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己の遺伝子を残し、種を存続させるため生物は生きている。とどこかで耳にした。
それならば私はなんの為に生きているのだろうか。
私に自分の子孫を残す事は出来ない。
本来生殖不能であるはずの、異なる二つの種族から生まれた禁忌の存在。それが私だからだ。
いわゆる「あいの子」と呼ばれる生物がそうであるように、私も生殖能力を持ってはいないであろう。
それ以前に私の存在は二つの種のどちらにとっても「異種」であり、悪く言えば「化け物」である。
生理的にも倫理的観念からも私と交わろうなどと考える雄はいないだろうし、私の方もそのつもりはない。
すでに肉親と呼べる存在はなく、これからも決してそう呼べる者が生まれてくる事はない。
生まれながらにして、生物としての存在理由を奪われた私。
それでも私には、私だけの存在理由があった。私はそのためだけに生きていると言っても過言ではない。





近衛木乃香を守る。という事は桜咲刹那にとって、その人生全てにおいての最優先事項である。
その事は自分の命よりも他の誰の命よりも優先される。
今の彼女は木乃香への度重なる嫌がらせの犯人を見つけることに手段を選ぼうとはしていなかった。



木乃香の靴箱から鳥の死骸が出てきたその日の夜。
刹那は寮内でクラスメイトの一人、宮崎のどかに声をかけた。
「のどかさん・・・少しよろしいですか?」
「な、何?せつなさん」
普段余り話すことのない刹那に差し迫ったな表情で話しかけられ、のどかは緊張した様子を隠せなかった。
「お嬢様が・・・木乃香さんが最近悪質な嫌がらせを受けているのはご存知ですか?」
「う、うん。今日靴箱に・・・死んだ鳥を入れられたとか、みんなが話してるのを聞きました・・・」
「それ以前からお嬢様の携帯にはおそらく同一犯から大量の脅迫メールが送られてきていました。
先日、のどかさんにもお嬢様がメールアドレスを変えたという知らせが届いたと思いますが、あれはその対策だったのです」
のどかは緊張した態度を崩さぬまま、黙って刹那の話を聞き続ける。
「・・・ところが、その日のうちにまた嫌がらせのメールが届いたんです。
……これは、お嬢様の新しいアドレスを知る人間が犯人・・・という事を意味しています」
「そ、それじゃあ、まさか、ウチのクラスの誰かが・・・」
「その可能性が高いでしょう・・・そこでのどかさんにお願いがあります」
「えっ・・・わ、私に出来る事があるんですか・・・?」
予想だにしなかった展開にのどかの声が多少うわずる。
「のどかさんのアーティファクトでクラス全員の心を読んで貰いたいのです。
誰が何を考えてお嬢様にあんな嫌がらせをしているのか確かめるために」
「ええっ!だ、駄目ですよそんなの。みんなの心を勝手に見るなんて事は・・・」
のどかは当然のごとく拒否した。しかし、刹那はなお食い下がる。
「あくまで見ていただくのは、お嬢様に関する事だけです。一人一人に別の人間、私かネギ先生
が簡易な質問をするので、その瞬間の心境だけ読み取っていただければかまいません」
「そ、それでも嫌です・・・そんな事やりたくありません・・・」
もはや刹那と視線を合わせる事すら出来ず、最後の方は消え入りそうな声でのどかは言った。
「・・・それでは、まず私の今の心を読んでください。それでもまだ断られるというなら諦めます」



刹那の剣幕に押され、拒否する事ができず、のどかは仕方なく、刹那の名を呼び本を開く。
「…!!ひっ………」
……刹那の表層を読み取ったのどかは先の頼みも断る事ができなくなった。

-その翌日-

刹那は生徒一人一人に質問する役をネギに頼み、自分はのどかと一緒に全員の心の表層を読む事にした。
その旨をのどかと一緒に翌朝、早速ネギに伝える。
「・・・と言うわけでネギ先生にも、協力して頂きたいのです」
しかし、ネギは乗り気では無い様だ。
「・・・僕は賛成できません。そんなみんなを疑う様な事は・・・」
ネギの反応を見て、慌てて弁明するのどか。
「わ・・・私も本当は嫌なんです、でも・・・」
しかしそれを遮って刹那が口を開く。
「先生のお気持ちは察しています。しかし、犯人は明らかに異常です。
放って置くと次はどんな危害がお嬢様に及ぶかわかりません。今は手段を選んでいる時ではないと思います。
それともネギ先生には何か他に良い方法がおありですか?」
ネギはため息をついて首を横に振る。
「・・・・わかりました。刹那さんの言うとおりにしましょう・・・」
他に方法もない以上、反対を押し通す事もできなかった。
なにより彼も自分の生徒を疑いたくないと思う一方で、疑いが晴らせるなら早めにそうしたい。
ならば、少々乱暴な方法でもそれがベターだと判断したのだ。
「…じゃあ、のどかさんもすみませんが宜しくお願いします!」
「は、はい!ネギ先生。私、頑張ります・・・!」
ずっと気が重そうな顔をしていたのどかの表情に急に笑顔が戻った。



ネギは休み時間等を利用し、クラスの生徒を一人ずつ呼び出し、共通の以下の質問をする。
『このかさんが最近誰かから嫌がらせを受けている事を知っていますか?
もし犯人や今回の事が起きた理由に心当たりがあったら何でもいいので話してください』
向こうが特に何も言わなければこちらからの質問はこれだけだ。犯人かどうかを探るにはこれで充分である。
物陰に隠れた刹那とのどかは、生徒一人一人がネギからその質問をされた際の心の表層を読み取っていった。

一人あたりにかけた時間は一分に満たず、その日のうちにクラス全員への聞き込みは終った。
だが、その結果、嫌がらせや脅迫に直接関与を示した生徒は一人もいなかったのだ。
「やっぱり・・・犯人は3-Aの人じゃなかったみたいですね」
その結果にネギはとりあえずの安堵の表情を浮かべたが、刹那は不満げである。
(ではクラス以外のメールを送られた人物か・・・・?しかしどうにも腑に落ちない)
「のどかさん。すみませんがもう少し付き合っていただきます」
「え・・・?は、はい……」
刹那は放課後、今日は木乃香の靴箱に何もされていない事を確認し、彼女を安全に寮に送り返してから
再びのどかを半ば無理矢理に連れ出した。
そして、クラスの者以外で木乃香があの晩メールを送った学園、町内の人物に
片っ端から接触しクラスメイトと同様の質問を投げかける。



……しかし、こちらも特に変わったところはなく、嫌がらせや脅迫の事実を知っている者すら少数だった。
(他は、京にいる知り合いぐらいか・・・まさか関西呪術協会の過激派連中がこんなふざけた嫌がらせをしてくる
とは思えないし、二週間前から突如始まったとなるとやはり校内関係者の仕業と見るのが妥当・・・)
「あ・・・あの、私はもういいでしょうか・・・」
一人考え込んでいる刹那に、疲弊しきった表情ののどかが言った。
「ええ、のどかさん。長く時間を取らせてしまってすみません。ありがとうございました」
「じゃ、じゃあ私帰ります。こっちこそごめんなさい、役に立てなかったみたいで」
それだけ言うと、のどかはその場からそそくさと去ろうとする。だが、刹那は今一度彼女を呼び止めた。
「いや、ちょっと待ってください。最後にもう一人だけ心を読んで貰いたい人がいる」
のどかはピタリと足を止めゆっくり振り返りながらおずおずと口を開く。
「だ・・・誰ですか?」

「・・・のどかさん、貴女自身だ」