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「瀬流彦先生!」
「あ、刀子さん。すいませんなんか…。」
「いえ、しかたがありません。ここから先は私も知らない未知の領域ですので。」
二人は老化した縄を跨いで奥へ奥へと進んで行く。
進むに連れて、油の臭いが強くなっていく。
いつ何者に襲われてもおかしくない状態。しかも、周りは森に囲まれ、伏兵が現れれば圧倒的に不利になる。
すでに真冬だというのに瀬流彦の額からは汗が滲む。

「あれは…。」
刀子は何かを発見したようだ。
思わず、全てを忘れて独り走って行ってしまう。
「え?あ…待ってくださいよ!」
瀬流彦も刀子を追いかけようと走り出そうとした。が、
「(え?)」
一瞬、なにかこの森には場違いな物を見てしまい、走るのをためたらった。
「(…何かがおかしい。)」
突然目に入ってきたので、どこに違和感があるのかは分からない。が、何かが確実におかしいのだ。
瀬流彦は森の真ん中で、刀子の事も伏兵の事も忘れて、ひたすらその違和感があった場所を探し続けた。

一方その頃刀子は…
「やはり…。所々に戦闘の後が…。」
左の木には刀傷が、右の木には焼け焦げた後が、そして地面には道標のように血痕の線が出来ていた。
刀子は血の線を頼りに奥へと進んでいく。
奥に行くほど戦闘の傷跡が強く残っている。
しばらく進むと、何かが倒れている事に気がつく。




刀子はそこに駆け寄ると、若い状態の亡骸がそこにはあった。胸と腹部に5センチ程度の穴。おそらくこれが致命傷になったのだろう。
顔を見るとどうやら日本人ではないようだ。
そしてまだ血痕の道標が消えていない事からまだ先に人が死んでいるかもしれないという事を仮定させる。

遺体を調べた所、腐化が始まっていない事から死後それほど経っていないことがわかる
最も死後解剖すれば正確な結果が出るのだが
「瀬流彦先生、ここは一旦この亡骸を運んで…、え?瀬流彦先生?」
ここでようやく瀬流彦とはぐれてしまったと気付く刀子。しかし時既に遅かった。
「まずい…。こんな時に襲われたら…。」
刀子は急いで辺りを見回したが、瀬流彦の気配を感じとる事は出来ない。
彼女は大事なヒントを手に持ったまま途方にくれてしまった。

「え?」
何故か木の中心に5センチ程度の穴が空いている。
それも一本だけではない。
その後ろの木も、その、その後ろの木も全て丸い穴が開いている。
しかも面白いことにその穴はこの遺体を結び、直線上に空いているのだ。
刀子には一つだけ心辺りがあった。
あれはたしか麻帆良祭が始まる少し前、ロボット工学研究会で起きた。ロボットの暴走事件。
刀子はその時、その場にはいなかったが、青白い光が空を走った事は今でも覚えている。
そしてその暴走したロボットと言うのが…

死体や木に綺麗に空いた穴。
これならば説明がつく。そしてこの穴をたどって行けば自然と答えが出て来るだろう。
刀子は穴を頼りにまた森の奥へと進んで行った。


その頃
「やっぱりおかしいなぁ…。」
刀子に置いてきぼりにされた憐れな瀬流彦は、刀子が進んでいった道とは違う道を進んでいた。
時折立ち止まっては、腕時計をカチカチいじり、また進んで行くという理解不能な行動をとっている。
しかし瀬流彦の顔からは揺るぎない自信のようなものが見え隠れしている。

瀬流彦は足を止めると、狂ったように辺りを注意深く辺りを調べ始めた。
すると、微かだが木の根元の草に霜が降りていた。
たしかに今は冬だが、真昼に霜が残るなんてことはまずない。
もし残るとしたら周りの温度が極端に低い。それ以外にはありえない。
現に瀬流彦のデジタル腕時計は7℃と表示され、微かだが瀬流彦の吐く息に白みがかかっている。
そして何かを発見したようで、急いでそっちに向かって走っていく。

「すごい…。」
瀬流彦は思わず息をのんだ。
瀬流彦の目の前には木、草、大地が残す所なく凍っている。
まさにそこだけが時間が止まっているのではないかという錯誤さえしてしまうほど、目の前には『動』というものがない。