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「うっちゅええ!」大河内の奇声と共に、鋭いチョップが茶々丸の首元へ迫る。
『!?』茶々丸が後ろへ引いた。大河内の放ったチョップは空を切る。紙一重で攻撃を躱すことに成功した。
が、大河内の攻撃は続く。片足を上げたまま、様々な角度の蹴りを放つ。
攻撃を躱しながら、茶々丸は左右に移動した。しかし、大河内との距離はつかず離れず。
それもそのはず、大河内は片足で茶々丸に詰め寄り、間合いをつめているのだ。
「ファハハハハハ!躱すだけで精一杯ニダかぁ?ウリウリウリぃ!」
『一瞬…詰め寄る、あの一瞬…』
茶々丸が身をよじり攻撃を躱している間にも、茶々丸の人工知能は冷静に相手の動きを分析している。
蹴り事態に隙はないが、大河内が一足飛びで詰め寄る瞬間を狙う。これ以外に有効な作戦はない。
『そのためには、一度…』
メリッ!…茶々丸の人工の皮膚が、大河内の蹴りで削げた。わざと、大河内の蹴りを貰ったのだ。
「うひひひいいい!良い感触だぁあ!もっと蹴りたいニダァ♪」
蹴りを喰らった茶々丸だが、彼女に痛覚はない。よって、苦痛は表情に出ない。
しかし、あまり攻撃を貰い過ぎると内部のシステムが破壊される可能性がある。
事実、大河内の蹴りは茶々丸の左肩を抉った。この蹴りを続けてもらうのは危険である。
茶々丸は体勢を崩した振りをして、後退した。予想通り、大河内は一足飛びで間合いを詰めにかかる。
その瞬間、茶々丸は自らの右腕を大河内のみぞおちめがけ発射した。
ズボンッ!という爆発音が起き、右腕が、茶々丸から切り離された。
族に言う、ロケットパンチ…聞こえは地味だが、突進力はかなりの物である。
ましてや、相手が相当なスピードで飛び込んで来た。その攻撃は、強烈なカウンターになる。
ゴキッ…大河内のみぞおちと茶々丸の右腕がぶつかり、なまなましい音が響いた。
それを喰らった大河内は物も言わずに、地面へと崩れ落ちた。



「大河内、大丈夫か?どうやら、私の出番らしいな…」
戦闘の様子を冷徹に見守っていた龍宮が指を鳴らす。その後、大河内の様子を確かめる龍宮。
「しかし、みぞおちに見舞うとは…随分派手にやってくれたな。大河内は白眼剥いて泡を吹いて気絶している。
 それに、あの音…彼女は過去にも優秀な成績を残している上、これからを期待されている水泳選手だぞ?
 もし胸骨が折れて後遺症が残り、水泳は愚か呼吸をするのも苦しいなんて事になったらどうするんだ?」
「私は呼吸が出来ません。私には過去も未来もありません。ですから、そんな事は知りません。
 私にできる事は、マスターに仕え、マスターを脅かす者を消す事だけです!」
言い終えるが早いか、茶々丸は右腕の欠損したままの状態で龍宮へ一直線に突進して来た。
『速いな…しかし動きは予想できるぞ?その身体で何ができるというのだッ!』
いよいよ、龍宮の間合いに茶々丸が入った。すかさず龍宮が軽くジャブをくり出す。
しかし、そのジャブは当たらない、。茶々丸が、目の前から消えている…
『回りこまれた?』慌てて後ろを振り向く龍宮。茶々丸の回し蹴りが、龍宮の脇腹に食い込む。
「うッ!?」肝臓の辺りを思いきり蹴り上げられた。内蔵へのダメージは後々響いてくる。
間髪を容れずに茶々丸が片足を上げ、連続で蹴りをくり出す。頭を無理矢理降ってそうとするも、
躱しきれずに貰ってしまう。キレのある蹴り。まるで、大河内のような蹴り…
『こいつ…先ほどの大河内の動きを自らの動きに取り入れている…!?』
龍宮は彼女を見くびっていた。身のこなしまで模写するのは敢然に予想外だった。



『仕方がない…デリンジャーを使う!』龍宮がそれを抜き、茶々丸へ発砲した。
一発目は茶々丸の腿に命中し、二発目は腹部へへ命中した。
足をやられた茶々丸は何も言わずにその場にうずくまり、ただ龍宮を見据えるだけになった。
「これほどとはな…しかし、君を今壊さなくてはな…さすがにエヴァとは喧嘩をしたくない」
龍宮がゆっくりゆっくり茶々丸へと歩み寄る。先ほどの一撃が効いているらしく、足許はおぼつかない。
「うあああっ!」声を振り絞り、うずくまる茶々丸の顔に張り手をかます。衝撃で、茶々丸が仰向けになった。
馬乗りになり、茶々丸の顔を張り続ける龍宮。しかし、張れども張れども茶々丸に変化はない様に見える。
「ううっ…うううおおおおおおおおおお!」まったく攻撃が効いていないかのような錯覚が龍宮を乱した。
やけになって拳を使って茶々丸を殴る。殴る内、拳から血が流れ出した。
生気のない、無表情な茶々丸の顔に、べっとりとした鮮血がこびりついてゆく。
それでもなお、龍宮は手を休ませない。だんだん手の感覚がなくなってくる。
そのうち、龍宮は手を止めた。血まみれになった手。茶々丸の顔。
そうだ…すべては、終わったのだ…

そう思った瞬間、茶々丸が息を吹き返した。馬乗りの状態の龍宮の首を、
茶々丸の左手が最後の力を振り絞り締め上げる。
「グギヒッ!クク…スウゥウ…ッ!」龍宮の顔色が変わっていく。
茶々丸が龍宮の身体を押し退け、逆に茶々丸が馬乗りになった。
『ああ…私は…ここで…終わる…のか?』

始めて人を殺めたあの日、始めて私に笑いかけた彼、初めて私が人を信じたあの日
彼と一緒に仕事をして、苦痛だった毎日が少しづつ変わっていったあの頃
その彼が死んで、私はまた一人になって、いつしか身体ばかりが大きくなって
私の腋いが臭くなって、クラスメイトから少しずつ嫌われて、
クラスメイトからの冷ややかな視線が痛くて、毎日が無風状態でどうしようもなくて
次第にどうでも良くなって、皆にいたずらがしたくなって、皆を思いきり穢して

今までの思い出が頭を駆け巡った。



『バキッ!…』

固い物がぶつかる音。
朦朧とした意識の中から、龍宮は眼を覚ました。
眼に写るのは、茶々丸の頭部が砕け散っている様。
その脇に転がるのは、硬式ボールだった。

『綾瀬か…伏兵させておいて正解だった。私は、まだ生きている…』
龍宮は、自分がまだ娑婆にいる事を悟った。
「龍宮さんっ!大丈夫ですか!?」綾瀬が肛門から筒を抜く事も忘れて走って来た。
「ああ…すまないな、助けてもらって。大河内はどうなった?」龍宮が尋ねた。
「…もう元に戻ってるようです」綾瀬が答えた。
「そうか。全く大した回復力だ。さて、茶々丸は壊れた。
 一番いい壊れっぷりだったな…我々の計画も終わりだ。
 先に戻ってくれ。私はちょっと疲れた」
龍宮がだるそうに言った。
「わかりました…それではお先に」肛門に入っているブツを忘れたまま、
すたすたと去っていく綾瀬。
「にょにょにょにょ…胸が痛い…」大河内がうつ伏せのまま呟く。
「ふう…普通にしゃべれるか。ダメージはなかったのか?」
「痛かったけど、ジャイジョブニダ!」
大河内の日本語は何処か濁っている所を見ると、身体より脳の方が危険なのかも知れない。
「私は、動けそうもない。担いでくれないか?」
珍しく弱音を吐く龍宮。
「ウリもつかれたにだ。しばらくやすんでから、かえろうにだ」
2人、横になった状態。思えば、最初の作戦でもこんな事があった。
その作戦も、もう想い出である。
龍宮の拳からは、今もなお血が膿みのように流れている。

壮大な作戦は終わった。あとは、理想郷だけが待っている。