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五月は立ち上がると、台所で湯を沸かし始めた。
グツグツと湯が音を立て始める。
高畑は煙草を吹かしながら、段々と暗くなる空を眺めていた。
「ネギ君…、君の生徒達のほとんどが命を落とした。君は今どこにいるんだい?」
高畑の目からは自然と涙がこぼれた。


図書館島捜索から七時間が経つ。
二人は今、図書館島最深部に到達していた。
修学旅行終了後、ネギが夕映とのどかを連れてナギの手掛かりを捜索しようとしたフロアである。
「しかし…、ここはどこまで続くんだ。」
「さすがにちょっとキツイですね…。」
二人とも服が破けてはいないがボロボロである。
おそらく図書館島の罠に引っ掛かった結果であろう。
さすがに二人の顔には疲労が見える。
「ん?」
突然ガンドルフィーニの足が止まる。
「どうしましたか?」
「いや…、なんでもない。(気のせいか…?)」
少し首を傾げながらも歩き続けるガンドルフィーニ。
辺りには光がなく、ガンドルフィーニが持つランプだけが唯一の道を示す物となっている。
しかし光源があるのか段々と周りになにがあるのか肉眼でも微かだが見えるようになってきている。



「ん?」
今度は刹那の足が止まる。
「どうしたかね。刹那君。」
「…微かですが…、ネギ先生の声が…。」
「なに!本当か!」
烏族の力であろうか。 人間には聞こえない音が彼女には聞こえるようだ。
しかしネギの声が聞こえたのに、刹那はどうも浮かない顔をしている。
「ですが…。どうやら笑い声のようです…。」
「笑い声?」
こんな暗い所で独りで笑っている人など馬鹿か狂人しかいない。
なのにネギ先生の笑い声が聞こえるとはどういう事なのだろうか。
「…行きましょう。」
「…よし、行こう。」
二人は走り出した。

「やはりな…。」
ガンドルフィーニの顔が確信へと変わる。
「どうしたんですか?」
「ああ、どこかで血が流れてる。今は微かだが、段々強くなっていっている。」
「血…ですか?」
「嫌な匂いだ。…頭が痛くなる。」
通路が段々と光が通り、ランプもいらないほど明るくなっていた。
そして二人のずっと先にはここからは小さくしか見えない門がそびえている。
一歩ずつ踏み出すごとに強くなる笑い声と匂い。
果たして扉の向こうにはなにが待っているのか。


刀子が穴をたどって行くと、そこには剣で人間でいう心臓部を串刺しにされ、剣に寄り掛かるように機能停止している茶々丸がいた。



おそらく少女の穴も木々の穴も全て茶々丸の目のレーザーが貫いたのだろう。
剣に突き刺さっている所を見ると、おそらくは少女はこの剣で茶々丸を刺し、この場を去ろうとしたが、茶々丸の最後の反撃にあい、茶々丸ともども命を落とした。と推測出来る。
しかし目的がわからない。
肝心のエヴァンジェリンもどこかへ消え、何も手掛かりとなるような物がないのだ。
「瀬流彦先生は…。」
そうなると独り残してきた瀬流彦が心配になってきた刀子。
あくまで仮定の話だが、あんな中学生ぐらいの少女が相撃ちとはいえ、超高性能ロボットの茶々丸を倒したのだ。
いくら魔法先生と言えど、出会って無事ですむほど生易しい人々ではない。
刀子は茶々丸から記憶メモリーチップを抜き取ると、もと来た道を走っていった。

空が暗くなっていく。
「なにか食べに行きましょうか?」
五月は冷めた茶を机に置いて言った。
それを聞いた高畑は少し淋しそうな表情をしながらこう言った。
「もう、料理は作らないつもりかい?」
五月は少しためらいながら、ゆっくりと小さく頷いた。
それを見た高畑は煙草を捨てると、懐から薄い長方形の黒いケースを五月に差し出した。
ケースの隅にはリボンで出来た花がつけられている。



「これは…。」
「葉加瀬君の机の中に入っていた物だ。多分君へのプレゼントだよ。」
黒いケースのなかには立派な中華包丁が入っていた。
光が反射し、刃がキラキラと光っている。
「今は葉加瀬君の遺品だ。大事に保管しておくんだ。それと…。」
高畑は真っ直ぐな目で五月を見据える。
「葉加瀬君がどんな気持ちでそれを君に渡そうとしたか…、是非考えてほしい。」
「…はい。」
小さい。が、力の入った声。
高畑はニッコリと笑う。
「…私が料理…作ります。」
それだけ言うと五月は黒いケースを持って台所に行ってしまった。
そんな五月をいつまでも微笑んで見つめていた高畑であった。


誰もいない世界樹公園。
世界樹に寄り添う形で早乙女ハルナは座っていた。
手には明日菜の自殺日記。
ただし『自殺日記2』と書かれている。
冷たい風が草木をなびかせる。
空には綺麗な夜空にオリオン座が浮かんでいる。
「私…、何がしたいんだろ…。」
明日菜が死んでから不登校になっていたハルナ。
しかし今日の朝、目が覚めると、そこには明日菜の眠る教会の前に立っていた。
私は怖かった。自分が怖くてしかたがなかった。
知らぬ間に教会まで歩いていた自分に…。
「明日菜…ごめん…。」
ハルナは一言そう言うと、寒い風のなか静かに眠りについた。