MAGISTER NEGI MAGI from Hell

場【げんば】

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「ふむ、ここが現場か?」
いつの間にが人の顔゙に戻っていたネウロは、呆然としているネギには目もくれず、部屋を勝手に物色し始めた。
机の裏、ベッドの下、そしてネギの部屋。
人の死角になり得る場所を、まるで無くした物を探すように床や壁に張り付いて探し回っている。
と、するとネウロはやっとある事に気付く。
「…この女は誰だ?」
ネウロは不満そうな顔をして寝ている明日菜に指をさしている。
普通の人間ならば『お前が誰だ!』とでも言うのだろうが、さすがに子供が言うセリフではない。
「神楽坂明日菜さん…。僕の大事な生徒です。」
おまけにあっさりと生徒の情報を訳の分からぬ怪物に言ってしまう。
まぁ純粋だから出来る事なのだが…

ネウロはしばらく明日菜を観察していたが、突然気味の悪い笑顔を浮かべ
「喜べ人間。この『謎』はもはや我が輩の舌の上だ。」
と、嬉しそうに言い放った。

「あの…」
ネギは勇気をふり絞り、目の前の化物に話しかけた。
「ネウロ…さん?…お聞きしたい事があります。」
「ん?なんだ人間。」
「あなたは…何者なんですか…?先ほどからこの部屋でなにをしているんですか?」

ネギにとってネウロの行動の一つ一つが全く理解できなかった。
そんなネギの様子をまるで珍しい物でも見るかのように
「おお、人間とはそんな事も分からないのか。」
と、憎たらしく言い放つ。
「どうせ、その写真の人間が死んだのは事故だとか思っていたのだろう。」
え?
なぜ近衛このかが事故で死んだことをこの怪物は…いや、違う!
近 衛 こ の か は 事 故 死 で は な い の か ?
ネギの頭はより一層混乱した。
あのタカミチでさえ、事故死と言ったのに、なぜこの男は易々とそれを否定出来るのか…
事故死ではないとするとなぜこのかは死んだのか…

「この人間は事故死ではない。」
―やめて…、言わないで…
「この女は…」
―やめろ!言うな!
「こ・ろ・さ…」
―やめろやめろやめろやめろやめろやめろ
「れ・た…」

ここから先はネギの耳には届いていなかった。
認めたくなかった事実。あの優しく、姉のような存在だった少女は…

殺されていた

「…すか…」
「ん?なんだ?」
「ごのがざんをごろじたのは誰でずか!?」
ネギの顔は涙でクシャクシャになっていた。
まさに鬼の形相。犯人が分かった途端に、犯人を刺してしまいそうな勢いだ。

「まあ、そう慌てるな。」そんなネギにも全く怯まず、余裕の表情のネウロ。
「それより、お前に幾つかやって欲しい事がある。」


いつの間に朝になっていた。
結局ネギは一睡も出来なかった。
部屋を見渡すと明日菜もネウロもいなかった。
明日菜は恐らく新聞配達のバイトだろうが、ネウロはネギに勝手に頼み事を押しつけ、どこかへ消えてしまった。
…全くはた迷惑な話だ…。
『明日は土曜日で学校はない。『謎』は明日の午後に喰う。それまでにアスナとかいう女を部屋に閉じ込めておけ。『謎』を喰うために必要だ。』
…人の尊厳をまるっきり無視した命令に、ネギはついつい頭をかかえてしまう。


ネウロは言った。
『『謎』はすでに我が輩の口のなかにある。』
正直、ネウロの言う『謎』とは何なのかまだわからないし、完全にネウロを信用した訳では無い。
しかし、ネギ自身もネウロに賭けてみたくなったのだ。
『謎』を喰らう奇妙な怪人に…


「…私はどうすれば…。」
桜咲刹那は独り部屋の隅で丸くなっている。
このかが死んだ今、ここに止どまっている理由はない。しかし刹那にはここを出てから行く宛のある場所などない。
「…私はどうすれば…。」
同居人である龍宮はすでに出かけたようだ。
龍宮は最近影でコソコソやっているらしいのだが、今の刹那にはそれを追及する気さえ起こらない。
「…私はどうすれば…。」
主君を失い、落ち武者と成り果てた刹那にはもうあの頃の勇敢な姿はない。


コンコン

「刹那さん、居ますか?」
刹那の目に生気が戻る。
「…出たくないなら結構です。僕も刹那さんの気持ち…分かりますから。」
―大事な人が死んだ気持ち…、か…
刹那は自分なりに言葉を解釈した。
「あの、…もし来れたら、…午後一時に僕の部屋に来てください。それでは」
ネギは閉じたドアの前でそれだけ言うと、去っていった。
ネギ先生の部屋…。それはつまりこのかの部屋であった場所である。

日の光が部屋の隅で丸まっている刹那を照らし出した。

「おやおや、皆さんおそろいで。」
ネウロ部屋の中に入るとそこにはネギと明日菜が床に座っていた。
明日菜はネウロを見て、びっくりしたのか、ネギにコソコソと話しかけている。
「ね、ねえネギ…、あいつ何なの?」
「えーとっ…たしか脳噛ネウロとかいう名前で、突然藪から棒に部屋に
ボコッ…
ネギはネウロに思いっきりひっぱだかれた。
「先生は冗談がお上手ですね。」
しかも笑顔で…。おまけに先生って…。
「先生って…?」
「実は先生は裏で結構有名な名探偵なんですよ。」
―え?何それ?
「え?そんな話聞いてない…。」
「まあ裏の世界でですから。」
「うっ…。」
明日菜はそれ以上言い返す事が出来なかったようだ。
「それで私は先生の助手を勤める脳噛ネウロです。よろしく。」
「…神楽坂明日菜です。よろしく…。」
どうやらこの二人はうまくかみ合うことができないようだ。
その証拠にネギは明日菜にキツい目で睨まれている。

「それでは先生、推理を始めましょう。」
―え?推理?
おそらくこのかを殺したトリックを暴く推理なのだろうが、
当然探偵役になることなど全く予期していなかったネギに推理など出来るはずがない。


―え?ネウロさんが推理するんじゃないの?まずい…どうしよう…
結果、ネギの頭はまた混乱し始めた。

コンコン…
「「?」」
「お邪魔します…。」
そこに入って来たのは、桜咲刹那であった。
刹那の顔はだいぶ痩せていて、目にはクマができていた。
「先生、こちらの方は?」
さきに聞いてきたのはネウロの方であった。
「あ、桜咲刹那さんです。」
「…桜咲刹那…です。」
「脳噛ネウロです。よろしく。」
刹那はやはりかなり疲れていたようで、ネウロのことをくわしく聞いてこなかった。
ネウロの方は明日菜の時と変わらず相変わらず無関心だ。

「先生、ちょっとこちらへ…。」
ネウロはネギの腕を強引に引っ張り無理矢理外へ連れ出した。

「あのー、僕推理なんて全然…」
「問題ない。」
ネギの弱気発言をネウロの冷たい声が書き消した。
「実際に推理を解くのは我が輩だ。ただそれを貴様が解いたことにして欲しいのだ。」
―?
「我が輩は地上では人目を忍ぶ身。手柄や名声で目立つのはマナーに反する。表に立つ奴隷にんぎょ…もとい、代理人が必要なのだ。」
―え?今、奴隷人形って…
まあそこは置いといて…。簡単にいえば推理を解く振りをしていろということだ。

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