MAGISTER NEGI MAGI from Hell

一気飲み

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3-Aの生徒一同は居酒屋で打ち上げを始めようとしていた。
「じゃあ、とりあえず中生30個ね」
店員にそう告げる神楽坂明日菜。
そんな彼女の発言に驚き、おずおずと宮崎のどかが言う。
「あ・・・あの、私お酒は飲めな・・・」
しかし、そんな彼女に一斉にクラスの冷めた視線が集まった。
「(゚Д゚)ハァ? 最初からソフトドリンク?マジありえないんですけど」
「今時小学生だって飲むっつーの。何カマトトぶってんだよ。ウザッ」
「っていうかビールなんか酒のうちに入んないっしょ。ホント冷めるわー」
(えっ・・・?えっ・・・!?)
予想だにしなかった周りの反応に困惑するのどか。
「まぁまぁ、本屋ちゃん。最初の一杯だけだから」
「付き合いやと思おてガマンしてよー」
そんな彼女にアスナと近衛木乃香が助け舟をだし、その場はひとまず収まる。
しかし、この二人は決してのどかの事を気遣ったわけではない。
アスナは自分がとっとと飲み食いしたいだけだし、もう一人に至ってはさらにロクでもない事を考えていた。



『かんぱーい!!!』
運ばれてきたビールで乾杯した後、各自飲む。大半が女子中学生とは思えない飲みっぷりだ。
中でもアスナはまるで水、いや、酸素のように一瞬にして中ジョッキのビールを飲み干し、
料理を運んできた店員に向かってその料理をつまみつつ、手当たり次第に酒を頼む。
貧乏人の彼女は飲み放題の時間内で限界まで飲むつもりだ。
それとは対照的にのどかは恐る恐る、舐めるようにちょびっとビールを飲んだだけでその少しの量を吐き出しそうになる。
(うえぇ・・・苦い・・・なんでみんなこんなの飲めるの・・・)

その後、飲み会はコール合戦が始まり、それは次第に激しさを増す。
たまに春日美空のコールがスベったりしたがかなりの盛り上がりを見せていった。
だが、その中でのどかは仲のいい友人ともロクに会話できず、料理にも殆ど手をつけずうつむいていた。
当然ながら目の前のビールも全く減っていない。
目立つのが怖かった。何かあったらすぐ自分に振られて「飲め」と言われかねない空気だ。
中でも恐ろしいのはいきなり複数人が指名されて飲まされる時だ。
チアの三人組や、よく遊ぶ運動部同士など、仲のいい接点のある者達が何度か飲まされている。
そんな中、場の流れで誰が言い出したか、自然と次のコールが振られた。



「図書館探検部の~~友情イッキが~~~見た~い」
「はい、図書館探検部、きりーぃつっ!!!」
ついに恐れていた事態が起きた。今までの流れを怖々観察していたのどかは、ここで飲まない事が許されない事を悟っていた。
飲み残した者には、容赦なく酒が追加される。もちろん、拒否した者など一人もいない。
殆ど満杯に等しいジョッキビールを持ちながら、のどかは緊張と絶望で震えながら、立ち上がり、なんとか他の3人とグラスを交わす。
このかは三秒で飲んだ。早乙女 ハルナは二秒で飲んだ。
綾瀬 夕映もなんだかよくわからない酒をこくこく、と自分のペースであっさり飲んだ。
のどかも意を決して、一気にビールを飲もうとしたが、3分の1飲んだだけで、
ぬるくなったビールによって口内も食道も胃袋も一斉に悲鳴を挙げた。
それでも、ここで残したりしたら何をされるかわからない。のどかは目に涙を浮かべながら、必至に残りのビールを飲み干す。
何度も吐き出しそうになりながらようやく飲み終えた後、彼女はその場に崩れ落ちた。
舌がしびれて、胸が苦しくて、頭が痛くて、とにかく辛かった。
なぜ、こんな辛い思いをして飲まなければならないのかわからない。
みんなで、おしゃべりしながら楽しく食事が出来ればそれで十分なのに・・・・・
そんな辛さと悲しみを抱えながら、彼女は蚊の鳴くような声で側にいる友人に言った。
「みず・・・・お水ください・・・・」
笑みを浮かべながら声をかけられた生徒がグラスを渡す。その生徒は近衛木乃香だった。
「ほい、水」
のどかに渡されたのは割っていない焼酎。
そして、そんな悪意に気づかず、彼女は「くいっ」とそれを飲んでしまう。



「・・・・・・!!!・・・ブボッッッ!!」

普段の彼女から似つかわしくない派手な音を立てて、のどかは焼酎を噴出し、目の前にいたアスナにぶっかける。
周りの爆笑に包まれながら、のどかは涙と鼻水を流して苦しんでいた。そんな彼女に追い討ちをかける声。
「あ~、これは粗相やな~。はい、もっかいきりーつ」
「そ・・・んな・・・このかさ・・・酷・・・い・・・」
あんまりな仕打ちにのどかは抗議の声を上げるが、まわりはすでにコールに包まれていた。
「そ・そ・お!そ・そ・お!」
「SO・SO・そ・そ・お!」
「D・V・D!D・V・D!」
絶望に打ちひしがれるのどか、だがその時、彼女に救いの手が差し伸べられた。

「あ、あの、お嬢様、少しやりすぎなのでは・・・のどかさんは本当にお酒が弱いようですし」
見ていられなくなった桜咲刹那が主に場を仕切っているこのかにそう訴える。
このかは一瞬だけ、眉をしかめた後満面の笑みを浮かべて言った。
「んーほな、せっちゃんが代わりに飲んであげるんかー?せっちゃんはやさしーなー」
刹那も酒は好きでも強くもないのだが、ここでのどかを見捨てることはできず「はい」と応える。
「みんなーせっちゃんが代わりにのむえー!・・・やっぱせっちゃんと言えばコールはこれやろ・・・・」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「サンダ~~~バ~~~~ド~~~~ 5号!5号!5号5号5号!!」
コールに包まれながら刹那は次々渡される酒を飲み続ける。
盛り上がるクラスの中で、のどかだけが青ざめていた。
(わ、私のせいでせつなさんが・・・・や、やめて・・・・そんなに飲んだら死んじゃうう・・・)
このかから手渡される酒を刹那は拒否する事は出来ない。
それでも10号を越えたあたりで顔は真っ赤に染まり、20号が出撃する頃には逆に蒼白になってきた。
(このちゃん、もう許して・・・)
と刹那は目で訴えていたが。それに対しこのかの目は全く許す気配はない。
結局THUNDERBIRDは28号まで出撃し、帰りは4号までしか帰還できなかった。
(せつなさん、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・!)
泣きながら刹那に心の中で謝り続けるのどか。
しかし、彼女達から既にクラスの興味は離れ、大河内アキラの鏡月一気飲みに注目が集まっていた。

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