MAGISTER NEGI MAGI from Hell

それから2

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出席番号21番、那波千鶴。
豊かな胸を失い、両腕の関節を複雑に壊された彼女。
彼女もリハビリの運動に苦しんではいたが、それでも穏やかな笑顔は崩さない。
両腕に装具をつけた彼女、子供たちを抱くことはできなくなったが、それでも保育園には顔を出す。
一連の事件について、彼女は沈黙を選んだ。語るべきことではないように思ったからだ。
彼女がその後、ネギたちに尋ねたのは、小太郎の消息についてだけ……。
寂しげな笑みを浮かべて彼の死を受け入れた彼女は、しかしそれでも、今日も彼の分の膳を並べる。
いつ彼が帰ってきても、いいように。

出席番号22番、鳴滝風香。
出席番号23番、鳴滝史伽。
双子は相変わらず元気だ。ガシャガシャと音を立てて、騒ぎながら教室を駆け回る。
それぞれ一本ずつ切り落とされた足は、ハカセ作のロボットの足に。
それぞれ一本ずつ切り落とされた腕は、同じくハカセ作のロボットの腕に。
機械の腕と足で、双子は変わらぬ元気で騒ぎ続ける。
片目は眼帯で覆った彼女たちの、今一番の悩みは……双子のダメージが、左右対称であること。
これでは双子が入れ替わるイタズラができない。一発で見抜かれてしまう。
……最大の悩みがコレなのだから、まあ彼女たちは心配いるまい。

出席番号24番、葉加瀬聡美。
片腕を機械の腕に置き換えた彼女は、事件後、自分の研究テーマを大きく変更した。
それまでは副業であり余技であった義手・義足の研究・開発をメインに据えたのだ。
彼女自身の腕もそうだし、鳴滝姉妹が使っている義手義足もそう。
さらには、楓の電動車椅子、あやかや千鶴の電動装具などの福祉関連器具も……。
何か責任感に突き動かされるように、彼女は努力を重ねた。贖罪のように、研究に没頭していた。
彼女が自分を許せるようになるまで時間はかかるだろうが、その汗は決して無駄にはならないハズだ。

出席番号25番、長谷川千雨。
「千雨」としての人格が崩壊し、「ちう」としての人格?が前面に出ることになった彼女。
能天気に騒ぎ立て、人々の前で堂々とコスプレを披露し。ネットアイドルである事実もカミングアウトした。
当初は彼女の変わりように、クラスの皆も驚いたが……1週間もしないうちに、馴染んでしまった。
成績はバカレンジャーの6人目か? と言われるほどに落ち込んだが、本人は全く気にしておらず。
まあ……本人が幸せそうだから、良いのだろう。
少なくとも、クラスから距離を置いていた頃よりは、格段に友人が増え、笑顔が増えている。
これはこれで、新しい生き方だ。

出席番号26番、Evangeline.A.K.McDowell。
彼女は……『失踪』という扱いに、なった。『行方不明』となった。
真実を知る何人かは沈黙を守り。彼女の席は空席のまま、今もそこにある。
この一連の事件において、失踪者は初等部に2人、教師に1人、そして女子中等部3-Aに1人。
いずれも、手がかりもなく、警察も動かぬよう釘が刺され……。
おそらくは迷宮入りの謎の事件として、忘れ去られることで決着を見るのだろう。

出席番号27番、宮崎のどか。
部屋に引き篭もっていた彼女は、事件が決着して後、ようやく学校に来るようになった。
前髪を上げることができず、ネギが赴任する以前の引っ込み思案な性格に逆戻りしてしまったが。
それでも彼女は、少しずつ自分を取り戻しつつある。ネギともロクに話せないが、治りつつある。
ちなみに、あの事件以来、彼女は自分のアーティファクトを召喚していない。カードも仕舞ったきりだ。

出席番号……番、…………。

出席番号29番、雪広あやか。
手足の関節を大いに痛めた彼女は、ようやく精神的にも傷が癒えはじめ、学校にも出てきていた。
昔のような優雅な歩き方はもうできない。手足の装具を軋ませながら、不恰好な、奇妙な歩き方。
けれど、それでいいのだ。努力する者こそ美しい。
一旦はどん底まで突き落とされた彼女の精神も、優しいクラスメイトに支えられ、立ち直り始めていた。

出席番号30番、四葉五月。
舌を切り落とされた料理人。言葉と味、2つのものを同時に奪われた彼女。
けれど彼女の武器は舌だけではない。嗅覚もまた、料理人として優れた素質の1つ。
彼女は思考錯誤を繰り返しながら、残された五感を頼りに料理の道に復帰していた。
揚げ物の立てる音、焼けた肉の色合い。味見ができなくても、出来具合を確かめる方法はある。
彼女は今なお、自分の店を持つ夢を諦めていない。
味見が出来ないのは大きなダメージだが、何、1人で何でもやろうと思わなければ良いのだ。
誰かに助けてもらい、誰かと一緒に歩めば良いのだ。
四葉五月は、ある意味において、クラス最強である。クラスで一番強く、へこたれない性格なのだ。

出席番号31番、Zazie Rainyday。
最後の戦いで片目を失った彼女は、遠近感を失った。
空中ブランコに曲芸にジャグリングに投げナイフにと、不都合が出てくる持ち芸は沢山ある。
実際そのいくつかは、永遠に諦めなければならないようであった。
でも……ザジにはそんなこと、別に構わないのである。やれることをやれるだけするだけだ。
そんなことより、彼女は鳥や小動物と戯れる時間が戻ってきたことが嬉しく……
そして、少しだけ寂しいのだった。先生の肩の上が、永遠に空白であることが。


騒がしい教室に、今日も子供先生がやってくる。
ネギ・スプリングフィールド。一時は担任を外された彼も、事件の終幕と共にクラスに戻ってきて。
今日もまた、踏み台の上に立って教卓に名簿を広げる。
チラリとエヴァの居た空席を見てから、頑張って笑顔を浮かべ、教室全体を見渡す。
「し、静かにして下さ-い! 出席を取りまーす! 席について下さーい!」
 って、あれ? そこの空席は……村上さんですか?」
ネギがふと気付いた、主の居ない席。
出席番号28番、村上夏美。
かつてサボったことなどない真面目な彼女が、この朝に限って、姿を見せていなかった。
ネギの問いかけに、しかし全員首を傾げるばかり。同室の千鶴たちさえも、事情を把握していなかった……。

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