとんでもない未来予想図が広がっていく。
「こ、これじゃああっしはネギの旦那を…」
カモは全部言い終わる前に一目散に逃げていった。
「我が輩から逃げるとは…」
部屋に一人残されたネウロの笑顔が少しゆがんだのは誰も知らない。 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
カモは周りも見ずに一心不乱に走り続ける。
自分でもどこに向かって走っているのかわかっていないのだろう。
それほどあの部屋にいた怪物に恐怖を覚えたのだ。
血だまりの床、どんな物も掴めてしまいそうな長い腕、人間には決してできない黒く深い目。すべてが常軌を逸していたのだ。

カモが立ち止まった時、目の前には龍宮神社が大きくそびえ立っていた。
そして、カモは息をきらしながらゆっくりと後ろを振り返る。
…背後にはただ森が広がるだけで、ネウロの姿などどこを探しても見つからない。
「ふーっ、全く冗談きついぜ。あの化物…。」
カモは安心したのか、その場でヘタレこんでしまった。
「ほう、化物とは一体誰のことを言っておるのだ?」
カモの身体が一瞬に凍り付く。
カモの背後には賽銭箱の上で足を組みながら退屈そうに座っているネウロの姿。
カモにはもう逃げる体力など残っていなかった。

「取りあえず、我が輩は人目を忍ぶ身。
しかし学園の関係者でない我が輩がいつまでもここに止どまっていれば、忍ぶどころかこの学園から追放される危険がある。
そこで貴様は我が輩が無事に『謎』を喰えるよう、なにかしら工作をしろと言っているのだ。」
ネウロはカモを雑巾絞りのように捩じり上げる。
とても人にものを頼む態度ではない。
カモの身体からビキビキと鈍い音をあげている。
恐らくこのままだと雑巾のように紅い液体を絞り出されることになるだろう。
「わかりました。考えます…、考えますからそれやめて…」
ゴキッ
「ん?」
「ぎぃ、ギャァァァァーーーー!!!」
境内には小さな小動物の悲鳴が響き渡った。

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