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……夏美にとって、全ての事件は知らない間に始まって、知らない間に終ってしまったようなものだった。

3-Aのクラスメイト31名のうち彼女だけが、犠牲者にもならなければ最後の戦いにも関与していない。
最後の戦いの後、他の何人もの級友と同時に病院に運び込まれた千鶴は、夏美にすら何も語らず。
どうやら『行方不明』になったエヴァンジェリンが、一連の事件の重要人物だったらしい、と分かるだけ。
事件は終っても、夏美は全く心の整理がつかないのだった。

彼女は、事件の真相が知りたいと思った。
それが小太郎が来た夜のような、深く踏み込んではいけない種類の事件だと、薄々勘付いてはいたが……
それでもなお、追わずにはいられなかった。
その日彼女が学校をサボってエヴァの家のあった場所を訪れたのも、そんなモヤモヤした気分のせいだ。

エヴァの家は……しかし、すっかり取り壊されてしまっていた。
完全に後手後手に回ってしまった魔法先生たち。
彼らの事後検証と後処理の過程で、壊れたログハウスは完全にその痕跡を消していた。
森の中、小川のほとり。更地になった空白の前で、夏美はしばし呆然とする。
「……何やってんだろ、私……」
夏美はなんだかバカらしくなって、自嘲気味に笑う。
考えてみれば、家が残っていたところで、夏美にできることなど何もない。
調べるにも何をどう調べるというのか。その辺のことを全く考えずに、フラフラとこんな所に来てしまった。
夏美は大きく溜息をつくと、気分を変えようとその辺を散歩してみようと思い立つ。
静かな森、チョロチョロと流れる小川。
よくよく考えれば、同じ麻帆良学園都市内とは思えぬような空間である。まるで森林公園だ。

「……?」
と。歩き出した夏美は、やがて森の中の小道で、何か硬い塊を踏みつける。
彼女は目を凝らし、足元の地面に半ば埋まった金属の塊を見る。つま先で、少し掘り起こしてみる。

それは……ナイフだった。巨大なナイフだった。半ばからポッキリ折れた、ナイフだった。
折れてなければ、ちょっとした子供の身長ほどもあったのだろうか。
切っ先が欠けたソレは、形といい大きさといい、まさにナタそのものだ。
夏美は好奇心に駆られてそれを掘り出し、拾い上げる。
刀身に何か文字が彫ってある。刀身が折れている分、全部は読めないが。

「 MINISTERUM MAGI CHACHA……?」

それは――存在しないはずの刃であった。残っているはずのない代物であった。
エヴァが滅びゼロがガラクタと化した時点で、アーティファクトは消えて失せるのが本来の道理。
また残っていたとしても、どう考えても魔法先生たちが見つけられないのはおかしい。
大体、ザジとの戦いの最中に折れて失われたこのナイフが、どうしてこんな所に埋まっていたのか。
だが数々の矛盾も不可思議も抱えながら、その刃は厳然として、そこにあった。
あるいは……霊体を斬るためにエヴァが施した呪いの処置が、何らかの異常事態を招いたのか。
いくつかの魔法の相乗効果が、誰も予想しなかった悪意ある奇跡を引き起こしたのか。

ざわりと、風が鳴った。
遠くで、誰かが笑ったような気がした。
そして夏美は、何も知らない夏美は、何かに憑かれたような表情で、その呪いの刃を手にしたまま……
「……ケケケケッ!」
誰も居ない森の中、耳障りな笑い声を上げた。赤く染まった目を見開き、口を四角く開け、大きく笑った。
彼女は操り人形のようなギクシャクした動きで、その場を立ち去る。折れたナイフを片手に、その場を立ち去る。
クラスに集合しているはずの、殺し損ねた、犠牲者たちの場所を目指して……!

 NEXT TARGET → ???

            チャチャゼロ残酷編 完